ローラースケートで町中を走行し、警察の追っ手をまきながら、町中にグラフィティ(ラクガキ)を描きまくる、ヒップホップ系のアクションゲーム「ジェット セット ラジオ」(JET SET RADIO)。
海外で数々のゲーム賞を受賞したこの作品が、先日 iOS に移植されました。
ジェットセットラジオ JET SET RADIO」です。

正確には海外用に拡張されたバージョンアップ版「デ・ラ・ジェットセットラジオ」を、iOS に合わせて高解像度&ワイド画面に対応させたものです。
ヒップホップでストリート系のグラフィック& BGM を持つ独特なゲームで、トゥーンレンダリング(3D グラフィックをイラスト調で表現する技法)の先駆けでもあった作品です。

ただ、操作が非常に難しく、最初はなかなかうまく走行することができません。
その操作に慣れ、うまく乗りこなせるようになり、それから町中を疾走するのが楽しいゲームですが、そのためには相応の修練が必要になり、慣れない間は失敗とリトライを繰り返すことになります。

ゲーム性としては、モトクロスバイクを修練して乗りこなす Touchgrind BMX に似ていて、かなり忍耐力が必要なゲームです。
よって完全なゲーマー向けであり、万人にオススメできるゲームではありません。

ファンの多いゲームですが、私はこのゲームに特に思い入れはないため、いわゆる「思い出補正」はありません。
ファンから見ると辛口の評価になっていると思いますが、その点は予めご了解下さい。

ジェットセットラジオ JET SET RADIO

仮想スティックと4つのボタンでローラーブレード(インラインスケート)を履いた主人公を操作します。
ボタンは「加速」「ジャンプ」「グラフィティ(ラクガキ)」「カメラ(視点)」の4つで、加速ジャンプで手すりの上などに乗ることで、その上を滑走する「トリック」を決めることが出来ます
視点は画面のドラッグで動かせますが、カメラボタンを押すと進行方向に向き直ります。
ジャンプボタンは長押しで大ジャンプになります。

ゲームの目的はフィールド内の矢印で示された場所にグラフィティを描くことですが、そのためにはスプレー缶を集めなければなりません。
スプレー缶の多くは手すりや屋根の上など、トリックを駆使しないと行けないような場所に置かれていることが多いです。

スプレー缶を取って矢印の前でボタンを押せば、グラフィティを描き始めます。
しかしある程度描くと警察が出動し、プレイヤーを追いかけ回します。
よって以後は警察の追っ手から逃げ回りながら、クリアを目指さなければなりません。

ステージが進むと機動隊が出動し、パラシュートで軍隊が降下してきて、挙げ句の果てには攻撃ヘリがミサイルを撃ってきます。
取り締まりは超過激で、基本的には「おバカ」系の雰囲気ですね
キャラクターも総じてコミカルです。

ジェットセットラジオ JET SET RADIO
※民家の壁を突き破り、家族の団らんをぶち壊しながら疾走する!
トンでもないコースが多いですが、このおバカな感じがまた良いです。
ステージマップはポーズ画面で確認可能です。


ジェットセットラジオ JET SET RADIO
※胸に「ケーサツ」と書いてある警察部隊や、銃を乱射しながら追い回す刑事、子供に誘導ミサイルを発射する攻撃ヘリなどが登場。
攻撃ヘリはジャンプしてグラフィティを描くことで撃退できます。 グラフィティおそるべし。


しかし冒頭で述べたように、そう簡単に走り回ることはできません。
ゲーム開始時には基本の走り方を教えてくれる「チュートリアル」になるのですが、そのチュートリアルのクリアさえ初心者には困難で、何度もリトライを繰り返すハメになります。
開始直後からプレイヤーには「修練」が要求されます

チュートリアルを何とかクリアしても、ステージ1のクリアがまた難しい。
前述したようにスプレー缶は手すりや屋根の上など取り辛い場所にあるので、それらを警察から逃げ回りながら集めるのが難しく、さらにマップ構成とグラフィティの場所も把握しなければなりません。
おまけに時間制限があって、モタモタしてるとタイムオーバー

難易度が高いゲームでも、思い通りに操作できて、それで難しいならまだ納得できますが、このゲームは「操作自体がすごくムズイ」ので、高難度に思い通りに動けない煩わしさが加わってストレス貯まりまくり。
もうハッキリ断言してしまいますが、「マゾゲー」です。
ぶっちゃけ私は、2面で心が折れそうになりました。

グラフィックや全体のセンスは確かに秀逸で、ゲーム展開もユニーク、さらに欧米では Touchgrind BMX のような、モトクロスやスケボーを何度もリトライを繰り返しながら乗りこなすゲームは人気が高いので、それらに加えて広いステージを走り回れるこのゲームの評価が非常に高いのは、確かに納得できます。

ただ、私は「操作に慣れること自体がゲームになっているもの」は好みではなく、Touchgrind BMX もあまり好きではなかったので、このゲームも好みではないですね。

このゲームについては、ファミ通App に掲載されていたレビューの以下の言葉が、その内容をとても良く表していると思います。

初めて自転車をうまく乗りこなせた時の爽快感を覚えているか?
楽しみたいという気持ちとノリが大事

つまり、そういうゲームですね。 ちょっと人を選ぶ内容だと思います。

ジェットセットラジオ JET SET RADIO
※ステージ2には工事中の高架道路があり、そこにあるクレーン車の上を走って反対側に飛び移らなければならないシーンがあります。
パッと見では解り辛く、こうしたクリア手段を探すことがまずは必要。
ステージ1はトラックの荷台を使って屋根に飛び移ります。


ジェットセットラジオ JET SET RADIO
※逃げるライバルチームを追いかけ、その背中にグラフィティを描く追跡ステージ。
それでなくても難しいのに、ターゲットが高速で逃げ回るという・・・ まだ操作しやすければ、ストレスも貯まらないのですが・・・
 

価格は 450 円。 かつての話題作がフルバージョンでこの値段で楽しめるのですから、コストパフォーマンスは高いと思います。
ボリュームも十分ですね。

しかしとても一般向けとは言えない内容で、そこいらのライトゲーマーだとチュートリアルで挫折しかねません。
完全なヘビーユーザー向けのゲームであり、あまりスマホに向いたゲームではない気がします。
良くも悪くも家庭用ゲーム機からの移植であり、そして「ファン向け」のゲームですね。

このアプリは先に欧米で登場し、日本では発売されるかどうかが微妙で、さらに熱烈なファンが多かったため、発売前の話題性が非常に高かったのですが、発売後はあまり話題になっていません。
それはこのゲーム性のためだと思います。

やり込めば楽しめるゲームである事は確かなので、相応に忍耐力のある方にはオススメできます。
って、こんな言い方じゃ、誰もやりたいとは思わないだろうけど・・・

ジェットセットラジオ JET SET RADIO (iTunes が起動します)