非常に精密に描かれた廃墟の病院を彷徨う、廃墟マニア垂涎(?)のホラーテイストな脱出系アクション RPG が登場しています。
Dark Meadow」です。

ゲーム内容を一言で言ってしまうと、「舞台が廃墟の病院になった Infinity Blade」です。
戦闘スタイルも装備やレベルアップの形式も、移動可能ポイントをタップして進む方式も、Unreal Engine(アンリアルエンジン)を使った細密なグラフィックも、その全てが Infinity Blade のシステム。
このゲームをやると「インフィニティブレード系」という新しいゲームスタイルが誕生しつつあるのかなぁ、なんて思いますね。

開発はアメリカ・シカゴのゲームメーカー Phosphor Games 。
新興メーカーですが XBOX で 3D グラフィックのゲームを開発していた実績のあるメーカーです。

先に言っておきますが、このゲームは非常にグラフィックの質が高いためか負荷も高いようで、メモリが少なかったり本体が不安定だと落ちる可能性があります。
iTunes のレビューに「起動しない」「落ちる」というコメントが多くありますが、実際に私も落ちる症状を経験しています。
インストール後は一度 iPhone / iPod touch / iPad 本体を再起動した方が良いでしょうね。

念のため言っておきますが、アプリを起動しなおすのは「再起動」ではありません。
本体の再起動についてよく解らない方は、こちら の解説をご覧下さい。
この事は iPhone を使う上での「常識」なので覚えておきましょう。

※アップデートで、当初よりは安定性が増しています。

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主人公は記憶をなくし、廃墟の病院の一室で目覚めた男。
病院内には正体不明のモンスターが徘徊しており、クロスボウと剣でそれらと戦いながら、病院からの脱出を目指します。

自由に移動する事は出来ず、移動先の候補にマークが付けられており、それをタップする事でそこに移動するという方式です。
ただ視界は画面をスライドすることで自由に動かすことができ、マップ内には金貨袋や引き出しなどが各所にあって、それをタップすることで「お金」や「宝石」、「薬」を得ることができます。
ですからタップで反応する場所を探しながら進むアドベンチャーゲームっぽさもあります。

モンスターに遭遇すると戦闘開始。
戦闘では左下と右下にある矢印ボタンで回避行動を取り、中央下部のボタンを押しっぱなしにするとガード。
画面をスライドすることで剣を振ります。
単に剣を振るだけでは有効打にならず、相手の攻撃を回避するかガードして、攻撃のチャンスになってから剣を振らないとクリーンヒットしません

この戦闘方式はまんま「Infinity Blade」のものなのですが、このゲームは敵との距離が遠い時は「クロスボウ」を使い、敵が近づいて来るまで矢を撃つ事が出来ます
敵も遠くから唾のようなものを吐いてくることがあり、これは回避でかわす必要があります。
この「遠距離戦」がオリジナルな点と言えますね。

敵を倒していれば経験値が貯まってレベルが上がり、任意のステータスを増やす事ができます。
またポーズメニューの「装備」からいつでも武器や護符を買うことができます。
武器や護符はかなり豊富に用意されていて、上位のものはかなり高額ですが、お金の入手量はゲームの進行(レベルや時間の経過?)によって増えていくため、高額な装備も徐々に買いやすくなっていきます。

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※遠距離時にはクロスボウを撃てる。 手前に引いてから離すと発射、手前に引いたままドラッグすると狙いを動かせます。
ただ敵はすぐに近づいてくる場合が多いので、戦闘のメインはあくまで剣。
敵の攻撃を回避してから反撃する Infinity Blade 型の疑似ターン制のようなバトルですが、Infinity Blade よりもガードが重要な印象。 「防御の強さ」を優先して強化しておけば回避しなくても戦えます。


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※武器の購入システムも、まんま Infinity Blade 。 長くやっているほど入手金が増えていく点も似ています。
ちなみに「防御」はダメージ軽減、「防御の強さ」はガード回数のこと。
「たましい抜き」は体力吸収、「酸攻撃」は連打するほど追加ダメージ、「砲火攻撃」は継続ダメージ。


もし敵に倒されても、ゲームオーバーにはなりません。
主人公は最初にいた部屋のベッドの上で目を覚まします。 つまり「終わらない夢」のような感じですね。
やられてもお金が減るとか、何かがなくなるとか、そういうペナルティーはありません。
むしろ金貨袋や引き出しのお金が復活するので、またお金を稼いでいけますし、やられないとゲームが進まないこともあります。(やられて目覚めると最初の部屋に鍵があったりする)

廃墟の病院の中を彷徨うゲームであるため終始「閉塞感」がありますが、徐々に行動範囲が広がり、装備も強化していけるシステムであるため、行き詰まるという事は無いでしょう。
アドベンチャーゲームのような雰囲気がありますが、「○○しないと進めない」みたいな謎は特にありません。
前述したように扉の鍵も自然に手に入ります。

またホラーテイストのゲームではありますが、明確な「ホラーゲーム」ではありません。
血がドビャーっと散ったりするようなスプラッタなシーンは特にないですし、日中なので日差しが照りつける窓辺や中庭などもあり、暗いところは暗いのですが、明るいところは明るく表現されています
恐怖や気持ち悪さとは違う、雰囲気的な不気味さや「寂寥感」のようなもので演出が行われています
だから冒頭でも述べたように、ホラーと言うよりは「廃墟探索ゲーム」と言った感じですね。

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※窓から眩しいほど明るい日差しが漏れている。 セミの鳴き声も聞こえます。
明るい場所と暗い場所のコントラストが美しいゲームです。
明るい場所では館内放送で謎の男の話が(英語の音声で)聞けるのですが、この男がやたらお喋りで、だんだんうるさくなって来たり。


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※この白い敵が、いわゆる「ゲートキーパー」になっています。
非常に強力で最初は全く歯が立たないのですが、これを倒せる強さを身に付けることが「この先に進む条件」になっている形です。
なお、ステータスアップは各所に落ちている「宝石」を10個集めることでも可能です。


難点は戦闘がちょっと単調で、かつ多すぎることでしょうか。
ちょっと進んではすぐ戦闘、少し探索してはすぐ戦闘と、探索の過程で戦闘がだんだん面倒になってきます。
戦闘ばっかりだとこの寂寥とした雰囲気も薄れてしまいますね。

特に1階にいるうちは良いのですが、2階に上がって中ボスにやられた時などは、またその場所に戻るまでに何度も戦闘を繰り返さないといけないので、さすがに面倒です
Infinity Blade も戦闘を繰り返すゲームでしたが、戦闘がメインだったし、1回の探索で行われる戦いの数には限りがありました。
Dark Meadow は探索がメインなのに戦闘が短いスパンで繰り返されるので、中盤以降は邪魔になって来ます。

※アップデートで敵との遭遇率は初期バージョンよりは低下しています。

もう1つの難点は、日本語の翻訳がおかしいこと。
日本語に翻訳されていること自体は嬉しいのですが、お金を回収すると「あなたが買収」とか、ヘッドショットを決めると「頭突き」とか、明らかにおかしい直訳が連発されます。

ただ、ゲーム内で拾うバックストーリーが語られているメモや、長文のメッセージなどはちゃんとした日本語の文章になっています。
つまりこれは、「ゲームの用語を知らない外部の翻訳家にローカライズを頼んでしまった」ことによる弊害だと思われます。

この「ゲームを知らない翻訳家に頼んでおかしくなった」と言うのは実は良くある話で、ゲームには直訳するとおかしくなる専門用語が多く含まれていますが、ゲームの事を良く知っている翻訳家ってあまりいないうえに、翻訳家は文章・単語のリストだけを渡される場合が多い(実際に使われている場面が解らない)ので、短文だと返ってこうなるケースが多いです。
自社内でローカライズできる環境を整えているメーカーだと翻訳もしっかりしていますが、中小メーカーには難しいですからね・・・

以下は Youtube で公開されている公式のゲームトレーラーです。



価格は 500 円クオリティーの高いゲームであり、価格分の内容はあると思います
白熱するようなゲームではありませんが、展開が気になる数多くのメッセージと、精密に描かれた各部屋の様子、そして独特の雰囲気を持つ、思わず長時間のめり込んでしまうゲームです。

Infinity Blade そのまんまのゲームシステムには賛否あるかもしれませんが、もし Infinity Blade を「ボリュームがないから嫌」と思っている人は、Dark Meadow の方が楽しめるかもしれません。
ボリュームの点ではこちらの方が上ですからね。

メランコリックな雰囲気で楽しめる独特なゲームです。
人を選ぶと思いますが、こうしたゲームも嫌いでない方には、オススメできるアプリです。

Dark Meadow (iTunes 起動、有料版)
Dark Meadow: The Pact (後から追加された無料課金版)