※iOS8 以降、画面が正常に表示されない問題があります。
しかしこれは画面を回転させることで治ります。
また、開始時に画面が真っ暗のまま動かない場合がありますが、しばらく待ってみて下さい。


2008 年から 2009 年にかけて Wii と PS3 で発売され、各ゲームメディアなどで絶賛された長編「サウンドノベル」の新作が、先日 iPhone / iPad で登場しました。
428 ~封鎖された渋谷で~」です。

サウンドノベルとは主にゲーム機で読む「背景と効果音の付いた小説」で、1990 年代の前半にチュンソフトというメーカーが発売した「弟切草」を元祖としています。
以後、ホラー推理小説である「かまいたちの夜」を始め、様々なものが公開されました。
あくまで小説でありゲームではないため、演出は抑えている場合が多いのですが、選択によってストーリーが分岐するケースが多く、ジャンルとしては「アドベンチャーゲーム」に含まれます

サウンドノベルはチュンソフトの商標なので、ノベルゲームやビジュアルノベルとも呼ばれます。
iOS での本格的な長編ノベルゲームとしては「STEINS;GATE(シュタインズゲート)」に続く作品となりますね。

サウンドノベル系はブームの火付け役となった「弟切草」「かまいたちの夜」が共にホラーであったため、ホラーものが多いのですが、この「428 ~封鎖された渋谷で~」は現代の渋谷で生きる様々な人々を描いたドキュメント風のサスペンスになっています。
主人公は5人いて、その中には刑事もいるのですが、刑事ドラマや推理ものという訳ではなく、恋愛ものやミステリーでもないため、ノベルゲームとしてはちょっと異質だと言えます。

428 ~封鎖された渋谷で~

渋谷のハチ公前で起こった不可解な誘拐事件。
これに5人の主人公が関わる形でストーリーは進行していきます。

主人公は「新米刑事」「ごろつき風の若者」「フリーライター」「医薬研究者」「バイト中のきぐるみ」という全く接点がなさそうな5人で、この5人のストーリーを頻繁に入れ替えながら進めていきます

5人のストーリーはそれぞれ独立しているのですが、途中の選択が他の主人公に影響するようになっています。
例えばAという主人公が移動中にBという人物に会って会話したことにより、遅刻してしまったとします。
しかしCの主人公に切り替えてBの移動先を変えると、AとBが出会わなくなるため、再びAの主人公に戻ると遅刻せずにストーリーが進みます。

基本的に1人の主人公のストーリーだけを進めていると、必ず途中でバッドエンドになってしまうため、それを他の主人公の行動で回避しながら相互に進めていく形になります。
よって全体としては各主人公のストーリーを平行して読んでいくことになりますね。
バッドエンドになった時にはそれを回避するための「ヒント」が表示されるため、それを参考にしながら主人公や選択肢を選んでいくことになります。

各主人公のストーリーの進行具合は「タイムライン」という画面で時系列で確認する事ができ、場面の切り替わりや選択肢があるシーンに自由に移動する事が出来ます
ただしタイムラインは1時間ごとに区切られていて、例えば13時から14時のストーリーに進むには、全員の12時から13時までのストーリーを終えている必要があります。

428 ~封鎖された渋谷で~
※「タイムライン」 ゲーム中はこの画面で頻繁に主人公を切り替える事になります。
普通にやってるとバッドエンドが避けられないゲームですが、バッドエンドの時に表示されるヒントはヒントと言うよりズバリ「解答」に近いので、対処法で迷うことはほとんどないはず。
難しい謎解きとかはありません。


428 ~封鎖された渋谷で~
※ゲーム中に「KEEP OUT」と表示され、特定の主人公のストーリーが止められる場合があります。
この時は他の主人公のストーリーを進め、そこから JUMP というシステムで移動してくる必要があります。
ストーリーのつじつま合わせに使われているようですが、全く関連してないシーンから唐突に JUMP する場合が多いので、突飛なシステムに思えてしまうのが難点。
ただ JUMP 出来る場所はタイムライン上に表示されるので、各主人公を一通り進めれば自然と JUMP 出来るようにはなっています。


特筆すべきは画像の多さで、バックに表示される静止画の枚数は圧倒的な数です
実写撮影による数え切れない程の画像が各シーンに用意されており、1つのバッドエンドにも何枚もの画像が使われています。
それらが次々と連続で切り替わるため、もう「紙芝居」と言うより「準ムービー」と言える程です。
これだけ膨大な枚数をストーリーに合わせて編集するのは、ムービーよりも手間がかかるでしょうね。

もちろん「サウンドノベル」というだけあって、サウンドも非常にリアルです。
ボイスは一切ありませんが、全てのシーンに BGM か効果音が用意されています。

最初は5人のストーリーがバラバラに進むため、無理やりストーリーを中断させられる切り替えシステムが面倒に感じる事もありますが、ある程度までゲームが進むとそれぞれのストーリーが気になってくるため、切り替えも苦にはならなくなってきます。
むしろ切り替えによって「あぁ、やっとこっちを進められる」と思えるようになってきますね。

選択によって他の主人公の流れを変えるシステムも、タイムライン画面で状況の確認と選択肢への移動が面倒なく行えるため、あまり煩雑さはありません。
うまく小説にゲーム性を取り入れているのではないかと思います。

ただ、選択を間違っている場合の結末がすぐに「バッドエンド」で終わるのは、ちょっと奧の浅さも感じます。
正確な意味でのストーリー分岐というものはなく、ほとんど「選択が正しい=ストーリーが進む」「選択が違う=バッドエンドで即終了」の二択しかありません
そのため唐突なバッドエンドも多く、どの選択が正解なのか推理できるような要素もありません
これはおそらく、ゲームが複雑化するのを防ぐためワザとこうしているのだと思いますが、結末が同じだとしてももうちょっと「違う道」があって良かった気はします。

428 ~封鎖された渋谷で~
※ちゃんと1枚1枚、構図を考えた撮影が行われていて、実写静止画ならではの良さがありますね。
一部にムービーや特殊効果も使用されています。 効果音も非常にリアルで、出来ればイヤホン推奨です。


428 ~封鎖された渋谷で~
※知る人ぞ知る「なすび」。 久々に見ました・・・ 今は俳優さんになってるんですねぇ。

価格は 1800 円と高額ですが、元々 5000 円のソフトであり、廉価版でも 3000 円。 それを考えるとお得です。
すでに 10 時間ほどプレイしていますがまだ終わりが見えず、さらにチュンソフトのサウンドノベルおなじみの「隠しシナリオ(隠ししおり)」も用意されているようで、全部やろうと思ったら数十時間が必要なようです。
ボリュームを考えると値段以上のものがあると言って良いでしょう。
価格は最近発売された PSP のダウンロード専用版が 2000 円なので、それに合わせているのではないかと思われます。

ストーリーは個人的には「シュタインズゲート(STEINS;GATE)」の方が面白いかなぁ、とも思うのですが、シュタインズゲートがライトノベル風、こちらは文庫小説風なので、そもそも小説としてのタッチやジャンルが異なります。(どちらもサスペンスという点では共通していますが)

元々 iPhone や iPad は文章リーダーとして活用できるため、サウンドノベルとの相性もバッチリです。
ノベル系アプリはすでに結構公開されていますが、ほとんどがホラーかギャルゲーばかり。
今後こうした本格的なノベルゲームがもっと出てくる事を期待したいですね。

428 ~封鎖された渋谷で~ (iTunes が起動、iPhone / iPad 両対応)