先日に引き続き、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を扱った、硬派な戦術シミュレーションゲームを取り上げたいと思います。
World in War」です。

このゲームはマップ画面や戦闘シーンなどが「Hearts of Iron」(ハーツ オブ アイアン)というゲームに似た感じになっています。
ハーツ オブ アイアン(以下 HoI)は第二次世界大戦を扱った戦略級シミュレーションゲームで、リアルタイムで進行し、膨大なデータ量を誇るパソコンのゲームです。
(ちなみに「ハーツオブアイアン2」の攻略サイトを、私も以前作った事があります。 興味のある方は こちら を・・・)

World in War はターン制のゲームですし、内容はシンプルで、HoI と比べられるほど本格的なゲームではないのですが、画面のレイアウトやグラフィックなどは HoI を意識したと思われる部分が見られますね。

World in War

マップ上のユニットのアイコンを移動させ、そこに敵兵がいたら戦闘になり、勝てばその土地を占領出来るという戦術 SLG です。
基本的にはターン制ですが、双方がコマンドを入力し終えた後に、同時に動き始めるというシステムになっています。
(同時プロット制と言われるタイプです)

双方がコマンドを入力し終えるとマップ上には互いのユニットの移動先が一斉に矢印で表示され、それがぶつかっているか、一方が相手のいる土地に踏み込んでいると戦闘が開始されます。

戦闘は自動で処理され、やられたユニットが順番に消えていくというシンプルなものです。
ユニットは3種類で、弱いけど安い歩兵、強いけど高い戦車、高めだけど戦車に強い対戦車砲の3つです。
防御側には地形効果も付加されます。

World in War

ターン毎に領土からは収入が得られ、それを使って工場のある領土で部隊の生産が行えます。
生産は戦闘開始前にすぐ完了するので、工場が前線にあれば作ってすぐ即戦力に出来ます。

また、資金を使って「カード」を引く事もできます
カードには敵ユニットを減らす「爆撃」、地形効果を上げる「トーチカ」、その領地の地形効果と収入を減らす「戦略爆撃」などがあり、戦略的な要素はこのカードを使って行う形になっています。

World in War

ただし、このゲームには致命的と言える欠点があります。
それは・・・ 「第二次世界大戦の基礎知識がないとまるでクリア出来ない」ということ。

例えばドイツシナリオのステージ2。
敵には「デンマーク」「ノルウェー」「スウェーデン」の3つがあるのですが、スウェーデンは中立国で、手を出さない限り攻撃してきません。
史実のドイツ軍はデンマークを占領後、ノルウェーの首都・オスロを攻撃し、ノルウェー北部の重要な港「不凍港ナルヴィク」に向かっていったのですが、この辺りの史実を知っていないとまるでクリア出来ません
ノルウェーとスウェーデンの双方を相手にして勝てるような戦力はないからです。
しかし目の前に2つの国が並んでて、一方は敵国で一方は中立とか、そんなの史実を知っていないと解る訳がない。

さらにステージ3はフランスが非常に地形効果の高い土地を盾にして守りを固めていますが、こちらから手を出さない限り反撃は受けません。
よって十分に戦力を蓄えて、地形効果の高い場所、俗に「マジノ線」と呼ばれる場所を迂回して攻めるのが攻略のポイントとなるのですが・・・
これだって「マジノ線」のことを事前に知ってないと解らないし、そもそも敵が目の前に並んでて「手を出すまで攻めてこない」なんて普通思わない。

ステージ開始前に将兵の会話が表示され、そこで概要は説明されるのですが、全文英語なので日本人だと理解出来ないでしょう。
それに英語が読めても、史実の知識がないと攻略は困難だと思われるようなステージ構成です。

つまり、先日ご紹介した「欧陸戦争2」は「第二次世界大戦の知識があった方が楽しめるゲーム」ですが、こちらは「第二次世界大戦の知識(それも相応に深い知識)がないとまるで進めないゲーム」となっています。

加えて難易度もかなり高く、戦力が十分でないと進軍が難しいのに戦力を蓄えてたら爆撃でごっそりやられるし、じっくり攻めてたら戦略爆撃で収入を落とされまくってジリ貧だしで、かなりシビアなバランスです。
カードを使った戦略コマンドも、価格が高めなのにどのカードを引くかが「運」なので、この手のゲームにマッチしているとは思えません。

操作性にも問題があり、スクロールさせる時に画面をドラッグするのに、ユニットの移動もドラッグだから、画面を動かそうとして兵士が動いてしまうミスが多発します。
移動先を示す矢印をタップすれば移動はキャンセル出来るのですが、何度も起こるので煩わしくなってきます。

また、これはゲームシステムの違いなので難点という訳ではないのですが、HoI(ハーツオブアイアン)に似た雰囲気なのに、HoI の基本戦略だった「多方向からの攻撃」で有利になるという事がないようで、移動せずに多方向攻撃に参加出来る「支援攻撃」などもないので、HoI を知っているとその辺りの「戦略面の浅さ」も気になりますね。


と言う訳で「World in War」、一般の人には全くオススメ出来ません
第二次世界大戦のヨーロッパ戦線の史実に詳しく、戦術シミュレーションゲームも得意という、ごく一部のマニアにのみそこそこ勧められると言った感じのゲームです。
まあベースにしたと思われる HoI からして、マニアックなゲームでしたけどね。
でもこのゲームはシンプルなのに、妙にやり辛さを感じた印象です。

「俺はマニアだ。 史実を反映した手強い SLG がやりたいんだ」という方には良いかもしれませんが、それ以外の人は手を出さない方が無難でしょう。

・World in War(公開終了)