3D グラフィックで描かれた広い市街地を自由に散策できる「オープンワールド」の中で、ギャングの一因となり強盗・殺人などの犯罪を繰り返す「クライムゲーム」(犯罪ゲーム)の新アプリが、ゲームロフトより発売されています。
アーバン・クライム」です。

でもこのゲーム、完全な新作という訳ではありません。
1年以上前(2010年9月)に発売されたギャングスターシリーズの2作目「ギャングスター : Miami Vindication」のマップを流用した、派生作品です。
2011年11月にギャングスターシリーズの3作目「ギャングスターRIO:City of Saints」が発売されていますから、つまりベースが旧作な訳で、そのため ギャングスターRIO に比べると後発なのにグラフィックやキャラクターの動きなどが劣ります
おまけにソーシャルゲームのような課金システム(ゲームロフトが言うところのフリープラス)になっていて、俗に言う「課金演出」が満載です。

よって何だか微妙な感じのするゲームなのですが・・・
しかしこれだけのゲームが一応無料で楽しめることを考えると悪い訳じゃないし、内容がオープンワールドを生かすユニークなシステムに変わっていて、単なる批判対象のゲームと言う訳でもなかったりします。

アーバン・クライム

凶悪なギャングの一因となって、ギャング同士の抗争に関わる様々な依頼を達成していきます。
車泥棒やターゲットの銃殺、資金の強奪など依頼は犯罪行為ばかりで、さらに町の人を殺して回ったり車で暴走しまくるなどやりたい放題する事が出来ます。
自由度は高いのですが、あまり道徳的によろしくないゲームですね。
また、あまりに酷いと警察が出て来て追われることになります。
この辺の基本部分は一般的な「クライムゲーム」と同様で、ギャングスターシリーズや Grand Theft Auto と変わりません。

しかしゲームの進行はフリーミアム化(追加課金型)の影響もあって、大幅に変わりました。
簡単に言うと「メインクエストが無くなり、サブクエストのみで進行するゲーム」になっています。
ギャングスターの本編にあったようなストーリーはなくなり、任意のギャングからの依頼を受けて、それをこなしていく事で「制覇進行度」を貯めていくのが基本の流れになります。
依頼は自動生成のクエストになっていて、一定のパターンはありますが、目的地などは依頼ごとにランダムで決められます。

町はいくつかの区画に分かれていて、それぞれがギャングの「テリトリー」になっており、他のギャングのテリトリーに入ると急に攻撃を受ける場合もあります。
依頼を達成して制覇進行度が一定量貯まるとボスが出現するクエストを受けられ、これをクリアする事でテリトリーが広がり、安全に移動できる範囲が広がります
最終目標はマイアミの全制覇ですが、時間の経過によってテリトリーが奪われる事もあります。

依頼は味方のギャングと話せば受けられるのですが、この点は簡略化されていて、わざわざ依頼人の所に行かなくてもマップ上でアイコンをタップするだけで受けられます
アイコンから依頼を受けると自分の位置も依頼人の場所にワープし、すぐにクエストを開始出来ます。
ショップもボタンをタップすれば、いつでも利用可能です。
「それだとオープンワールドの意味がないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、この方がサクサク進行するので良いですね。 散策しようと思えばいつでも出来ますし。

アーバン・クライム

アーバン・クライム

アーバン・クライム

難点は、やはり「新作(RIO)が出た後なのに、旧作(Miami)を流用している」という点。
ギャングスターRIO が出たのは2ヶ月前ですから、開発はおそらく平行して行われていたのだと思われますが、にしてもグラフィックやキャラクターの動きなどが大幅に改善された新作の後に旧作を見せられたんじゃ、ショボく感じるのは否めません。

Retina ディスプレイに対応し、近景の看板や装飾なども綺麗に表示され、建物のジャギー(ギザギザ)も目立たなくなっているなど、単純な流用ではなく明らかなグレードアップが見られるのですが、それでも RIO と比べると劣ります
そしてキャラクターの動きについては旧作(Miami)の頃のままですからね・・・
Grand Theft Auto 3 を見た後だと、車や通行人の少なさに閑散とした印象も受けてしまいます。

※Retina ディスプレイには Maiami の頃から対応していました。 しかし後述する画像を見ても解るように、表示の滑らかさなどは全然違います。 アーバン・クライムで、より高解像度に合わせた表示方法に改善されたという感じです。

そして何よりガッカリなのが、依頼を達成するたびに「エネルギー」を消費するというフリーミアムな部分。
時間により回復するエネルギーの上限は5で、つまり5回依頼を実行したら、しばらく待つか課金をしないと再び依頼を受けることは出来ません。
プレイ時間を強制的に制限するソーシャルゲームの悪い部分を引き継いでいる残念仕様で、Dark Quest 3 といいコレといい、こうなると レッツ!ゴルフ3 でこのシステムが(収益的に)成功したのは結果的にユーザーにとって害悪だったとしか言いようがありません。

また、乗り物を使用するのに一定以上のレベルが必要で、道行く車を奪おうとしても「レベルが足りないからダメ」と言われたりします
これが3回ぐらい続くと「クライムゲームじゃないのかよ!」と思ってしまいます。(そしてその度に「課金で解除できるぜ!」と言われる)
自由度がウリのシステムで、これはどうなんだと思いますね・・・

アーバン・クライム
※ギャングスター Miami とアーバンクライムの双方で、同じ建物を同じ視点から見た画像の比較。
見てのように Miami はポリゴンのギザギザが目立つのに対し、アーバンクライムはかなり滑らかに見えます。
3D モデルをより細密に表現できるエンジンに変更しているのではないかと思われます。

私的には、「ランダム生成のサブクエストを進行させてテリトリーを拡大させて行く」というシステムは面白く、オープンワールドであることも生かせていると思います。
ただ、やはり似たクエストが多いので同じ事の繰り返しになりがちですし、これだけでゲームを続けるのは辛いかなぁと言う気もします。

もしこのシステムがギャングスター RIO に導入されて、最新版のグラフィックで、メインストーリーを進めつつ、サブクエストでマップの制覇も目指せるというシステムになっていれば、ギャングスター RIO の足りない部分が補われたかなり良いゲームになる気がするのですが・・・
それは次回作に期待と言うところでしょうか。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



フリーミアム(フリープラス?)なので価格は無料
課金要素は多いですが、ゲーム自体は課金が必須なものではなく、エネルギーの待ち時間さえこなしていれば無料のままでも十分に遊び続けられるゲームです。
エネルギーの回復時間はそれほど長くはありません。
ですから気になる部分があるとは言え、クライムゲームが好きなら試してみる価値のあるアプリではありますね。

評価の難しいゲームですが、何と言うか、旧作を流用した課金型ゲームで収益拡大を狙わないといけないほど、ゲームロフトって厳しい状況なのかな・・・ なんて思ってしまいますね・・・

アーバン・クライム (iTunes が起動します)