自由に動き回れる「オープンワールド」の町の中で、手段を選ばず何でもやる主人公が殺人・強盗・車泥棒などを繰り返す、「クライムゲーム」(犯罪ゲーム)のシリーズ「Grand Theft Auto」(グランド・セフト・オート)。 通称「GTA」。
日本では「有害図書」に指定されたこともあるゲームで、iOS ではすでにその3作目「Grand Theft Auto 3」が発売されていましたが、さらにその続編が移植されました。
Grand Theft Auto: Vice City」です。

オリジナルは 2002 年に発売されたもので、そのためグラフィックの古さは否めないのですが、前作 GTA3 と比べると大幅にパワーアップしています
また、iOS 版の GTA3 はインターフェイスがスマホに最適化されていなかったり、表現に規制が入っていたりなど、色々と問題が多かったのですが、それらも改善されています。

犯罪行為がピックアップされがちな作品ですが、私的には今作のポイントはストーリーシーンだと思います。
その映画的な表現は見応えがありますね。
とは言え、かなり残酷なゲームなので、あまり人に勧められるような内容ではないのですが・・・

Grand Theft Auto: Vice City

基本的には町の有力者から依頼を受けて、その任務(ミッション)を遂行するのを繰り返す形となります。
ただ、今回は謎の集団に「ブツとカネ」を奪われ、それを追い続けるというオープニングから続く大まかなストーリーがあります
よって漠然とギャングからの依頼を繰り返していた前作よりも、物語が解りやすくなっていますね。

自由に散策できる「オープンワールド」のゲームなので、ミッションを無視して好きなことをしても構いません
前述したように「クライムゲーム」(犯罪ゲーム)なので、通行人にいきなり殴りかかったり、ショッピングモールで銃を乱射したり、トラックで歩行者をひき殺してそのままナイフを振り回したり、好きなことが出来ます。

ただし犯罪行為をすると「手配レベル」が上がり、警官に追われて逮捕されるハメになります
それでも犯罪を繰り返していると、パトカーで追跡され、警官に銃撃され、ヘリも飛んで来て、スワットまで降下してきて、大変なことになります。
ただ犯罪行為の無茶っぷりもさることながら、警官に追われたときのハチャメチャぶりもこのゲームの醍醐味でしょうか。

ミッションにも「無能な部下を始末しろ」「婦人を事故に見せかけて殺せ」など酷いものがあり、見た目の残酷さだけでなく、行為の残酷さも強いゲームです
なお、日本語の iOS 版 GTA3 には「表現規制」があり、一部の暴力表現や攻撃がなくなっていましたが、この規制は今作にはありません。
よって打撃武器での「追い打ち」も普通に行えます。

逮捕されたりライフがなくなると「警察行き」や「病院送り」になりますが、若干($100)のワイロや治療費で何事もなかったかのように放免されます。
よってペナルティーはありますが、基本的にはやりたい放題できるゲームですね。
ただしそのため、例えゲームでもそういう行為が嫌な人には全く向きません。 特に子供にはやらせられないですね。

逮捕や病院送りになると、ミッション進行中の場合は失敗になってしまいます。
失敗してもリトライ可能ですが、途中で絶対に警察に追われるミッションもあり、1発クリアは困難なものも存在します。
ただ、難易度は全体的に GTA3 より落とされていて、クリア手順も解りやすくなっています

Grand Theft Auto: Vice City
※好き放題やってると大量の武装警官に囲まれフルボッコに!
でもこれだけムチャクチャやってもワイロで即釈放という・・・ 恐るべきバイスシティ。
ただし武器の多くは没収されるので、普通に進めるなら無茶しないように。
なお「手配レベル」は人を少し殴ったり車を盗む程度では増えませんが、近くに警官がいたら「現行犯」です。


Grand Theft Auto: Vice City
※血を流してダウンしている敵の護衛にゴルフショットで追い打ち。
ライフルでヘッドショットすると頭がなくなるとか、結構残酷な表現もあるので注意。
ただ、クライムゲームなのに表現規制があった iOS 版の前作はかなり批判されたので、それよりは良いのかも。


そして今作の大きな特徴であり長所は、作り込みがより細かくなったことでしょう。

街灯や信号が壊れ、ガラスが割れるなど、様々な場所に「破壊表現」があり、特に車の破壊表現は凄いです
前面部がダメージを受けると車体が凹み、バンパーが曲がり、ボンネットが開き、最後にフロントガラスも割れるなど、段階的に破損していきます。
こうした段階的な破壊が前部のドア、後部のドア、車体後部などの部位別に行われます

そして車が事故ったり人が倒れたりしたら回りの人が一斉に逃げていき、その後にやじうまが集まってくるなど、通行人もリアルな動きを見せます
道ばたで出会った人と談笑や挨拶をしたり、タクシーやバス亭に並んだりもします。
また人の服装や種類は地域によって異なり、ビーチ付近では水着の人が多くなります。

個人的に特筆したいのはミッションの合間に入るストーリーシーンで、登場人物の身振りや手振り、カメラワークなどが非常に映画的なこと
会話をする時にただ突っ立って話す人はほとんどおらず、リアルなモーションを交えて話します。
そのため昨今のゲームとしてはグラフィックのレベルは低く、キャラクターのモデリングも粗いのですが、動きは生き生きしています。

このゲームを作った Rockstar Games は「マックス・ペイン」という、とても映画的で細部まで作り込まれたガンアクションゲームを発売していますが、それを彷彿とさせる演出が見られます。
だから個人的にはこのゲームは「クライムゲーム」と言うよりも、「マックス・ペインのような映画的アクションがオープンワールド化したもの」という印象を受けています。

Grand Theft Auto: Vice City
※ストーリーシーンのキャラクターの仕草が非常に細かく、とにかく良く動く。
静止画や文章では伝わりにくいのですが、本当に '80 年代の古いギャング映画のような演出が続きます。
ボイスの口調も良く、翻訳もそれらしい文章になっています。


Grand Theft Auto: Vice City
※裁判の陪審員の車をハンマーでボコボコにして脅し、無理やり無罪にさせるというヒドいミッション。
バンパーが取れてますが、このように各所に「部位破壊」が存在し、ちゃんと殴った場所に応じて壊れます。
車の種類も多く、ダメージ表現が細かく作られています。


Grand Theft Auto: Vice City
※これは道を走っているのではなく、とある駐車場付きのビルの誘導路をバイクで上っているシーン。
建物というか、マップ全体の作り込みはかなりのもので、地下駐車場や地下街、立体のショッピングモールやゴルフ場など、見どころが多い町並みです。
裏路地も1つ1つ作られていて、各所にアイテムなども隠されています。


難点は、まず文字表示。 ストーリーシーンのセリフ表示やマップ画面の地名表示などが iPhone / iPod touch では小さすぎて非常に見辛いです
これは前作の時からそうだったのですが、全く改善されていません。
おそらくアルファベット以外の環境を考慮してないのでしょうね・・・ iPad ならマシなのですが・・・

一方、ゲーム中やメインメニューに表示される文字は大きいのですが、iPad で見ると非常に粗いです
小さい文字よりは見やすいですが、ドットがガクガクで野暮ったさが否めません。

ただ、前作の欠点だったマップ画面については、目立つ紫色でやたら大きな「現在地」と書かれた矢印が追加されていて、「これで文句ねぇだろ!」的に現在位置が解りやすくなっています
目的地のドット表示も大きくなっていて、バックもノッペリした黒一色だったのが透過表示になり、かなり改善されています。

もう1つの大きな難点は、やはりグラフィックでしょうね。 昨今のゲームと比べると激しく見劣りします。
前作よりは大幅にパワーアップしているのですが、FPS 系のグラフィックはこの1年ですごい勢いで進化したので、やはりまだ厳しいですね。
前述したように映画的な細かい演出を見れば、このグラフィックや野暮ったい文字も、古いギャング映画的な雰囲気が出ていて悪くはないのですが・・・

あと、戦闘に関しては、やはり格闘アクションや FPS には劣ります
ここはオープンワールドのゲームなので仕方がないところでしょうか。

ただ、このゲームのカーチェイスは非常に良いです
高速でブレーキを踏むとすぐにスリップして車体が流れてしまうため、操作は簡単ではないのですが、これが破壊演出とオープンワールドならではの不意の事故、さらに派手な車の動きと合わさって、他にはない独特なカーチェイスが楽しめます。

Grand Theft Auto: Vice City
※今回のマップ画面。 文字表示が小さいのが相変わらず難点ですが、現在地と目的地が解りやすくなったので、活用しやすいマップになりました。
メインストーリーは序盤はL、その後は C と書かれたポイントに向かって依頼を受けることで進行します。
カセットテープのアイコンはセーブポイント(アジト)ですが、これはお金を貯めて物件を購入することで増やすことが出来ます。
iCloud セーブに対応していて、同じ iTunes アカウントなら簡単にデータを共用できます。


Grand Theft Auto: Vice City
※最初は運転が難しいですが、慣れるとこの操作感はなかなか楽しいです。
カーチェイスのシーンは結構多く、ハデにぶつけて吹っ飛ばせるのが良いのですが、かなり逃げられやすいので、どうしても失敗してしまう場合は逃げられる前に速攻で押さえる方法を考えた方が良いかも。
なお、ボタンのサイズと位置はトップメニューのオプションにある「操作方法」で変更できます。


価格は 450 円。 内容とボリュームを考えるとかなりお得だと思います。
前作はグラフィックやインターフェイスがあまりに厳しく、私的には ギャングスター RIO の方が良いと感じたのですが、今作はこちらの方が楽しめますね。

クライムゲームですから好き放題やる遊び方をしている方が多いと思いますが、私的には映画的な演出とストーリーの面白さのおかげで、ミッションを進行させる方を楽しんでいます。
やり込み要素もかなり豊富なようなので、相当遊び続けられるゲームでしょう。

まあ、前述したように犯罪行為や残酷な表現が多いので、オススメとは言いません。
ただオープンワールドの定番である GTA の真価を iOS でも体験できるアプリであることは確かです。

Grand Theft Auto: Vice City (iTunes 起動、iPhone / iPad 両方です)


なお、サイズの大きなアプリなので、インストール後は本体を再起動した方が無難です。
最後になりましたが、以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。