西欧ファンタジー世界の地方領主となって、王に請願して援助を送って貰い、施設を建築して勝利を目指すという 2007 年に公開されたイタリア発のドイツゲーム(ボードゲーム)
それが「Kingsburg(キングスブルグ)」です。

メジャーなゲーム賞での受賞暦はありませんが、ドイツゲームとしては相応に有名な作品で、iPhone / iPod touch 版のアプリはグラフィックや演出、サウンドなども非常に優れています。

ただ、先に言ってしまいますと・・・ 「Kingsburg(キングスブルグ)」というボードゲーム自体に、色々と問題もある印象です・・・

kingsburg

1年が春夏秋冬の4つの「フェイズ」に分かれています。
プレイヤーは各フェイズの最初にサイコロを3つ振り、その目に応じた「助言者(アドバイザー)」に請願をして、資源を入手します

例えば、サイコロの目が「2・3・4」だった場合、2の地主(金+1)、3の建築家(木材+1)、4の商人(金か木材+1)に請願をして対応した資源を入手する事が出来ます。
また、2と3のサイコロを組み合わせて5の軍人(兵士+1)に請願をする事も出来ます。

ただし、請願はサイコロの目の合計が低い人から順番に行われ、先に別の人が請願した助言者には、他の人は請願する事が出来ません。
例えば、最初の人が2の地主、次の人が3の建築家を先に取った場合、次の人はサイコロに2と3があっても2の地主や3の建築家は取れない訳です。
ですから他の人のサイコロの目を見ながら、どの助言者を取っていくかがゲームのポイントとなります。

全員が助言者への請願を終えたら、建物の「建築」に移ります。
建物は必要な資源を消費して建てる事ができ、「サイコロの目が低い時に振り直せる」「サイコロに2の目を足せるカードを夏ごとに取得」などの様々な効果があります。
また、建物の多くに「勝利点」があり、この勝利点を増やす事がゲームの最終目標となります。

春・夏・秋は普通の生産ターンですが、冬のフェイズだけは異なります。
冬にはモンスターが攻めてきて、プレイヤーは建物から得られる軍事力、春から秋に請願で得られた兵士、資源を消費して雇用した兵士などを使ってモンスターに対抗します。
これに王様からの援軍のサイコロの目を足し、モンスターの戦闘力より高ければ勝利。
負けると資源を奪われたり建物を破壊されたりします。

ゲームは5年行われ、最終的に「勝利点」が一番高かった人が勝利となります。

Kingsburg Serving the Crown

ただ、冒頭で述べたように、このゲームには色々と気になる点もあります。

まず、他プレイヤーとの関わりが少なすぎる
「助言者の取り合い」という要素はありますが、他の人を邪魔したり、他プレイヤーと交渉したりと言った要素は、一切ありません。
ボードゲームであるにも関わらず、他者との関係が希薄なのです。
言わば「対抗戦」ではなく、「徒競走」と言った感じで、単なる勝利点の高め合いですね。

他プレイヤーとの駆け引きに乏しい影響で、展開にも起伏がありません
冬にモンスターが攻めてくると言う要素はありますが、これだってサイコロの目と兵士数で勝てるかどうかが決まるだけだし、王様の援軍はそれぞれのプレイヤーに平等に与えられるので、勝てる時はたいていみんな勝ちます。
iTunes のレビューに「ダラダラした展開」と書かれていますが、その通りだと思います。
ファミリーゲーム向けに、「他人を邪魔する要素」や「不公平性」などを廃しているのでしょうか・・・?

さらに「有利な戦法」が決まりきっている
建物は「教会系」「町施設系」「軍事系」などに分かれていて、それらの系統の低いものから順に建てていく必要がありますが、サイコロの目に修正を加えられる町施設から建てていった方が明らかに有利なのです。
施設の効果のバランスが取れていない印象で、コンピューターはその辺を気にせず建てていくためか、建築順のコツさえ解ってしまえば、もう一方的に勝ててしまいます。
5人(プレイヤーと AI 4人)でやっても、システムが解ってしまうと毎回独走状態です。

オリジナル(ボードゲーム)のキングスブルグも、参加者がみんな「町の施設」から建てていくうえに、他プレイヤーとの干渉が少ないため、毎回同じような展開になってマンネリ化してしまうそうです。

要するに、元々の「Kingsburg」というゲーム自体に、色々と問題があると言わざるを得ません。
これではメジャーなドイツゲームの表彰にノミネートされなかったのも頷けますね・・・

ただ、アプリ自体は非常に素晴らしい出来栄えです。
綺麗なグラフィック、ボーカル付きの BGM も含むクオリティーの高いサウンドは素晴らしく、やっていて楽しめる演出になっています。
所持資材や建築に必要な資材を確認するのにいちいち画面を切り替えないといけないのが面倒ですが、インターフェイスもそれほど悪い訳ではありません。

つまり、「元のゲームは面白いけどアプリがイマイチ」というものは良くありますが、このゲームは全く逆で、「アプリは良いけどゲーム側がイマイチ」という珍しいパターンだと言えますね。

Kingsburg Serving the Crown


と言う訳で iPhone / iPod touch 版の「Kingsburg Serving the Crown」、評価は難しいところです
アプリ自体は良く出来てるし、ゲームも最初は楽しめるので、決して悪い訳ではないのですが、ちょこっと慣れたらもう物足りなくなります。

そして価格が 600 円。 ドイツゲームのアプリとしては、まあ一般的な価格ではあるのですが、「う~ん」と唸ってしまう値段です。

一応、今後のアップデート予定には「エキスパンション(拡張パック)の導入」という項目があるので、それに期待したいところです。
現時点では(他の秀作ドイツゲームと比べると)ゲーム性が薄いと言わざるを得ませんね。
ただ、一蹴するほど悪い作品ではないのが、微妙なところです・・・

Kingsburg Serving the Crown(iTunes が起動します)


【 ちょこっと攻略 】

英語のゲームなのでイベントや建物の効果が解り辛いと思います。
ここで一通り解説しておこうと思うので、試してみたい方は参考にして下さい。

=イベント=
:建物が一番少ない人にボーナスのサイコロが与えられる。 建物の数が同じ場合はそれぞれに資源が与えられる。
:建物が一番多い人に勝利点1のボーナス。
:建物が一番少ない人に王様からの特使が与えられる。 他の人が先に取った助言者を取れたり、建物を2つ建てられたりする。
:モンスターの襲来。 モンスターの強さは年度最初に表示される 2-4 などの表記の範囲となる。

=建物=
● 教会系
Statue(彫像):サイコロが全て同じ場合、1個振り直し可能
Chapel(礼拝堂):サイコロの合計が7以下なら全部振り直し可能
Church(聖堂):モンスターがデーモンなら軍事力+1
Cathedral(カテドラル):ゲーム終了時、残り資源2につき勝利点+1
● 町施設系
inn(宿屋):夏にサイコロの目+2のカードを貰える
Market(市場):サイコロの目を+1か-1に出来る
Farms(農場):サイコロが1つ増えるが軍事力-1
Merchants' Guild(商人ギルド):毎季節ゴールド+1
● 軍事系
Guard Tower(防御塔):軍事力+1
Blacksmith(鍛冶屋):軍事力+1
Barracks(兵舎):戦闘前の兵士の雇用コストが資源2から資源1に
Wizards' Guild(魔術師ギルド):軍事力+2
● 防壁系
Palisade(柵):軍事力+1、モンスターがゾンビなら+2
Stables(厩舎):助言者から得られる軍事力が+1
Stone Wall(石壁):軍事力+1、引き分けは勝ちになる
Fortress(要塞):軍事力+1、勝利時の勝利点が+1
● その他系
Barricade(バリケード):モンスターがゴブリンなら軍事力+1
Crane(クレーン):町施設の3と4(農場と商人ギルド)の建築に必要なゴールドが-1
Town Hall(タウンホール):毎季節、資源1かサイコロ+2カード1つを勝利点1に変換できる
Embassy(大使館):毎季節ごとに勝利点+1