スマホのレベルとは思えない美しいグラフィックと、本格的なゲーム内容で iPhone / iPad の代表作となったレースゲーム「Real Racing」シリーズ
Real Racing 2 が発売されたのは 2010 年の12月でしたが、結局 2011 年から 2012 年にかけて、それを超えるリアル系レースゲームは現れませんでした。
それほどまでに Real Racing 2 の完成度は突出していたと言えます。

そんな Real Racing シリーズの最新作が発表されたのが、昨年(2012年)の8月。
iPhone 5 の発表会でも動作デモに使用された、世界的に期待されていたキラータイトルが先日ついに公開されました。
Real Racing 3」です。

ただ、その公開は手放しで賞賛されているとは言い難いものとなっています。
今作は「本体無料+追加課金型」のシステムになっており、車の修理には実時間の経過が必要で、上位の車も課金しないと購入し辛いものになっているなど、ソーシャルゲーム的な要素が加えられてしまったからです。

当然のように世界中のゲーマーからの批判が集中したのですが、それに対して開発者が「実際の車だってオイル交換には時間がかかるじゃないか」とか言ったおかげで、ますますブーイングの嵐。
賛否両論が渦巻く中でのスタートとなっています。

Real Racing 3

手持ちの資金でマシンを購入し、レースに出場して賞金と名声を稼ぎつつ、マシンをパワーアップさせたり新しいマシンを購入したりして、さらに上位のレースに挑んでいく内容です。
レースゲームとしては一般的な流れと言えますね。

レースには 22 台の車で走る「カップ戦」や、1対1で競う「1 ON 1」、最高速を競う「スピードスナップ」、一定時間ごとに最下位が脱落していく「エリミネーション」など、多様なものが用意されています
ただ、数レースでドライバーズポイントを競うツアー戦はないようで、1戦1戦を行うもののみです。

各シーズン(レース)は出場できる車が3~4車種に限られていて、同レベルの車種のみで争うことになります
必然的に多くのレースに出場するためには多くの車を集める必要がありますが、1つのシーズンに 30 近くのレースが含まれているため、1車種だけでも当分遊ぶことが出来ます。

今作の特徴はリアルさを追求していることで、登場する車は外観はもちろん内装まで再現されており、コースも実際のレース場を測量して作成されているほどのこだわりっぷり。
協賛している自動車メーカーはアウディ、BMW、フォード、日産、ポルシェなど 11 社。
全て実際の車、実際のコースが登場します

グラフィックの美しさにもますます磨きがかかっており、車体に反射する光、映り込む景色など、その映像はハンパではありません
車内視点だとバックミラーやサイドミラーに写る景色まで再現されています。
旧機種ではグラフィックの質が落ちるようですが、iPhone 5 や iPad 3 以上なら、まるでムービーのような美麗なレースシーンを見ることが出来るでしょう。

Real Racing 3
※ドライバー視点の様子。 日本車(スカイラインGT-R)なので右ハンドル。
全ての車で内装が再現されており、タコメーターが動き、バックミラーやサイドミラーを確認できます。
光が差し込む方向に応じて車内の影の方向が変わり、片手でギアチェンジを行うなど、とにかく作り込みが凄いです。


Real Racing 3
※車載カメラの視点。 ボンネットへの景色の写り込みが凄い!
他の車の車体やガラスにも周囲の景色が写り込んでいて、光の照り返しなどもあります。
コース全体図は表示されませんが、見てのようにかなり遠くまでコースを見渡せるため、次に曲がる方向が解り辛いといったことはありません。


Real Racing 3
※レース(シリーズ)選択画面。 シリーズごとに参戦できる車種が決められています。
同レベルの性能の車で争うので、後半のレースで勝つにはパワーアップが必須になりますね。
パワーアップはエンジン4段階、タイヤ2段階などの簡易的なもので、グランツーリスモのような細かいチューンナップの種類を選ぶものではありません。
エンジンの4段階目のパワーアップにはゴールドコインを使うので、無駄使いはしないように!


リアル系レースゲームであるため、あまり派手な走りは出来ません
例えばドリフトしたりすると、タイヤが煙を上げてスピードは激しく落ちてしまいます。
ちゃんと適度に減速してスローイン・ファストアウトしないと速く走れません。

さらに車体ダメージもリアルに再現されていて、前作もガチャガチャぶつかってるとバンパーが取れましたが、今作はさらにフロントガラスにヒビが入ったり、テールライトが割れたり、ボンネットがへしゃげたりします。
この車体ダメージは単なる演出ではなく、走行性能にも影響が出ます

ただ、前作にもあった「ステアリングアシスト」「トラクションコントロール」「ブレーキアシスト」などの補助機能が充実していて、特にブレーキアシスト機能が強く、これを「高」にしていると全くブレーキングしなくても走れるようになります
よってレースゲームが苦手な方でも、簡単に遊べるようになっています。

もちろん上級者ならブレーキアシストを「低」にして、限界の走りを目指すことも可能ですが・・・
今作はあまり乱暴な走りをすると、すぐに修理が必要になるというデメリットがあります。

今作のもう1つの特徴は「TSM」(タイムシフト マルチプレイヤー)という疑似オンライン対戦システム
登場するライバルカーが単なるコンピューターの車ではなく、他プレイヤーの車と走りを再現したものになっています。

ただ、他プレイヤーの走りを再現していると言っても、実際にはタイムぐらいしか参考にされていないようで、ライン取りはみんな同じだし、人間ぽい走りをする訳ではありません。
「疑似オンライン対戦」と言うほど大げさなものではないので、あまり期待するとガッカリになるのでご注意下さい。
他プレイヤーの名前がライバルカーに付けられている、と言う程度に考えた方が良いですね。

ただ、それでも架空のコンピューターの名前よりは良いし、Game Center のフレンドなどが登場すると相応に燃えます。
フレンドに勝利するとボーナスを得られる特典もあるので、これはこれで良いのではないでしょうか。
この性質上、Game Center や Facebook のフレンドが多いほど、ゲームが楽しめてボーナスも得やすくなっています。

なお、巷では「TSM のせいで強すぎる対戦相手が出てきて勝てない」みたいな話が出ていますが、登場するプレイヤーは乗っているマシンやレースのレベルに合わせられているようなので、そこまで強すぎる相手が出てくる訳ではありません。
基本的にフレンドが優先されますが、そのフレンドのレベルが高すぎる場合は一切出てきません。
この点はちゃんとゲームバランスが考慮されているようです。

Real Racing 3
※アシスト設定はレース中でも変更することが可能。
ステアリングアシストやトラクションコントロールがあればスピンし辛くなって車体が安定し、ブレーキアシストがあれば勝手にコーナーでブレーキングしてくれます。
ブレーキアシストは便利すぎる気もしますが、これなしで走ってるとタイヤがすぐ痛みます・・・


Real Racing 3
※ぶつかりまくってボッコボコになってるシルビアの図。
ダメージ表現はかなりリアルで、部位ごとに破損表現が行われます。
フロントガラスにヒビが入ったら、ドライバー視点で前が見え辛くなったりも。
でも、破損はお金さえあればすぐに治ります。 問題は「点検」の方で・・・


Real Racing 3
※協賛メーカーにはランボルギーニやマクラーレンなどの変わったメーカーも。
一時期話題になった、フォーミュラマシンをコンセプトにしたマクラーレン F1 もあります。
レース仕様のマシンも多く用意されていますが、無課金での購入はちょっと厳しい・・・
なお、購入画面やマシン選択画面のカメラワークなどは、いちいちカッコイイです。


レース部分だけをとって見れば、間違いなくスマホ&タブレット最高のレースゲームであることは間違いありません。
ただ、問題は・・・ 例の「ソーシャルゲーム的な要素」と「課金要素」ですね。

今回は走っていると、それに応じてオイル、エンジン、ブレーキ、サスペンション、タイヤなどの各部品が痛んできます。
これはちゃんと走り方に応じて減少し、例えばカーブでタイヤをキューキュー滑らせるような走りをしているとタイヤがみるみる減っていき、長距離レースを繰り返すとオイルだけ早く摩耗します。

そして痛んだ個所を点検・修復すると・・・ 資金に加えて、オイルなら5分、エンジンなら15分、サスペンションは10分といった「待ち時間」がかかります。
課金通貨の「ゴールド」を使えば待ち時間なしで作業できるのですが・・・
つまり、「待ち時間のストレス」をプレイヤーに与え、それを課金要素にしているソーシャルゲーム的なシステムになっている訳ですね。

レース中にぶつけて痛んだ個所を治す「修理」については、少額の資金だけで行えるようになりました。
βテスト中はここにも待ち時間が発生していて、毎レースごとに待たされたプレイヤーから批判があがっていたようですが、この点は正式版では修正されています。

しかし他にも、マシンのアップグレード(パワーアップ)に資金+待ち時間が必要で、新車を購入した時にも「納車時間」が必要になります。
他のマシンでレースを行っていればその間に修理やアップグレードが終わりますが、そのためには相応の台数のマシンをそろえる必要がありますし、「強制的に乗り換えさせられる」ということに不便感もあります。
「基本無料になったおかげで余計なものが付いてしまったなぁ」というのを、やっていて何度も感じる事になります

もう1つの問題が、車の購入が課金要素にもなったためゲームバランスが変化したこと。
上位の車はかなり地道な資金稼ぎをするか課金をしないと、入手し辛くなっています

レースゲームと言うのは RPG 的な要素も強いと思います。
レースをして、お金や経験を稼ぎ、新しい車をゲットして、それをパワーアップし、さらに上位のレースに挑むという、一連の成長の面白さです。
多くの車を集めるコレクション要素もゲーム性の一部でしょう。

しかしこのゲームは車の購入が課金要素の1つになったので、(無課金では)新車をゲットし辛くなりました。
賞金はだんだん多くなっていくので、無課金でも上位の車を買っていくことが出来ない訳ではありませんが、ゲームの進行は明らかに他のレースゲームより遅いです

レースの種類やコースは思ったほど多い訳ではないので、車の乗り換えペースが遅いおかげで、だんだん展開が単調になってきますね。
特に序盤は車が少ないので、頻繁な待ち時間も必要で、本来サクサク楽しめるべき序盤が一番面倒

もちろんメーカーも収益をあげないといけないので、どこかで稼げるようにしないといけないのですが・・・
ソーシャルゲーム型になったおかげで、余計なもの、楽しさを阻害するものが大量に付いてしまった印象です。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



と言う訳で Real Racing 3 、「レース部分は」間違いなく最高です
レース以外の部分では気になる点が多くありますが、無料でこれだけのクオリティーのゲームを試せるのですから、まずやってみるのをオススメします。
車の「カッコ良さ」を追求したカメラワークも見事で、演出を見るだけでも価値がありますね

しばらくやってみた感じでは、「無課金では全く遊べない」というレベルではないと思います。
「大金が必要になった! EA フザケンナ!」という感情的な意見も多いですが、そこまで言うほどではないかな、という気もします。
全車種をコンプリートしようとか考えると膨大な時間か多額のお金が必要になりますが、軽く楽しんでいく分には、まあ良いかな、という感じでしょうか。
前述したようにブレーキアシストなどの機能があるので、初心者の方でも楽しめます。

iPhone / iPad の性能の高さや、スマホの技術レベルを知るアプリとしては最高のものの1つでしょう。
ただ、やや単調なため、意外と飽きは早いかも・・・ 相応の課金をすれば別なんだろうけど・・・

Real Racing 3 (iTunes が起動します)