コンピューターゲームの RPG や 3D グラフィックダンジョンの元祖と言われる、世界中でもっとも偉大にして有名なゲームの1つ「Wizardry」(ウィザードリィ)。
その Wizardry のリメイク作品が iPhone / iPod touch に登場しています。
Wizardry 囚われし魂の迷宮」 です。

このゲームは 2009 年末に PS3 (プレステ3)で発売されたネット配信用のゲームで、開発したのは日本の「アクワイア」というメーカーです。
ここは「天誅」や「侍道」、「勇者のくせになまいきだ」などの非常に特徴的なゲームを作っているメーカーです。

Wizardry (ウィザードリィ)のオリジナルは Sir-tech というメーカーが作っていたのですが、続編の展開に失敗して業績が悪化し倒産。 ハッキリ言って、2作目以降の本家のウィザードリィは微妙なものばかりでした。
しかもウィザードリィの大きすぎるネームバリューが災いし、その後に「版権争い」が発生して、どこがどんな風にゲームの版権を持っているのかよく解らない状態になっています。

結果、Wizardry というブランドは地に落ちてしまった訳ですが、この「Wizardry 囚われし魂の迷宮」はそんなウィザードリィを復権させようという計画「ウィザードリィ ルネッサンス」の1作目にあたります。
しかしウィザードリィの人物名・都市名・魔法名・武器名などはゴチャゴチャになった版権の問題で使えず、ウィザードリィらしさが十分に出ていない、評価の難しい作品となっています。

wizardry

ゲームはまず「キャラクターメイキング」から始まります。
主人公となるキャラクターを選択するとボーナスポイントが与えられ、それを各ステータスに振り分けて職業や名前などを設定します。

ウィザードリィと言えばこの「キャラクターメイキング」が大きなポイントで、ボーナスポイントは普通 5~10 ポイントなのですが、たまに 15~20、さらにそれ以上のポイントが出る事があり、高いポイントが出るまでキャラメインキングを延々とやり直すのがゲームの名物でもありました。

この点は「囚われし魂の迷宮」でも引き継がれていますが、有料課金でボーナスポイントを +10 出来る「成長の実」というものを使う事も出来ます。
いずれにせよ、ボーナスポイントは 15 以上でキャラを作りたいですね。
職業には戦士なら「STR(力)が 12 以上」、僧侶なら「PIE(信仰心)が 12 以上」など、選択するための条件があります。

主人公となるキャラを作った後は、町の「ギルド」で他のキャラクターも作成します。
最初から用意されているキャラクターもいて、これを仲間にして冒険に出ることも可能です。

パーティーは6人で構成されていますが、左側の3人は「前衛」、右側の3人は「後衛」となります。
後衛のキャラクターは敵の直接攻撃を受けにくいのですが、こちらも遠距離武器か魔法でなければ攻撃が出来ません。
また、宝箱を開けるために「盗賊」も必要になるため、パーティーは戦士型2~3人、魔術師1~2人、僧侶か司祭1人~2人、盗賊1人というのが一般的です。

Wizardry 囚われし魂の迷宮
※各職業に必要なポイントは、戦士は STR 12、魔術師は INT 12、僧侶は PIE 12 で善か悪、盗賊は AGI 10 と LUC 12 で中立か悪。
上位職は司祭が INT と PIE が 13 で善か悪、忍者は全部 15 で悪のみ。
侍は STR 15、INT 11、PIE 10、VIT 14、AGI 10、LUC 9 で善か中立。
君主は STR 15、INT 12、PIE 12、VIT 15、AGI 14、LUC 15 で善のみ。
悪と善は(ダンジョン内での合流を除き)一緒にパーティーを組むことはできない。 また上位職はレベルアップが遅め。
今回は序盤から未鑑定のアイテムが多く出てくるので、最初から鑑定が行える司祭が必須と言える。
転職はステータスの条件が満たされれば後からギルドで行えるが、各職業に転職できるアイテムもゲーム後半に出現する。
あと VIT は HP の伸びに関係するので、どの職業でも多めに振っておくこと!

ダンジョンは「試練の迷宮」と「シーインの迷宮」の2つが用意されていて、「試練の迷宮」は初代ウィザードリィの雰囲気があるマップ構成になっており、最初に行くべきダンジョンです。
しかしここはストーリーには直接関係ない、単なる修行場であり、メインストーリーが展開されるのは「シーインの迷宮」の方です。
シーインの迷宮は少し敵が強いので、レベル3~4ぐらいになってから行くのが無難でしょう。

ダンジョンは非常に暗く、すごく見にくく、2歩先さえ見渡せません
しかしアイテムの「魔力の松明」を使うか、僧侶の魔法「Torch Light」を使うことで明るくする事ができ、数歩先まで見渡せるようになります。
また、ダンジョン内はオートマッピングで、移動した場所は自動的に地図に書き込まれるのですが、「地図」のアイテムを持っていないとマップを確認できません
最初の地図は道具屋で売っているので、これを忘れずに買って行かないと迷子になること必至です。

加えてレベル1のうちはキャラクターがかなり弱く、数が多めの敵に会うといきなり苦戦するはずです。
まあ高めのボーナスポイントで前衛を作っておけばそんなに苦戦しないかもしれませんが、魔術師も僧侶も最初は魔法を1回か2回しか使えないので、ちょっと魔法を使ったらもう役立たずになります。
よってレベルが上がるまでは入口付近で戦い、小まめに町に戻って回復する必要があります。

つまりこのゲームは何も知らずにプレイすると、「前がよく見えない暗いダンジョンで、マップも目印もなくすぐ迷子になり、魔術師も僧侶もすぐに MP が切れて、何も解らないまま全員がのたれ死ぬ」ゲームなのです。
こう言うと多くの人は「なんだよそのクソゲー!」と思うでしょう。
でも実は、Wizardry というゲームはそういうゲームなのです

もともと Wizardry はダンジョン内でいかに生き抜くかのサイバイバルゲームでもありました。
最近の RPG のような親切設計にはなっていません。 むしろ当時の目線で見ても不親切設計でした。
その状況をプレイヤーの知識とプレイの最適化によって、いかに打破していくかという内容だったと言えます。
だからハッキリ言ってしまいたいと思います。 最近のゲームしか知らない人にとって、ウィザードリィはクソゲーです。

でも、ここをカットしてしまうとそれはもう「Wizardry」ではない訳で、ここがウィザードリィというゲームのリメイクの難しさと言えるかもしれません。

Wizardry 囚われし魂の迷宮
※ゲームが始まったらまず「道具屋」に行き、商品リストの下の方にある「試練の地図 - 上層」を買っておくこと!
地図があればダンジョン内で上に表示されている「試練の迷宮」と書かれている部分をタップすればマップが表示される。 マップはオートマッピング形式で、歩いたところが書き込まれていく。
最初は回復魔法などがアテにならないので、深入りする時は「傷薬」や「毒消し」などもあった方が無難。

Wizardry 囚われし魂の迷宮
※マップはこんな感じ。 ダークゾーンに入ると周囲が見えなくなり、松明や明るくする魔法の効果が切れるので最初は避けよう。
鉄柵はどこかにあるスイッチを押すことで開けられる。 鍵のかかった扉はシーフで開けよう。
1ヶ所、ボスがいるところがある。 すごく強いので戦うなら事前にセーブを!

あくまで本家のウィザードリィではなく「ウィザードリィのリメイク版」なので、魔法や武器は異なっており、戦闘時の画面効果などもハデになっています
炎の魔法を使えば画面が燃えますし、氷の魔法を使えば氷塊が飛んでいきます。

また「オート戦闘」のボタンもあって、これを押すと攻撃出来るキャラは攻撃、それ以外は防御になります。
戦闘中のメッセージは画面の押しっぱなしで「自動送り」にすることができ、戦闘は割とサクサクと進みますね。

PS3 版にはキャラクターの音声もあったようですが、これはなくなっています。
でもウィザードリィに声まであったらイメージが壊れるので、私的にはなくていいと思います。
(正直、顔グラフィックもイメージが固定されてしまうので無くて良かった気が。 付けるならもっと顔の種類を増やして欲しかった)


難点は、操作が煩雑だったり、タップの反応が悪い点でしょう。
戦う時は「戦う」のボタンを押し、ターゲットにする敵をタップします。
魔法を使う時には「呪文」のボタンをタップし、使う魔法のレベルをタップし、使う魔法をタップし、「呪文選択」のボタンをタップ、使うターゲットをタップします。
ハッキリ言って、戦う時は「戦う」を押さなくても敵をタップするだけで選択出来るようにして欲しいし、呪文の使用も「呪文選択ボタン」を押させる必要は無いだろうと思います。
「オート戦闘」があるからまだマシですが、もっとインターフェイスは最適化できる気がしますね。
(「最適化」という点で言うと、「地図を持ってないとオートマップが表示されない」と言うのもどうなのかと)

また、なぜかボタンの反応が鈍い場面があり、「道具の詳細」を表示した後に「戻る」を押してもなかなか反応しないなど、調整が不十分なところが見られます。

あと個人的に、「リセット」が効かないのもウィザードリィとしては残念に思えます。
戦闘中にキャラが死んでピンチになった時にアプリを落としても、キャラが死んだ状態での再開となります。
もちろんレベルアップ時に能力値の上昇が悪かったり下がったりしても、リセットは効きません。
(オリジナルは宿屋でレベルアップしましたが、このゲームはダンジョン内でも経験値が貯まり次第レベルアップします)
「セーブ」はどこでも可能で、そのデータからの再開も可能なのですが、これを利用する場合は毎回手動で小まめにセーブしておく必要があります


そして何より、仕方がないけど残念なのは・・・ 「ウィザードリィらしさがない」ことでしょうね。
魔法の名前が「Flame Arrow」とか「Sleep Field」とか、そんなのは Wiz ではありません。
やっぱりウィザードリィの炎の魔法は「マハリト」で、睡眠の魔法は「カティノ」で、転移の魔法は「マロール」でないとその雰囲気が出ません。
商店も「ボルタック商店」で、寺院は「カント寺院」であって欲しいのです。

施設名が単なる「道具屋」や「寺院」で、魔法が「フレイムフィールド」とかで、武器にも「カシナート」がないゲームは、やっぱり「ウィザードリィを参考にした別のゲーム」であって、ウィザードリィじゃないよな、ってのが本音です。
まあこの辺は版権の問題で仕方がないのだとは思いますが。

私的には、どうもこのゲームがターゲットにしている「プレイヤー層」が解りません。
従来のウィザードリィをそのまま移植しても、オリジナルを知らないプレイヤーには楽しめないゲームになることは確かですから、今風のゲームに調整することは解るのですが、中途半端にウィザードリィの解り辛さや難しさが残っていて、最近のゲームプレイヤーが楽しめるようなバランスになっているとは思えません。
結果的に、オリジナルを知らない人には「不親切すぎるゲーム」であり、オリジナルを期待している人には「全然違うゲーム」になっていて、ユーザーの支持が得られにくいアレンジになっている印象がありますね・・・

とは言え、諸処の問題で望む通りのゲームが作れない状況で、それでもがんばってウィザードリィっぽいゲームを作ろうとした、ある意味涙ぐましい努力は感じられるのですが。

Wizardry 囚われし魂の迷宮
※アイテムの多くは未鑑定状態で、司祭で鑑定しないと正体がわからないし売ることもできない。
鑑定に失敗すると「恐怖」に陥る場合があり、こうなるとしばらくうろつくか寺院で回復しないと再鑑定できない。
宿屋での HP 回復はお金を取られるのでダンジョン内で回復しておき、馬小屋にだけ泊まるのが基本。
この辺りの「めんどくささ」はウィザードリィらしいが、オリジナルを知らない人には単に面倒なだけかも・・・?


と言う訳で「Wizardry 囚われし魂の迷宮」、私的にはウィザードリィとは「別物」として考えるべきだと思います。
ただ、「ウィザードリィのシステムを元にした別の RPG」として評価すると、なかなか楽しめてボリュームも十分にある、iPhone / iPod touch アプリの中ではかなり上位の RPG なのではないかと思います。

アプリは無料で公開されていますが、無料では体験版の状態に過ぎず、地下1階しかプレイ出来ません。(レベルも5まで)
製品版にするには 1200 円という高額の課金が必要になりますが、私的には十分それだけの内容があるゲームだと思います

ただ、前述したようにこれを「面白い」と感じられるユーザー層が狭い印象ですね・・・
iTunes のレビューでもそれは見て取れ、評価も★5と★1が多いと言う真っ二つな状態です。
★2~4の割合も多めで、見事にバラけています。
これがそのまま、このゲームの一般的な評価の割合だと考えて良いように思います。

オススメかどうかは、「人による」としか言えません。
序盤を無料で体験できるので、実際にやってみて判断するしかないでしょうね。

Wizardry 囚われし魂の迷宮 (iTunes が起動します)