日本の iPhone にタワーディフェンスのブームを起こした名作 TD と言えば、「Fieldrunners」「geoDefense」、そして今は亡きハドソンが送り出した日本製タワーディフェンス「エレメンタルモンスターTD」でしょう。
そんなエレモン TD に新作・・・ と言うか、ソーシャルゲーム版が登場しました。
エレメンタルモンスターTD S」です。

「ソーシャルゲームになった」と言うと、ガッカリ感が否めないと思います・・・
実際、カードが「ガチャ」になったし、モンスターが「カードのまんま」戦うし、Kiwi への会員登録が必要だし、もうクソゲーの雰囲気まんまんで、フルボッコレビューも辞さないつもりで試してみたのですが・・・
でもゲームは意外としっかり作られていて、相応に遊べます

ただし前述したガッカリ部分はそのまんま健在なので、お勧めかどうかと言われると微妙。
ともあれ、私もかなりハマっていた TD の新作ですから、今回取り上げておきたいと思います。

エレメンタルモンスターTD S

エレメンタルモンスター TD」は俗に言う「ルート固定型」のタワーディフェンスで、道に沿ってやってくる敵の軍勢を、自動で戦う「タワー」を設置して迎撃していくゲームです。
このゲームはタワーがモンスターになっていて、ゲームの進行に合わせて様々なものが手に入り、ゲーム開始時にはその中から使用するものを5つを選んでプレイします。

モンスターは「カード」として手に入り、選んだ5つのモンスターの組み合わせは「デッキ」と呼ばれるなど、トレーディングカードゲームの要素を持っていたのが特徴です。
よって元々ソーシャルゲームとは親和性があったと言えますね。

エレメンタルモンスターTD S も、ゲームの基本的な流れはオリジナルと変わりません。
カードを選んでデッキを作り、挑戦するステージを選んでゲームをプレイします。
ステージは 火・水・木・光・闇 の属性に分かれていて、最初は Phase 1 しかプレイできませんが、各ステージの Phase 1 をクリアする事でボスステージが登場、それをクリアする事で Phase 2 に挑戦できるようになります。
オリジナルにはボスステージはありませんでしたが、それ以外は前作を踏襲しています。

火は木に強く、木は水に強く、水は火に強いと言った属性の相関関係、さらに特定のモンスターはゲーム中にランクアップさせるとスキルが発動する点もオリジナルと同じです。

エレメンタルモンスターTD S
※ 特定のモンスターはランクアップでスキル発動!
でも正直、ステージが短くなっているのでスキルの有効性は減っており、カードの強さの方が重要ですね・・・
前作に登場したモンスターはほぼ同じスキルを持っていますが、一部にスキルが変わったり、なくなったりしているモンスターがいるので注意。


エレメンタルモンスターTD S
※モンスターはおなじみのものの他に、新しいものも増えています。
カードの絵はエレメンタルモンスターらしいカッコ良いものが多く、ヘンな「萌え」に偏りすぎていないところは好感が持てますね。


オリジナルと変わった点は、まず1ステージがやたら短くなりました
Phase 1 のうちは Wave 数が 5 しかありません。 Phase 2 になっても Wave 7 まで。
よって短時間で終わるので、手軽に楽しめるのは良いのですが、タワーディフェンスの本来の「どのような防衛網を構築するか」と言った戦略や、「多くのユニットで防衛陣地を作る楽しみ」は薄れています
また、エレモン TD のオリジナルにあった「複数のスキルを組み合わせて味方モンスターを強化する」という戦略も減っています。

さらにステージをプレイするごとに「体力」が減り、なくなったらプレイできなくなります。
これはソーシャルゲームでおなじみのプレイ制限ですね。 体力がなくなったら時間経過を待つか、課金して薬を買わなければなりません。

また、カードの入手も「ガチャ」になりました。
他プレイヤーへの挨拶などで手に入る「友情ポイント」でガチャを引ける他、ステージをクリアすると「カードパック」が手に入り、そこからモンスターカードを入手できます。
もちろん手に入るカードはランダムなので、なかなか強いものは入手できません。

カードを「合成」で強化できるのも今作の新しい点ですが、このためにステージをクリア出来るかどうかはタワーディフェンスとしての戦略より、カードの入手と強化の方が重要になっています。
良くも悪くもソーシャルゲーム的なバランスだと言えますね。

ただ、フレンドや他プレイヤーのカードをデッキに1枚含めることが出来るので、そのカードが強力なら、それに頼った戦い方で自分のカードが弱くても勝つことが出来たりします。
この「フレンドからカードを借りる」というのは「パズル&ドラゴンズ」でも見られるシステムですね。

全体として、ソーシャルゲームらしい短時間のプレイを繰り返す内容になっており、1ステージが長めだったオリジナルのエレメンタルモンスターとは大きく異なっています。

エレメンタルモンスターTD S
※ ガチャやカードパックでモンスターカードを手に入れて、合成で強化する。
ステージが短いこともあって、クリアするには強力なモンスターがいるかどうかが重要です。
カード強くしていく楽しみはありますが、試行錯誤をしてクリアして行くというゲームではなくなってますね・・・
それにタワーディフェンスって、大量のタワーで圧倒的な防衛線を築き、乱れ飛ぶ攻撃で敵を殲滅しまくって「オレツエー!」するのも楽しみだと思うので、数 Wave で終わってちゃ面白みが・・・


エレメンタルモンスターTD S
※ ガチャは「友情ポイントガチャ」「1日1回の無料ガチャ」「課金ガチャ」の3種類。 課金ガチャは「ジュエル」が5つ必要で、ジュエルは1つ 85 円、6つだと 450 円。
ジュエルは体力の回復にも使えるなど、全体的にパズドラを意識した設定になっている印象です。
って言うか、こんなにガチャガチャと連呼されるだけで嫌気が差すんですけど・・・


難点は、冒頭でも述べたように「カードのまんま戦う」ということ。
そりゃ確かにカードのままならモンスターのグラフィックパターンを作らなくていいから、ラクだしカードも追加しやすいでしょう。
しかしこれじゃあ手抜き感は否めず、オリジナルはこんなものではなかったのだから、オリジナルの経験者だと益々チープに見えます。
アプリ名の「S」は「スペシャル」とか「ソーシャル」の意味なのだと思いますが、これじゃ「ショボい」という印象しか受けません。

さらに昨今のコナミのアプリの難点である Kiwi への会員登録が必要なこと。
TSUTAYA.com Kiwi はグリー/モバゲーやハンゲームのような会員登録制のソーシャルネットワークサービスですが、他の SNS のより会員登録が面倒で、入力項目も多く、さらに新しいゲームごとにメールアドレスとパスワードの入力が必要など、全体的に洗練されていません
ぶっちゃけ、Kiwi のアプリにはクソゲーが多いし、良い印象はありませんね。

「カードのまんま戦う」という部分が致命的にダメですが、それ以外のグラフィックや演出は綺麗で、サウンドも良くできています。
私的には、ゲーム部分はちゃんとタワーディフェンスとして遊べるので、オートで戦闘結果が表示されるだけのものとか、ボタンをポチポチ押すだけで進行する「ポチポチゲー」とかよりは、ゲームとしてマシだと思います。
チュートリアルも非常に丁寧で、タワーディフェンス初心者でも遊べるような配慮も見受けられます。

ただ、オリジナルと比べると明らかに「劣化版」なので、だったら「コレをやるぐらいならオリジナルをお勧めします」という話になってしまいますね。
こちらはこちらでカードの収集や強化など、別の面白さはあるのですが・・・

エレメンタルモンスターTD S
※看板が戦ってるゲーム。 これでユーザーが納得すると思ったんでしょうか?
すごく甘い考えで作ってたのか、それともモンスターを用意できないぐらいの予算しか与えられてなかったのか・・・
背景とかは相応に細かく書き込まれているのですが・・・


ソーシャルゲームですからアプリ自体は無料
もちろん追加課金があり、課金しないと良いカードは滅多に入手できないようですが、一応無課金でもゲームは問題なく進めていける印象です。
こういう表現はアレですが、「思ったほどのクソゲーではない」ので、Kiwi への会員登録が気にならない方は試してみても良いとは思います。

私的には、やり方次第でもっと良くなった気がするので、勿体ない印象が拭えません
タワーディフェンスとしての面白さを体験させたいなら、プレイ時間が長くなって課金効率が減るとしても、もっと1ステージを長くして TD として楽しめるものにすべきだったと思います。
結局ゲームが楽しめないと課金にも繋がらないのに、余計なところでケチってイマイチなものにしてしまった印象です。

オリジナルの「エレメンタルモンスター TD」はハドソンが出したゲームですが、ハドソンはコナミに吸収され、その開発チームの大半は散り散りになってしまったようです。
このゲームはコナミが出したものですが、エレメンタルモンスター TD を作った方は現在ガンホーに在籍されているため、別のチームがアレンジしたものと言うことになります。
(そしてオリジナルのエレメンタルモンスター TD を作った方がガンホーで製作したのが、あの「パズル&ドラゴンズ」です)

コナミが「ソーシャルゲームとしての」内容を重視して作ったら、エレモン TD もこうなった、ということなのでしょうか・・・
よく「ソーシャルゲームがゲーム業界をダメにしている」と言われますが、調整やバランス次第だとも思います。
ただ、どうしてもゲームとしての面白さより、課金効率に傾いてしまうんでしょうね・・・

・エレメンタルモンスターTD S (運営終了)