神と悪魔、秩序と混沌、一神教と多神教・・・ 人間とそれ以外の存在のイデオロギーや価値観の対立を描きつつ、コンピューターを使って悪魔と交渉するというサイバーな雰囲気を合わせ持つ、独特な世界観を持つ名作 RPG が、何の前触れもなく iPhone に登場しました。
真・女神転生」です。

私は元々、大のメガテニスト(女神転生シリーズのファン)でして、それは同じメガテニストならすでに気付いていたと思います。
私が使っているハンドルネーム「カムライターオ」は、元々この真・女神転生に出てくるアイテム名ですからね。

しかし今回の iOS 版の真・女神転生は・・・ 正直言って微妙
画面を見て解るように、それでなくても小さい iPhone の画面の半分以上がコントローラーで埋まっているという、スマートフォンにマッチしていない時代遅れも甚だしいインターフェイス

しかも内容は GBA(ゲームボーイアドバンス)版の「エミュレーター」(他のシステムのプログラムを動かすソフトウェア)であり、つまり iPhone 向けに調整されている訳でもブラッシュアップされている訳でもありません。
正直、色々とガッカリ感が否めないアプリです・・・

真・女神転生

女神転生シリーズは ATLUS(アトラス)というメーカーが開発していたものですが、アトラスは事業不振でインデックスという会社に吸収され、ブランド名のみの存在となっています。
このアプリはそのインデックスが開発した「ゲームボーイアドバンスのソフトを iPhone / Android に安価に早く移植できる『ポーティング技術』によって作られたもの」で、これを使う事で「開発力や経験がなくても簡単にゲームをスマホ用にできる」と発表されています。

※インデックスは現在は倒産し、セガに吸収されています。 アトラスブランドも同様。
ただ、このアプリはインデックスのセガ吸収後も、インデックス名義で販売が続いています。


でもそれは要するに、俗に言う「エミュレーター」と何ら変わらず、古いソフトを流用してタッチパネルやスマートフォンへの最適化を全く行わずにアプリを量産するシステムであり、ユーザーから見れば手抜き以外の何者でもありません。

ゲームボーイアドバンスは解像度が 240 x 160 で、iPhone / iPod touch は非 Retina でも 480 x 320 (Retina だと 960 x 640)なので、そのまま移植すると画面が引き延ばされて荒くなるかボヤけてしまうため、このような特殊な画面構成になっているのだと思われますが、それでなくても 7.5cm x 5cm ぐらいしかない iPhone の表示の半分以下しかゲーム画面がないのですから、これでユーザーが納得すると思っている方がおかしい。

こういうスマートフォンとタッチパネルの仕様・画面サイズを無視したガラケー的なインターフェイスは、今まで散々非難されてきた訳ですが・・・
まだそれを知らなかったんでしょうかね?

しかもこんな移植でも、価格は 1200 円
確かに「真・女神転生」のネームバリューやファンの数は大きなものがありますが、さすがにこれには嫌悪感さえ感じてしまいます。

※さすがに批判が大きかったためか、アップデートで「横画面モード」が追加されました。
現在は iPhone を横向きにすると、ゲーム画面が大きく表示されるようになっているので、スクリーンサイズの問題は改善されています。
横画面モードではボタンや方向キーなどは半透明化されます。
その詳細については 真・女神転生2 の記事 を参考にして下さい。
なお、現在は 真・女神転生 if... も公開されています。


iTunes の説明文に「iPhone 版の特徴」と書かれている「VISIONARY」(映像館)や悪魔辞典、音楽館なども、元の GBA 版に入っていたものであり、iPhone 用に追加されたものではありません

真・女神転生
※ビジョナリー(映像館)は各キャラクターのサイドストーリーが見られるもの。 例えば飼い犬「パスカル」がいた場所で入手できるアイテムをゲーム内で手に入れておくと、タイトルの「A-MODE DDS」からパスカルのビジョナリーを見ることが出来る。
パスカルは主人公が小学生の時に「ナカジマさん」から貰ったらしいが、メガテンでナカジマと言えば・・・
右の画像は悪魔辞典。 登場する悪魔や天使の由来を知ることが出来る。 解説文は結構丁寧。


ただ、こんなインターフェイスのゲームを評価したくないのですが・・・
正直、ゲーム内容は GBA 版のメガテンそのままなので、普通に遊べるんですよね。

しかもオリジナルのスーパーファミコン版よりグラフィックが少し強化されていて、今となっては古くさいグラフィックですが、原作よりは良くなっています。
(それにそもそも、真・女神転生はグラフィックで売るようなゲームではないし)
前述の「VISIONARY」(映像館)なども、GBA 版をやったことがない人だと見てみたいはず

システム的にも、(スーファミ版と比べると)オート戦闘時の行動パターンの設定が増えていたり、COMP で RECOVER を選択すると自動回復が出来て、その際の回復手段も「アイテム使用」「魔法のみ」を設定できるなど、いくつかシステムが追加されています。

また、このインターフェイスも方向キーとボタンが大きいので、これはこれで操作はしやすいです
画面が小さいぶん、表示もあまりぼやけている感じはうけません。
(若干拡大されていますが、文字はクッキリ表示できるようになっているようです)

やはり真・女神転生をやったことがある人を対象にした、「経験者向けのアプリ」な印象ではありますが・・・
正直、もうこんなゲームが出てくる事はないと思います。
だって、アレを倒したり、アレが敵になったり、ラスボスがアレだったりするんですから!

やったことない人だとさっぱり解らないと思いますが、こんなの普通に考えて日本以外では発売できないので、そういう意味では未経験者の方にもやってみて欲しい内容ではありますね。
(だからこのゲーム、海外展開が出来ないので、iOS で発売される事は絶対ないと思っていました)
※現在は海外版も公開されているようです。

真・女神転生
※左は悪魔合体のシーン。 これを駆使して強い悪魔を作るのがこのゲームの面白さの1つです。 今となっては割と一般的なシステムですが、このシステムのパイオニアと言えますね。
ストーリーには根底に一神教と多神教の対立があり、あまり言うとネタバレになりますが、完全に「海外展開を考えていない内容」です。 そう言う作り方は、もはや現代では考えられません。
しかしそんな内容だったからこそ、真・女神転生は名作になったのだと思います。
海外では女神転生シリーズと言えば、ペルソナ以降を指します。

※真・女神転生1と2のパソコン用の海外版(英語版)も存在していますが、それは近年になって海外のファンによって翻訳された、非公式版のようです。

改めて価格を言うと、1200 円
いくらなんでもこの値段のクオリティー、というかシステム&インターフェイスじゃないよなぁ・・・

一応言っておきますが、別にエミュレーターなどを使って過去のアプリを iPhone で再現することが悪いと言っている訳ではありません。
ただ、それならそれでタッチパネルやスマートフォンの操作や画面サイズに合わせた作りにするべきで、さすがに「この画面サイズ」と「なんの iPhone 向けの調整等がないにも関わらずこの値段」ってのはどうなんだ、って思いますね。

とは言え、古いゲームを iPhone で拡大表示してドットが荒くなったり、クロノトリガーレイフォースみたいに画面がぼやけたりしたら、それはそれで不評を買いますから、難しいところです。

iPhone であの「真・女神転生」が出来るのはメガテニストとしては非常に嬉しくあり、しかしそれがこんな形になっていることは悲しくもあり、とにかく微妙な気持ちになるアプリです・・・

真・女神転生 (iTunes が起動します)