スマホのレーシングゲームの最高峰 Real Racing シリーズを開発した Firemint と、EA の人気レーシングシリーズ Need for Speed の iOS 版の開発を行っていた Iron Monkey が、EA の主導の元に合併し、新たな開発スタジオ「Firemonkeys」が誕生したという衝撃的な発表があったのが 2012 年の7月。
その後、このチームが Real Racing 3 の開発を行うことが公表され、そのデモが Apple の iPhone 5 発表会で使用されるなど、世界的に注目されているのですが・・・
そんな中、Real Racing に先駆けて Firemonkeys 開発のレースゲーム第一作目が公開されました。
「Need for Speed Most Wanted」(ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド)です。
このゲームは PS3 や XBOX360 で発売されている同名作品をスマホ用に簡易アレンジしたものです。
そのグラフィックは非常に美しく、もはや家庭用ゲーム機と同レベルのクオリティーなのですが、内容としては本格的なレースゲームと言うより、短時間で終わるカーチェイスを繰り返すもので、私的には「カーレースのショートゲーム」という印象です。
Need for Speed には本格的なレースがメインのものと、警官とのカーチェイスがメインものの2種類があるのですが、これは明らかに後者であり、それをさらに携帯向けにした感じですね。
リアル系の Real Racing と同じものを作ってもしょうがないので、こちらはライトな感じに仕上げた、というところでしょうか。
画像を見て解るように、車体への風景の写り込み、光の表現の美しさ、スピード感を出す演出など、どれもがハイレベルです。
さすが Firemint と Iron monkey のオーストラリア最強タッグと言わざるを得ません。
プレイヤーは1人の走り屋となり、他の走り屋とのレースを繰り返して賞金と名声を貯めていきます。
Need for Speed のカーチェイスシリーズにはストーリーがありましたが、今作にはそういったものはなく、単にレースを繰り返すのみで、割と淡々と進行します。
レースには「手段を選ばずに」1位を目指す「ストリートレース」、タイムトライアルである「チェックポイント」、指定マシンで完走を目指す「ホットライド」、ライバルと1対1で勝負する「モスト・ウォンテッド」などがありますが、どのレースもコースを周回するのではなく、最初からスピードが乗っている状態でスタートし、そのまま峠道や自動車道のような公道を走り抜けます。
周回レースではないためラップタイムのようなものはなく、どのレースも1分半から2分ほどの短時間で終了します。
アクセルは自動で、画面左側をタップするとブレーキになりますが、ほとんどのカーブはブレーキングなしで曲がることができ、クラッシュしても相当ボコボコにならない限り大破せずにそのまま復帰します。
リアルなドライビングではなく、遊びやすさとスピード感を重視した調整ですね。
ドリフトは曲がりながら画面右側を押しっぱなしにするだけで簡単に行えますが、急カーブが少ないことと、コントロールが難しくなるため、どうしても必要なとき以外は行わない方が無難です。
画面右下にはニトロ(EA の翻訳的には「ナイトロ」)のゲージがあり、ゲージがある時に画面を上にフリックすると急加速します。
3位以内に入賞すれば賞金が貰え、他のレースが出現しますが、名声(SP)は順位とは無関係で、「特定のレースに勝利する」「長時間ドリフトする」「大きくジャンプする」などの条件を満たし、実績を獲得することで増えていきます。
※新しい車は名声(SP)を貯めることでアンロックされていきます。 ただし手に入れるには賞金も必要。
SP 入手条件は「ドライバー詳細」で「シングルプレイ」や「ドライバーテスト」などのボタンを押すと確認する事が出来ます。
車はフォード、ポルシェ、アウディ、日産、三菱など世界中のメーカーの実車 35 種以上が登場します。
SUV(大型車)のレースがあるので、ランドローバーやハマーのような、この手のゲームではあまり見ない車も登場します。
※車には「モッド」と呼ばれる2つのアイテムを付加できますが、これはチューンナップやパワーアップではなく、使い捨てアイテム。 このゲームに車を恒久的にパワーアップさせる要素はありません。
車は「スポーツ」や「GT」などのいくつかのクラスに分かれていて、レースごとに出場可能なクラスがあります。
しかし MOD をそのまんま「モッド」って書いちゃう、相変わらずの EA 翻訳はどうにかならないものか・・・
一応ライバルとのレースですが、このゲームの最大の敵はライバルではなくパトカー! 警察です。
どのレースも途中からパトカーが現れ、こちらを激しく追跡してきます。
パトカーの速度はこちらの速度に応じているため、ライバルを楽勝でぶっちぎれるスピードでもパトカーは追いかけてきて、幅寄せなどで無理やり止めようとしてきます。
こちらの正面に回って道を塞ぐなど、かなり攻撃的な行動も行い、さらに逃げ続けていると検問が現れたり、前方から電撃のような武器を落として減速させようとする事もあります。
しかしこちらもパトカーを壁や他の車に押しつけることで、相手をクラッシュ(テイクダウン)させることが出来ます。
テイクダウンさせると格好いいクラッシュシーンが表示され、ニトロゲージも回復します。
基本的にはライバルとレースしながらも、ゲームは最初から最後までパトカーとせめぎ合うカーチェイスが展開されます。
※前方をパトカーに塞がれてしまったシーン。 パトカーの AI はなかなかリアル、かつ手強いです。
壁に押しつけられると上記のようになってしまいやすいので、パトカーが近いときは壁から離れた方が良いのですが、幅寄せされると結構辛い。
出来ればニトロで追い抜き、出来るだけ相手にしないのが良いのですが・・・
※クラッシュシーン! バンパーが吹っ飛び車体が横転!
ダメージ表現は結構細かく、壁に当たると側面にこすれた跡が付き、さらにこすると塗装がはがれ、ボコボコぶつかってるとガラスが割れ、バンパーもガタ付き、最後にはなくなります。
ゴールした時に自分の車がもの凄いことになってて、思わず笑ってしまうことも。
かなり面白く作られていると思いますが、やや気になるのは展開の単調さでしょうか。
前述したようにレースの種類は複数ありますが、どのコースも高速コースで、さらにどんなレースでもパトカーとのカーチェイスがメイン。
だからいくら進んでもあまり変わり映えしないのです。
またチューンナップがなく、全体のシステムがシンプルに作られているため、本格的なレースゲームを期待している人だとガッカリするかもしれません。
あくまでこれは「ライト系のレースゲーム」「レースのショートゲーム」です。
1レースが短時間で終わり、サクサク進行するため、私的には好きなのですが、ショートゲーム系が好きでない人だと物足りないかもしれませんね。
「じっくり腰を据えてやる本格レースゲームが欲しい人は、Real Racing 3 をお待ち下さい」という事なのでしょう。
以下は(ちょっと短いですが)Youtube で公開されている公式のトレーラーです。
価格は 600 円。 iOS のアプリとしては高めですが、クオリティーを考えると妥当なところでしょう。
気軽に遊べるレースゲームで、シビアなテクニックも必要ないので、意外と万人向けだと思います。
ライト系のレースゲームと言えば アスファルト7 が定番ですが、それよりさらにライトであり、それでいてグラフィックは非常に高レベルなので、いかにも「最新スマホのためのゲーム」という感じですね。
ライトといってもメインモードのボリュームはかなりあり、後半の難易度は結構高いため、ゲーマーでも十分に楽しめる内容です。
レースと言うより「カーチェイスアクション」で、そういうゲームがやってみたい方にはかなりオススメです。
・Need for Speed Most Wanted (iTunes が起動します)
iOS版の方がグラフィックは綺麗ですが、PSVita版のオープンワールド&車探しの方が地味に面白くて、後者ばかりやってます。