非常にシンプルな内容でありながら、奥深い戦略性と優れたバランスの良さを持つ、玄人好みの簡易戦略シミュレーションゲーム
それが「Slay」です。

このゲームが公開されたのは 2009 年の初頭。 日本で iPhone が発売されたのが 2008 年の夏なので、初期の頃から存在する iPhone アプリと言えます。
そのためグラフィックは簡易的で、BGM もなく、今見ると古くさい印象は否めません。
しかしそのゲームシステムは思考型ゲームとしての完成度が高く、ハマるといつまでも続けてしまう面白さがあります。

ちなみに元は Windows 用の個人作成のシェアウェアで、iPhone 版はそれを改良・移植したものです。
かなり昔からあった古典的な作品のようですね。

slay

ゲームが始まると、色とりどりに色分けされたヘックス(六角形)のマップが現れます。
これは一見すると「草原」や「森」、「砂漠」などに見えるのですが、実際には地形の種類ではなく、国の違いを表しています。

プレイヤーの国は黄緑色で、同じ色が2マス以上繋がっているとそのうちの1つに家が建ち、それが「国家」の扱いとなります。 家は首都を表します。
国家ごとに毎ターン、マスの数だけ収入が得られ、10 Gold で兵士を、15 Gold で砦を作る事が出来ます。
また、ゲーム開始時にはそれぞれの首都に「初期のマスの数×5」の所持金があるので、とりあえずそれで最初の兵士の購入が行えます。

兵士には農民(普通の人)、槍兵騎士(赤い人)、男爵(盾持ちナイト)の4種類があり、「兵士を合体」させることで上位のものを作り出す事が出来ます。
つまり、農民と農民を合わせると槍兵になり、槍兵と農民を合わせると騎士になります。

兵士は自国内か、自国に隣接したマスに配置可能で、移動力のようなものはありません。
配置可能な場所なら一気に遠くに置くことも出来ます。

兵士を他国の領土に配置するとその土地を占領することが出来ますが、そのマスか隣のマスに自分と同じレベル以上の敵兵士がいる場合、配置することはできません
つまり、農民だと敵の農民や槍兵がいるマス、及びその隣のマスは占領することは出来ません。
槍兵なら敵の農民の隣を占領することができ、敵の農民の真上においてそれを倒す事も出来ます。
ただし敵の槍兵がいる場合は、どちらもその槍兵と周囲のマスには手出し出来ません。
このルールにより、兵士は攻撃に使えるのと同時に、周囲の自国領を防衛する役目も持ちます。

なお、(首都)は農民と同じ強さを持ちます。(つまりその周囲を敵は農民で占領できない)
15 Gold で設置できるは、槍兵と同じ強さを持ちます。(農民や槍兵でその周囲を占領できない)

Slay
※農民で敵の領土を占領する場合、敵の家や農民の横には配置出来ないので、上記の例だと占領できるのは A か B のマスのみとなります。
A の横には敵兵がいますが、これは緑の国の敵兵で、A のマスは茶色の国のマスなので、問題なく占領できます。
B に置いた場合、C のマスの周囲に何もないので、その後にそこを敵に占領されてしまう確率が高いです。
なお、家(首都)は槍兵が来ると潰されてしまいます。 その場合、すぐに別の場所に「遷都」しますが、その際に貯まっていた資金は 0 になってしまいます。


兵士を槍兵や騎士にすれば、農民も家も潰して領土を広げていくことが出来ます。
しかし兵士は上位のものにするほど「維持費」がかかります
この維持費はかなり高額で、農民は 2 ですが、槍兵は 6 、騎士は 18 、男爵は 54 になります。
つまり、3倍ずつ高くなっていきます。

もしその国の領土が5マスしかない場合、槍兵を作ったら赤字です。
1マス占領して6マスにすれば槍兵を維持できますが、それだと 6-6 で収入は 0 になります。
そして、もし所持金がマイナスになってしまった場合・・・ その国の全ての兵士が死んで「墓」に変わってしまいます。
足りない分だけが消えるのではありません。 赤字になった瞬間に全ての兵士が墓になります。

この維持費のルールが非常にシビアで、Slay の難しく、かつゲームの最大のポイントです。
領土を拡大できないまま手をこまねいている訳にはいかないので、収入を減らしてでも維持できる範囲の上位兵士を作って攻めていく必要がありますが、収支がギリギリの状態で進攻を受けて領土を失い、維持費を出せなくなると一瞬で全軍壊滅。
全軍壊滅という事は防衛も出来なくなるので、あっという間に蹂躙されてしまいます。
このゲームは常に滅亡と隣り合わせで、それが国家の激しい攻防を生み出しています。

また、同じ国(同じ色)の領土が合わさると合併するのですが、逆に間を占領されて領土を分断されると2つの国家に分かれてしまいます。
2つに分裂すると収入もそれぞれに分かれるので、一方に維持費の高い主力部隊を置いていて、その後方を遮断されて分裂してしまうと、維持費が払えなくなって全滅は必至です。
逆に、敵の大軍勢に攻められて大ピンチに陥っても、その後方を遮断できれば一瞬で壊滅させられます。
このダイナミックな攻防もゲームの面白さと言えますね。

Slay
※生産に必要な Gold は、槍兵は農民の2倍(20 Gold)、騎士は農民の3倍(30 Gold)。
しかし維持費は槍兵は農民の3倍(6 Gold)、騎士は農民の9倍!(18 Gold)。
収入は1マス1Gold なので、つまり槍兵は6マス、騎士は18マス以上の土地がないと資金が持ちません。
なお、上記の画像は進攻してきた敵の主力部隊の後方を遮断して、殲滅を狙っているシーン。
この直後、囲まれた敵は維持費不足で壊滅します。 こういうのを常に狙うのがゲーム後半のコツ。


マップ内には木が生えている場所もあります。
このゲームの木は単なる邪魔もので、それが生えているマスからの収入がなくなります
兵士が維持費不足で消えたときに残る墓も、次のターンに木に変化します。

木は内陸に生える三角の木と、海岸に生えるヤシの木があり、兵士で伐採することが出来ますが、ヤシの木は海岸に沿ってどんどん増えていくので非常に邪魔です。
ただ、敵が木の繁殖で収入不足に陥ることもあるので、場合によってはワザと残す手もありますね。

Slay
※維持費不足で死んだ兵士は墓になり、土に還り、木になって、そして国を荒廃させていきます。 なんだか意味深。
こんな風に敵地が木で埋まった場合は無視しておくのも手。
木の繁殖はユニットなどを置いておくことでも防げます。


なかなか手強いゲームで、最初の頃は敵も弱いのでラクに勝てるのですが、上位のマップになるとかなり手強くなり、しらばくプレイしてゲームに慣れないと連敗必至です。

攻略としては、まず「砦」を有効に活用すること
砦は言わば「動けない槍兵」ですが、維持費がかかりません。 このゲームで「維持費がない」というのは非常に便利で、これをうまく活用して収入を節約しながら防衛するのがポイントです。

次に、強いユニットで弱いユニットを守ること
例えば相手に槍兵がいる場合、農民を単独で前に配置するとすぐ踏みつぶされてしまいますが、まず槍兵を置き、その周囲に農民を置くようにすれば、槍兵の隣は騎士以上でないと踏み込めないので、最前線に農民を置いても守る事が出来ます。
この場合、槍兵が攻撃&守備部隊で農民が占領部隊、といった感じになりますね。

そしてもう1つ重要なのは、発展している敵を優先して妨害すること
基本的に、相手が槍兵や騎士を投入してきたら、こちらも同じレベルの兵士を投入しないと対抗できなくなります。
例えば、相手の領土拡大が早く、こちらより先に騎士を出してきて、こちらが騎士を出せる収入を確保できていない場合、対抗手段がなくなって蹂躙される一方になります。 砦があっても騎士が相手だと潰されてしまいます。
こういう場合は急いで領土拡大をしつつ、その相手を積極的に妨害し、相手が騎士を出すのを少しでも遅らせることが必要になります。

アプリの難点は、インターフェイスが解りにくいこと
前述したようにこのゲームは収入と維持費の管理が非常に重要になります。
しかし表示されているターンごとの収入はターン開始時のもので、そのターン内で領土を拡大をしたり、兵士を増やしたりしても増減しません。
よって常に自分で計算しながらプレイしなければなりません。

このゲームは収支の管理がゲームシステムのポイントになっているため、あえてその難しさを出すために表示していないのかもしれませんが、いずれにせよ不親切感・不便感は否めません。
兵士の維持費についても、チュートリアルの文章の中に小さく書かれているのみで、これではこのアプリだけで初心者の方がゲームを理解するのは困難でしょう。

また、やはりグラフィックは今となっては見劣りしますね
味がある見やすいグラフィックではあり、Windows 版よりは遥かにマシなのですが、パッと見て楽しそうな見た目とはお世辞にも言えないし、サウンドもシンプルで、BGM もないのはちょっと寂しいものがあります。

Slay
※左の画像は Very Hard のコンピューターの進軍の模様。
騎士を中心に配置して、その周囲を他の兵士で占領するという、「騎士で守って農民や槍兵で占領する」のセオリーをきっちり守っているのが解ります。 後方を遮断されてますが。
右の画像はステージ選択。 画像で表示されているのはほんの一部で、実際には横列 26、縦列 18、合計 468 ステージもあります。 もう延々と遊べますね。


もう1つの難点は価格。 400 円です。
そんなにベラボーに高い価格ではありませんが、見た目がコレなのでちょっとボタンは押し辛い・・・
おまけにこれでも安くなっていて、当初は 600 円でした。
ハッキリ言って、このゲームがあまり話題にならなかったのは、この価格のせいだと思います。
この見た目で 600 円で買う人はさすがに少ないだろうと・・・

でも、今は昔よりは安くなりましたし、ゲームは本当にやればやるほどハマっていくスルメゲームです。
先日ご紹介した、同じヘックスマップの簡易戦略ゲームである「New World Colony」と比べると、New World Colony の方が手軽に遊べて解りやすく、全体のクオリティーは高いのですが、ゲームシステム自体はこの Slay の方が完成されている印象です。

戦略ゲームやパズルゲームなどの、頭を使うゲームが好きな方に良いアプリですね。

Slay (iTunes が起動します)
Slay Lite (無料体験版。16 ステージのみですが結構遊べます)