ボードゲーム愛好家の投票によって選出される「ドイツゲーム賞」で 2006 年度の1位に輝いた、材料を集めて街や城を建築し、ポイントを稼いでいくボードゲーム「Caylus(ケイラス)」。
それが iPhone / iPad 用のアプリになっています。
名前はそのまんま「Caylus(ケイラス)」です。
専門家によって選出される「ドイツ年間ゲーム大賞」では特別賞でした。

このゲーム(のオリジナル版)は1プレイが2~3時間ほどかかる、かなり重量級のボードゲームだったようです。
iPhone / iPad 版は様々な処理をコンピューターが行ってくれるため、1人でプレイすれば 30 分程度で終わるのですが、それでも1プレイ 30 分というのはドイツゲームのアプリとしては長めですね。

基本ルールはそれほど複雑ではないのですが、そこに細かいルールが数多く付け足されていて、全体として難解になっているのもゲームとしては難点でしょうか。
ただ、多くのボードゲームファンからは「やり応えがある」として高評価を受けています。

Caylus(ケイラス)

プレイヤーは工務店の頭領となり、職人を各施設に派遣して、王様に命じられた城と城下町の建設を行います
施設は特別施設と一般施設の2つに分かれていて、川を挟んで上側が特別施設、下側が一般施設です。
一部を除き、各施設に職人は1人しか配置出来ません。 施設の利用は「早い者勝ち」ですね。

プレイヤーは自分の番に職人を1人、空いている好きな施設に派遣できます。
そして派遣した先が食料を産出する施設なら食料を、石材を産出する施設なら石材を手に入れる事が出来ます。

材料には「食料」「木材」「石材」「布類」の4つと、やや特殊な材料である「金塊」があり、これとは別にお金(コイン)が存在します。
職人の派遣には費用(コイン)が必要で、施設の中には材料を1つ売ってコインを得られる「市場」や、無条件でコインを得られる「交易所」なども存在します。

材料を集めたら、「大工」や「石工」といった施設に職人を派遣して街の建物を作るか、「」に職人を派遣してお城の建築に参加することが出来ます。
街の建物を造ると、それが実際にボード上に配置され、後で施設として利用できるようになります
また、自分が建てた施設を他の人が利用すると「名声」を得られ、自分が利用するときは派遣費用が安くなります。

城の建築に参加することでも多めの名声を得られ、さらにそのターンでもっとも城の建設に貢献したプレイヤーには王様からのご褒美も与えられます。

Caylus(ケイラス)
※基本的に、1つの施設に職人は1人しか派遣できません。 だから先に順番が回ってくるプレイヤーほど有利。
建物を建設すると名声を獲得できますが、建設するには大工や石工に職人を派遣する必要があり、他プレイヤーに先に派遣されてしまうと自分は建設できません。 おまけに建物は1種類1つずつしか建てられないので、建築も早い者勝ちです。
このゲームは結構「資源の取り合い」「足の引っ張り合い」な内容で、直接の取引や収奪はありませんが、プレイヤー同士の相互作用は大きいです。


1ターンに職人は6人まで派遣できますが、誰かがパスをする(そのターンでの配置を終える)と、その人数に応じて職人の派遣費用が高くなっていきます
コインは毎ターン2枚貰えますが、それだけではいずれ足りなくなるので、コインの確保と節約も重要になりますね。 なお、最初にパスした人はコインを1枚貰えます。

全員が職人の配置を終えると、各施設から収益を得られるのですが・・・ その前に「Provost」(長官)の移動が行われます。
長官は各プレイヤーが順番に(職人の配置をパスした順に)動かせ、1マス動かすごとにコインを1枚消費します。(最大3マスまで)
そしてこの長官より前にある施設は営業許可が下りず、そのターンに効果を発揮しません

例えば、ライバルが職人を配置した施設が長官の1つ後ろにある場合、コインを払って長官を1マス後ろに動かす事で、その施設を無効化することが出来ます。
逆に自分が職人を置いた施設が長官の前にあって無効化されている場合は、コインを払って長官を前に動かす事で、その施設を有効にすることが出来ます。
コインも無駄使い出来ないので、そうそう長官を動かしまくる事はできませんが、ライバルを直接妨害できるため、ゲームの大きなポイントになります
また、長官のすぐ後ろの施設は無効化されやすいので、そこに職人を置くのはリスクを伴う事になりますね。

長官の移動が終わったら、有効な施設から材料を得たり、建物の建築を行う事が出来ます。
実際には、各ターンは「職人の配置」→「特別施設の効果発揮」→「長官の移動」→「一般施設の効果発揮」→「城の建設」の順で進みます。

Caylus(ケイラス)
※白衣を着た長身の人が、ワイロ大好きなお代官様(長官)。 越後屋の皆さんから受け取ったお金に応じて前後に行ったり来たりします。
後で作られた施設ほど高い効果を持つのですが、新たに建てられた施設は道の前方に配置されていき、前方にあるという事は長官の前や近くにあるという事なので、無効化されやすい事になります。
この辺のゲームバランスがうまいですね。


特別施設には長官をコインなしで動かせる「商人ギルド」、順番を変える「厩舎」、常に職人をコイン1枚で配置できるようになる「宿屋」などがあります。
前述したようにプレイヤーの順番や長官の存在はかなり重要なので、これらの活用も勝利のカギとなります。

各ターンの最後には、王様の本来の目的である「城の建設」が行われます
建設に参加できるのは城に職人を配置した人だけですが、城には複数のプレイヤーが職人を配置できます。
城の建設には「食料と、木か石か布のうちどれか2種類」の、合計3種類の材料が1つずつ必要です。
必要な材料を2セット以上持っている場合は、一気に2段階以上建設を進めることも出来ます。
そしてそのターンにもっとも建設を進めた人は、ご褒美として王様からの報酬を選べます。

王様の報酬は名声、コイン、材料、施設建設の4種類。
注目なのは特定の資源なしで、大工や石工に職人を配置しなくても施設の建設が行える報酬でしょう。
なお、もっとも城の建設を進めた人が複数いる場合は、先に建設した人(先に城に職人を配置した人)のみがご褒美を貰えます
ですから城には各プレイヤーが職人を配置出来ますが、ご褒美を考えると先に配置した方が有利と言えます。

ターンが終了すると、管理官(太った白い服の人)が前に進みます。
この人は制限時間を表していて、毎ターン1マスずつ(ただし長官が管理官より前にいる場合は2マス)進み、この人が石碑のある場所まで到達すると、その段階の城の建設は終了となります。
城の建設は3段階あって、最初が基礎(Dungeon)、次が城壁(Walls)、最後が塔(Towers)です。

各段階の終了時、建設した回数に応じて王様からの報酬が貰え、逆に建設にまったく参加していなかった人には名声 -2 のペナルティが与えられます。
そして最後の「塔」の建設が終わるとゲームは終了となります。
なお、管理官が石碑まで到達していなくても、各段階の建設が完全に終了すると、すぐ次の段階に移行(及びゲーム終了)します。

ゲームが終わると「名声」が集計され、もっとも名声が高かった人が勝利者になります。
ゲーム終了時に持っていたコインは4枚で名声1、材料は3つで名声1、金塊は1つで名声3に換算されます。

Caylus(ケイラス)
※特別施設の役割は上記画像の通り。 厩舎には3人まで配置でき、置いた順番がそのまま次のターンのプレイヤーの順番になります。 置ける順番が早いほど有利なゲームなので非常に重要。
宿屋に職人を置くと、次のターンから他プレイヤーのパスの有無に関わらず職人をコイン1枚で派遣できるようになりますが、誰かが新たに宿屋に職人を配置すると追い出されます。
商人ギルドによる長官の移動は、ワイロによる長官の移動とは別に動かす事が可能。
馬上試合は王様からの報酬を貰えるもので、うまく使うと便利です。
城門は全員がパスした後に、そこに配置した職人を空いている施設に移動させられますが、普段は使いませんね。


Caylus(ケイラス)
※お城の建築画面。 ターンの最後に実行されます。
左に見えている表は「王様からの報酬」で、4種類・5段階。 基礎の建築の時には2段階目まで、城壁の建築の時には4段階目までしか利用出来ません。
同じ報酬を何度も貰う事は可能ですが、まとめて2回以上の報酬が貰える時に、同じ種類の報酬を連続で選ぶことは出来ません。
建設の報酬は1段階目は何もなし、2段階目で木造施設を木なしで建設可能、3段階目で石造建築を石なしで建設可能、4段階目は邸宅をコインなしで建設可能です。


Caylus(ケイラス)
※管理官は1ターンに1~2歩進み、石碑まで来ると次の城の建築段階に移行します。
長官が前にいると2歩進むので、状況が有利なときは管理官をどんどん進ませ、逃げ切りを狙うのも手。
各ターンの開始時に長官は管理官がいる場所まで戻ります。
「邸宅」はプレイヤーの所有でない建物を布とコイン1枚で改築するもので、邸宅を造ると毎ターンのコイン収入が1枚増えます。
名声施設は邸宅をさらに改築するもので、特別な効果はありませんが、建てると多くの名声を得られます。


細々としたルールが多い分、奥の深いゲームになっていて、基本的には城の建築を行って名声を稼ぎつつ、王様からの報酬を貰いながらゲームを進めていくのですが、城の建築を最低限にして街の施設を多く作る方針でも良いですし、邸宅と名声施設を作って最後に逆転するのを狙う手もあります。
色々なプレイスタイルが考えられるのが良いですね。

難点はなんと言っても、ルールが複雑
全体の流れは解りやすいのですが、細かいルール、例えば「城の建築は配置順」「王様からの報酬は先に作った人優先」「誰かがパスするたびに派遣費が上がる」「最初にパスした人はコイン1枚」などの部分が解りにくいうえに、ゲームを攻略する上で非常に重要になります。
説明を見たうえで、何度かプレイしないと内容を掴み辛いですね。

そして何度かやらないと理解できないのに、冒頭で述べたように1プレイの時間がかかるのも難点でしょうか。
まあ日本では「桃鉄」とか「いたスト」とかの平気で2~3時間かかるようなボードゲームが普及しているので、プレイ時間に関してはそれほど苦にならないかもしれませんが。

ゲーム的には、1ターン目に「定石」のようなものがあります。
それは始まると同時に「大工」に職人を配置し、後に多用される「石工」(Mason)を作るか、開幕で布か石を取り、さらにお城に職人を配置して、最初のターンで真っ先に城建築を行って王様からの報酬を貰うかです。
しかしこの方法は開始時の順番が1番目か2番目でないと使えません。 つまり開始時の順番が1・2番目か、そうでないかで有利不利が分かれてしまいます。
しかし開始時の順番はランダムなので、ここは運次第になってしまいますね。

なお、独自のサーバーを通して行うオンライン対戦も用意されていますが、プレイヤーはそれほど多くはないようです。 Bluetooth による対戦には対応していません。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



価格は 450 円。 ドイツゲームのアプリとしては相場といった所でしょうか。
全体のクオリティーを考えると悪くない値段だと思います。
iPhone / iPod touch と iPad の双方に対応したユニバーサルアプリです。

グラフィックが綺麗でサウンドもあり、ゲーム自体も「ドイツゲーム賞」の首位になっただけあって、楽しめる内容です。
最大5人でプレイできますが、コンピューターと1対1で戦うのもなかなか面白いですね。
ただキャンペーンモードのようなものはなく、1回1回のプレイを楽しむのみなので、それほど長期的に遊び続けられるゲームではないかもしれません。

ボードゲーム / ドイツゲームが好きな方にはオススメできるアプリです。
簡易的な街作りが楽しめるゲームなので、開発 SLG が好きな人にもお勧めかも。

Caylus (iTunes が起動します)