アイドルをプロデュースするという、いわゆる「ギャルゲー」でありながら、ナムコがその開発力を惜しみなく投下したことで高クオリティーの内容となり XBOX 360 で大ヒット。
その後は様々な機種で続編や多くの派生ゲームが登場している、バンダイナムコの代表作である「IDOLM@STER」(アイドルマスター)の iPhone アプリが登場し、話題になっています。
アイドルマスターモバイル i 」です。

このゲームはガラケーで展開していた「位置ゲー」(GPS 機能を利用し現在の位置情報をゲームに利用するもの)のアプリ「アイドルマスターモバイル」の iPhone 移植版で、基本的には同じシステムですが、グラフィックは iPhone の Retina ディスプレイに対応したものにブラッシュアップされています。

正直、このアプリを取り上げるのは虎の尾を踏む行為な気がするのですが・・・
ネームバリューがあるシリーズだけに話題になっているし、本格的な(ガラケーのようなブラウザ型ではなく、ちゃんとした iPhone アプリとしては)初の位置情報ゲームなので、ここでご紹介しておこうと思います。

ただ先に言ってしまうと、ゲームとして楽しめるようなものではなく、ファンアイテムに過ぎない印象です。
ネガティブな記事になっていますが、全国のプロデューサーさん、どうかお手柔らかに・・・

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位置ゲー」とは携帯の GPS 機能を利用して実際にプレイヤーが「移動すること」で、それがゲームに影響を与えるものです。
この手のゲームには「移動距離」が影響するタイプ「現在位置」が影響するタイプの2つ(及びその複合)があり、移動距離が影響するものは実際の移動距離に応じて資金や開発力などが得られるものです。
現在位置が影響するものは、例えば名古屋に移動してコマンドを入力すると「名古屋城攻略!」などのイベントが発生し、特産品などが得られたりするものですね。

この「アイドルマスターモバイル i」は後者の「現在位置」が影響するタイプで、「営業」のコマンドを実行するとその地区、すなわち「その時点で自分が実際にいるエリア」の担当アイドルの知名度が上昇し、そのエリアを制覇したことになります。
営業することでファンも増えていき、目標はファンの増加によるランキングの上昇と、日本の 505 に及ぶ全エリアの制覇となります。

こう言うと「じゃあ『実際に』日本全国を回らないといけないのか!?」と思ってしまいますが、別の土地からの「オファー」が届く場合があり、それを他のプレイヤーに「代行」に出す事が出来ます
例えば東京にいる人が大阪のオファーを受けて、それを代行に出し、大阪にいるプレイヤーがそれを見て代行を実行してくれたら、東京にいる人は東京に居ながらにして大阪の知名度をアップさせられます。
ただし代行で上がる知名度は少量なので、何度も繰り返し行わないと制覇は出来ません。
なお、代行してあげた人はファンが増加します。

営業や代行依頼をするとアイドルの「体力」が減り、なくなるとコマンドは実行できなくなります。
また、同じ土地での営業は1日2回までしか効果が無く、3回行うとマンネリ化して(?)逆にファンが減少してしまいます。

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※誰かが出した代行依頼は「掲示板」という機能に掲示されていきます。
自分で移動して埋められる範囲には限りがありますから、基本的にはオファーの代行依頼で各地区の知名度を上げていきますが、代行でアップする知名度は初期状態だと 25 %前後。
しかも全国には 505 のエリアがあるのですから、普通にやって狙ったエリアの知名度を代行だけで 100 %にするのは相当困難です。
ただ、携帯電話版の「アイドルマスターモバイル」とデータが共用なので、全国にプレイヤーがいて、代行を出せばすぐに誰かが達成してくれますね。
むしろ代行請け負いの取り合いになっている印象も・・・?


このゲームの(というか iPhone 版の)最大のウリはアイドルの 3D グラフィックでしょう。
アニメ絵のようなキャラクターが滑らかな 3D 表現で動き、iPhone を傾けると角度も変わります
アイドルマスターシリーズのグラフィック技術にはナムコはかなり力を入れているようですが、その片鱗はこの iPhone アプリでも見て取れますね。
最初に見た時は「おぉっ」と思います。

アイドルはタッチやフリックをすることで反応を見せ、その反応は内部で蓄積されている「好感度」によって変化します。
またセリフもすべて音声で流れます。 さすがに歌ったり踊ったりはしませんが。

他にはツイッター連動機能やアイドルを表示してのカメラ機能などが盛り込まれています。
担当アイドルは(2012/4 時点では)女性のみ 13 人で、変更は月1回、決められた日にのみ可能です。
なお、アイドルの各データは個別にダウンロードするようになっているため、アプリ本体の容量は少なめに抑えられています。

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※動いたときの髪や影の表現などもリアルです。 反応はタップとフリック(もしくは放置)で変わります。 胸とかタッチすると怒りますが、好感度が上がってくると怒り方にも変化が・・・
ただし、現時点ではセリフや動きのパターンはあまり多くない印象です。
なお、上部の時刻をタップするとそれを喋ります。 「22ふん」とか「43ぷん」とかを全部アフレコしたんでしょうか?


しかしこのアプリ、肝心のゲーム部分は位置ゲームとしてもソーシャルゲームとしても全然楽しめるものになっていません
しかも課金要素がかなり多く、多めの課金を継続しないとまともに楽しめない印象です。

まず、営業に必要な体力消費は(初期状態では) 30 で、体力の最大値は 100 しかなく、また同じエリアでの営業は2回までとなっています。
そして体力は時間経過で徐々に回復していくのではなく、24 時に1日1回、全快するのみです。
つまり移動しない場合、1日に2回コマンドを実行したら、もうそれで終わりです。
移動しながら実行したとしても1日3回で終わり。
よって、(無課金では)ものすごーーくやることが少ない!!

さらに代行したり自分で実行したりする「オファー」も、2日に1回ぐらいしか届かない
その場所に行けなくて代行に出す場合、代行ボタンを押したらもう終わりなので、ますますやることがない。

で、そのやることのなさを解消したい場合は・・・ オファーが来るアイテムや、体力が回復するアイテムを「課金ポイントで」購入する事になります。
ハッキリ言ってこのゲーム、課金し続けないとホントやることがないゲームです。

さらに「位置ゲー」としての面白さである「移動によるゲームへの影響」も、実際にその場所に行って営業コマンドを実行する必要がありますから、頻繁に移動を行う人でないと楽しめるものではありません
エリアは大都市圏は細かく区切られており、例えば東京だと山手線で一周するだけでも多くの地域を制覇していくことが出来ますが、東京以外はそこまで細かくなく、大都市圏以外は「市」単位の長距離移動が必要になります。
このゲームのためだけにそんなに移動するなんて、普通の人はしないでしょう。

多くの人は普段の生活で移動する範囲は、家と会社/学校の往復と、買い物ぐらいだと思います。
よって多くの「位置ゲー」は現在位置だけを反映するのではなく、場所に関わらず「移動した距離」をゲームに反映するものが多いです。
しかしこのゲームにそんな配慮は皆無。 「その場所に行かないとダメ」という、位置ゲーとしてかなり旧式なシステムです。

加えて実際にその場所に移動して制覇したとして、そうするとその土地ならではの「お土産アイテム」をゲット出来るのですが、これが有料。
位置ゲーは移動先の、その土地ならではのアイテムを集めていくのも楽しみなのですが、このゲームでそれを得るにはその都度課金ポイントが必要です。(オファーで獲得できる場合もありますが、確率はかなり低めです)

普通この手のゲームは、少なくとも序盤はプレイヤーを楽しませて誘引するために、もっとやることが多いのが一般的です。
しかしこのゲーム、序盤から「1日2回コマンドを実行して、数字が増えて、はい終わり」。
最初は目立ったイベントも起こりません。
課金演出が多い訳ではありませんが、これでは余程のファンでないと続けるとは思えませんね。

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※とにかく課金して「元気ドリンク」や「オファーチケット」を買わないとまともに進行できない。 ゲーム開始直後からその状態。
まあ無課金で1日1回だけノンビリやっても良いのですが、それだとイベントも少ないしアイテムも入らないし、変化がなさ過ぎて飽きます。
それに新しい土地を制覇したときは、その土地のアイテムぐらいはタダで欲しかったのが本音。
あと課金ポイントは 100pt が 100 円ではなく、若干少なめで、課金リストが高いものから順番に並んでいるというやり方は、いかにも「グリー的手法」でイヤですね。


アプリ本体は無料。 しかし前述した通り、継続した課金がないと続けるのは辛い印象。
iTunes の評価は高めですが、それは「このゲームをプレイする人は元々アイマスのファンだから」だと思われ、一般の人にはとても勧められません
(グラフィックは良いので、それを見て勢いで★5にした人も多い気もします・・・)

ただ・・・ そもそもアイドルマスターというのは楽曲や衣装などが1つ500円とか1000円とか、そんな高額課金の世界。
それでも熱心なプロデューサーさんは喜んで(?)課金しまくっていた訳で、それで買い手と売り手の双方が納得しているのであれば、それはそれで良いのかなぁ、とも思ったりします。
AKB だって握手券や投票券のために CD を数十枚・数百枚買ったりする人がいる訳で、そういう世界はもう、部外者がとやかく言うべきものではないのでしょうね・・・

しかし一般のゲーマーとしてはやはりゲーム性を見る訳で、もうちょっと位置ゲーとしての進行やシステムがきちんと作られていれば、グラフィックや素材は良いのだから、もっとファンの裾野を広げるものにすることも出来るはずで、そうなっていないのは残念と言わざるを得ません。

今後のアップデート次第で変わるかもしれませんが、現時点では(アイマスのためなら死ねるという人を除くと)東京及び大都市圏に住んでいていて、移動を頻繁に行う(もしくは長距離移動を行う)人で、ある程度の継続した課金は構わないという人だけ、試してみても良いんじゃないかな、ぐらいのアプリです。

アイドルマスターモバイル i (iTunes が起動します)