1983 年にボードゲームの表彰「ドイツ年間ゲーム大賞」を受賞した、ロンドンで怪盗と刑事が追跡劇を繰り広げる非常に有名なドイツゲーム「スコットランドヤード」。
それが先日、iPhone / iPad のアプリとなって公開されました。
Scotland Yard」です。

このゲームは数多くのメディアで取り上げられ、「ドイツゲーム」というものが広まる先駆けとなった印象があります。
だからドイツゲームのことを良く知らなくても、名前だけは聞いたことがある人も多いでしょう。
実物には目線で位置がバレないよう、怪盗役の人がかぶる「帽子」が付いていたのが特徴的です。

しかしこのゲームはプレイヤーが5人ぐらいいないとまともに楽しめないルールだったため、ボードゲームとしてはプレイするための敷居が高く、手放しで賞賛できるシステムではなかった気もします。

もちろん iPhone / iPad 版は足りないプレイヤーをコンピューターが担当してくれるので、その点はカバー出来るのですが・・・
このゲームはいわゆる「駆け引き型」なので、コンピューターゲームでは面白さを再現しにくいタイプで、その点のデメリットがあることも否めません。
しかしアプリとしての完成度はかなり高いですね。

Scotland Yard(スコットランドヤード)

怪盗「ミスターX」役の人が1人と、それを追うスコットランドヤード(ロンドン警視庁)の刑事5人に分かれてプレイするボードゲームです。
勝利条件は「ミスターX」側は 24 時間(24 ターン)逃げ切ること、刑事側はそれまでに「ミスターX」の場所を推測して追い詰め、捕まえることです。

各プレイヤーは自分の番になると、「タクシー」「バス」「地下鉄」の3つの交通機関を使ってマスの上を移動します。
マスにはタクシーでしか移動できない黄色のマス、バス亭のある赤いマス、地下鉄駅がある青いラインの付いたマスの3種類があり、タクシーは隣のマスに移動するのみですが、バスは赤いライン(バス路線)で繋がった次のマスまで一気に移動できます。
地下鉄はさらに遠くまで移動可能です。

ただし刑事は交通機関を使う度に「チケット」を消費します
チケットには「タクシーチケット」「バスチケット」「地下鉄チケット」の3種類があり、チケットが無くなった交通機関は利用できません。
よって1つの交通機関ばかり使っていると後で困ります。

一方、怪盗「ミスターX」はチケットの数に制限がなく、好きな交通機関を使って移動できます。
また、ミスターX がどこにいるかは刑事には解りません
ただしミスターXが何の交通機関を使って移動したかは、移動後に刑事側に知らされます
よってバスや地下鉄を利用すると、刑事に移動先の手がかりを与えてしまうことになりますね。
タクシーは足取りを捕まれにくいのですが、1マスずつしか移動できないのが難点です。

Scotland Yard(スコットランドヤード)
※画像の白のプレイヤーの場合、タクシーで隣のマスに、バスで2マス先に、地下鉄で3マス先に移動できます。
バスや地下鉄は乗る場所も移動先もバス亭(赤マス)や駅(青マス)でなければなりません。


また、ミスターXは「ダブルムーブ」と「ブラックチケット」という2つの特技を持っています。
ダブルムーブはその名の通り、1度に2回動く特技です。
このゲームの時間経過は「ミスターXが動いた回数」なので、ダブルムーブを使うと時間も2時間進みます。
(よってダブルムーブは正確には、2回動く特技と言うより、次のターンの刑事の動きを止める特技です)

ブラックチケット」はどの交通機関を使ったのか解らなくする特技で、バスや地下鉄で移動するときのカモフラージュに使えますし、バスや地下鉄を使ったと見せかけてタクシーで移動し、捜査を攪乱することも出来ます。
また、マップ内の川には「ボート」の航路が描かれていて、ブラックチケットを使うとこの航路を使って移動する事もできます。 このボートによる移動はミスターXしか行えません。

もちろんこれらの特技は何度でも使える訳ではなく、ダブルムーブは2回、ブラックチケットは5回のみです。
これらをどこで使うかも逃げ切る際のポイントになります。

ミスターXの居場所は「目撃情報」として、一定時間が経過するごとに全員に告知されます
まず3時間経過時(ミスターXの3回目の移動後)に告知され、次いで8時間、13 時間、18 時間、そして最終ターンの 24 時間の時に告知されます。
よってミスターX はどんなにうまく逃げていても、一定時間ごとに居場所がバレる事になります。 これをうまく加味して移動することも重要になりますね。

Scotland Yard(スコットランドヤード)
※破線のコマは、ミスターXの目撃情報があった場所を表しています。 基本的に刑事はその場所に向かうので、自分が怪盗の場合は目撃情報を逆手に取ることも必要。
逆に刑事側は人数を利用して、相手の移動ルートを塞ぐように移動することが大切です。
2x と人のマークのボタンはミスターXの特技を使うボタン。 でも「読み合い」のゲームなので、特技を使ったということ自体も、刑事にとっては情報の1つになります。


Scotland Yard(スコットランドヤード)
※画面の一番下にある「Mr.X Log」がミスターXが利用した交通機関の足取り。
T はタクシー、赤はバス、青は地下鉄、人のマークはブラックチケットにより不明。
ミスターXも刑事も「動かない」という選択はできず、必ず毎ターン移動する必要があります。


継続的にプレイするキャンペーンモードのようなものはありませんが、対戦形式はローカル、Bluetooth / Wifi 、Game Center の3種類を選ぶことが出来ます。
ただ、カルカソンヌTicket to Ride のような独自サーバーでのマッチングが行われる訳ではないので、事前に知人と示し合わせていないとオンライン対戦を楽しむのは困難です。

1人でやる場合、自分が「ミスターX」として遊ぶ場合は面白いのですが、刑事側では「仲間と協力する」「相談しながら追い詰める」というスコットランドヤード本来の楽しみが得られないので、イマイチ感があります。
刑事でやる場合は複数のプレイヤー(もしくは刑事全員)を1人で操作した方が面白いと思いますが、HARD にしても COM の Mr.X はそんなに手強い訳ではありません

自分がミスターXの場合は、コンピューターの刑事はインチキせず、ちゃんとこちらが利用した交通機関などを元に「推論」を行って動いているようで、元々ミスターX側は1人でプレイする立場ですから、ゲーム的にも違和感はありません。
刑事の横をすり抜けていくドキドキ感もあって、結構楽しめますね。

グラフィックはかなり綺麗で動きも滑らか、新 iPad の大画面 Retina ディスプレイにも対応しています。
BGM も探偵風の非常に雰囲気あるもので、アプリの完成度だけで言えば(独自のオンライン対戦の環境がない点を除けば)カルカソンヌTicket to Ride にも匹敵します。

以下は Youtube で公開されている公式のプレイムービーです。



定価はまだ不明・・・ 現在はセール価格として 450 円で販売されています。
iPhone と iPad の双方に対応したユニバーサルアプリです。

相手の裏をかくような「心理戦」が楽しいボードゲームなので、1人でやってもその魅力を全て体験できる訳ではないのですが、十分に楽しめる出来栄えであることは確かです。
ドイツゲームの中では「大定番」と言えるタイトルなので、それが iOS でも遊べるのは嬉しいですね。

ボードゲーム / ドイツゲームが好きな方にはオススメできるアプリです。

Scotland Yard (iTunes が起動します)