現代物理学理論と秋葉原のオタクの話が融合したストーリーの面白さで話題となったアドベンチャーゲーム「STEINS;GATE」(シュタインズゲート)
そんなシュタインズゲートには「その1年前の渋谷が舞台」という、共通の世界観を持つ別のアドベンチャーゲームが存在します。 「CHAOS;HEAD」(カオスヘッド)です。

その CHAOS;HEAD に新ルートを追加し、内容をボリュームアップさせたものが「CHAOS;HEAD NOAH」(カオスヘッド・ノア)で、 2009 年に XBOX 360 で発売され、2010 年には PSP 版も登場していました。
そして 2010 年末、その PSP 版をベースにしたものが iOS にも移植されています。

実は私は iOS でこのゲームが発売されていることを全く知りませんでした。
今年 Android 版が公開されたという記事を見ていて、その中に「iPhone / iPad ではすでに1年以上前に出ていた」という内容を発見、今頃になって気付いた次第です。

物語としては「サイコホラー・サスペンス」と言えますね。
シュタインズゲート以上に「オタク」な展開と見た目のため、かなり人を選ぶ内容ではありますが、シュタインズゲート並のストーリーの面白さと、そして「まとわりつくような恐怖感」は健在です。

CHAOS;HEAD NOAH(カオスヘッド)

主人公はアニメ好きで美少女フィギュア好きの、自ら「キモオタ」を自称する高校生。
高校生と言っても学校には最低限しか行かず、コンテナの部屋に篭もったままパソコンでオンライン RPG をひたすら廃人プレイし続ける準引きこもりで、「ふひひ」と笑う2ちゃんねらー(このゲームでは@ちゃんねらー)の、どう考えても主人公向きではない「超オタク」です。

主人公がコレなので、セリフなどもエロ妄想やオタク全開、さらに 2ch 用語やネットスラングが飛び交うもので、この手のサブカルチャーに付いていける人でないと辛いでしょうね

そんな主人公が渋谷で起こる猟奇連続殺人事件に巻き込まれ、さらに妄想と現実の区別が付かなくなっていき、精神的に追い詰められていく物語が展開されます。
「猟奇殺人」が起こるため、残酷なシーンや大量の出血があるシーンも出てきますので、その手が苦手な方はご注意下さい。
ただ、パソコン版から家庭用ゲーム機版に移植される際に表現や画像に規制がかけられたようで、PSP 版やスマホ版は(オリジナルと比べると)かなりマイルドになっているようです。

全体的に「圧迫してくるような恐怖」を感じ続ける内容で、その点では重苦しいストーリーではあるのですが、各所に出てくるオタク的ギャグやネットスラングが重い雰囲気を緩めてくれます
この点はサスペンスとオタクな展開が交互に繰り返され、ストーリーにメリハリがあったシュタインズゲートに似ていますね。

CHAOS;HEAD NOAH(カオスヘッド)
※渋谷で起こる「ニュージェネレーション」と呼ばれる猟奇連続殺人事件。
それはかなり凄惨な事件ばかりですが、規制の影響か iOS 版ではそこまで残酷なシーンや凄惨な表現は出て来ません。
よってホラーという程ではないのですが、しかしショッキングなシーンが全くない訳ではないので、ぜんぜんダメな人はご注意を。


CHAOS;HEAD NOAH(カオスヘッド)
※主人公はオンライン RPG の廃プレイヤーで、そこでは「疾風迅雷のナイトハルト」と呼ばれています。 この名前はシュタインズゲートにもちょこっと出て来ます。
余談ですが、私は以前オンライン RPG の情報サイトを運営していた頃、それに関する記事を書きたいと言うことで、雑誌ライターさんの取材を受けたことがあります。
しかしその時の質問内容は、「あなたに友だちはいますか?」「最近外に出たことはありますか?」「現実とゲームの区別が付かなくなったことはありますか?」などなど・・・
もうホント、このゲームをやってると、その時のことを思い出さずにはいられませんでした。
やはりゲーム、特にオンラインゲームってのは、外から見たら「引きこもり」や「オタク」の象徴なんでしょうね。


アドベンチャーゲームと言うよりは、文章を読むだけで進行していく「ノベル(小説)ゲーム」であり、主人公の行動を細かく選択するような場面はほとんどありません。

しかし特定の場面で急に視界が狭まり、緑と赤のボタンが現れ、どちらかを選択する「妄想トリガー」と呼ばれるシーンが現れます。
どちらを選ぶかによって、その後に主人公が行う「妄想」が変わります。

それはあくまで妄想に過ぎないのですが、主人公は徐々に妄想と現実の区別が付かなくなっていくため、ストーリーや演出的に重要であり、状況によっては物語が分岐することもあります。

主人公は「キモオタ」なので、エロ妄想が爆発することもあり、「iPhone でコレって大丈夫なのか?」と思うシーンもありますね。

CHAOS;HEAD NOAH(カオスヘッド)
※妄想トリガーが発動すると BGM が心臓の鼓動音に変わるため、嫌が応にも緊張感が増します。
特に説明はありませんが、緑はポジティブ(もしくはエロ的)な妄想で、赤はネガティブな妄想になります。
またやや気付きにくいのですが、ボタンを押さない(もしくは押したボタンをもう一度押してキャンセルする)ことで、「妄想しない」という選択を選ぶこともできます。


シュタインズゲートと同じく、セリフは全編フルボイス!
画質も iPhone / iPod touch の Retina 解像度に対応しているため、ベースは PSP 版のようですが、グラフィックは PSP より XBOX 360 の方に近いと言えます。

難点(?)は、いかにも「オタク向け」なこと。
ストーリー自体はアニメ的ながら一般の人でも楽しめるものだと思いますが、なにせ主人公が「重度の」オタクですから、ネット文化に詳しくないと解らないギャグやセリフ回し、行動などが多いので、完全に「2ちゃんねるを知っている人向け」です。
用語解説(Tips)は用意されていますが、シュタインズゲートのように説明がある用語が色分けされているといったことはなく、ネットスラングのギャグは元ネタを知っていないとどのみち理解できないでしょう。

加えて見た目が、良くも悪くもモロにアニメ絵。
シュタインズゲートもネットカルチャーに詳しい人向けと言えましたが、グラフィックはどちらかと言うとイラスト風でした。
一方、こちらはおもいっきり萌えアニメ絵なので、その手が好きな人には良いけど、そうでない人だと手を出し辛いでしょうね。
ストーリーも全体的には実在の渋谷を舞台にしたサイコホラーですが、終盤はかなりアニメ的になります。

こうして考えると、シュタインズゲートってオタクをテーマにしながらも、まだ「一般向け」だったのかなぁ、なんて感じますね。

CHAOS;HEAD NOAH(カオスヘッド)
※2ch、Google、Yahoo、まとめサイト・・・ などに「似たもの」が、普通に出て来ます。
ネットの恐さなどもちょっと表現されていますね。
ちなみに実体験ですが、2ch の俗に言う「祭り」は信用性が非常に低いのでご注意を。
よく「火のない所に煙は立たず」と言いますが、一旦祭りになると全く火の気がないものにも「誰かが放火」するか「どこからか飛び火」して、「どんどん延焼」します。 まあ今さら言うまでもないんだろうけど。


CHAOS;HEAD NOAH(カオスヘッド)
※主人公は好きなアニメのキャラと「脳内会話」をする、美少女フィギュアにハァハァしている HENTAI ですが、一人で電話をしながら妄想をリアルに垂れ流す「中二病」よりは、まだ恥ずかしくない気はします。
しかしこの絵柄で美少女キャラ満載だと、見た目は完全にギャルゲーなので、抵抗がある人は多そう。
一方、iTunes のスクリーショット1枚目の「血まみれの少女の画像」もどうかと思います・・・ 買う気なくすだろアレ。


価格は 3000 円シュタインズゲートと同じく、iPhone アプリとしてはかなり高額です。
しかし元はパソコンや家庭用ゲーム機のソフトであったためボリュームは相当なもので、本編だけでもクリアまで 10 時間はかかります
さらに一度クリアした後は各ヒロインのストーリーへの分岐や、隠しエンディングへの分岐などが発生するため、真のエンディングを見ようと思ったら相当な時間がかかりますね。

ストーリーも先が気になってしょうがなくなる、なかなか止められないもので、価格分の面白さは十分にあります。
ただし前述したようにネットカルチャーに詳しくない方にはシュタインズゲート以上に勧められないので、相当に人を選ぶゲームである事も確かです。
猟奇殺人が出てくる、エロ表現が多い、という点も万人には勧め辛い点でしょうか。
また全編フルボイスのため容量は大きく、1.8 GB 以上あるので注意して下さい。

シュタインズゲートが楽しめた方なら、こちらも間違いなく楽しめるでしょう。
とりあえず iPhone / iPad のノベルゲームとしては、トップクラスであることは確かです。

CHAOS;HEAD NOAH (iTunes が起動します)
CHAOS;HEAD NOAH HD (iPad 専用版。価格は同じです)
CHAOS;HEAD NOAH Lite (本体無料+追加課金版)