西欧ファンタジーの元祖「指輪物語」こと、「ロード・オブ・ザ・リング」。
2001年(日本では2002年)に映画化され、三部作という長編ながら世界中で大ヒットとなった作品です。
その映画版ロード・オブ・ザ・リングを元にしたタワーディフェンスが iPhone / iPod touch と iPad で登場しています。
The Lord of the Rings: Middle-earth Defense」です。

もちろんちゃんと公式ライセンスを取っている作品。
映画で活躍した人間のファイターやハーフリングたち、老ウィザードやドワーフ、エルフなどがタワーディフェンスのユニットとなって活躍します。

公開しているのは Glu という会社ですが、ここはロンドンでモバイルアプリの販売やマーケティングを行っている、俗に言う「パブリッシャー」です。
アプリの開発元は別にあると思うのですが詳細は不明で、Glu は他の開発会社を取り込んだりしているようなので、一応 Glu 内部の作成という形なのかもしれません。

The Lord of the Rings: Middle-earth Defense

資金を使ってユニットを配置し、Wave ごとに次々とやって来る敵を迎撃していく、割と一般的なシステムのタワーディフェンスです。
「ロード・オブ・ザ・リング」は RPG の世界観の元なのですが、このゲームに経験値やレベルアップなどの成長要素は残念ながらありません。
ただ、お金を使ってユニットの能力をアップグレードすることは可能です。

タワーディフェンスには敵の通る道が決まっている「ルート固定型」と、敵の通る道が決まっておらず障害物をかわしながら進む「オープンフィールド型」がありますが、このゲームはその中間的な性質を持ちます。

どのステージも入り組んでいて、ある程度敵の通り道は決まっているのですが、その中に障害物となる「柵」などを配置できます。
するとそれに合わせて敵の通り道が、迂回したルートに変更されます。
どこに障害物を置くと、敵のルートがどう変化するのかが画面に表示されるのも特徴ですね。

つまり、「だだっ広いマップじゃないけど、敵の進行路はプレイヤーがある程度コントロールできる」というシステムになっています。
まさに固定ルートとオープンフィールドの中間です。
障害物には周辺の敵にダメージを与えたり、スピードを下げたりする「罠」もあって、これらをどう使うかもポイントと言えます。
ユニットの配置場所は候補地が決まっているので、それも考慮に入れる必要があります。

The Lord of the Rings: Middle-earth Defense

ユニットを設置する資金と、障害物や罠を設置する資材は別になっていて、資材はそれほど手に入らないため、障害物の配置を変えて敵を行ったり来たりさせる「ジャグリング」はあまり出来ません。

もう1つの特徴は、原作のストーリーに沿っているため、各ステージで使用できるユニットが決まっていると言う事。
また、ユニットが物語の登場人物なので、何人も配置できません
そのため1つ1つのユニットの配置場所が大事になる反面、多数の弾が飛び交うような派手な展開にはならず、タワーディフェンスとしてはやや地味と言えますね。

ただ、ストーリーモードの他に出撃するキャラクターを自分で選べる「チャレンジモード」もあります。
チャレンジモードは1ステージが長く、味方ユニットが多めで、敵の出現パターンもストーリーとは異なっているため、ゲームとしてはこちらの方が楽しめるかもしれません。

なお、ユニットは「近接攻撃ユニット」と「遠距離攻撃ユニット」に分かれており、ファイターやドワーフは近くの敵に突っ込んで行き殴るという、最近あまり見ない「殴り系タワーディフェンス」となっています。
そのため戦闘の様子は エレメンタルモンスターTD に近いものがありますね。

以下は海外サイト The GameTrail で公開された、Youtube のゲームトレーラーです。



しかしこのゲーム、あのロード・オブ・ザ・リングの公式ライセンスアプリとしては・・・ ちょっと残念な部分もいくつかあります。

まず一番気になるのが、フレームレート(描画速度)の低さ
ハッキリ言って、表示が「ガクガク」なのです。 常にコマ送りを見ているような感じ。
その「コマ送りっぷり」は敵が多いとさらに悪化します。

敵も味方も少ないのにここまでガクガクなのは、キャラクターがフル 3D グラフィックで表現されているためだと思いますが・・・
単に、開発元の技術力が低いだけの気も。
旧機種でも動かせることを想定しているのかもしれませんが、それなら CPU に余裕がある時はもっと滑らかにして欲しいものです・・・
スクリーンショットで見た時の綺麗さと、動いている物を見た時のガクガクさに「ギャップ」を感じてしまうのは否めませんね。

さらに、映画「ロード・オブ・ザ・リング」をせっかく使っているのに、映画の名場面などがあまり表現されていません。
ムービーなどがないのはもちろん、ボスのような敵もほとんどいないため、どのステージも「普通にザコを迎撃して終わり」なのです。

例えば映画のワンシーン、魔術師ガンダルフが一本橋の上で悪魔と対峙する場面なども、単に会話だけで終わります
せっかくの「ロード・オブ・ザ・リング」らしさや、名場面での盛り上がりなどがまるでなし。
ストーリー表示や会話も英語だから日本人だと解り辛いし・・・


と言う訳で「The Lord of the Rings: Middle-earth Defense」。
タワーディフェンスとして相応に楽しむ事はできるけど、佳作と言った印象ですね。
価格は iPhone 版が 800 円、iPod touch 版が 1200 円高額なので、この価格ではとてもオススメは出来ません。
ロード・オブ・ザ・リングの大ファンで、ファンアイテムとして購入される方や、各場面を脳内補完できる方にのみお勧めします。

ただ、全く面白くない訳ではないので、タワーディフェンスが好きな方なら買って後悔するという程でもないでしょう。
できればセールを狙いたいゲームですが、ライセンス料とかもあるだろうから、厳しいだろうなぁ・・・

・The Lord of the Rings(公開終了)