ファミコン時代から続く名作アクションゲームシリーズ「ロックマン」。
海外では Mega Man と呼ばれ、国内外を問わず人気の高いカプコンの代表作の1つです。

そんなロックマンのシリーズ誕生25周年を記念し、アニメや漫画なども含む一連のシリーズのキャラクターが総登場する、新しい作品の開発発表が行われたのが今年の8月です。

しかし、それは「ソーシャルゲーム」。
この時点でファンからは大ブーイングが起こった訳ですが、それでも「ロックマンファンの期待を裏切るものにはしたくない」といった開発コメントや、アクションゲーム風のスクリーンショットが公開され、期待する声も少なからず上がっていました。

しかし9月下旬、「東京ゲームショウ2012」で公開された新ロックマンの内容は、完全な「ポチポチゲー」のソーシャルゲームであり、ミニゲームもアクションとは名ばかりのシンプルなもの。
さらにボス戦に至ってはコマンド戦闘という、ロックマンファンの期待を完膚無きまでにぶち壊すものとなっていました。

実際に触れた方からの評価も酷い有り様で、海外でも悲鳴が巻き起こり、もう発売前から「クソゲー」であることが解りきったアプリと言えました。
ロックマンがこんなに見え見えの地雷になったことは、ゲーム史に残る事件だと言えるでしょう。

その内容の詳細についてはゲームキャストさんがすでにフルボッコレビューをされていて、私が改めて言うこともないのですが、ある意味こんなに「活きの良いネタ」はそうそうない訳で、あえて今回は取り上げようと思います。

rockmanxover

タイプとしては「怪盗ロワイヤル型のソーシャルゲーム」です。
対戦する敵ロボットを選択すると EP というポイントが減少してアクションのミニゲームが始まり、終わると「進行度」が増えます。
進行度が最大になるとボスが現れ、それに勝つとステージクリア。
エリアのボスをすべて倒すと次のエリアが開放され、さらに追加ボスが登場します。 この繰り返しです。
EP がなくなるとしばらく待つか、課金アイテムを使わないと再プレイできなくなります。

アクションのミニゲームと言っても、ほとんどゲーム性はありません
ロックマンは自動で進み続け、前方からやってくる敵をショットボタンで撃つのみです。
飛んでいる敵はジャンプして撃つ必要があり、しばらく弾を撃たないでいると「チャージ」が行われ、その後に攻撃すると貫通するチャージショットを撃てるのですが、ゲームっぽいのはそれぐらい。
穴を飛び越えたり、しかけがあったり、敵が弾を撃ってきたりすることはありません。

そもそも敵に当たるとダメージを受けますが、いくら敵にぶつかりまくっても死にません
体力が 0 になる前にステージクリアしてしまいます。
先のエリアになれば、敵を倒さないようにしながらワザとすべてにぶつかるようにすれば、何とか死ぬことが出来ますが、そのぐらいのレベルでありアクションゲームになってません

そしてなんと言ってもボス戦が「コマンドバトル」
ショットボタンを押すと相手にダメージを与え、それからボスが攻撃してきてダメージを受け、その繰り返し。
ロックマンと言えば多くのボスが多彩な攻撃をしてくるのが特徴ですが、そんな要素は皆無です。

rockmanxover2
※単に前進するだけのステージ、ただ歩いてくるだけの敵、やられまくっても死なない道中、コマンドを選ぶだけ(コマンドもほぼショットだけ)のボス戦。
ボタンが右側だけにあるのは片手でプレイできるから私は良いとは思うけど、そもそも操作性云々言うような内容ではないです。


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※ステージ開始前のボス紹介シーンと BGM だけはロックマンぽい。 それらしいのはここだけですね。

敵を倒すとロックシリーズに登場するのキャラクターのイラストが書かれたカードを入手できます。
ロックマンはこれを装備することでパワーアップするのですが、そのキャラが戦ったりとか、武器が増えたりとかいう要素はないので、単なる装備アイテムです。
キャラの中にはアニメや漫画に登場する人間のキャラクターも多く含まれるので、ゲーム版しか知らない人だと違和感がありますね。

カードは「合成」で強化できますが、それによってスキルが増えるといった要素もなく、ソーシャルゲームとして見ても非常にシンプルです。

また、敵を倒すと得られるマップというものを集めると「マスターボス」と呼ばれる強敵が現れ、フレンドと協力して戦う事が出来るのですが、やることはやっぱり「コマンドバトル」。
普通のボス戦とほとんど変わりません

もはやそこにあるのはロックマンに存在する要素を極限まで削り落とし、無料の簡易アプリでもどうかと思うレベルのミニゲームを入れて、ロックマンキャラの絵だけを使った、とても簡易的なソーシャルゲームです。

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※カード装備画面。 カードは5つ装備でき、同じ属性のカードを多く含めると数値が高まります。
ゲーム性がありそうですが、スキルなどがないので強いものを装備するだけで良く、そもそも「自動ボタン」があるのでそれを押せば済みます。


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※マスターボス出現前の演出。 一瞬「おおっ」と思いますが、行った先の戦闘はいつものコマンドバトル。
ボスの見た目も割と普通で、色々な意味でガッカリ感が否めません。


ただ、以前にも述べましたが・・・
私はソーシャルゲームというものはパチンコやパチスロなどのシンプルなゲームを好む人がやるものであり、ゲーマーがやるものではなく、ユーザーが明確に分かれているものだと考えています。
もちろん両方をやるユーザーもいる訳ですが、大抵はどちらかに寄っています。

そしてソーシャルゲームの主要ユーザーの方々は、ゲーム性があると「難しい」「めんどくさい」と考えてしまうので、内容は出来るだけ単純化する必要があります。
極端な話、ボタンを押して結果だけ出てくる内容の方が、そうした方々にはウケるのです。
これは別にバカにしている訳ではなく、双方のタイプが大きく違うという話です。

このゲームを開発したアドウェイズはそうした方々に向けたソーシャルゲームで成功したメーカーであり、つまりこのゲームもゲーマーから見ればハッキリ言って「クソゲー」な訳ですが、むしろ「そうしたものを狙って作っている」と言えます。

一般のテレビゲームとパチンコ・パチスロが全く違うのと同じように、私はソーシャルゲームは従来型のゲームと切り離して考えるべきだと思っていて、ソーシャルゲームをゲーム的な視点で評価するのも間違っていると最近は考えています。
(もちろんソーシャルゲームの視点でゲーム業界や個々のゲームを評価するのもおかしい)
ただ、巷では(特にゲームをビジネス的な視点でしか見ていない人は)そこの区別が出来ていないケースが多く、それに起因する曲解が多発しています。

このロックマンは、例えば戦国無双で言うと、「パチスロ戦国無双」であって、「戦国無双2」ではないのでしょう。 「まったく別の世界のもの」「完全に異なるジャンルのもの」ですね。
だからこのゲームの作り方は、ゲーム的な視点では完全に駄作ですが、ソーシャルゲーム的な視点では正解なのだと思います

ただ、ロックマンと言うものは「アクションゲームの王道」である訳で、それを「完全な(中間的なものではない)ソーシャルゲーム」にして、ロックマンファン向けに公開したというのは、世界中のロックマンファンの思いを踏みにじるものであったことは言うまでもありません
ソーシャルゲームにしてはいけないものをソーシャルゲームにして、外注するべきではないメーカーに外注してしまった、そんな感がありますね・・・
各所で批判されていたのも当然です。

以下は海外の Mega Man ファンサイトによって Youtube で公開されているプレイ動画です。
大量の「低評価」が海外ファンの心情を物語っています。



と言う訳でソーシャルゲームのロックマン。 ソーシャルゲームなので本体は無料です。
ドリランドや怪盗ロワイヤルなどが好きな人のためのアプリですね。

最近はパズドラ系が成功して、ソーシャルゲームと一般のゲームの中間的なものが出て来ていますが、それらはあくまでゲーム側が主体であって、ソーシャルゲームの本流であるドリランド型やロワイヤル型とは異なります。

そもそも「ソーシャルゲーム」という語句が問題だと思っているのですが、なにかいい区別の仕方というか、呼び名というか、そういうものは出来ないものでしょうかね・・・

ロックマン Xover (iTunes が起動します)