物を燃やす」。
ただそれだけの、ゲームなのかどうかも微妙な内容でありながら、その非常にリアルな燃えっぷりが病み付きになる、シュールで独特な世界観のアプリが登場しています。
Little Inferno」です。

このゲームは世界中で絶賛された、奇妙な生物を繋げて構造体を作る物理シミュレートパズル「World of Goo」の開発者 Kyle Gabler 氏が手がけたアプリで、その「奇才っぷり」が如何なく発揮されています。

こういう「デザイナーの芸術性」が前面に出すぎたゲームは面白くない場合が多いのですが、このアプリは誰もが潜在的に持っている「物を燃やす楽しさ」を刺激してくれる内容で、ただ燃やすだけなのに延々と続けてしまいます。
ある種の「破壊欲求」を満たすアプリと言えるでしょうか。

このアプリは現時点では iPad 2 以上専用で、iPhone / iPod touch 版はまだないのですが、かなり特徴的な内容なので、今回ご紹介しておこうと思います。

※現在は iPhone / iPod touch 版も公開されています。
それに伴い、従来の iPad 版(両用版)は Little Inferno HD に改名されました。


ちなみに、このゲームは Wii U のダウンロードショップ(eショップ)でも販売されており、地味に Wii U のローンチタイトル(本体と同時発売のソフト)でもあったりします。

Little Inferno

コインでアイテムカタログから燃やすアイテムを購入し、それを暖炉に入れて火を点ける。
そして炎上する様子を眺める

ただそれだけですが、燃える様子がとにかくリアルで、燃え広がる炎、パチパチという音、黒く焦げていく物体、そして消し炭になって崩壊していく様子などが、3D グラフィックと物理シミュレートによって再現されています。

アイテムは多種多様で、燃えやすい木のオモチャやぬいぐるみ、激しい炎を上げる電池、燃えにくいがなかなか火が消えないガラスや電化製品など、非常に豊富。
さらにユニークな特徴を持ったアイテムも多く、火が付くとジリジリと鳴る目覚まし時計、花が咲く植物のタネ、パンが飛び出すトースター、ポップコーンになるトウモロコシ、消火が行われる火災報知器などがあります。
1つ1つのアイテムが作り込まれており、単に燃えるだけではない点がこのアプリの面白さですね。

アイテムを燃やすとコイン(Bucks)やチケット(Stamp)が飛び出してきます。
このコインをタップして集める事で、さらに新しいアイテムを購入することができます。
基本的にアイテムを燃やして得られるコインは、そのアイテムの購入額より多いので、燃やせば燃やすほどコインも貯まっていくことになります

アイテムは購入してもすぐ届く訳ではありませんが、チケットを使うことでその時間を短縮できます。
こう言うとソーシャルゲームみたいに思われるかもしれませんが、待ち時間は数秒から数分程度で、カタログからアイテムを選んでいるうちに経過するため、それほど待つことはありませんし、短縮チケットも豊富に手に入ります。

Little Inferno
※アイテムカタログは全7冊。 1冊に 20 のアイテムがあるので、合計 140!
新しいアイテムを買うと次のアイテムが追加されていくので、どんどん新アイテムが出てきて飽きません。
中には重力を持つ「小さな月」や、雪を降らせて周囲を凍らせる「雪雲」、大爆発を起こす「ミニ核爆弾」とかも・・・


Little Inferno
※どんどん燃やしてどんどん稼ぐ。 アイテムは4つずつしか発注できませんが、ゲームが進むと発注数もコインで拡張できるようになります。
配置したアイテムはドラッグで自由に動かすことができ、ガラス製だと叩きつけるとコナゴナに割れます。
燃えカスもドラッグで崩したり、放り投げたりできます。


ゲームの目標は「コンボ」を発見していくことです。
これは特定のアイテムを同時に燃やすと成立するもので、例えばドライアイスとコーヒーで「アイスコーヒーコンボ」、消化器と火災報知器で「消火コンボ」、スシとニンジャで「ジャパニーズコンボ」などが発生します。

未購入のアイテムを買うと新しいアイテムが登場しますが、カタログのアイテムを全て購入した後は、新しいカタログを買わなければなりません。
しかし新しいカタログを買うにはコインだけでなく一定のコンボ達成数が必要で、そのためアイテム燃やしながらコンボを探していく必要があります。

達成していなくてもコンボ名だけは確認できるので、そこから組み合わせを推測するのがゲーム性になっていると言えますね。
ただ、メッセージは英語なので、日本人だとちょっと理解し辛いのが難ですが。

Little Inferno
※ World of Goo コンボ成立のシーン。 他にも「植物+ゾンビ」とか、どこかで聞いたようなコンボが。
たまに手紙が来てストーリー(?)が語られるのですが、その手紙も読んだら燃やせます。
たくさんのアイテムをまとめて燃やした方がコンボが発生しやすいので、アイテムを買えるだけ買ってから火を点けましょう。


Little Inferno
※コンボ確認画面。 コンボが見つからなくなったら一通りチェックしましょう。
エンディングの条件はコンボの全発見ではなく、カタログを全部そろえて、全てのアイテムを燃やすこと。
全てのアイテムを燃やしてしばらくすると、特殊な組み合わせを知らせる手紙が来ます。
その通りにアイテムを燃やすと・・・


価格は 360 円。 値段分の価値のあるアプリだと思います。
海外ではかなり賞賛されており、2013 年の IGF(インデペンデント・ゲーム・フェスティバル、個人や中小メーカーのゲームの表彰)でも多数の部門にノミネートされていて、大賞の有力候補となっています。

およそ4時間ほどで終わるので、ボリュームとしてはそれほどある訳ではありませんが、サクサク遊べる内容ですし、ちょうど良いぐらいでエンディングになるので、これで良いと思います。
やや難点なのは、最後のシーンが英語が読めないとよく解らないことでしょうか。

雰囲気も内容も異質な、「奇才の作品」という言葉が相応しい、それでいて何も考えずに気軽に楽しめるアプリです。

Little Inferno (iPhone / iPod touch 版、360 円)
Little Inferno HD (iPad 対応のユニバーサルアプリ版、600 円)


以下は Youtube で公開されているゲームトレーラーです。