パソコンでピンボールゲームを発売し続けている老舗のメーカー「リトルウイング」が、iOS 用に新しいピンボールアプリを開発し、ファンから大きな支持を受けています。
Pinball Crystal Caliburn II」です。

このゲームは今から 20 年近く前に Mac で発売されたピンボール「Crystal Caliburn」(クリスタルカリバーン)の続編のようで、iTunes レビューには当時のユーザーの賞賛意見が数多く書き込まれています。

ただ、私は元々 Mac ユーザーではありませんし、このゲームの事も知りませんでした。
そんな「思い出補正」がない私から見ると、このゲームは・・・ 悪くはないんだけど、正直そこまで絶賛される程かなぁ・・・ というのが本音ですね。
しかし秀作のピンボールアプリであることは確かです。

Pinball Crystal Caliburn II

「アーサー王物語」をベースにしたピンボールです。
全体のレイアウトはオーソドックスなスタイルで、フリッパーは1セットしかありません。
コンピューターゲームのピンボールではありますが、実機のような現実味のある、やや古めかしいデザインになっています。
地味な印象を受けますが、これは旧作の続編と言うことで、あえてそうしているのかもしれません。

ボールの動きは自然で、違和感は全くありません。 ここはさすが老舗のピンボールメーカーと言えますね。
ただしボールの動きは速く、全体的に坂が急で、ボールのコントロールも難しくなっています。 かなり素早いボールさばきが必要で、難易度は高いです。
また、ボールのホールド(フリッパーを上げっぱなしにしてボールの動きを止めるテクニック)がしにくく、無理にやろうとするとボールがすぐこぼれ落ちてしまいます。
この点もボールコントロールが難しい要因の1つですね。

しかけについてですが、それほど複雑ではありません。
左上と右上にスロープ(立体のレール)があり、常にここを狙うのが基本となります。
割と容易に「マルチボール」になるゲームで、多数のボールが飛び交う面白さを初心者の方でも楽しむ事が出来ます。
ボールがたくさん出ているとすぐに落ちてしまうのですが、一定時間の間はボールが次々と補充されるようになっているので、「せっかくマルチボールになったのにすぐに終わってしまった」という事もありません。
また、開始してすぐボールが落ちてしまった時は、自動的にリプレイさせてくれます。

Pinball Crystal Caliburn II
※左右にある B のターゲットのライトを全部灯して、左上の A のスロープ(アヴァロンの道)にボールを通すと様々なボーナスを獲得できます。
また、中央の E のターゲットを全部灯すと M のホール(賢者マーリンのホール)にボールを入れる事ができ、こちらも様々なボーナス(得点とか 1UP とか、しばらく落ちても復活するとか、いきなりマルチボールになるとか)をランダムで得られます。
ゲームの中心となるのは右上にあるお城(キャメロット城)で、C のランプが点いている時に入れると円卓の騎士が1人集まり、中央にある星座(騎士)ランプが1つ灯ります。 また、D のターゲットがまだ全部灯っていない場合はそれが1つ灯ります。
D のターゲットを全部灯して左右の端のレーンにボールを通すと、そのボールが「ホールド」されます。 ボールを3つホールドするとマルチボール開始です。
騎士を 12 人全て集め、マルチボールでない時に左上のスロープを通すと聖杯発見、その後、5秒以内に城にボールを入れると聖杯を持ち帰ることに成功し、スペシャルゲーム(ラストバトル)になります。


ピンボールとしての完成度は高いのですが、やって気になるのは右側のアウトレーン(フリッパーの外側にある、入るとアウトになる道)にやたら入りやすいこと。

1度目はシールド(キックバック)で復活させてくれますし、使ったシールドはすぐ横のレーン(リターンレーン)を通すことで再セットされるのですが、それでも非常に入りやすいため、ゲームは「アウトレーンに入るかどうか」、すなわち「運次第」で決まってしまいがちです。

「ゆらし」もありますが、それでどうこう出来るレベルではなく、ボールが全て次々とアウトレーンに入ってゲームオーバー、なんてことも「ザラに」あります。
間違いなく iPhone のピンボールの中で、一番アウトレーンにボールが行きやすい台です。

もう1つの難点は迫力不足なことでしょうか。
ちゃんとズームインのオプションがあり、これを ON にするとボールの周辺を拡大してくれるのですが、ズームは本当に、ただそれだけ。

例えば iPhone の定番ピンボールである OOO Gameprom の Pinball HD は、フリッパー周辺では広めのズーム、バンパー周辺では狭めで角度のあるズーム、ポイントとなるしかけでは大アップになるなど、ズームを演出として活用しています。
また、場面毎に異なるズームを使うことで、プレイしやすい形にもなっていました。

しかしこのゲームは単にボールを追いかけるだけなのでズームが演出になっておらず、しかも常にスクロールし続けるので、ボールの動きが激しいと見辛くなります。
簡単にズームを ON/OFF 出来るのは良いのですが、もうちょっとズームにメリハリが欲しかった気もしますね。

Pinball Crystal Caliburn II
※左の画像はアウトレーンにボールが落ちているシーン。
ほんとこのレーンにボールが入りやすい。 全部のミスがこのレーンが原因という事も普通にある。
右はちょっと解りにくいですが、聖杯を奪還し「ラストバトル」が始まっているところ。 ボーナスライトが全部点いて、自動復活とか倍率アップとか、その他モロモロのボーナスをまとめて手にした状態でマルチボールになります。


そして最大の問題は、このアプリが悪い訳ではないのですが・・・
すでに iPhone のピンボールアプリ市場は価格破壊を起こしている現実があること。

ぶっちゃけピンボールアプリのクオリティーとしては、前述の OOO Gameprom の Pinball HDWar Pinball が突出しています。
iPad のベストアプリ賞を受賞したこともあるフル 3D のグラフィックとクオリティーに加え、コンピューターゲームならではの派手なしかけとレイアウト、おまけにバラエティーに富んだ多数の台が用意されていて、それが無料とか 85 円とかの価格で売られている訳です。

この Crystal Caliburn II が悪い訳ではないのですが、Pinball HD と比べると 350 円というのは勧め辛いのが本音です・・・

しかしピンボールが OOO Gameprom のものばかりになるのも面白くないので、こうした他のピンボールも出て来て欲しいとは思います。
これから iPhone や iPad でピンボールをやろうという方には、やはり Pinball HD の方がオススメですが、Crystal Caliburn II はすでに他のピンボールをやり尽くしている方や、より本格的なピンボールをやってみたい人向けですね。

こちらはこちらでマルチボールの面白さがあり、難易度は高いですがスピーディーに展開します。
ピンボールが好きには良いアプリだと思います。

Pinball Crystal Caliburn II (iTunes が起動します)


最後になりましたが、以下は Youtube で公開されている公式のプレイ動画です。