近代戦をボードゲーム風にアレンジした、硬派なターン制の戦術シミュレーションゲーム「欧陸戦争」シリーズ。
その1つ「世界の覇者1945」は、先日行われた iPhone ゲーム大賞 2011 の「戦略ゲーム部門」でも、一般投票で4位に選ばれました。
そんな人気の戦術シミュレーションに最新作が登場しています。
欧陸戦争3」です。

今回はグラフィックがかなりパワーアップしており、起動時にはオープニングムービーまで用意されていて、かなり気合いの入った開発が行われているのが伺えます。
ゲームシステムにも変更部分が多く、以前はボードゲームの雰囲気が強かったのですが、今回はより本格的な戦術シミュレーションゲームになっています
開発は Easy Tech という中国のメーカーで、ここは「要塞包囲」を開発したところでもあります。

今回は19世紀(1800年代)の後半から、20世紀(1900年代)の初頭にかけての世界が舞台になっています。
この間、世界各地でイギリスがやりたい放題やっていて、東ヨーロッパではロシアとオスマン帝国の間でクリミア戦争が起こり、さらにヨーロッパ中が戦渦に巻き込まれた「第一次世界大戦」が勃発しています。
アメリカでは南北戦争が起こって内乱状態に。
日本は明治維新が起こり、直後にイギリスから因縁を付けられ、そのまま日清戦争、さらに日露戦争へと突入していきました。
世界中が「群雄割拠」になっていた時代ですね。

欧陸戦争3

欧陸戦争 1 / 2 、及び 世界の覇者1945 は、戦略マップ上の移動先は常に隣の領地のみで、戦争では兵士の数だけサイコロを振り、それを目の大きい順に並べて、個々の兵士の勝敗を決めていました。
RISK(Lux)型のボードゲームをベースにしたシンプルなルールと言えますが、そのおかげで取っ付き辛い戦略級の SLG を手軽に遊ぶことが出来ました。

一方今回は、従来よりもシステムを本格派の戦略 SLG に近づけた形になっています。
まず、ユニットは「耐久力制」になりました
前作はサイコロを振った後、1つ1つのサイコロの目の大小を比べていましたが、今回は単純にサイコロの目の合計に応じて敵にダメージを与える形になっています。
よって前作は全てのサイコロの目が敵より多ければノーダメージで勝つことが出来ましたが、今回はどんな戦闘でも双方ダメージは免れません。
兵士数は耐久力が半分を切ると、残りの耐久値に応じて減っていくようになっています。

このシステムになったため、今回は「1ユニットが1体」です
前作は同じ場所で生産し続ける事で兵士数を 50 とか 100 とかに出来た訳ですが、今回は同じ場所に置ける(スタック出来る)ユニットは4つまでです。
そしてこのシステムになったおかげで、異なる種類のユニットを同じ場所に置けるようになりました
これは今回の戦略の要になっています。

また、今回はユニットごとに「行動力」が存在します
大砲や機関銃などのユニットは行動力が1なので今まで通りなのですが、歩兵や装甲車は2、騎兵は3の行動力を持っていて、1ターンに2つ先、3つ先の領土まで移動/占領ができます。
行動力がある限り攻撃も複数回行えるので、1つ移動して2回攻撃を行う、と言ったことも可能です。
ただし相手が「塹壕」のある地形で守っている場合、攻撃した時点で行動は終了となります。

勝利条件のルールも変わりました。 今回は「首都」は勝敗とは無関係です
首都は単なる都市であり、前作のように「首都の敵がメチャクチャ硬い」みたいな事もなくなりました。
国家は全ての陸上の領土を失った時点で敗北となります。

欧陸戦争3
※ユニットに書かれている数字は戦力やスタック数ではなく、残りの行動力。
スタックしている場合は台座が増え、画面には先頭の部隊のみ表示されます。
敵から攻撃を受けた際、防戦するのはこの先頭の部隊なので、耐久力が多い部隊を先頭にしておくことが重要。
ユニットの順番は画面右のスタック一覧でユニットをタップする事で変えられます。
今回は「都市」と「工場」の2種類があり、都市には収入がありますが、最大まで上げてもそこで生産できるのは歩兵と騎兵のみ。 工場は規模を上げなくても全部隊を生産できる便利な施設ですが、収入はゼロです。
ユニットの回復はどちらでも行えますが、工場の方が回復量が高い模様。
なお、「要塞砲」は防御力が上がり、大砲で攻撃されても反撃ができる施設です。 さらに相手が軍艦の場合は反撃を2回行えます。 塹壕も防御力が上がりますが、1つの領地にどちらかしか置けません。


欧陸戦争3
※「爆撃」も今回から変更された部分。 今回はまず「飛行場」を設置する必要があり、「爆撃」できるのはその範囲内のみになりました。
「空襲」の価格は安めですが、ダメージは低め。
一方、「空爆」というのが別にあって、こちらは指定したエリアにスタックされている全部隊にダメージを与え、さらに都市や工場の規模も減らせます。 ただし費用は高いです。
戦略爆撃に使うには、今回は「空爆」でなければなりませんが、技術力も4以上必要なのが難。


ユニットは「歩兵」「大砲」「戦車」といった前作からあるものの他に、「騎兵」「機関銃」「装甲車」などが加わっています。
騎兵は歩兵より少し強くて、行動力に優れる部隊。 機関銃は歩兵と騎兵に2回攻撃が出来る部隊です。
装甲車は戦車のやや弱いバージョンで、今作には「技術」というステータスがあり、機関銃は3、装甲車は4、戦車は5の技術力が必要になります。
技術を上げるには多額の資金と数ターンの経過が必要になるので、そう簡単には上げられません。
つまり、装甲車は技術が足りない頃に使う戦闘車両とも言えますね。

大砲」が(相手が大砲でなければ)反撃を受けない点と、「戦車」が敵を全滅させた時に電撃戦(行動力回復)になる点は従来通りです。(装甲車にも電撃戦はあります)
今回は第一次世界大戦らしく、大砲の使い方がかなり重要で、技術が高くないうちは大砲が主力になります。
大砲は威力が高い上に「大砲や軍艦以外を攻撃した時に反撃を受けない」という有利な特性を持っていて、攻めだけでなく守るときも大砲でないと一方的に撃たれてしまいます。
歩兵や装甲車などと一緒に行動させ、相手が歩兵や騎兵ならば大砲で安全に耐久力を削り、相手が大砲なら装甲車で数を減らし、補充しやすい歩兵でトドメを指す、といった諸兵科連合攻撃も今回は有効です。

なお、今回は軍艦ユニットも別になっていて、駆逐艦、巡洋艦、戦艦があります。
陸上ユニットが海上を移動するのに船を付加しなければならないのは前作と同様ですが、今回は海上移動中は「輸送艦」になります。
輸送中に攻撃されても本来のユニットと同じ戦闘力で戦えますが、やはり軍艦より弱いですね。

また今作に追加された新しい要素に「特殊カード」と「司令官」があります。
特殊カードは前作で国ごとに用意されていたものに似たものですが、今回はどの国でも同じものを使えます。
使用するのに多額の資金と工業力が必要で、さらに一度使うとしばらく再使用出来ませんが、部隊を強化したり回復させたりする強力な効果を持ちます。

ユニークなのは「司令官」で、これは言わば「自分が指揮しているユニット」です。
司令官は「勲章」を消費して昇進(パワーアップ)させることが可能で、マップ内のユニット1つに付加できます。
勲章は勝利する事で評価に応じた数だけ貰え、これが長期的な育成要素になっていると言えますね。

欧陸戦争3
※今回は「指揮官」という長期的なパワーアップ要素も導入されました。
指揮官を付加したユニットは強力ですが、相手国にも指揮官ユニットがいて、かなり手強いです。
勲章はシナリオマップのアンロックなどにも使用し、課金で購入する事も出来ます。


欧陸戦争3
※スペシャルカードの「補給線」は指定した場所の全ユニットを全快できるので、かなり便利。
今回のカードは種類別に分かれていて、タブで切り替える方式になりました。
カードの絵はなかなか凝っていて、古いイラスト調の、ちょっと汚れたようなデザインになっています。
なお、部隊の能力はカードに書かれている通りではなく、国によって補正が付きます。
ドイツは戦車が強いとか、日本は歩兵が強いとか、おなじみな感じですね。


ゲームモードは「帝国モード」「戦役モード」「争覇モード」の3つ。
帝国モード」は俗に言うキャンペーンで、イギリス、ドイツ、アメリカ、日本などの国を選び、その国ごとに用意されたステージをクリアして行きます。
例えば日本の場合、イギリスの軍艦を追い払った後、日清戦争、日露戦争と続いていきます。
戦役モード」は俗に言うシナリオモードやフリーモードで、史実に沿った戦いのステージを、好きな陣営でプレイする事が出来ます。

争覇モード」はいわゆる全国モードですが、今回は全世界が舞台ではなく、ヨーロッパ地域、アメリカ地域、アジア地域の3つに分けられました
日本を選んだ場合は中国・ソ連東部・日本の一帯のみが舞台となります。
しかしその分、各エリアの区分けは前作より細かくなっており、中立国なども存在します。
さらに本体を交互に使用して行うマルチプレイも用意されています。

ゲームの難点は特にありませんが、強いて言うと「ターン終了」のボタンを誤って押しやすいのが気になります。
カード(コマンド)の決定を画面右下のボタンで行うのですが、ターン終了ボタンもマップ画面の右下にあるので、つい誤って押す事があり、ターン制シミュレーションゲームで間違ってターン終了するのはかなり手痛いミスになってしまいます。
私の不注意もあるのですが、出来れば「終了してよろしいですか?」みたいな確認は欲しかったかも。

あと、今回は本格的な SLG に近いシステムになりましたが、そのために前作のようなボードゲーム風のルールではなくなったので、ゲームが解りにくくなったのは否めません
ちょっとコアゲーマー向けになった感じですね。
まあ耐久力制の方が解りやすい、という人も多いかもしれませんが・・・

欧陸戦争3
※上の画像は大日本帝国の選択画面。 絵が超シブい。
しかし日本は島国なので海を渡っていく必要があり、さらにキャンペーンの最初のステージでいきなりイギリスの軍艦に囲まれているため、ちょっと難度が高い。
砲台(要塞砲)がある場所で防戦すると軍艦に2回の反撃を行えるので、これを活用するため大砲のある基地や都市で守りを固めて、相手の軍艦を少しずつ削っていきましょう。
軍艦は回復が出来ないので、防戦に徹していればいずれ倒せるはずです。
なお、オプションの「ゲームスピード」でコンピューターのターンの速度を調整できるので、敵が多くなって時間がかかるようになったら、スピードを速めておきましょう。


価格は 300 円
前作以上のボリュームがあり、クオリティーもアップ、この内容で 300 円はお得だと思います。

以前と比べるとシステムがガラッと変わったので、前作・前々作をプレイした方だと逆にこの変化に戸惑うと思いますが、内容が解ればより戦略性が増していて、バランスも良くなったのが解ると思います。
以前は「良く出来たインディーズ(小メーカーや個人)のアプリ」という感じだったのですが、今回は完全に「ゲームメーカー製のアプリ」という感じになりましたね。

戦略/戦術シミュレーションが好きな人の期待を裏切らないデキで、この手のゲームが好きな方には文句なくオススメです。

欧陸戦争3 (iTunes が起動します)
欧陸戦争3 for iPad (iPad 専用版。価格は変わりません)