「かまいたちの夜」や「428 ~封鎖された渋谷で~」で有名な、老舗メーカー「チュンソフト」の「サウンドノベル」。
昨年、PS3 や Wii で高い評価を受けていた 428 ~封鎖された渋谷で~ が iOS に移植され大きな話題になりましたが、さらに先日、2007 年に PS3 で発売されたホラーサウンドノベルが iOS で登場しました。
「忌火起草」(イマビキソウ)です。
iOS に移植されたのは 2008 年に Wii で公開された、追加シナリオが加わった拡張バージョン「忌火起草 解明編」です。
このゲームは最初 PS3 で(8000 円で)販売されたのですが、それなのに翌年に「解明編」が Wii 「のみ」で(しかも 6000 円で)発売されたため、PS3 ユーザーから不満の声が上がっていました。
iOS 版はアプリ名が単に「忌火起草」ですが、ちゃんと解明編になっているのでご安心下さい。
内容は完全なホラーで、「遊び半分でドラッグ『ビジョン』に手を出した大学生たちが、次々と謎の焼死を遂げる」というものです。
ギャグや萌え要素のようなものは一切ないので、万人向けと言えますが、常に重苦しい雰囲気が続きます。
画像は見てのように実写。 しかし人物の顔は暗くしたり一部しか見えなくする事で、わざと解らないようになっています。
この処理もあって常に全体的に暗く、話だけでなく画像の雰囲気も重いですね。
しかし画像の数は非常に多く、まるで映画を見ているかのように次々と切り替わっていきます。
おまけに映像も各所に盛り込まれており、映像がそのまま背景になるシーンも多く、演出の出来は「さすが本家サウンドノベル」と思うものがあります。
今作の最大の特徴は「ボイスシステム」と呼ばれるもので、なんとセリフが文字で表示されません!
状況の説明や考えている事などは文字で表示されるのですが、セリフは音声のみであり、よって誰かが喋っているときはメッセージの進行は止まります。
音が良く聞こえないと内容が解らないので、イヤホンは必須です。
また、セリフの後の文章は、常にセリフが終わってから表示されるとは限りません。
例えば主人公が寝ていて、ヒロインが声をかけて起こす時は、ヒロインのセリフが全部終わってから起きる文章が表示されるのではなく、ヒロインの声に主人公が気付いたぐらいのタイミングで起きる文章が出て来ます。
考え事をしながら聞いている時はセリフの有無に関わらず文章が進み(うわの空で聞いている演出。よってこの時は文章とセリフの内容が異なる)、逆に重要なセリフの時はそれを全部聞いてから次の文章が表示されます。
つまり、ボイスと文章の表示タイミングが状況に合わせてリアルにリンクしています。
これはサウンドノベルらしい、斬新な手法と言えますね。
※例えばこの場面。 この文章だけ読んでも意味が通らない。 しかし本当は下の画面のように・・・
※実際は矢印の部分の「セリフ」が「音声で」入っている。 このようにセリフと文章の双方で物語は進行します。
しかもボイスごとに次の文章が出て来るタイミングが違うと言うという、かなりの作り込み様。
ただし既読文章の確認画面では、上記のようにセリフも文字で読むことができます。
もちろんただのノベルゲームではなく、サウンドノベルですから、ゲーム中の各所で「選択肢」が入ります。
主人公の選択によってその後のストーリーに変化が生じ、エンディングも複数用意されています。
ただしエンディングの変化が起こるのは終盤のみのようで、428 のように「途中で選択を間違ったら即終了」みたいなことはありません。
一度エンディングを見た後は、他のシナリオに入る事が出来ます。
俗に「○○のしおり」と呼ばれているものですね。
シナリオは本編に関連したものや、本編の真相のヒントになるものもありますが、本編とは全く無関係なものも存在します。
ただ、今作はそのほとんどがホラーという点で共通しています。
各場面の選択とシーンの繋がりは「フローチャート」で確認する事ができ、これによりどの選択からどういうシーンになったのか一目で解るようになっています。
428 ~封鎖された渋谷で~ や、その前作品となる「街」のような主人公変更システムはありませんが、このフローチャートを使うことで他のシナリオに入る条件などを確認しやすくなっています。
ボリュームは、1つのシナリオはそれほど多い訳ではありません。
だいたい3~4時間ほどでエンディングまで辿り着きます。 しかし後半の選択によっては真エンドにならない可能性があり、本編のシナリオでエンディングまで進んでも「終了率」がなんと 15 %にしかならなかったので、全シナリオを達成しようと思ったら「いったい何時間必要なんだ!」という感じです。
全部含めて考えると、ボリュームはハンパではなさそうですね。
※進行フローチャート。 ここで選んだ選択肢やルートを自由に確認できます。
ただ、最終シーンではフローチャートの確認が出来ません。
2周目以降にならないと出てこない選択肢が数多くあり、それらが他のシナリオへの条件になっています。
※本文に膨らんだりしぼんだりしている単語が出てくる場合があり、それをタップすると「百八怪談集」を集めていくことが出来ます。
が、その「膨らんだりしぼんだり」の動きがすごーくゆっくりなので、メチャメチャ判別し辛い。
おまけにこの百八怪談、どれも内容は・・・ 微妙。 面白いとか恐いとかじゃなくて、微妙。
ただ、この「忌火起草」・・・ 巷の評価はそれほど良くありません。
サウンドノベルの中では「かまいたちの夜」や「428 ~封鎖された渋谷で~」よりは劣ると言う意見が多く、正直言って私もそう思います。
ずっと重苦しい雰囲気が漂い続ける純粋なホラーであるため淡々としていて、呪いや心霊的なストーリーであるため推理や謎解きのような要素も薄く、「ただ恐い雰囲気だけ」という感じがします。
例えば、先に iOS でヒットしている「シュタインズゲート」や「428」は登場人物がユニークで、セリフ回しも面白く、場面の変化も多様、突飛な場面もありますが見ていて「楽しめる」内容が展開されます。
そしてその中にサスペンスが織り込まれているため、話に抑揚があります。
しかし忌火起草は、盛り上がりがないと言う訳ではないけど・・・ なにかずっと最初から最後まで重いままだったな・・・ という感じですね。
ホラーなので後味の悪いエンディングが多く、それもプレイヤーの達成感を妨げている要因かもしれません。
また、今作品の特徴であるボイスシステムと、繰り返しプレイすることで異なるシナリオに入れるシステムとの相性が悪く、ボイス再生中はメッセージを進められないため、すでに聞いたセリフを2周目・3週目以降もスキップせずに聞く必要があります。
今作のボイスシステム自体は秀逸だと思いますが、既出のボイスは画面にセリフが表示され、ボタンでパスできるようにして欲しかったのも本音ですね。
ノベルゲームでセリフをカットできないのって、このゲームぐらいじゃないでしょうか。
ただ、イマイチ評判が良くないこのシナリオも、私的には結構楽しめました。 と言うか、懐かしく思えました。
これを言うのはネタバレになってしまうと思いますが、このゲームの良い部分を語る上で必要だと思うので、あえて言ってしまうと、このゲームにはサウンドノベルの初代である「弟切草」を連想させるシーンがあちこちに盛り込まれています。
「弟切草」の続編という訳ではなく、ストーリー上の繋がりもないのですが、登場人物の名前、シナリオ展開、そして後半のシーンなど、弟切草を覚えている人なら「あー、アレかぁ」と思う部分が満載です。
タイトルからして「弟切草」に対して「忌火起草」ですからね。
この点について、プロデューサーやシナリオライターの方は否定とも肯定とも言えないコメントをしているようですが、それはおそらく「自分でプレイして弟切草との関連を見つけて欲しい」という事なのだと思います。
※黄色い野草の向こうに佇む古い屋敷・・・ それは弟切草のオープニングであり、忌火起草のラストシーンへの入口。
忌火起草はここからが本番! ここからの選択はエンディングを左右します。 「少し戻って選択を変更」とかも出来ません。
「タップしないと選択肢を確認できない」「早く選択しないと選択肢が消えていく」という場面も出て来ます。
まあ、「弟切草」はさすがに古いゲームですから覚えている人は少ないでしょうし、そのためか弟切草と忌火起草の類似点についての話はネット上でも驚くほど見かけないのですが、かつて弟切草をプレイした者としては、ファンサービス的な楽しみ方をすることが出来ました。
ですから弟切草の内容をまだ覚えている方にはオススメできますね。
まぁ、そんな人はもう少ないとは思うけど。
価格は 428 と同じく 1800 円。 iPhone アプリとしてはかなり高額ですが・・・
PS3 や Wii で数年前まで 8000 円 とか 6000 円で売られていたことを考えると、安くなったとは言えます。
人を選ぶ内容ですが、ノベルゲームとしては非常にレベルの高い作品であることは確かです。
いずれにせよ、新しいサウンドノベルが発売されたことは iPhone ユーザーとしては嬉しいですね。
・忌火起草 (iTunes が起動、iPhone / iPad 両用)
最後になりましたが、以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。
昨年、PS3 や Wii で高い評価を受けていた 428 ~封鎖された渋谷で~ が iOS に移植され大きな話題になりましたが、さらに先日、2007 年に PS3 で発売されたホラーサウンドノベルが iOS で登場しました。
「忌火起草」(イマビキソウ)です。
iOS に移植されたのは 2008 年に Wii で公開された、追加シナリオが加わった拡張バージョン「忌火起草 解明編」です。
このゲームは最初 PS3 で(8000 円で)販売されたのですが、それなのに翌年に「解明編」が Wii 「のみ」で(しかも 6000 円で)発売されたため、PS3 ユーザーから不満の声が上がっていました。
iOS 版はアプリ名が単に「忌火起草」ですが、ちゃんと解明編になっているのでご安心下さい。
内容は完全なホラーで、「遊び半分でドラッグ『ビジョン』に手を出した大学生たちが、次々と謎の焼死を遂げる」というものです。
ギャグや萌え要素のようなものは一切ないので、万人向けと言えますが、常に重苦しい雰囲気が続きます。
画像は見てのように実写。 しかし人物の顔は暗くしたり一部しか見えなくする事で、わざと解らないようになっています。
この処理もあって常に全体的に暗く、話だけでなく画像の雰囲気も重いですね。
しかし画像の数は非常に多く、まるで映画を見ているかのように次々と切り替わっていきます。
おまけに映像も各所に盛り込まれており、映像がそのまま背景になるシーンも多く、演出の出来は「さすが本家サウンドノベル」と思うものがあります。
今作の最大の特徴は「ボイスシステム」と呼ばれるもので、なんとセリフが文字で表示されません!
状況の説明や考えている事などは文字で表示されるのですが、セリフは音声のみであり、よって誰かが喋っているときはメッセージの進行は止まります。
音が良く聞こえないと内容が解らないので、イヤホンは必須です。
また、セリフの後の文章は、常にセリフが終わってから表示されるとは限りません。
例えば主人公が寝ていて、ヒロインが声をかけて起こす時は、ヒロインのセリフが全部終わってから起きる文章が表示されるのではなく、ヒロインの声に主人公が気付いたぐらいのタイミングで起きる文章が出て来ます。
考え事をしながら聞いている時はセリフの有無に関わらず文章が進み(うわの空で聞いている演出。よってこの時は文章とセリフの内容が異なる)、逆に重要なセリフの時はそれを全部聞いてから次の文章が表示されます。
つまり、ボイスと文章の表示タイミングが状況に合わせてリアルにリンクしています。
これはサウンドノベルらしい、斬新な手法と言えますね。
※例えばこの場面。 この文章だけ読んでも意味が通らない。 しかし本当は下の画面のように・・・
※実際は矢印の部分の「セリフ」が「音声で」入っている。 このようにセリフと文章の双方で物語は進行します。
しかもボイスごとに次の文章が出て来るタイミングが違うと言うという、かなりの作り込み様。
ただし既読文章の確認画面では、上記のようにセリフも文字で読むことができます。
もちろんただのノベルゲームではなく、サウンドノベルですから、ゲーム中の各所で「選択肢」が入ります。
主人公の選択によってその後のストーリーに変化が生じ、エンディングも複数用意されています。
ただしエンディングの変化が起こるのは終盤のみのようで、428 のように「途中で選択を間違ったら即終了」みたいなことはありません。
一度エンディングを見た後は、他のシナリオに入る事が出来ます。
俗に「○○のしおり」と呼ばれているものですね。
シナリオは本編に関連したものや、本編の真相のヒントになるものもありますが、本編とは全く無関係なものも存在します。
ただ、今作はそのほとんどがホラーという点で共通しています。
各場面の選択とシーンの繋がりは「フローチャート」で確認する事ができ、これによりどの選択からどういうシーンになったのか一目で解るようになっています。
428 ~封鎖された渋谷で~ や、その前作品となる「街」のような主人公変更システムはありませんが、このフローチャートを使うことで他のシナリオに入る条件などを確認しやすくなっています。
ボリュームは、1つのシナリオはそれほど多い訳ではありません。
だいたい3~4時間ほどでエンディングまで辿り着きます。 しかし後半の選択によっては真エンドにならない可能性があり、本編のシナリオでエンディングまで進んでも「終了率」がなんと 15 %にしかならなかったので、全シナリオを達成しようと思ったら「いったい何時間必要なんだ!」という感じです。
全部含めて考えると、ボリュームはハンパではなさそうですね。
※進行フローチャート。 ここで選んだ選択肢やルートを自由に確認できます。
ただ、最終シーンではフローチャートの確認が出来ません。
2周目以降にならないと出てこない選択肢が数多くあり、それらが他のシナリオへの条件になっています。
※本文に膨らんだりしぼんだりしている単語が出てくる場合があり、それをタップすると「百八怪談集」を集めていくことが出来ます。
が、その「膨らんだりしぼんだり」の動きがすごーくゆっくりなので、メチャメチャ判別し辛い。
おまけにこの百八怪談、どれも内容は・・・ 微妙。 面白いとか恐いとかじゃなくて、微妙。
ただ、この「忌火起草」・・・ 巷の評価はそれほど良くありません。
サウンドノベルの中では「かまいたちの夜」や「428 ~封鎖された渋谷で~」よりは劣ると言う意見が多く、正直言って私もそう思います。
ずっと重苦しい雰囲気が漂い続ける純粋なホラーであるため淡々としていて、呪いや心霊的なストーリーであるため推理や謎解きのような要素も薄く、「ただ恐い雰囲気だけ」という感じがします。
例えば、先に iOS でヒットしている「シュタインズゲート」や「428」は登場人物がユニークで、セリフ回しも面白く、場面の変化も多様、突飛な場面もありますが見ていて「楽しめる」内容が展開されます。
そしてその中にサスペンスが織り込まれているため、話に抑揚があります。
しかし忌火起草は、盛り上がりがないと言う訳ではないけど・・・ なにかずっと最初から最後まで重いままだったな・・・ という感じですね。
ホラーなので後味の悪いエンディングが多く、それもプレイヤーの達成感を妨げている要因かもしれません。
また、今作品の特徴であるボイスシステムと、繰り返しプレイすることで異なるシナリオに入れるシステムとの相性が悪く、ボイス再生中はメッセージを進められないため、すでに聞いたセリフを2周目・3週目以降もスキップせずに聞く必要があります。
今作のボイスシステム自体は秀逸だと思いますが、既出のボイスは画面にセリフが表示され、ボタンでパスできるようにして欲しかったのも本音ですね。
ノベルゲームでセリフをカットできないのって、このゲームぐらいじゃないでしょうか。
ただ、イマイチ評判が良くないこのシナリオも、私的には結構楽しめました。 と言うか、懐かしく思えました。
これを言うのはネタバレになってしまうと思いますが、このゲームの良い部分を語る上で必要だと思うので、あえて言ってしまうと、このゲームにはサウンドノベルの初代である「弟切草」を連想させるシーンがあちこちに盛り込まれています。
「弟切草」の続編という訳ではなく、ストーリー上の繋がりもないのですが、登場人物の名前、シナリオ展開、そして後半のシーンなど、弟切草を覚えている人なら「あー、アレかぁ」と思う部分が満載です。
タイトルからして「弟切草」に対して「忌火起草」ですからね。
この点について、プロデューサーやシナリオライターの方は否定とも肯定とも言えないコメントをしているようですが、それはおそらく「自分でプレイして弟切草との関連を見つけて欲しい」という事なのだと思います。
※黄色い野草の向こうに佇む古い屋敷・・・ それは弟切草のオープニングであり、忌火起草のラストシーンへの入口。
忌火起草はここからが本番! ここからの選択はエンディングを左右します。 「少し戻って選択を変更」とかも出来ません。
「タップしないと選択肢を確認できない」「早く選択しないと選択肢が消えていく」という場面も出て来ます。
まあ、「弟切草」はさすがに古いゲームですから覚えている人は少ないでしょうし、そのためか弟切草と忌火起草の類似点についての話はネット上でも驚くほど見かけないのですが、かつて弟切草をプレイした者としては、ファンサービス的な楽しみ方をすることが出来ました。
ですから弟切草の内容をまだ覚えている方にはオススメできますね。
まぁ、そんな人はもう少ないとは思うけど。
価格は 428 と同じく 1800 円。 iPhone アプリとしてはかなり高額ですが・・・
PS3 や Wii で数年前まで 8000 円 とか 6000 円で売られていたことを考えると、安くなったとは言えます。
人を選ぶ内容ですが、ノベルゲームとしては非常にレベルの高い作品であることは確かです。
いずれにせよ、新しいサウンドノベルが発売されたことは iPhone ユーザーとしては嬉しいですね。
・忌火起草 (iTunes が起動、iPhone / iPad 両用)
最後になりましたが、以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。
iOSには家庭用ゲーム機を持たなくても
サウンドノベルを遊べる環境になってほしい
かまいたちも出してくれー