2012 年度の iPhone ゲームアプリのレビューの総括となる、各ジャンルの優秀アプリのご紹介
今回は3回目となります。 1回目は こちら、2回目は こちら をご覧下さい。

3回目の今回は、「パズル部門」「カード / ボードゲーム部門」「音楽ゲーム部門」「ノベル / アドベンチャー部門」「スポーツ部門」をお届けいたします。

----------

【 パズル部門 】

iPhone には優秀なパズルゲームが数多くあるのですが、今年は話題作は少なかった印象です。
ややネタ切れ気味でしょうか・・・?
「パズル+RPG」と言ったものは多かったのですが、それらは別部門で扱います。

今年のパズルの話題作と言えば、あの Angry Birds の敵役であるブタが主人公のユニークな物理パズル。
Bad Piggies」でしょう。

Bad Piggies

パーツを組み合わせてマシンを作り、ゴールに向かわせるという内容ですが、飛行・落下・自爆など何でもアリの自由度の高いゲーム性が大きな特徴です。

パズルというと1つの正解をじっくり考えるものが多いのですが、このゲームは解法がいくつもあり、さらに「ヒラメキ」も必要になる内容で、従来のパズルゲームとは一線を画しています
子供がやるには難しいかもしれませんが、知育ゲームとして優れているアプリですね。

これ意外には、今年は「パズル部門」で表彰したくなるようなゲームがありません・・・

ゲームとしてオススメなのは「Bejeweled HD」です。

Bejeweled HD

マッチ3ゲームの元祖「ビジュエルド」が多彩なゲームモードと綺麗なグラフィック、遊びやすくなったゲーム性をひっさげて帰ってきたもので、じっくり考えるパズルらしいモードが増えているのが特徴です。

ただ、このゲームは日本では iPad 版しか発売されていません・・・
iPhone 版は海外ではすでに公開されており、日本でも夏頃に出る予定だったのですが、なぜか未だに音沙汰なし。 おまけにアプリ名や解説文が一時ぁゃしぃ中国語になってたり、よく解らない状態が続いています・・・
iPhone 版が出れば、文句なくパズルの代表作の1つなんですけどね。

他に人気だったのは「ペリーどこだ」でしょう。
ただ、これは昨年公開された「スワンピーのお風呂パニック!」の登場キャラクターとステージを変えたものなので、新作と言うよりは派生作品です。
でも相変わらず、難しすぎず簡単すぎずのゲームバランスは見事です。

あとは「上海 娘」がわりと人気な様で・・・
ぶっちゃけエロ系ですが、本家サンソフトの公式の上海なのでゲームは良く出来ています。


【 カード / ボードゲーム部門 】

ここでは俗に言う「ドイツゲーム」を含む、カードゲームやボードゲームを扱います。
ちなみにドイツゲームとは近年作られたオリジナルルールのボードゲームの総称であり、ドイツで作られたかどうかは関係ありません。

まず最初にピックアップしたいのは、海外製のドイツゲームではなく・・・ 日本製の定番コンピューターボードゲーム。
いただきストリート for SMARTPHONE わたしのお店にタッチして!」です。

いただきストリート for SMARTPHONE

サイコロを振って狭いマップを周回し、マスにある物件を購入していく「モノポリー」型のスゴロクゲームに、「株式」の要素を取り入れたゲームです。
桃太郎電鉄」と並ぶ日本の2大ボードゲームの1つですね。
株の売買による戦略や駆け引きが大きなポイントになるゲームで、スゴロクでありながらプレイヤーの腕前が勝敗に大きく影響します。

iPhone には海外の秀作なドイツゲームが数多くありますが、「日本にも優れたボードゲームはあるんだぞ」と言うことで、まずこれを挙げておきたいと思います。

カードゲームの中では、秋に発売された「San Juan」(サンファン)の完成度の高さが目立ちました。

San Juan サンファン

建物を建設することで徐々に有利になっていく、開発の面白さを手軽なカードゲームにまとめた内容で、原作は 2004 年にカードゲームの最高表彰を受賞しています。
優れたインターフェイスと手強いAI 、落ち着いた雰囲気ながらリアルなカード演出を持ち、総合的なクオリティーの高いアプリです。

また、トレーディングカードゲームの大定番「マジック・ザ・ギャザリング」の公式アプリが登場したことも話題となりました。
マジック2013」です。

マジック2013

カードゲームのアプリとしては突出した完成度で、完全に「ゲームソフト」ですね。
その演出や作り込みはカードゲームアプリの域ではなく、オンライン対戦にも対応しています。

ただ、専門用語が多いにも関わらずその説明に乏しく、ゲームのテンポも良くなく、初心者にはかなり敷居の高い内容で、あくまで「MtG の経験者用」といった感じが否めません。
さらに iPad 版しかなく、iPhone / iPod touch ではプレイできないため、勧められるユーザーは狭いですね。

ドイツゲームでは「Caylus」(ケイラス)の完成度がかなり良かったと思います。

Caylus ケイラス

サンファンと同じく町の開発を行うゲームですが、作った施設を他のプレイヤーが利用したり、王様のために城の建設を行ったりする要素があり、勝つための方法が色々用意されているのが特徴です。
1プレイの時間が長めで、お手軽さはありませんが、そのぶんやり応えがありますね。

他にはドイツゲームの名作「Scotland Yard」(スコットランドヤード)が話題作と言えました。

なお、2009 年にドイツゲームの表彰を総ナメにした Dominion (ドミニオン)の公式アプリが登場する予定でしたが、結局まだ発売されていません。
今年出たアプリの中では「Nightfall」が、ルールは複雑ですが「ドミニオン+TCG」というユニークなゲーム性を持っています。


【 音楽ゲーム部門 】

今年は音楽ゲームが豊作の年でした。
去年は大手メーカーの音楽ゲームが中心でしたが、今年は同人やサブカルチャー系の音楽ゲームも数多く登場し、秀作が多かった印象です。

まず、なんと言っても話題になったのが「ミクフリック/初音ミク」。
初音ミクの音楽ゲームが iOS に登場したと言うのは、かなりの話題性がありました。
続編の「ミクフリック/02 初音ミク」も早々に登場し、フリック入力の練習ソフトでもあった点も注目と言えます。

ミクフリック 初音ミク

フリック入力は押した時ではなく指を離した時に反応するため、音ゲーとしてはリズムにノリにくい難点がありますが、アーケードゲームや家庭用ゲームから流用された PV はクオリティーが高く、ミクファンにとっては必須アイテムだと言えるでしょう。

また、同人系の音楽ゲームとして大きな人気となったのが、センスの良さが特徴の「Cytus」。
台湾発のゲームですが、日本語ボーカルの曲もあり、日本人のクリエイターも多数参加しています。
iPhone / iPad にマッチしたハイセンスなデザインが特徴で、収録曲も多く、コストパフォーマンスの良さで人気になりました。

同じく同人系の「Tone Sphere」も、Cytus と同様にセンスの良さとコストパフォーマンスで人気になっています。

Cytus Tone Sphere

大手メーカーでは、スクエニが3つの音楽ゲームを発売しています。
特にオススメしたいのはオーケストラを扱った「SYMPHONICA」。
曲は全てクラシックですが、オーケストラらしい非常に重厚な音質で演奏されるため、かなり聴き応えがあります
私はこのゲームでクラシックの良さを知りました。

著名な声優が参加して話題となった「DEMONS' SCORE」、ファイナルファンタジーの曲で音ゲーを楽しめる「THEATRHYTHM FINAL FANTASY」も、かなりの話題作と言えます。

SYMPHONICA DEMONS' SCORE THEATRHYTHM FINAL FANTASY

ただ、DEMONS' SCORE は演奏中に声優のボイスが入りまくるため、曲が中心なのかセリフが中心なのか曖昧な印象がありました。 と言うか、これは声の方がメインなんでしょうね。
THEATRHYTHM FINAL FANTASY は非常に完成度の高い音ゲーで、ファイナルファンタジーが好きな人にはオススメです。 FF に思い入れがない人はダメですが。

グルーヴコースター ゼロ」は昨年発売されたオリジナルをフリーミアム(追加課金型)化したバージョンで、完全な新作という訳ではありません。
しかし無料曲も多いので、これからグルーヴコースターを買うならこちらの方がお勧めです。


【 ノベル / アドベンチャー部門 】

この部門にはコマンド選択式のアドベンチャーゲームの他に、ノベルゲーム(サウンドノベル)、さらにゲームブックも含めます。

iOS のアドベンチャーゲームは、昨年は「STEINS;GATE」(シュタインズゲート)と「428 ~封鎖された渋谷で~」という2大名作が登場し、 一昨年は「ゴースト トリック」が発売されるなど、毎年評判のアプリが登場しています。

そして今年は「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」が話題作と言えました。

ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生

「殺人事件+学園モノ」というありがちな題材ですが、シュールなキャラクターと深まり続ける謎、ライアーゲームのような演出と残酷な「おしおき」が相まった、独特な世界観を持つ作品です。
ドラえもんでおなじみの大山のぶ代さんが悪役を演じているなど、声優の配役も話題になりました。

3D の移動シーンの操作性の悪さや、落ちたり急に重くなったりする安定性の低さなどの問題もあり、それらが改善されないまま放置されているため、手放しでの賞賛は出来ないのですが、シナリオの面白さは本物です。

また、アドベンチャーゲームとしては「逆転裁判123HD」が注目でしょう。

逆転裁判123HD

あの有名な「逆転裁判」を高解像度のグラフィックにブラッシュアップし、さらに1作目から3作目までをカップリングした豪華でお得なセットです。
大きなブームを起こし、映画にまでなった作品なので、未経験の方はぜひプレイして欲しい作品ですね。

ただ旧作の経験者の方からは、グラフィックに違和感があるという意見が続発しました。 それは私も感じます。
高解像度になったがために、ドットグラフィックの時にごまかせていた部分がごまかせなくなったようで、古いグラフィックをそのまま拡大して滑らかにしても、同じようには見えないという事なのでしょう。

そしてちょっと変わり種の注目作が、美しい自然美のグラフィックで話題になった「The Lost City ロストシティ」と、ゲームブックを現代に復刻した「iグレイルクエストⅠ・Ⅱ」。

The Lost City ロストシティ iグレイルクエストⅠ・Ⅱ

ロストシティは無理にプレイヤーを悩ませようとしていない作り方と、どこを見ても美しいグラフィックが特徴の探検アドベンチャーで、iTunes のレビューに「プレイ中はとても幸せだった」と書かれたものがありましたが、実際にそう感じるアプリでした。

グレイルクエストは懐かしの「ゲームブック」を高いクオリティーで再現したもので、当時の雰囲気をそのまま残しつつ、演出や便利機能を追加した、ファンには涙もののアプリです。

やや残念だったのは、続編の「グレイルクエストIII」が下手な SEO 丸出しのアプリ名になり、完成度も落ちてしまったこと。 アプリ名に関しては、現在は正常なものに修正されていますが・・・
なお、ゲームブックの復刻アプリには「展覧会の絵」もあり、私的にはこちらの方がオススメです。

他には本家サウンドノベルの「忌火起草」、レベルファイブ参入作の「レイトンブラザーズ・ミステリールーム」などが話題作と言えたでしょうか。


【 スポーツ部門 】

スポーツゲームはそれほど数が多くなく、目に付いたものも少なめです。
特に今年はコナミの「パワプロ」がソーシャルゲームの要素を無理に取り入れようとしてワケの解らないことになってしまったので、なおさら注目作が減りました。
「レッツ!ゴルフ」もアップデートは頻繁ですが、新作は登場していません。

そんな中、高いクオリティーでユーザーを驚かせたテニスゲームが、セガの「パワースマッシュ チャレンジ」です。

パワースマッシュ チャレンジ

操作にクセがあるため慣れるまでプレイし辛いのですが、「先行入力する」という点に慣れてしまえば華麗なラリーを続ける事ができ、かなり楽しくなります。
グラフィックのクオリティーが高く、選手の仕草も非常にリアルです。

また、世界中で記録的な大ヒットを飛ばしたのが、EA の「FIFA 13 by EA SPORTS」。

FIFA 13 by EA SPORTS

サッカーゲームとしての完成度は間違いなくスマホ NO.1
操作性がより改善されており、FIFA の公式ライセンスを受けているため実名のチームや選手が登場します。

ただ、日本のリーグが存在しておらず、チーム運営の要素も簡易的。
オンライン対戦もありますが日本からの接続だと回線が弱く、コアなサッカーファンでないと日本人は楽しめない印象があります。

他にはここで取り上げるようなスポーツゲームはなかった印象です。
スマホのもう1つの定番サッカー「リアルサッカー」はソーシャル要素が入ってしまい、微妙な内容になりました。

----------

今回のご紹介は以上です。

次回でこの特集も最後になります。
次回は「無料アプリ部門」「ソーシャルゲーム部門」「パズドラ系部門」「その他部門」「クソゲー部門」をお届けいたします。

その1:ショートゲーム、RPG、戦略 SLG、開発/運営 SLG、タワーディフェンス
その2:アクション、格闘、シューティング、FPS/TPS、レース
その3:パズル、カード/ボード、音楽ゲーム、ノベル/アドベンチャー、スポーツ
その4:無料アプリ、ソーシャルゲーム、パズドラ系、その他、クソゲー