赤字転落で株価がストップ安になったソーシャルゲームの開発会社 Klab が、とある iPhone アプリを公開したことで評価が一変、2日連続のストップ高となって市場を賑わせています。
女子高生のアイドルグループの活動を描いたアニメ「ラブライブ!」を題材にした音楽ソーシャルゲーム
ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル」です。

Klab はいわゆる SAP(ソーシャル・アプリ・プロバイダー)と呼ばれる会社ですが、多くの SAP がグリーやモバゲーの傘下として開発を行っているのに対し、独自運営のゲームも多いのが特徴です。

ただ、そのゲームは射倖心を大きく煽るイベントが多く、コンプガチャ規制問題の際にも駆け込み需要を煽るなど、やや手段を選ばないイメージもあります。
(まあ、そういったものはどこの SAP にも大なり小なりあるのですが)

一方「ラブライブ!」は、俗に言う「萌えアニメ」なのですが、「AKB のようなものを二次元で作って発展させていこう」というプロジェクトでもあって、アニメ・CD・ライブなど多様な活動が展開されています。

今回発売された「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル」もその一環と言え、プロモーションをアニメやゲームなどを広く手がけている「ブシロード」が担当しています。

このアプリはその完成度の高さが口コミで広まったのに加え、政府主導で進められている「クールジャパン」と合わせて紹介され、上場企業の SAP である Klab のアプリであったこともあり、投資関係者の注目を集めたようです。

ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル

前置きが長くなりましたが・・・
ゲーム内容の方は、「音楽ゲーム+ソーシャルゲーム」です。
美少女キャラ9人で「ユニット」を編成し、音楽ゲームである「ライブ」を行って、経験値や新キャラなどを獲得していきます。

ライブシーンでは各キャラクターが扇状に配置されていて、中央から丸いマーカーが飛んで来ます。
このマーカーがキャラクターに重なった瞬間にタップすると、そのキャラクターのステータスとタイミングに応じた点数が加算されます

音楽ゲームですから、実際には目で見てタイミングを判断する(目押しする)のではなく、曲を良く聞いてリズムに合わせて押していくことが大切です
ミスすると体力が減っていき、なくなるとゲームオーバー。 最後まで演奏できればクリアですね。

これまでの「ソシャゲ+音ゲー」や、中小メーカーの「音ゲーっぽいもの」は、音楽ゲームとは名ばかりで、曲やリズムに無関係にタップするだけの粗悪なものが多かったのですが、これは音楽ゲームとしてしっかり作られています

判定におかしいところはなく、マーカーの出現パターン(譜面)もちゃんと曲に合っていて、プレイしていて楽しめるものになっています。
難易度も EASY・NORMAL・HARD の3種類が用意されていて、EASY は簡単ですが、HARD だと音ゲーマニアでも十分楽しめる難度です

演出なども良く、ちゃんとスマホらしい綺麗なグラフィックになっていて、ガラケーソーシャルのようなチープな作りではありません
正直、Klab はガラケーソーシャルゲームのメーカーというイメージが強かったので、この高クオリティは意外です。

「ラブライブ!」は CD の発売やライブなども行ってきたプロジェクトなので、曲の数も多く、全曲ボーカル入りです。

ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル
※マーカーには「押しっぱなし」と「同時押し」をするものも存在します。
上の画像は右から3番目を「押しっぱなし」にしつつ、左から2番目をタップしているシーンで、HARD だとこういう複合マーカーも現れます。
「同時押し」がミスりやすいのがちょっと難点。 指の位置を確認しながら押した方が良いですね。
ボタンの判定範囲が狭い訳じゃないけど、利き腕でない方はタップミスしやすいので、もうちょっと広げてくれた方が良かった気もします・・・


ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル
※ラブライブ!の主要キャラクターはスキルを持っていて、発生するとキャラクターのカットインが現れます。
演出的には非常に良いのですが、慣れないうちはこれによってマーカーを見失いやすいので注意。
経験値は難易度が高いほど多くなるのですが、消費するポイント(LP)も増えるので、ポイントあたりの経験値にはそれほど差はありません。


ソーシャルゲームですから「スタミナ制」で、ライブをするごとに LP と呼ばれるポイントを消費し、なくなると時間が経過するか、課金通貨を使わないと再プレイできません

ライブの結果に応じて経験値やゴールド、キャラクターのカードが得られます。
キャラクターのカードはユニットに加えられる他、いらないものは合成でカードのレベルを上げるのに使います。
ゴールドは合成の際に必要となるもので、この辺りのシステムは既存のソーシャルゲームと変わりません
ただ合成は「練習」、ガチャは「部員勧誘」など、それらしい呼び名に置き換えられています。

キャラクターにはスマイル(赤)ピュア(緑)クール(青)の3つのステータスがあって、もっとも高い能力がそのキャラの「タイプ」になります。
曲ごとに影響するステータスが決められていて、合成時にはタイプを合わせることで取得経験値が 1.2 倍になります。
また同じキャラクターのカードを「特別練習」で合成することで衣装が替わり、レベル上限がアップします。

これらのソーシャルゲーム要素は、ナムコ&モバゲーの「アイドルマスター シンデレラガールズ」によく似ています。
ぶっちゃけこのゲームは、収益的に大成功を収めている「アイドルマスター シンデレラガールズ」の二番煎じを狙おうとしている印象も受けます。

しかしシンデレラガールズはアイドルをテーマにしていても、しょせんはガラケーのソシャゲ。
演出はスマホに比べるとショボく、仕事や LIVE も既存のポチポチゲーと同等です。

それに対しこのゲームは、ライブをちゃんと音ゲーにして、クオリティーもスマホレベルに引き上げ、それを越えるものを作ろうとしているのが伺えます。
まあシンデレラガールズが成功しているのは、まさに「アイマスだから」というのもあるので、そう簡単に超えられる訳ではないとは思いますが。

ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル
※スマイルの曲はスマイルの能力しか、ピュアの曲はピュアの能力しか影響しません。
よってスマイル用、ピュア用、クール用と、それぞれの曲の色に合わせたユニットを用意しておく必要があります。
もちろんフレンドの助っ人キャラも、その色にしないと効果は薄いです。
複数のユニットを作った場合は、ライブ開始前にキャラクターリストを左右にスライドすることで切り替えられます。
キャラの能力値を表示したい場合は長押ししましょう。


プレイヤーレベルに合わせて「ストーリー」が進行するようになっていて、メニュー画面やストーリーシーンのセリフは全てフルボイスです

序盤のストーリーはチュートリアルを兼ねていて、各キャラの「サブストーリー」も(解除条件は厳しいですが)用意されており、さらにストーリーシーンではノベルゲームのようにログ表示やオート進行、ウィンドウ非表示なども可能です。
カード詳細画面で絵をタップすると画面いっぱいに表示されるなど、細かい部分もちゃんと作り込まれていますね。

難点は、スコアがキャラクターのステータスに応じているため、キャラクターが育っていないと例えフルコンボしても高いスコアにならないこと。
評価はスコアで付けられているので、キャラクターのレベルが低いうちはどうあがいても上位の難度で A や S は取れません。
フルコンボしても評価 C とか見ると「なんだよそれ」と思ってしまいます

一応、スコアとは別にサブストーリーの解除に関係する「絆ポイント」というものがあって、こちらの上昇量はコンボ数のみが関係するのですが、絆ポイントは評価やランキングには無関係。
この辺は「ソーシャルゲームだなぁ」と感じます。

私的には「評価」「スコア」だから納得いかないのであって、「ライブ成功度」とか「テンション」みたいな呼び名だと、まだ違和感は少なかった気もしますが・・・

また、後に出てくる曲は HARD で1回プレイしただけで LP を 15 ぐらい消費します。
1LP の回復に6分必要で、初期の上限は 30。
2回やったら3時間待つ必要がある訳で、ちょっと尽きるのが早い気が
EASY や NORMAL だとそこまでではないし、効率的には低い難易度を繰り返した方がカードの入手量は多いのですが、音ゲーとして楽しいのは HARD ですからね・・・

※現在はアップデートで HARD の LP 消費量は軽減されています。

ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル
※ストーリーシーンやメニュー画面はなんとフルボイス。
メニュー画面で登場するキャラは、メインユニットのセンターに配置されたキャラになるので、任意に変更できます。
ただし、さすがにモブキャラ(脇役キャラ)にはボイスはありません。


本体の価格は無料。 ただしソーシャルゲームですから課金要素はあります。
課金通貨の「ラブカストーン」は1つ 85 円、5つ 350 円。
課金ガチャはラブカストーン5つ必要なので、つまりガチャ1回 350 円という事になります。 ソーシャルゲームとしては相場といったところでしょうか。

パズドラのようにトラブルや緊急メンテナンスが起きた時のお詫びのストーン配布も行われており、さらに「キャラクターのお誕生日祝い」とかいう配布もあったりするので、割と頻繁にストーンは配られています
この辺はガンホーの「ポカポカ運営」が参考にされているのではないかと思われます。

投資市場で注目された理由には、ゲームをよく知らない投資家が高騰が続いているガンホーの次を狙って飛び付いたのもあると思いますが、「萌え系」という時点でユーザーは狭まるし、女性は対象外だろうし、対象ユーザーはそれほど広くないと思います

ただ「アイドルマスター シンデレラガールズ」を見ても解るように、萌え系のソーシャルゲームはファンの投資額がかなり大きいので、十分なクオリティーの高さを持っていることもあり、注目作であることは間違いありません

個人的には、完全に従来のソーシャルゲームの作り方ではなくなっているのが印象的ですね。
インターフェイスは完全にガラケーソシャゲとは違いますし、十分な作業時間と開発費を使っているのが伺えるため、一昔前にグリーとモバゲーが言っていた「ソーシャルゲームは低コスト重視」という路線からは離れています。

ソーシャルゲームがそういう流れになっていくのは去年から言われていましたが、Klab が実践したというのが、それを物語っているように思えます。
まあ、パズドラ系をグリー/モバゲーの枠で考えるのは違うかもしれないけど。

ともあれ音楽ゲームとしてちゃんと楽しめる内容なので、テーマがテーマですから勧められる範囲が偏るのは否めませんが、私的にはオススメできるアプリです。

ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル (iTunes が起動します)