オンライン対応のマルチプレイが可能なアクションゲームで、タワーディフェンスの要素もあり、キャラクターの育成要素に加え、様々な装備を集める楽しみもある、3D グラフィックのゲームシステム「Unreal Engine」を使った、「アクションRPG」。
それが「Dungeon Defenders」です。
※現在の正式名は「Dungeon Defenders: Second Wave」です。
もう「あらゆるヒット要素をてんこ盛りした」という感じですね。
欧米では大きく注目されていたゲームで、iTunes の評価も悪くはありません。
ただ・・・ 先に行ってしまいますが、個人的にはイマイチだと感じました。
確かにあらゆるヒット要素が盛り込まれています。 しかしどんな製品でも「機能を詰め込みすぎると失敗する」というのは良くある事です。
つまり、「機能が多すぎて複雑化しすぎ、使い勝手が悪くなる」「それぞれの機能が中途半端になる」「操作や設定が煩雑になり、解り辛くなる」などの弊害です。
そしてこのゲームはそうした多機能を盛り込んだ場合の弊害を、そのまま受けてしまっている印象です。
ゲームは画面左下のスティックで主人公を移動させ、画面右下のボタンで攻撃を行うという、全方向スクロールゲームお馴染みの操作方法です。
戦士や魔術師などの複数の職業があり、戦士なら剣を振っての攻撃、魔術師ならショットがメインになるため、職業によってゲーム性は変わってきます。
ジャンプボタンがあるのもゲームの特徴ですね。
フィールドは 3D で描かれており、上から見下ろした形です。
立体的な地形になっていてグラフィックは(旧機種対応としては)非常に綺麗ですが、移動し辛かったり見辛い場面もあります。
ただ、キャラクターの反応は良好ですね。
ゲームシステムは「アクションRPG+タワーディフェンス」です。
まず宝箱からマナ(MP)を回収し、それを使って地形の任意の場所にタワーを設置します。
タワーを設定するにはその場所までキャラクターを動かして、メニューからタワーを選び設置場所と向きを設定する必要があります。
向きがあるのがポイントですね。
タワーを一通り設置し終えたら「クリスタル」の場所に行き、バトル開始のボタンを押すと戦闘がスタート。
敵がどんどんやってくるので、それを次々と倒していきます。
プレイヤー自身も攻撃出来ますが、もちろん設置したタワーも敵を自動的に攻撃してくれます。
敵を倒せばマナ(MP)の元を得られるので、それでさらにタワーを設置したり、修理・強化する事が出来ます。 これは戦闘中でも可能です。
敵はマップ内に設置されているクリスタルの場所に向かっていき、クリスタルに接すると破壊を始めます。
クリスタルが壊れたら敗北しゲームオーバー。
その前に全ての敵を倒せれば Wave クリアとなって、タワーの設置シーンに戻ります。 規定の Wave が終わるとステージクリアです。
なお、主人公自身も敵の攻撃でダメージを受けます。 やられればもちろん敗北です。
以下は Youtube で公開されているこのゲームの公式トレーラーです。
ここまで聞いた限りでは、なかなか面白そうに思えると思います。
しかし実際にやってみると・・・ 色々と問題が山積です。
まず、最初に目に付くのは「カメラワークが悪い」。
iPhone / iPod touch だとそれでなくても画面が狭いのに、カメラが進行方向にうまく向いてくれないため、非常に見辛いのです。
マップを表示するボタンの周囲をスライドする事で任意にカメラを動かす事も出来るのですが、これを多用して自分でカメラの向きを調整しないと見たい視点になりません。
さらに、マップもすごく見辛い。
マップを表示すると画面がほぼ覆い尽くされるのですが、マップ表示中でもゲームは止まりませんから、表示してると戦えない。
しかし立体的な 3D マップと遠くにいる敵にも配慮しないといけないゲーム性、さらにカメラワークの悪さも相まって、頻繁にマップを確認しないといけません。
マップ表示中でも戦えるようになっていれば良かったのですが、そんな感じのマップになっていません。
さらに「タワーディフェンス」というのは、設置したタワーでいかに敵を倒していけるかを見るのが面白いゲーム。
しかしこのゲームはそんなところを眺めているヒマはないし、眺められるほど表示範囲が広くない。
タワーディフェンスとしての面白さは正直、ほとんどありません。
タワーディフェンスの醍醐味である戦略性も、アクションで敵を倒す方がメインだから薄い。
しかしタワーの設置や修理などは行わないといけないので、これがアクションゲームとしての楽しさを阻害しています。
戦闘型のアクションゲームは敵がどんどん出てきて、それと次々戦うのが面白さだと思いますが、合間合間にタワーの設置や修理が必要なため、「バリバリ戦う」という感じにならず、テンポが悪いのです。
それに敵が「クリスタルに向かっていく」ため、こちらに攻撃してくる事が少なく、特に魔術師だと敵の後ろからショットを撃ち続けるだけという展開になってしまいがちですね。
また、一通りの敵を倒すとタワーの設置シーンになるのですが、マップを回って宝箱を開けながら、タワーを設置する場所まで歩いていき、1つ1つタワーを置いていかなければなりません。
一般的なタワーディフェンスだとボタン1つで済むことに、いちいち時間がかかります。
さらに装備やステータスのインターフェイスの向きがおかしい。
ゲームは横画面なのに、レベルアップしてステータス画面になると縦画面になるのです。
また、大きな箱を調べるとアイテムの装備と出し入れが出来るのですが、ゲームが横画面なのに、箱を調べると縦画面のメニューになって、メニューからアイテムを選択するとまた横画面になるのです。
こんなインターフェイスあります? もうワケ解らない設計です。
では、なぜこんなにカメラワークやインターフェイスがダメなのでしょうか?
実はこのアプリ、iPhone / iPod touch と iPad の両方に対応していて、iPad だとインターフェイスはまともなのです。
画面が広いから、向きが変わると言う事はありません。
表示範囲が広いおかげで、iPad だとカメラワークもそんなに悪いとは思いません。
つまりこのゲームは、本来 iPad を基準に開発されている訳です。
とは言え iPad でもマップを表示すると画面が見えなくなる点は同様ですけどね。
要するに、アクションゲームとしてもタワーディフェンスとしても中途半端で、インターフェイスも iPhone / iPod touch に最適化されていない。
そんなアプリと言えます・・・
コンセプトは悪くないと思うんですけどね・・・
さらに日本人には厳しい点が、ゲーム開始直後に非常に長文の英語の説明文+朗読を聞かされること。(たぶんキャンセル不可能)
この時点で多くの日本人は挫折しそう。
英語圏以外のことは考慮に入ってなさそうです。
ある程度ゲームが進んでキャラクターも成長し、先のステージに進めば、敵も増えて設置できるタワーも多くなり徐々に楽しめるようになってくるのですが、そこまでの敷居が高すぎる印象ですね。
と言う訳で「Dungeon Defenders: First Wave」、iTunes のレビューでは意外に肯定的な意見も見られるのですが、私はあまり評価していません。
私的にはタワーディフェンスが好きなので、その点の面白さを期待したのですが、このゲームのタワーは補助的なものです。
基本的には「マルチプレイ」がメインだと思うのですが、オンラインプレイをしようにもコネロス(コネクトロスト、接続切断)連発で、1度もプレイ出来ませんでした。
いずれにせよ1人でも相応に楽しめるゲームでなければ厳しいと思います。
一応オンラインプレイは、自動マッチングと Game Center のフレンドを誘ってプレイするものの2通りに対応しています。
価格は 350 円で、技術的なものやボリュームを考えると安めの価格に設定されていると思うのですが、私的にはあまりオススメしません。
欧米の iTunes でも、前人気が高かった割にはあっという間にランキングの圏外に出てしまったようで・・・
それは大作ラッシュの影響だけではないように思います。
iPad を持っている人で、この手のアクション RPG がやってみたいなら、グラフィックが良くて価格も高すぎず、長く楽しめるシステムにはなっているので、そこそこ勧められます。
「前評判ほどのゲームではない」という感想ですが、アップデート次第では化けるかも・・・?
・Dungeon Defenders: Second Wave (iTunes が起動します)
PCでもUIは微妙だけど