その高い完成度で知られる iPhone / iPod touch 定番のボードゲーム/ドイツゲームアプリ Carcassonne(カルカソンヌ)。
その iOS 版カルカソンヌを作ったドイツの開発スタジオ The Coding Monkeys が、新しいカードゲームアプリを公開しました。
「Lost Cities」(ロストシティ)です。
人気アドベンチャーゲーム The Lost City とは何の関係もありません。念のため。
原作の作者は、ドイツゲーム製作の第一人者 Reiner Knizia(ライナー・クニツィア)氏。
公開されたのは 1999 年ですが、この 1999 年というのは「ティカル」とか「ラー」とか「サムライ」とか「マネー」とか、後に名作として知られるドイツゲーム/カードゲームが多数登場した年で、この Lost Cities はその中に埋もれてしまったようです。
ただ、「クニツィア氏が作った2人用のカードゲームとしては Battleline(バトルライン)に並ぶ秀作」と言われているようで、手軽に遊べるゲームとしての評価は高いようですね。
この Lost Cities(ロストシティ)というゲームは、2008 年に「ドイツ年間ゲーム大賞」を受賞した Keltis(ケルト)の元になったゲームと言われていて、実際やってみると、ケルトのプロトタイプ、もしくは簡易ケルトといった感じを受けます。
ただ、最大4人で遊ぶケルトに対し、2人で手軽に遊べる Lost Cities の方がオンライン対戦には向いているので、これが iOS 化された大きな理由だと思われます。
ゲームのルールはシンプル。
5色に分かれたカードが8枚ずつ配られ、中央のボード上にも5本のラインがあります。
カードには 2~10 の数字が付いていて、これを同じ色のラインに、数字が低い順に出していきます。
例えば、赤の3を出した後は、次に出す赤のカードは4以上でなければなりません。
出したカードの数字はそのまま点数になりますが、どの色のラインも最初は -20 点からスタートします。
つまり、赤の3と4のカードを出すと、合計は7点ですが、最初は -20 なので差引 -13 点になります。
カードを1枚も出していないラインは 0 点なので、マイナスで終わるぐらいなら、その色のカードは1枚も出さない方が良いことになりますね。
カードを出したら、画面右下にある山札から1枚補充して、相手の番になります。
カードを出したくない場合は、目の前にある「カード捨て場」に手札を1枚破棄してから、カードを1枚補充します。
捨てたカードは色別に分けて積み重ねられていき、カードを補充するときに、山札からではなく捨て札の一番上にあるカードを補充することも出来ます。
(つまり、相手が必要そうなカードを捨てると取られて不利になります)
カードの中には「コインのカード」も含まれていて、これを出したラインは得点が倍増します。
コインのカードは各色ごとに3枚ずつあり、1枚セットすると得点2倍、2枚セットで得点3倍、3枚セットで得点4倍になります。
ただしコインのカードは、そのラインに数字のカードを1枚も出していない時でなければセットできません。
また、そのラインがマイナスで終わった場合、そのマイナス点も倍増してしまいます。
ゲームは山札がなくなったら終了で、その時点のスコアが多い方が勝利です。
※上記の黄色のラインは、3+4+5+7+10 で 29 点。 でも最初は -20 なので 29-20 で 9 点。
※上記の赤のラインはコインが1枚セットされていて得点2倍。 カードは 2+5+7+10 で合計 24、24-20 で 4 点で、それが2倍なので 8 点。
※上記の緑のラインはコインが2枚セットされていて得点3倍。 さらに同じラインのカードを(コインを含み)8枚出した時に得られる +20 の追加ボーナスが加わっています。
4+5+6+7+8+10 で合計 40、40-20 で 20 点、それが3倍なので 60 点、それに8枚ボーナスの +20 を追加して 80 点。
数字のカードは各色 2~10 が1枚ずつしかありません。
よって場に出ているカードを見れば、残っているカードは予想が付きます。
自分が赤の 8 を出していて、相手が赤の 9 と 10 を出したら、もう出せる赤のカードはどこにも存在しないことになりますね。
場のカードと手札を見ながら、そのラインで 20 点以上稼げるかどうかを判断するのがポイントになりますが、それを逆手にとってワザとカードを手札の中に隠し、カモフラージュする手もあります。
例えば、赤のカードを複数持っているのにずっと出さずにいると、相手はまだ赤のカードが山札に多く残っていると考えるかもしれません。
そして赤のラインに相手が手を出したところで、こちらが赤のカードを出し始めれば、相手の赤のラインをマイナスに追い込むことが出来る訳です。
捨てたカードは相手に取られない限り後で回収できるので、取られそうにない捨て札は「いつでも手元に戻せる札」と考えておくのも戦略の1つですね。
白のコインを捨てたけど、白のカードの引きがよいので、予定変更して白コインを回収して一気に伸ばす、という事もできます。
山札が 0 になるとゲーム終了なので、逃げ切るときは山札を引きまくり、逆にカードを多く出したい時は必要なくても捨て札を回収して山札が減るのを遅くする、というのも基本です。
※コインはマイナス点も倍増させるので、左の画像はなんと -133 点!
でもカードを出してマイナスを脱すれば一気にポイントが跳ね上がるので、最後には(右画像)60 点で勝利。
手札に同色のカードが3枚ほどある時、早めに出していくのか、もっとカードやコインが来るまで待つのか、待つ場合は代わりにどのカードを切っていくのか、その辺が勝負の分かれ目になります。
捨て札に気を配るのも重要です。 相手がコインを集めている時に、その色のコインを捨てるようなマネは厳禁。 まだカードが配置されてないラインのコインも要注意。
さすがカルカソンヌを作ったメーカーだけあって、アプリの完成度は高いです。
操作性やカードの視認性が良く、動きも滑らかで、BGM も素晴らしい。
この辺はカードゲームのアプリとしては一級品ですね。
そして注目の「オンライン対戦」についてですが・・・ 今回は Game Center を通してのものになっています。
しかし単に Game Center のマッチングを利用しているだけではありません。
New Game から Auto-Match を選ぶとすぐにゲームが作られますが、そこからメニューに戻り、そのまま1人用のゲームを始めても、その Auto-Match のゲームは裏で保持されています。
つまり1人用のゲームをプレイしながら、マッチングされるのを待つことが出来ます。
誰かとマッチングされ、その人が1手進めると、右上にアイコンが表示され、それをタップする事で対戦ゲームにすぐ移動できます。
複数のゲームを開いておき、相互に進める事さえ可能です。
Game Center を通した対戦と言えば、マッチングされるまでボーっと待たなければならないのが欠点ですが、その問題はこのゲームにはありません。
現在はプレイヤーも多く、マッチングも割と早いですね。
ただ難点は、1手ごとの制限時間がないため、非常に長考したり、放置状態にしてしまう人が多いこと。
さらに前述したように裏でゲームが保持されるのは良いのですが、相手がアプリを落としてもゲームは保持されたままなので、途中から進まなくなってしまう場合も多いです。
もし一方がアプリを落としている場合、一手進めるとそのことが相手に通知される、メール形式に似た対戦になります。
つまり「リアルタイム対戦」にも「メール対戦」にも対応している訳ですが・・・ でもやっぱりこの2つは、明確に分けて欲しいですね。
何日もかけて長々とした対戦をやりたいと思っている人は少ないと思うので。
※左画像の右上のアイコンに注目。 裏で保持されているゲームが進行した場合にはここにアイコンが現れ、これをタップするとそのゲームに移動します。
Auto-Match を開いた後、メニューに戻って1人で遊んでいても、誰か来たらこのアイコンで知らせてくれます。
Auto-Match のゲームを複数開いてマッチングを待つことも可能ですが、それらが同時にスタートしたら超忙しいことになって集中できなくなるので、オススメはしません・・・ (実際そうなった)
右の画像はプレイ後の結果表示。 得点の流れなどが表示されます。 また、プレイ結果に応じてプレイヤーのレート(評価レベル)が上昇します。
価格は 350 円。 同社の Carcassonne(カルカソンヌ)と比べると安めですが、1プレイが短いシンプルなゲームなので、そのぶん価格を抑えているのだと思われます。
ドイツゲームアプリとしては、内容を考えると妥当なところかなと思います。
純粋にゲーム性を考えると、やはりこれの発展型である Keltis(ケルト)の方がゲームとしての戦略性はあると思います。 正直、ドイツゲームとしては「薄い」ですね。
ただオンライン対戦のゲームとしては、このサクサク感と適度な駆け引き、カード運のバランスはかなり良いです。
何よりアプリの完成度が高いので、カードゲームが好きな人にはオススメです。
シンプルなゲームなので1人でやってるとすぐ飽きると思いますが、対戦をメインに遊ぶのであれば、長く楽しめると思います。
・Lost Cities (iTunes が起動します)
まあ実物にこそ触れてほしいけど、これで知ってハマって、それが入り口になってくれればそれで素晴らしい