ドイツのボードゲームデザイナー「ライナー・クニツィア(Reiner Knizia)」氏が 2000 年に公開した、2人対戦の戦術カードゲーム。
それが「Reiner Knizia's Battleline」(バトルライン)です。

ボードゲームではなくカードゲームである事もあり、ドイツゲーム賞などの有名な賞の受賞歴はありませんが、2人対戦のカードゲームとしては世界的に評価の高いゲームです。

iPhone 版は Retina ディスプレイに対応したグラフィックがとても良い雰囲気で、カードも石のパネルのようになっており、オリジナル版とは一風変わった外観です。
見た目がイマイチなオリジナル版よりも、よっぽど見栄えがするゲームになっていますね。

Reiner Knizia's Battleline (バトルライン)

場には9つの「旗」があります。
2人のプレイヤーが交互に、旗の手前に手札のカードを1枚ずつ置いていき、いわゆる「ポーカーの役」を作ります。

役は5枚ではなく3枚で作成され、ストレート < フラッシュ < スリーカード < ストレートフラッシュ の順で強くなります。
双方が「旗」の前に3枚のカードを置くか、一方の役が不成立になった時点で判定が行われ、役の強い方がその場所の旗を取得します。
旗が取得された列にはもうカードは置けません。

双方がおなじ役だった場合は数字が高い方が旗を取ります。
双方が役なし(ブタ)だった時も、数字の合計で判定が行われます。

Reiner Knizia's Battleline (バトルライン)

カードを置いたら山札から1枚補充して、相手の番になります。
勝敗は、一方が旗を5つ(つまり過半数)取得するか、並んだ3つの旗を取得する事で勝利となります。

基本のルールは以上で、そんなに複雑なゲームではありません。
解りやすくシンプルにまとめられていて、それでいてどの旗を取っていくか、相手のカードに対しどのカードを置いていくかが重要な、なかなか思考性の高いゲームに仕上がっています。

複雑な得点計算がいらず、そんなに長い時間かからない遊びやすいゲームであるため、カードゲームとしての評価が高いのも頷けますね。


また、バトルラインにはこの基本ルール(初心者用ルール)の他に「アドバンスルール」があり、こちらでは「戦術カード」を使う事ができます。

戦術カードは山札からカードを補充する時に、代わりに画面左にある「巻物」をタップすることで入手出来ます。
取った戦術カードは任意に出すことが出来ますが、出せる枚数は「相手が使った戦術カードの枚数+1枚まで」という決まりがあります。

例えば、相手が戦術カードを使っていない時、こちらは戦術カードを1枚使えますが、その後は相手が使うまでこちらは使用出来なくなります。
相手が先に1枚使った時は、こちらは2枚続けて使用可能ですね。

戦術カードには以下の種類があります。

FOG(霧):旗に使用する。その列は隊列(役)無関係で、数字の合計のみで勝敗が決まる。
MUD(泥土):旗に使用する。その列は4枚のカードで勝敗を判定する。
HERO(英雄)・CHAMPION(闘士):オールマイティーカード。
COMPANION(友軍):8のカードとなる。色は自由。
SHIELDS(盾戦士):1か2か3のカードとなる。色は自由。
REDEPLOY(移転):設置済みの自分のカードを1枚移動させられる。
TRAITOR(裏切り):相手の設置済みカードを1枚、自分の側に移動させる事が出来る。
DESERTER(脱走兵):相手の設置済みカードを1枚、破棄させる。
SCOUT(偵察):カードを山札から3枚引き、その中からいらないものを2枚戻す。(戻したカードは次と、次の次に引くカードとなる)

これらの戦術カードにより、ゲームはやや複雑化しますが、より戦略性の高いものになります
例えば、一見あきらめたように見せかけた列を戦術カードを使って急にそろえる、と言った事も可能になる訳ですね。
もっとも、このゲームの AI にそうしたフェイントがどこまで意味があるのかは解りませんが。

Reiner Knizia's Battleline (バトルライン)

しかし現時点(2011/1)の iPhone 版の「Reiner Knizia's Battleline」には、致命的な欠点があります。
それは・・・ コンピューターが弱すぎる

そもそも難易度が「WEEK(弱い)」と「STRONG(強い)」の2種類しかなく、弱い相手は本当に弱い。
で、STRONG の方も少しゲームに慣れると、カード運がよほど悪くない限り負けなくなります。

そして短時間で終わるゲームで負けない状態が続くと・・・ ハッキリ言って飽きてしまいます。
1対1のゲームですから誰かが運良く独走するとかの不確定要素も発生しにくい訳で、こういうゲームは「勝ったり負けたり」ぐらいが一番面白いですから、いつも勝てる状況だとやる気が無くなりますね。
継続的に遊べる「キャンペーンモード」や「やり込み要素」がある訳でもありません。

これでもアップデートで強くなったらしいのですが、「じゃあ最初はどんだけ弱かったんだよ」と思ってしまいます。


と言う訳で、オススメかどうかは難しいところです。
Retina にも対応しているグラフィックは綺麗で、サウンドや雰囲気も良いです。
ただ、ゲームモードが少なすぎる印象です。
シンプルな形にまとめるつもりなら、相手がもっと強いか、種類が多くなければ物足りないと思います。
せめて戦績ぐらいは記録して欲しいですね。

記録やキャンペーンに挑戦出来るモードがあったり、オンライン対戦などが可能なら、大化けすると思うのですが・・・
現時点では2人対戦は可能ですが、本体を交互に渡してのプレイしか出来ません。

※現在はオンライン対戦可能もなっています。 

価格は 350 円で、ドイツゲームとしては安めですが、内容を考えると「そんなもんかな」というぐらいですね。
ドイツゲームやカードゲームのファンなら買って損するようなアプリではないと思います。
今後のアップデートに期待したいところですね。

Reiner Knizia's Battleline(iTunes が起動します)