とても簡単でシンプルなシステムと、多くのプレイヤーとの相互作用があるソーシャル要素により、一般携帯電話(ガラケー)で大ヒットしたモバゲーの「怪盗ロワイヤル」。
この怪盗ロワイヤルの大ヒットにより、そのシステムを模倣した数多くのソーシャルゲームが開発されました。
もちろんそれはスマートフォンでも例外ではありません。

今回はその「怪盗ロワイヤル系」と言えるソーシャルゲームを取り上げたいと思います。
iPhone と Android の双方でヒットしている「カイブツクロニクル」と、
まだテスト段階にある新作「煙に巻いたらさようなら。」です。

どちらもアドウェイズ(ADWAYS)というメーカーが作ったアプリで、よく似たシステムや画面構成を持つので、2つ合わせてご紹介します。

まずは「カイブツクロニクル」から。

カイブツクロニクル

このゲームは「怪盗ロワイヤル」のシステムをほぼそのまま踏襲しているゲームと言えます。
ただ、そのバックストーリーはこの手のソーシャルゲームとは思えないほど重厚なものになっています

2012年、環境の変化による災害とそれにより引き起こされた核戦争により人類の大半は滅亡、わずかに生き残った人達はシェルターに逃げ込んだ。 それから数十年後、人類がいなくなった地上は異形の怪物が争う世界となり、地上に戻ろうとした人類はその怪物と衝突する事になる。 大破壊から 200 年後、地上に出ようとする人類と、人類に対抗するために連合した怪物達の間で総力戦が始まる

このバックストーリーのため、全体的に SF かつ終末的な世界観になっており、システムは怪盗ロワイヤルに似ているものの、その雰囲気は他のソーシャルゲームとは大きく異なっています。
「カイブツクロニクル」という名前からして子供向けのイメージがあったため、これはちょっと意外でした。

ゲーム内容は「クエスト」と「バトル」の2つが中心になっていて、クエストはボタンをポチポチ押していれば体力が減り達成度が増えていくという、怪盗ロワイヤル系おなじみの非常にシンプルなもの
ただこのゲームのクエストは、実行時に動物やモンスターなどに襲われて戦闘になる事があるのが特徴です。
戦闘はドラクエのようなターン制バトルで、自動で進行します
攻撃は事前に設定しておいた「スキル」によって行われ、クエストの戦闘で負けた場合は達成度が減少します。

バトル」は他プレイヤーに戦いをしかけるもので、「戦意」を消費して実行できます。
他プレイヤーとの戦いも前述した自動進行のターン制バトルで、勝利することで経験値と資金を得られますが、負けると資金を奪われます。
ただ勝って負けても「スキルポイント」を得られ、これを貯めることで新しいスキルを使用できるようになります。
資金はクエスト用アイテムや装備の購入、装備の強化などに使えます。

体力や戦意はしばらく時間が経たないと回復しませんが、課金アイテムによって回復させる事も可能です。
フリーミアム(本体無料+追加課金制のゲーム)ですから、この課金アイテムがメーカー側の収入源ですね。
サーガ」と呼ばれる複数のプレイヤーで協力して戦うバトルも用意されています。

カイブツクロニクル

このゲームはシステム自体は怪盗ロワイヤルと大差ない訳ですが、あまりシステムを大きく変えず、この系統のゲームの経験者が悩むことなく移行できる事が、ヒットに繋がったのではないかと思います。
特に Android はライトユーザーが多いので、このゲームがマッチした人も多そうですね。
スマフォ専用のソーシャルゲームとして先行していることもヒットの要因でしょう。 演出などはガラケーのブラウザゲームと大差ありませんが。

「怪盗ロワイヤル」にあった「お宝の争奪戦」は、一定時間ごとに収入が得られる「領地」を拡張するためのアイテムの争奪になっています。
ただ、拡張アイテムはある程度ゲームが進まなければ出て来ませんし、領地の拡張は月ごとにリセットされるため、永続的な効果やコレクションなどにはなりません。
「怪盗ロワイヤル」とは違いアイテムの争奪はゲームの中心でなくなっていますが、これは殺伐としたゲーム展開を避けようとしたためでしょうか?
しかしこれによりソーシャル要素が減っていることも確かで、私的には物足りなさもあります。


続いて、「煙に巻いたらさようなら。」について。

煙に巻いたらさようなら。

このゲームは怪盗ロワイヤル系ではありますが、システムはかなり変化しています
配下がいるところは「100万人の信長の野望」にも似ていますが、しかし「怪盗ロワイヤル」にも「100万人の信長の野望」にも似ているとは言えず、独自のソーシャルゲームのスタイルを築こうとしているのかもしれません

ただ、そのためかこのゲームはまだ iPhone 版しか存在せず、しかも有料課金が導入されていません
つまり現時点(2011/8)では「課金なしフリーミアム」という珍しい状態で、まだ「無料 β テスト」のようなものだと言えそうです。

プレイヤーは「忍の里」の当主で、自身で戦ったりはしません。
配下の忍者を雇って、その忍者にクエストなどを命じます
クエストは毎度おなじみの「ボタンをポチポチ押したら達成度が上がる」というシンプルなものですが、忍者が増えてきたらどのクエストをどの忍者で実行するか選択する必要があるので、若干のゲーム性はあります。
クエストを実行すると資金と経験値を得られる代わりに「村の行動力」と「忍者の体力」が減少し、どちらかが足りない場合はクエストを実行できません。

忍者は村の規模に応じて複数雇うことができ、一定時間ごとに候補者がリストアップされます。
なかなか優秀な忍者は現れませんが、将来性のある配下を探して育てる楽しみもありますね。
体力が余っている忍者を修行させる施設も存在し、行動力を使わずに忍者を育成する事ができます。

一方で、このゲームには怪盗ロワイヤル系にある「他プレイヤーとのバトル」の要素があまりありません
戦闘を伴うクエストや、コンピューターの反逆軍と戦う「討伐」もありますが、どちらもコンピューター戦。
他プレイヤーの村に侵攻して占領し、そこから税収を得られる(相手の税収は減る)という要素もありますが、そのためには侵攻した忍者がそこに駐留し続けなければならず、占領できる数にも限りがあり、いくらでも占領や戦闘が出来るという訳ではありません

つまりソーシャルゲームですが、ソーシャル要素や対戦要素は現時点では乏しいです
ゲームが進むと、盟友となったプレイヤーと協力して戦う「協力任務」も行えますが、ソーシャル的な要素はこれのみ。
アドウェイズのソーシャルゲームは、プレイヤー同士のバトルは重視していないのかもしれません・・・

戦闘は怪盗ロワイヤル系によくある自動進行のターン制バトルですが、「兵士」の要素があり、先に村の兵舎で忍者に「忍兵」を配備しなければなりません。
戦いを有利にするには忍兵に装備を与える事も必要で、装備は兵士の数だけ工房で作っておかなければなりません
戦闘すれば忍兵が減少するので補充も必要で、兵士や装備がなくなったら回復するまでしばらく戦闘は控えなければなりません。
戦闘のたびに兵舎で補充作業をする必要があるので、ここは面倒なところです。

煙に巻いたらさようなら。

全体的に、クエストに必要なアイテムがなく、行動に必要なポイントが「村の行動力」に集約しているなど、よりゲームを解りやすくしている印象があります

ただ「お宝の争奪戦」という要素はなく、「他プレイヤーに打ち勝つ」という目標も乏しく、「陣営での勝利を目指す」みたいな部分もないので、目的が希薄な印象は否めません
ソーシャル要素も乏しいため、まだどのように拡張して行くのか、方向が明確でないのかもしれませんね・・・


以上、アドウェイズのソーシャルゲーム2種類でした。

正直言うと、iPhone では先日ハンゲームの「マジモン」が公開され、これの完成度が怪盗ロワイヤル系としては突出しているので、比較して見劣りするのは否めません
「カイブツクロニクル」も「煙に巻いたらさようなら。」も、所詮はブラウザベースのソーシャルゲーム
ソフトウェアとして作られているソーシャルゲームのマジモンと比べると、グラフィックや演出、サウンドなどのクオリティーに圧倒的な差があります。

特に「カイブツクロニクル」と「マジモン」はどちらも怪盗ロワイヤルの基本システムに近い内容ですが、マジモンには装備の要素はないものの、快適なレスポンス、お宝の争奪戦、5vs5 の多対多戦闘などが存在し、カイブツクロニクルよりバトルが楽しめます。
カイブツクロニクルは Android で先行していてユーザ数が多い事と、重厚な雰囲気やバックストーリーが存在する利点がありますが、今となってはどちらがオススメかと言われると・・・ 言うまでもないですね。

「煙に巻いたらさようなら。」は新しいゲームシステムと言えるので、また別の楽しみ方が出来るのですが、先にマジモンを見てしまうと演出的には辛いものがあります。
ただまだ β テストに近いので、今後の発展には期待したいところです。

まあ怪盗ロワイヤル系のようなシンプルなソーシャルゲームは複数を同時進行することも出来るし、それぞれに特徴があるので、好きな人は一通り試してみても良いかもしれません。
ゲーマーとしては、ボタンをポチポチ押すだけの単純なクエストや、シンプルなバトルシステムなどは物足りないのが本音ですが、一般向けで何度も繰り返しプレイするソーシャルゲームは、解りやすくシンプルに作ることも必要ですからね。
でも、そろそろゲーマー向けのソーシャルゲームというものも見てみたいものですが。

カイブツクロニクル (iTunes が起動します)
煙に巻いたらさようなら。 (iTunes が起動します)