優れたタイピング練習ソフトであると同時に、ゲームとしても非常に面白く、パソコンのみならず家庭用ゲーム機版やアーケード版まで登場した大ヒット実用ゲーム「ゾンビ打 ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド」。
このゲームでブラインドタッチを学んだ人は多いのではないでしょうか?

かくいう私もこのゲームのおかげでタイピングが早くなり、パソコンを扱う上で大いに役立ちました。
そんな タイピング・オブ・ザ・デッド のスマホ用フリック入力練習バージョンが先日公開されています。
ゾンビ打 FLICK OF THE DEAD」です。

内容は「ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド」をそのままスマホ版にしたような形で、ストーリーやステージ構成などはまったく同じです。
全体的にスマホ用に簡略化されているのが残念ですが、フリック入力練習ソフトとしては現時点の NO.1 と言って良いでしょう。
キーボード練習と同じく、フリック入力練習も「ゾンビ打」が定番になるのでしょうか?

ゾンビ打 FLICK OF THE DEAD

このゲームは元々「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」というアーケードゲームを元にしていました。
次々と襲ってくるゾンビを銃でバリバリ撃ちながら進んで行く、3D のガンシューティングゲームです。

それを「出題されるワードをキーボードで入力する事でゾンビを倒していく」という内容に変化させたのが「ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド」です。
オリジナルの演出やゲーム性はそのままに、タイピング練習にも活用できる内容にしたことで、タイピング練習ソフトとしては破格のクオリティとなりました。

ゾンビが次々襲いかかってくるゲームですが、出題されるキーワードにはちょっと笑えるものが多く、ゾンビもピコピコハンマーやネギを持って走ってくるなど、マジメな内容なんだけど全体的に「おバカ」

ゾンビと共に現れるワードを時間内に入力できないとゾンビの攻撃を受け、ライフが減っていきます。
0 になるとゲームオーバーですが、入力ミスをせずにゾンビを倒していくことで「コンボ」が増えていき、コンボゲージが増加していきます。
そしてゲージが最大になるとライフが回復するので、ミス入力を抑えることも攻略に繋がります。
ゲーム中にタルや箱などを撃つ(その場所に出てくるワードを素早く入力する)と回復アイテムなどが出現することもあります。

ステージの最後にはボスが現れます。
ボスは「特定の時間しか入力出来ない」「出題される問題の正答を入力しなければならない」などの、ちょっと変わった入力が必要になります

ゾンビ打 FLICK OF THE DEAD
※左は強敵、三択問題のボス。 正解の回答を素早く判断して入力しなければならない。
他にも長文問題や、途中で入力が出来なくなるボスなどが存在します。
右の画像はステージの合間に入るストーリーシーン。 単なる練習ソフトではなく、ゲームとして良く出来ているのが「タイピングオブザデッド」がヒットした理由ですね。


ステージは全部で6つ。それぞれに特徴があり、1ステージ目は入門編になっていて、キーワードは1文字や短い単語のみです。
小さな敵が一斉に襲いかかってくるシーンもありますが、ステージ1だとその時に表示されるワードが全て「同じ方向にフリックする文字」になっていて、ちゃんと入門編らしい内容です

ステージ2からは文章になったワードが出てきて、たまに長文も出題されるようになります。
同じセガのフリック入力ゲーム「ミクフリック/初音ミク」は歌詞の一部分を飛び飛びで入力する形式だったため、入力文が意味のない文字列になっており、あまり練習にはならなかった印象がありますが、この「FLICK OF THE DEAD」は意味の通る文章を入力し、小文字や濁点、「、」や「!」などもあるため、ちゃんと練習ができるソフトになっています。

ただ、「ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド」をやっていた人間としては、残念な部分も多いです。
まず映像部分の画質がすごく荒い。 これは「昔のゲームを iPhone で表示しているから」とかいうレベルじゃなく、大幅にグラフィックの質自体が落とされています

このゲームはフリック入力の感度が重要で、実際にミクフリックは旧機種だと「処理が重くなった際に入力タイミングがズレる」という問題が発生していたため(現在はアップデートで修正済み)、画質を出来るだけ落として処理を軽くし、感度を損なわないようにしているのだと思われます。
しかしそれにしても「もうちょっと何とかならないのか」と思ってしまうほど荒いので、もしかすると Android での展開も考慮されていて、グラフィック性能が低い機種でも動かせるようにしているのかもしれません。

また、オリジナルの「ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド」にあった「ルート分岐」が一切なくなっていて、どのステージも1本道です。
さらに演出もかなりカットされていて、例えば撃ったら橋の上からゾンビが落ちてくるとか、素早くゾンビを倒せば町の人を助けられるとか、ボス戦の前に本がめくられてボスの挿絵が出てくるとか、そういう演出はすべてなくなっています。

全体的に、カットできる部分は全部カットして負荷や容量を軽くしているのが伺え、iPhone ではここまでの軽減は必要ないと思うので、この辺も Android に合わせているのかなぁ、とか思います。

あと、初心者向けの入力方法のチュートリアルや、ミスりやすい文字の傾向と練習、素早さや正確さなどをグラフ表示する機能もなくなっています。
フリック入力ですからキーボードのブライドタッチほどの説明はいらないとは言え、やはりこれらは「実用練習ソフト」としては欲しかったのが本音ですね。

ゾンビ打 FLICK OF THE DEAD
※ステージ1に出てくる小型の敵は、同じ方向にフリックする文字が集まっている。 この辺の配慮は感心します。
ただ、こうしたものがあるのはステージ1だけなので、出来れば他のステージにも用意して欲しかったかも。
右の画像は長文入力のボス戦。 恐ろしい巨人が襲いかかってきてるのに、入力するのは「海に向かってバカヤロー」。 このおバカさがいいです。


ゲーム部分での問題点は、入力中のワードをキャンセルする機能がないこと。
「ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド」は長めの文章の入力中、なにか物を投げられてそちらを先に撃墜しなければならない時、入力中のワードを ESC キーでキャンセルし、飛んで来るものを先に撃ち落としてダメージを防ぐ、というのが攻略の1つになっていました。

しかしこの「FLICK OF THE DEAD」はキャンセルがないから飛んで来るものを撃ち落とす方法(ターゲットを変える方法)がなく、食らってダメージを受けるしかないのです。
これはゲーム的に欠陥だと言えます。

iTunes のレビューでは課金についての批判が続出しています
このゲームは現在(2012/5/11)は発売セールで無料で公開されていますが、その状態で遊べるのは1章のみ。
2章以降は各章が切り売りで、それぞれ「細切れの追加課金で」購入していく必要があります

このゲーム、2章の価格は 170 円なのですが、前の章を S ランクでクリアするとそれが半額になるというユニークな仕様があり、各章切り売りなのもそのためだと思いますが・・・
しかしそれでも「細切れ課金」にユーザーの批判が集まるのは iPhone アプリでは常識な訳で、おまけに2章~4章は 170 円なのに、5章と6章になると急に 250 円になるという・・・
いきなりそれは反則だろ、言いたくなってしまいます。

こんな仕様だと iTunes で文句を言われるのは避けられませんね。
(それでなくても無料アプリに対する iTunes のレビューは手厳しいし・・・)

ゾンビ打 FLICK OF THE DEAD
※ S ランク達成で次のシナリオが半額! これはがんばって練習しようという気になれます。
このアイデア自体は秀逸だと思うのですが、ユーザーに何度も繰り返し出費を意識させる「細切れ課金」はやっぱり色々な意味で「下策」。
また、終盤の章だけいきなり値上がりするというのは、さすがに嫌らし過ぎます。


という感じで、気になる部分も多いのですが、それでも冒頭で述べたように「このゲームが iPhone で NO.1 のフリック入力練習アプリ」だというのは変わりません。
元々「タイピング・オブ・ザ・デッド」は面白いですからね。
そこはフリックになっても変わらないし、練習にもなる
と来れば、スマホでも定番になっておかしくないでしょう。
十分にオススメできるクオリティーはあると思います。

ただ、値段は現在の本体無料セールの状態でも、S ランクによる半額ボーナスを加味しない場合、170円×3 + 250円x2 で最後までプレイするのに 1010 円が必要になります。
えぇ、俗に言う「タダより高いものはない」系のアプリです。
フリック入力がバリバリに早くて S ランク取れまくる人だと半額になりますが、後半はかなり厳しいと思います。

加えて「ドリル(ミニ練習)モード」と「ボスモード」もそれぞれ 170 円。 ドリルモードは「源平大戦絵巻」などのセガのソフトをインストールする事で得られるポイントで貰えるのですが、とにかく課金コンテンツだらけな印象はあります。

と言う訳で、ゲーム自体は十分練習になるし面白い。でも課金課金で最終的には結構高い。
それをどう考えるか、と言ったところですね。

・ゾンビ打 FLICK OF THE DEAD (現在ストアから削除されています)