1954 年にフランスで考案されたという、自動車レースをテーマにした古典的カードゲーム。
それが「Mille Bornes」です。 読みは「ミール・ボーンズ」のようです。
その公認のアプリが iPhone / iPod touch 及び iPad に登場しました。

アプリ名は「1000 Bornes®」で、「Mille」ではなく「1000」になっています。
また商標登録を表す「®」が最後に付いています。
開発はフランスのメーカーのようで、デフォルトの言語がフランス語になっていますが、これはオプション設定で英語に変更可能です。

専用のカードを使って遊ぶ、俗に言う「アナログ・ボードゲーム」の1つですね。

1000bornes

内容は「カードを使ってコマを進めるスゴロクゲーム」です。
開始時に各プレイヤーにカードが数枚ずつ配られ、順番が来たプレイヤーは山札からカードを1枚引いて手札に加えます。
そして手札から1枚を出し、それが「50」のカードならコマを 50 マイル分進め、「100」のカードなら 100 マイル分進めます。
出せるカードがない場合や、カードを出したくない場合でも、必ず1枚は捨てなければなりません。
(捨てる場合は画面右下にカードをドラッグします)
最終的に 1000 マイル地点に最初に到着した人が勝利ですが、ゴールにはピッタリ止まらなければなりません。

そしてこのゲームには、他プレイヤーに使用できる様々な「お邪魔カード」があります。
赤信号カードガス欠カードパンクカード事故カード速度制限カードがあり、これらを使われると速度制限は 50 以下のカードしか出せなくなり、他のカードは全てコマを動かせなくなります。

しかしそれぞれの状態に対処できるカードが用意されていて、赤信号は青信号カード、ガス欠は燃料タンク車カード、パンクはタイヤカード、事故は修理カード、速度制限は解除標識カードでそれぞれ解消できます。
また特定のトラブルを防止できるカードもあり、これを装備しておくと対応したお邪魔カードを使用されなくなります。


ゲームはハッキリ言って、足の引っ張り合いです。
まともに走れる時間の方が短く、パンクカードを使われてタイヤカードを持っていない場合、タイヤカードが出るまで延々と山札からカードを引いては捨てるだけになります。
タイヤカードが出て復活しても、直後に別のお邪魔カードを使われてまた動けなくなる事も起こるため、全員がその状態を繰り返して止まったままになり、運良くカードを引けた人だけが進む、というような展開になりがちです。

ゲーム開始直後は全員が「赤信号」の状態で、青信号カードを出すまでスタートできないのですが、酷い時には「最初から最後まで青信号が出なくて、何も出来ずに終わった」と言う事が普通に起こり得るゲームです。
さらに「スタンダード(Standard)ゲーム」だとトラブルをカードで解消しても、青信号が出るまで動けないので、ますます動ける時間が限られていて、ひたすら山札からカードを引くだけの運試しが続きます。
戦略性も何もあったものじゃありません

で、さすがにこれじゃあ酷すぎるからか「エクスプレス(Express)」という追加ルールが用意されていて、このルールでは山札からカードを引く際に、代わりに捨て札の一番上のカードを取得することが出来ます
さらにトラブルから復帰した際に、すぐ次のターンから動く事が可能です。

しかしそれでも「運次第」の状態は否めず、しかも前に進めやすくなっている分、運良く必要なカードが出た人だけが独走しまくって、トラブルから復帰するカードを引けない人はスタート付近から動けないままゲーム終了、なんてことがますます起こりやすくなっています。
スタンダードルールよりはマシですが、相変わらず「必要なカードを出した人勝ち」「トラブル防止カードを引いた人勝ち」な内容ですね。

専用のカードを使うゲームであるにも関わらず、そこいらのトランプのゲームよりもよっぽど戦略性に乏しい内容で、この手のカードゲームでこんなに「単なる運試し」なゲームは初めて見ました。
これなら大富豪やページワン、7並べなどの方が遥かにマシです。

この際、ハッキリ言ってしまいます。
このゲームは「アナログボードゲーム」の中でも、最大級の「クソゲー」です。

ただ、アプリ自体は実は良く出来ています
ポップなデザインとノリの良い BGM はとても雰囲気が良く、演出やサウンド、動きなども悪くありません。
しかしアプリの出来がどんなに良くても、元のゲームが「激しくクソゲー」ではお話になりません。

1000bornes
※事故カードを使われて動けない状態。
修理カードが出るまでひたすらカードを引くか、他人に妨害カードを使うしか出来ない。
このまま何も出来ずに終わるなんて事もザラ。
他の人もパンクやガス欠で止まっていて同じ状況。

ここまでボロクソに言うと、「でもこのゲームは 50 年以上も前から親しまれてきたゲームだろう? そこまで悪いならそんなに長く遊ばれてないんじゃないのか?」と考える人もいると思います。

だからこのゲームは、トランプの「ババ抜き」みたいなものなのだと思います
「ババ抜き」には戦略性なんてありません。 相手との読み合いはありますが、基本的には「運まかせ」です。
でも、そんなゲームでもみんなでカードを持って、ワイワイ言いながら遊んだら楽しいのです。

この Mille Bornes もそんなカードゲームなのだと思います。
人にトラブルカードを使って「えぇー!」と言われたり、山札から「でろ~!」と言いながらカードを引いたりして、ワイワイ遊ぶのが楽しいゲームなのでしょう。

ババ抜きをコンピューターを相手に1人でやって楽しいでしょうか?
Mille Bornes もコンピューターを相手に1人で遊んでも、楽しいゲームではないのだと思います

そもそもこのゲームは「古典的なカードゲーム」です。
だから近年の様々なルールの「ドイツゲーム」「アナログゲーム」と比較するべきではないのかもしれません。
まあモノポリーとかは、古典的ゲームでも面白い訳だけど。


と言う訳で「1000 Bornes」、全くもってオススメしません
有名なカードゲームで画面や演出も悪くないため、テーブルゲームが好きな人だと手を出しそうになりますが、ゲーム性や戦略性は一切期待しないで下さい
数人で遊べる環境の人なら別ですが、1人でやって楽しいタイプのゲームではありません。

一応価格を言うと 350 円です。 iPad にも対応のユニバーサルアプリです。
800 円の HD 版もありますが、通常版でも iPad に対応しているため、必要性が疑問です。
いずれにせよオススメはしません。

コンピューターゲームにしてはいけなかったカードゲーム」という気がしますね。

・1000 Bornes® (公開終了)