先日より 2012 年度の iPhone ゲームアプリレビューの総括として、各ジャンルの優秀アプリをまとめてご紹介しています。

2日目となる今回は、「アクション部門」「格闘ゲーム部門」「シューティング部門」「FPS/TPS 部門」「レース部門」をお届けいたします。
アクション性の強いジャンルですね。

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【 アクション部門 】

「アクションゲーム」と言っても幅が広いのですが、ショートゲームや対戦格闘に含まれないアクションをここでは扱います。
操作性の問題もあり、カジュアル / ショート以外のアクションゲームは、iPhone ではあまり多くありません。

今年のアクションゲームの中でもっとも注目の作品と言えたのは「ワイルド ブラッド」でしょう。
鬼武者やデビルメイクライのようなスタイルの剣劇アクションです。

ワイルド ブラッド

ゲームロフトが開発したものですが、既存のゲームを模倣したものではなく、完全なオリジナル作です。
アンリアルエンジンを使った最新スマホならではの美しいグラフィックと、硬派なストーリー&難易度を持つゲームで、オンライン対戦まで完備されています。
かなり難しいゲームですが、良い意味でゲーマー向けであり、家庭用ゲーム機のソフトのような作り方をされています。

もう1つのアクションゲームの注目作は、なんと言っても「ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードⅡ」ですね。

ソニック・ザ・ヘッジホッグ4 エピソードⅡ

ソニックの新作シリーズが XBOX360 や PS3 と並んで、iOS / Android / Windows Phone といった各種スマホで発売されたことは、時代の流れというか、ハードウェアの移り代わりというか、そうしたものを感じますね。

エピソードⅠは高速疾走できるステージが少なく、落ちて良い場所とダメな場所の区別を付けにくかったのですが、Ⅱはそうした問題が改善されており、相棒の「テイルス」も加わっています。
ただ、Ⅰにも増して即死トラップや初見殺しの多いステージ構成になっているため、難易度は異様に高いです。
まあ、それはそれでソニックらしいとも言えるのですが・・・

他に人気なのは、やはりメタルスラッグでしょう。
METAL SLUG 3」の後に「METAL SLUG 1」まで発売され、どちらも世界的な人気になっています。
中身はエミュだと思われ、初期バージョンには操作性・視認性の問題もあったのですが、アップデートでスクリーンサイズの変更が可能になり、操作性の改善も行われ、プレイしやすくなりました。

他にはマイクロソフトが発売を担当した「Tentacles: Enter the Dolphin」が注目作でしょうか。
生物の体内を移動するというややグロ系の設定のため万人向けとは言えないのですが、独特な触手アクションがユニークで、やっていて楽しいゲームです。


【 格闘ゲーム部門 】

ここでは俗に言う「対戦格闘ゲーム」を扱います。
一応「ベルトアクション」(横スクロールの格闘アクションゲーム)も含みますが、今年はそのジャンルで目立った作品は少なかった印象ですね。

今年のこのジャンルは「ソウルキャリバー」「KOF2012」「ストクロ」の3強でした。
まずはナムコの「ソウルキャリバー」。

ソウルキャリバー

美しい 3D グラフィックが滑らかに動く、武器を使った対戦格闘で、そのグラフィックのクオリティーは目を見張るものがあります。 アップデートにより上位機種なら 60 fps で動くようになりました。
オンライン対戦がないのが残念ですが、エンディングは各キャラクターごとに用意されており、クリアする事でキャラが徐々に増えていく要素もあります。

続いて登場したのが SNK の「THE KING OF FIGHTERS-i 2012」。
いきなり 10 チーム、キャラ総勢 30 名以上という驚きのボリュームで登場しました。

THE KING OF FIGHTERS-i 2012

KOF の主要メンバーはほぼ勢ぞろいしており、各チームごとのエンディングやカード収集要素なども盛り込まれています。 また、今回はオンライン対戦も用意されました。
やや解りにくいマニアックなシステムもありますが、操作はスマホ用に簡略化されています。

そして最後に登場したのがカプコンの「ストリートファイター X 鉄拳 MOBILE」。
ナムコの「鉄拳」のキャラが含まれていますが、ゲーム的には完全にストリートファイターです。

ストリートファイター X 鉄拳 MOBILE

グラフィックが半 3D 化し、演出なども強化された、非常に高クオリティーな格闘ゲームです。
その完成度は「さすがカプコン」と言ったところですね。

ただ、キャラ別のエンディングはなく、1人用は練習モードに過ぎない印象で、オンラインの公式マッチは乱入対戦に非対応。 ゲームシステムも初心者と上級者の差が出やすい内容で、新規ユーザーには遊び辛いゲームであったことも否めません。
そのためか、巷の評価も スト4 Volt の時ほど高くはないようです。

この3つはどれも今年を代表する作品と言え、甲乙は付けがたいのですが、私的には KOF 2012 が総合的に見て一番楽しめるかな、という印象です。

ベルトアクション(横スクロール格闘)では「カートォーンウォーズ:ブレード」が人気でした。
キャラが棒人間で見た目はイマイチ、内容もシンプルですが、装備が豊富で敵キャラクターも多種多様、ゲームも遊びやすく、ハマると延々と楽しめるアプリです。


【 シューティング部門 】

iOS のシューティングは毎年「ケイブ無双」な訳ですが、今年はタイトーも秀作シューティングを発売し、他にも注目作が多めの年となりました。

まずケイブシューでは「虫姫さまふたり ブラックレーベル」が最大の注目作ですね。

虫姫さまふたり ブラックレーベル

虫姫さま ふたり」と「虫姫さまふたり ブラックレーベル」の2つが立て続けに発売されたのですが、ブラックレーベルの方が改修版であり、ゲームとしてはオススメできます。
ただ、価格は初期版の「ふたり」の方が安く、セールもほとんどこちらしか行われていません。
内容は「撃ちまくる・壊しまくる・回収しまくる」という点が重視された、とても爽快感のあるシューティングです。

もう1つのケイブシューは Windows Phone からの移植作「DODONPACHI MAXIMUM」。

DODONPACHI MAXIMUM

これは元々アーケードゲームではなかったので、他のケイブシューとは作りが違っており、グラフィックは簡易的で、各ステージのスコアアタックを重視した内容となっています。
様々なケイブシューの機体が登場するお祭り的なゲームでもありますね。

今年のケイブは業績が悪化し、それに伴ってシューティングの開発を中断してソーシャルゲームに集中すると発表、iOS のアプリ名をダサい SEO 的なものに変えてユーザーからひんしゅくを買うなど、これまでとは雰囲気や方針が変わってしまった印象があります。

タイトーのシューティングは、なんと言っても「ダライアスバーストSP」が注目作でした。

ダライアスバーストSP

3D で表現された非常に美しいグライックのゲームで、ややぶっ飛んでいる「ダライアス的 BGM」も健在
スクリーンのサイズと位置を調整できるため、iPhone との相性があまり良くない横スクロールのシューティングですが、操作性は悪くありません。

ただ、ダライアスというゲームは弾幕シューティングではなく、パターン化とバリアで攻略する一世代前のシューティングであり、最近のものと比べると爽快感に劣るため、やや好みが分かれる内容なのは否めません。
タイトーは他にも「レイフォース」「レイストーム」という往年の名作シューティングを公開し、話題となりました。

また、香港の有力メーカー EpicForce が「iFighter 2: The Pacific 1942」を発売し、EpicForce らしい王道を行く作りで評価されましたが、思ったほど話題にならなかった印象です。
他には 80~90 年代のシューティングをリスペクトした「Toon Shooters」が人気でしたね。

全方向スクロールシューティングは、話題作と言えるものは少なめでしたが、秀作は結構多かった印象です。
Minigore の続編「Minigore 2: Zombies」や、設定が秀逸な「ゾンビウッド」、従来作とはガラッと内容が変わった「iBomber Attack」などはオススメです。


【 FPS/TPS 部門 】

ここでは 3D 視点で銃を撃ち合う「ガンシューティング」を取り上げています。
このタイプのゲームにはステージクリア型のものと、広い町を自由に動ける「オープンワールド型」のものの2種類がありますが、どちらもここで扱います。

まず今年の FPS の代表作と言えば、これしかないでしょう。
モダンコンバット4:Zero Hour」です。 相変わらずグラフィックも内容も破格。
モダコンは毎年スマホを代表するアプリになっていますが、それは今年も変わりません。

モダンコンバット4:Zero Hour

前作「モダンコンバット3」の時に大幅に進化したグラフィックは、今作でますます演出的に強化されました。
シナリオ面では、アメリカの特殊部隊とテロリストのボスの両者の視点で物語が語られるのが特徴です。
手軽に敵を狙える初心者でも遊びやすいシステムは健在で、もちろんオンライン対戦も用意されています。

ただ、今年はカジュアル系の FPS 「DEAD TRIGGER」も、モダコンに劣らない話題性があったと思います。

DEAD TRIGGER

ランダム生成される短時間のミッションを繰り返しプレイする、ちょっと変わったゾンビ FPS で、グラフィックのクオリティーが非常に高く、本格的な FPS でありながら手軽に楽しめるのが特徴です。
ボリュームが少ないのが難点で、早々に底が見えたのもありますが、価格がお手軽だったため、幅広いユーザーに支持されました。

ただ Android で違法コピーされまくり、仕方なく無料化してアプリ内課金だけで収益を挙げようとしましたが思うように利益が上がらず、おまけに有料で買ったユーザーからフルボッコに叩かれるなど、昨今のスマホアプリの問題が露呈した、別の意味で話題になってしまったアプリでもあります・・・

他には「N.O.V.A. 3」が、その圧倒的なグラフィックと、SF であることを利用したユニークなシステムによって人気となりました。

N.O.V.A. 3

全体としては、モダコンや N.O.V.A のゲームロフトと、SHADOW GUN や DEAD TRIGGER の MADFINGER Games が、スマホの FPS の2強になったという感じですね。
EA がバトルフィールドを発売しようとして、この2社にクオリティーで太刀打ち出来ず、発売停止を余儀なくされたのが象徴的です。

これ意外では、映画的な演出と渋い展開で魅せる「マックス・ペイン モバイル」と、昨年末の作品ですがカジュアル系ゾンビ FPS の「Call of Duty: Black Ops Zombies」が話題の作品だったと言えます。

一方、町を自由に散策できるオープンワールド系としては、発売されたばかりですが、GTA シリーズの「Grand Theft Auto: Vice City」(GTA VC)が世界的に人気です。

Grand Theft Auto: Vice City

前作はインターフェイスに問題が多かったのですが、今作はそうした点も改善されており、作り込みや演出が大幅に強化されていて、古いギャング映画のようなシーンが続きます。
スマホでのライバルである「ギャングスター」シリーズは今年は発売されていないので、これが1強ですね。

オープンワールドとしては、FPS とはちょっと違うのですが、スパイダーマンになって町を飛び回れる「アメイジング・スパイダーマン」と、バットマンになって闇討ちできる「ダークナイト ライジング」が大きな話題となりました。

アメイジング・スパイダーマン ダークナイト ライジング

ただ、スパイダーマンは飛び回るのは楽しいけど戦闘は簡易的で、逆にダークナイトライジングは戦闘シーンが良く出来てるけど町を散策する楽しみはあまりないので、やや偏っている印象です。
まあ、それぞれが差別化されているという意味では良いのかもしれませんが。


【 レース部門 】

ここでは 3D のレースと、2D のレースを一緒に扱います。
と言っても、今年は話題作は少なかった印象です。

最も注目されていた「Real Racing 3」が結局発売されなかったので、ゲームロフトの「アスファルト7:Heat」が1強だったと言えるでしょう。

アスファルト7:Heat

モバイルのカジュアル系レーシングの最高峰と言えるシリーズで、最新機種に合わせてグラフィックはますますパワーアップ、ゲームもさらに遊びやすくなりました。

そして何より、このゲームが 85 円で提供されているというのが驚きです。
価格破壊もいいトコで、これがこの値段で出されてしまったら、そりゃ他のメーカーは追従できないだろう、と言った感じです。
まあ iPhone のレースゲームは、初期の頃から価格破壊が進んでいた印象がありますが。

もう1つの注目作は「Real Racing 3」を開発中の Firemonkey が製作した「Need for Speed Most Wanted」。
アスファルトシリーズより、さらにカジュアルになったレースゲームです。

Need for Speed Most Wanted

グラフィックはさすが Real Racing のメーカーと言えるクオリティー。
コースを周回するのではなく、公道を一定距離走るまでの間に勝利条件を目指すという内容で、パトカーとのカーチェイスがメインです。
よってレースと言うよりは、「レース型アクションゲーム」と言った方が良いかもしれません。

上空見下ろし型のレースとしては、注目作だった Reckless Racing 2 が発売されましたが、内容がリアルになり過ぎて Reckless(無謀)さが足りなくなり、あまり人気にはならなかった印象です。

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今回のご紹介は以上です。

次回は「パズル部門」「カード / ボードゲーム部門」「音楽ゲーム部門」「ノベル / アドベンチャー部門」「スポーツ部門」をお届けいたします。

その1:ショートゲーム、RPG、戦略 SLG、開発/運営 SLG、タワーディフェンス
その2:アクション、格闘、シューティング、FPS/TPS、レース
その3:パズル、カード/ボード、音楽ゲーム、ノベル/アドベンチャー、スポーツ
その4:無料アプリ、ソーシャルゲーム、パズドラ系、その他、クソゲー