半自動で戦う多数の兵士を指揮し、敵の軍勢を撃破して敵陣に攻め込む、リアルタイムの戦術シミュレーションゲームを RTS (リアルタイム・ストラテジー)と呼びます。
このタイプのゲームは iOS でも ザ・セトラーズ などが発売されています。

その RTS の世界的定番の1つが Warcraft (ウォークラフト)シリーズで、その Warcraft 3 にはユーザーがゲームを改造して遊べるシステムが用意されていました。
そしてユーザーによって作られ人気になったのが、DotA 系と呼ばれる変則的な RTS です。

DotA 系の RTS には生産がありません。 施設の建設も、物資の採掘もありません。
一般の兵士は自動で作られ、勝手に敵陣に攻め込んでいきます。
プレイヤーが操作するのは「ヒーロー」と呼ばれるユニット1体のみで、多数の兵士を指揮する事はありません。
RTS としては非常にシンプルですが、おかげでヒーローの戦いのみに集中すれば良いので、プレイしやすいのが特徴です。

そんな DotA 系と呼ばれるゲームの定番 League of legends(LoL)を、ゲームロフトがパクったスマホに最適化させたゲームが発売されています。
ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス」です。

ゲーム内ではこのタイプのジャンルを MOBA (マルチプレイ・オンライン・バトル・アリーナ)と説明しています。
DotA の由来はこのタイプの元祖のゲーム「Defense of the Ancients」から来ているのですが、これはゲーム名の略称であり、ジャンル名の略称ではなかったので、後に他のメーカーが MOBA という言葉を別に作ったようです。
ただ、一般的にはまだ「DotA 系」と呼称される方が多いようです。
(アクション RTS、ARTS と呼ばれる事もあるようです)

ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス

3 vs 3 か 5 vs 5 で対戦するゲームで、オンライン対戦が可能ですが、ソロ(1人)でもコンピューターと対戦することが出来ます。
ただしソロプレイでもゲーム開始時にゲームサーバーに接続するので、通信できる環境でなければプレイできません

冒頭で述べたように RTS をベースとしたゲームシステムなのですが、プレイヤーが操るのはヒーローのみで、しかもこのゲームは仮想スティックとボタンで操作できるため、プレイスタイルはアクション RPG っぽいですね。
MMORPG(大規模オンラインRPG)の対人戦をやっているような雰囲気もあります。

ゲームが始まったら、まず約 75 秒の準備時間になります。
この間にショップをタップし、手持ちのお金で装備やアイテムなどを購入できます。
お金やアイテムはそのゲーム内のみで使うものであり、残しておいても意味はありません。
オンライン対戦の場合、準備時間に作戦の相談なども行えるのですが・・・ iPhone / iPad では難しいですね。

準備時間が終わりゲームがスタートしたら、敵陣に向かって進んで行きます。
画面左側をスライドして移動し、右下にある剣ボタンを押すと近くの敵を攻撃、矢印ボタンはターゲットの変更を行います。
パソコンの RTS のように、画面タップでそこに移動し、敵をタップでターゲット切り替え、ダブルタップで攻撃を開始することもできます。
なお、仲間をダブルタップするとその人を追尾します。

攻撃は一度開始すると半自動で行われ、ターゲットに連続して攻撃を行い、相手が倒れたら自動的に別の敵にターゲットが切り替わります。

ユニットにはどんどん湧き出てくるザコ(一般兵)と、相手ヒーローがいます。
当然ヒーローの方が強く、ザコは大した戦力ではありません。
しかしゲーム序盤はヒーローもあまり強くないし、相手ヒーローと正面から戦っても苦戦します。
よってまずはザコを倒してレベルアップし、強くならなければなりません。
ザコを倒しているとお金も増えるので、それで新しい装備やアイテムを購入することも出来ます。

もしやられても、一定時間後に自軍の陣地で復活します。
しかしやられる回数が多くなるほど復活に時間がかかるようになり、さらに倒されると相手ヒーローが多くの経験値とお金を入手してしまいます
よって突出は厳禁であり、ピンチの時は急いで後方に下がらなければなりません。
逆に相手ヒーローを倒せば一気に経験を稼げるので、レベルアップが早まり、より有利になります。

ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス
※自軍拠点。 まずはここで準備を整えます。 リアルタイムのゲームなので、ショップを開いている時も時間は進み続けます。
自軍拠点にいる時は HP や MP が急速に回復していくので、ピンチになったら帰還しましょう。
画面下にある旗のアイコンをタップすると、テレポートで拠点に戻れます。
ただしテレポート準備中に敵の攻撃を食らうとキャンセルされてしまうので、安全な場所まで後退してから実行して下さい。


ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス
※ショップ画面。 最初は 1000 G 持っているので、それで薬をいくつか買っておきましょう。
HP 回復薬はすぐに回復するのではなく、徐々に回復していくタイプであり、回復量が大きいものは敵の攻撃を受けると効果が止まってしまうので、薬があってもピンチの時は一旦後退することが必要です。
装備には重複するものがあり、古いものが売られて新しいものに入れ替えられる場合があります。 ただしブーツ系は重複しません。
やられた後の待機時間にもショップを利用できるので、この間に買い物を行いましょう。


ゲームの流れは、敵を倒してレベルアップしつつ、味方の兵士と共に進軍して相手の「」を攻撃し、破壊して進軍路を確保します。
そして敵陣に突入し、そこにある施設を破壊、最後に敵の本拠地を壊せば勝利です。
敵の本拠地を攻撃するには手前にある施設や塔を壊しておく必要があり、いきなり本陣を奇襲するという戦い方は出来ません。

塔を攻撃するには一般兵との連携が必要です。
塔は強力な攻撃を行うので、単独で攻撃しに行っても大ダメージを受けてしまいます。
しかし味方の兵士がいれば盾になってくれるので、その隙に塔を攻撃できます。
よってヒーローが主役のゲームではありますが、ちゃんと味方兵士と共に戦う必要があり、この辺はうまく RTS とアクション RPG のバランスが取られていますね

攻める時は攻め、退くべき時は退くのがゲームのポイントで、よって前進と後退を繰り返す形になり、常に双方が押し合いを繰り返す展開になります。
施設の建設や物資の補充がないこともあり、こういう表現はちょっとおかしいかもしれませんが、「一本道じゃない一本道 RTS」と言った印象も受けます。

ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス
※タワー攻撃中のシーン。 タワーの攻撃力はかなり大きいので、レベルが低いうちに狙われるとかなり危険。
レベルがある程度上がるまで無理に攻めない方が良く、味方がいない時も一旦下がった方が無難です。
敵ヒーローは出来れば倒したいところですが、深追いは危険なので、追うか諦めるかの判断も重要ですね。


ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス
※マップ画面。ぶっちゃけ、このゲームのコピー元 League of legends のまんまです。
森の中には盗賊団や熊などの中立の敵がいて、これを倒すことでも経験値とお金を稼げます。
敵と戦って押し返すのと、ザコや中立の敵を倒して経験を稼ぐのを、バランス良く行うのが基本的な攻略です。
中立の敵の中にはボスがいて、これを倒すと大きな報酬を得られますが、かなり強くなってないと勝てません。


注目のオンライン対戦についてですが・・・ まずオンライン対戦云々言う前に、サーバーが問題
現時点(2012/11)では公開直後なこともあってかなり重く、「接続が切れました。後ほどお試し下さい」や「内部サーバーエラー」などを連発します。

しかもオンライン対戦でこうなるだけならまだいい。
ソロプレイをする際にもサーバーに接続するので、その時に接続エラーが出て、ソロプレイさえ出来ないことも間々あります
実際、このゲームは11月21日に公開されたのですが、私も公開から数日の間はチュートリアルさえプレイできませんでした。

先日ようやくプレイ出来るようになり、こうしてレビューを書くことが出来ているのですが、今でも不意に繋がらなくなったりして、安定しているとは言い難い状況です
当然オンライン対戦も「繋がらない」というケースが多発しているようで・・・ しばらくはプレイし辛い状況が続きそうです。

対戦についてですが、ゲームを起動すると表示される「PvP」のボタンを押してそのまま待っていると自動マッチングが行われますが、全然接続されません
たまに繋がって人が集まっても、ゲームが始まる前に落ちてしまい、開始するところまで進みません。

ただ、PvP のボタンを押した後に表示される「カスタム」のボタンを押すと、ユーザーが任意に作った対戦ルームが一覧表示されます。
前述のオートマッチングが正常でないためか、プレイヤーはここに集まっているようで、ここに表示されているルームに「参加」すれば(サーバーが正常なら)普通にゲームは開始されます。

プレイヤーはかなり多く、早いときはルームが作られて1分も経たないうちに6人集まります。
正常に繋がれば対戦はなかなか快適で、ラグも感じません。

ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス
※PvP のボタンを押して待っていてもゲームは始まりません。 「カスタム」のボタンを押してルーム一覧からゲームに入りましょう。
ルーム一覧がいつまで経っても表示されない人は、アプリか本体を再起動した方が良いです。
このゲームの元と言える Warcraft はマーケティングの失敗で日本での知名度が低く、逆に韓国では非常に盛況なため、ユーザーも韓国や中国のプレイヤーが中心です。
日本からログインする場合は「アジアサーバー」になるので、昼や早朝だと繋がりやすいようですが・・・


(現時点のサーバー以外の)難点は、あくまでオンライン対戦メインで作られているため、1人プレイでは長期的には楽しめないこと。

ゲーム自体は面白いので、最初のうちは1人でも十分遊べます。
ただ、マップが2種類しかなく、ランダムマップは存在せず、コンピューターの難易度もなく、キャンペーンモードのようなものもないため、それぞれのマップで何度か勝ったら、後はもうその繰り返しでしかありません。

勝利することでレベルが上がり、強化に使える「タレント」というメダルと「エンブレム」と呼ばれる通貨が手に入るのですが、タレントによる強化は僅かで、体感できるものではありません。
対戦バランスを維持するため、あまり目立ったパワーアップは行えないようです。

エンブレムはヒーローの購入や色替えに使えますが、ヒーローは購入しなくても毎週特定のキャラを使用できるので、必須ではありません。

「オンライン対戦をしてナンボ」のゲームであり、1人用はあくまで練習に過ぎない感じですね。
レベルアップやエンブレムの要素も、どちらかと言うとオンライン対戦のためのものであり、1人用が楽しくなるようなものではありません。
もうちょっと色々なパターンで対戦できるようなシステムがあれば、ソロのみでも楽しめたと思うのですが・・・

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



価格はなんと無料! このゲームが無料って、大盤振る舞いもいいとこですね
もちろん課金はあるのですが、前述したようにレベルアップやヒーローのアンロックが必須ではないため、課金も必須ではありません

やり込むつもりの人だと、高価なヒーローを早期にアンロックしたくなるかもしれませんが・・・
ただ、ヒーローの能力はゲームバランスが優先されているようで、そんなに突出した技能を持つキャラは存在していないようです。

オンライン対戦を中心に作られているので、その点で敷居が高いゲームですが、対戦する時に挨拶のようなものは必要ありませんし、気軽に始める事が出来ます。
1プレイが 20 分ほどかかるので、手軽に遊べるという訳ではありませんが、本格的な DotA 系を iPhone や iPad で遊べるのはやはり驚くべきことでしょう

クオリティーは非常に高く、それでいてタダなので、とりあえず試してみるのをオススメします。
サーバーについては・・・ 当初よりはマシになっていますし、徐々に機嫌は良くなっていくと思いたいですね。

ヒーローズ・オブ・オーダー&カオス (iTunes が起動します)