ファン投票によって決まるドイツゲーム(近年のボードゲーム)の表彰「ドイツゲーム賞」において、2008 年度の1位に選ばれた作品、それが「Agricola」(アグリコラ)です。
畑や牧場を作って農園を築いていく、素朴な雰囲気の建設型ボードゲームです。

その iPhone / iPad アプリ版が先日ようやく公開されました。
名前はそのまま「Agricola」です。

このゲームは「街の施設に労働者を派遣して、材料の調達や建物の建設を行う」という「ワーカープレイスメント」と呼ばれるシステムで、その元祖と言えるのは「プエルトリコ」というゲームです。

そのプエルトリコを元にして作られたゲームが Caylus(ケイラス)で、そのケイラスを元にしたのがこのアグリコラで、そのアグリコラの次に作られたのが Le Havre(ルアーブル)になります。
アグリコラとルアーブルは同じ人の作品です。
ちなみにプエルトリコをカードゲーム化して遊びやすくしたものが San Juan(サンファン)になります。

ただこのアグリコラ、ファン投票で1位になったことからも解るようにマニアからの支持は厚いのですが、ルールが複雑で遊びやすいとは言えないため、専門家による表彰「ドイツ年間ゲーム大賞」ではノミネート作品にさえなっていません。

「特別賞」として表彰されていますが、むしろドイツ年間ゲーム大賞ではルールが簡略化されている Stone Age(ストーンエイジ)の方が評価されています。
(ちなみにこの年の大賞はライナークニツィアのケルト
アグリコラはルアーブルと同様にかなり複雑なゲームで、そのぶん練り込まれたゲーム性を持つのですが、ドイツゲームとしては「ヘビー級」であるのは否めませんね。

なお、iOS 版のアプリの開発は Playdek というメーカーが行っていて、ここは Nightfall など他にも多くのカードゲーム / ボードゲームのアプリを作っているところです。

Agricola アグリコラ

複雑なゲームなので、ルール説明を中心に解説していきたいと思います。

ゲームは「町の画面」と、各プレイヤーの「農場の画面」に分かれています。
町の施設に家族を派遣して、材料を調達し、それを使って自分の農場に畑や牧場などを建設。
冬を乗り切る食料を蓄えていきます。

自分の番になったら家族を一人、町の空いている施設に置くことができます。
材木屋に置けば木材を、レンガ屋ならレンガを、ワラ屋ならワラを得ることができ、それらの材料を必要な分だけ貯めてから大工を利用すれば、家の設備を増やすことができます。

ただし他の人がすでに利用している施設は使えません。 施設は早い者勝ちです
必要な材料の取り合いになり、欲しいものが手に入らない場合もよくあるので、何を優先するかの判断が重要になります。
町の中央の噴水に家族を派遣すると次の順番が一番早くなるので、これをうまく活用するのも大切です。

町の施設は以下の様になっています。

Agricola アグリコラ
※5人プレイヤーのファミリーゲームの町の様子。
大工での厩舎建設は木材が2必要、教会での厩舎建設は木材1つで良いが建てられるのは1つのみ。
行商で家族を増やせるのは5ラウンド目以降から。

ただし、上記の町は5人プレイヤーの場合です。
4人だと家畜売りがいなくなり、行商で家族を増やしたり、芸人で部屋の建設を行ったりできなくなります。
3人だと芸人が消え、2人だと道具屋と行商も消えます。
また材料の入手量や、日雇いと道具屋で得られるものも人数によって変わります。

これらの細かい調整によって、どの人数でもゲームバランスを崩さずに遊ぶことができます
展開も結構変わるので、大人数なら大人数なりの、少人数なら少人数なりの面白さがありますね。

最初にいる家族は各プレイヤーとも2人ずつ。
全員が手持ちの家族を全員派遣したら、そのラウンドは終了。
家族は全員手元に戻り、次のラウンドになります。

ラウンドには「春」「夏」「秋」があって、秋が終わると厳しい「冬」が訪れます。
冬はラウンドではなく家族に食料を与えるフェイズになっていて、家族1人あたり1~3の食料が必要です。
必要量は画面右下に書かれていて、もし足りない場合は・・・ 「物乞い」カードを貰ってしまいます。
これは勝利点がマイナスされてしまうペナルティーで、これを貰ってしまうと勝つのは困難です

食料は町の施設で直接手に入れる他に、畑を作って麦を植えたり、牧場で家畜を飼ったりして、それを食料に変換することで賄えます。

最初の1年(ステージ1)は「春・春・夏・秋」の4ラウンドですが、ステージ2は「春・夏・秋」、ステージ3から5は「夏・秋」となり、ステージ6は「秋」だけやって、合計 14 ラウンドでゲームは終了します
最後に建物や家畜などを元に勝利点が計算され、それが一番多い人が勝者となります。

Agricola アグリコラ
※冬の食糧配給の様子。 備蓄が足りない時は、家畜を潰して調達するしかありません。
麦は「パン焼き」により多くの食料になりますが、事前に実行しておく必要があります。
配給の段階では、麦は食料1にしかなりません。


町には中心地の他に、郊外の施設もあります。
最初は郊外には空き地しかないのですが、ラウンドが進むごとに新しい施設が1つずつ追加されていきます

その中には「種まき」「家畜の調達」「牧場の柵の建設」「家の改築」、そして「家族を増やす」といった重要なものが含まれています。

郊外の施設は以下の通りで、これはプレイヤーの人数によって変わる事はありません。

Agricola アグリコラ
※各施設は出現するステージ(年度)が決められていて、ほぼ同じ順番で出現します。
上位の施設が登場するのはラウンド11以降で、上位の改築店が最後の施設になります。


家族を増やせば派遣できる人の数が増えますが、先に家の部屋を増築しておく必要があります
部屋の増築には木材5つとワラ2つが必要で、その後にコウノトリの看板に人を派遣すれば家族が増えます。
ただし家族が増えると配給しなければならない食糧も増えるので注意して下さい。

家は部屋と同じ数のレンガとワラを集めれば、レンガの家に改築することができます。
これにより部屋の数に応じた勝利点を得られるようになり、さらに上位の石の家もあります。

畑は作っただけでは意味がなく、麦やカボチャを手に入れて、それを植えることで冬の前に収穫をすることができます
ただし麦をパンにするには「囲炉裏」や「かまど」、「オーブン」が必要で、これらは材料を集め、さらに工務店に家族を派遣し、建設しておく必要があります。

ただ、これらの設備は数が限られていて、早い者勝ちです
例えば「かまど」は2つしか用意されていないため、他のプレイヤーが2つとも手に入れてしまうと、残りの人は建設できなくなります。

柵で草原を囲うとそこは牧場扱いとなり、家畜を手に入れて飼うことができます。
家畜は同じものを2頭持っていると、冬の後に子供が産まれて1頭増えます。
牧場1マスあたり2頭の家畜を飼うことができ、厩舎があれば飼える数がさらに増えます。
自宅にも家畜を1頭、入れておくことが出来ます。

Agricola アグリコラ
※左下の井戸のボタンを押すと、家の備品(Major Improvement、大きな進歩)の一覧を確認できます。
誰かがすでに取っているものにはマーカーが置かれていて、この画像だと左の2つの囲炉裏、左から3番目と4番目のかまどはすでに埋まっている状態です。
囲炉裏やかまどがないと、家畜を食料にすることが出来ません。


ゲームの進め方は、何を狙うかで変わってきます。

まず真っ先に家族を増やし、実行できるコマンドの数を増やすのが有利なので、部屋を増やすための木材とワラを取りに行くのが定石ですが、これは他のプレイヤーも狙うため、どうしても競合します。

先に取れない場合はレンガを確保し、早い者勝ちの「かまど」を狙うのも良いでしょう。
囲炉裏(Fireplace)よりかまど(Cooking Hearth)の方が食料の変換率が高く、後々有利です。
また、囲炉裏とかまどは合計4つしかないので、5人プレイだと1つも取れなくて後でピンチになることもあります。

食料は畑を作って麦を手に入れ、それを植えて麦の安定供給を整えつつ、かまどやオーブンでパンを焼く「農業重視型」か、木材を確保して厩舎や柵を建設し、同じ家畜を2頭手に入れて数を増やしつつ、それを囲炉裏やかまどで調理する「畜産重視型」になります。

持っていない作物や家畜があると、そのぶん勝利点が -1 になるので、できれば両方平行して確保したいところですが、この辺は状況次第ですね。
空いた土地があっても減点なので、最後の方は出来るだけスペースを埋めていきましょう。

Agricola アグリコラ
※最後の得点計算の画面。 畑や牧場や厩舎、作物や家畜は持っている数に応じてボーナスが付き、1つもないと -1 になります。 空きスペースも1マスあたり -1。
家は部屋が多くてレンガや石の家なら得点が高く、家族の数や備品も得点になります。
また、備品の中には残っている木材やレンガなどの数に応じて勝利点ボーナスを得られるものもあります。


ここまでに説明したのは、基本となる初心者用ルール「Family Game」のものです。

さらに「Basic Game」という本来のルールがあるのですが、この Basic Game には「小さな進歩」(Minor Improvement)と呼ばれるカードと、「職業」(Occupation)と呼ばれるカードがあり、小さな進歩はなんと約 60 種類、職業は約 70 種類もあります!
それぞれに固有の効果があるのですが、あまりに膨大すぎていちいち説明してられません。

しばらくファミリーゲームをやっていると解りますが、このゲームはランダム性が少ないので、ファミリーゲームだと毎回似たような展開になり、ある程度ゲームに慣れると同じパターンで勝ててしまいます。
Basic Game の「小さな進歩」と「職業」は、そうしたマンネリ化を防ぐために加えられているようで、実際これがあると毎回展開が変わります。
この辺りがアグリコラがファンから支持され、そして長く楽しまれている理由だと思われますが・・・

しかしカードの効果には複雑なものもあり、その説明が英文で、それがこれだけ大量にあるのですから、日本人にとってはある意味最悪です
それでなくても細かいルールが多いこのゲームが、ますます複雑化する要因となっています・・・

ルアーブルもそうでしたが、この作者のボードゲームはどうも煩雑な印象がありますね。
まあ iOS 版は細々した下準備やルールの処理をアプリがやってくれるし、ファミリーゲームだけでも十分に楽しめるので、それだけやっていれば問題はないのですが・・・

アプリ自体の難点は、AI 関連でしょう。
コンピューターの難易度は Apprentice(見習い)、Journeyman(職人)、Master(マスター)の3つがあるのですが、マスター以外はあまり強くありません

しかしマスターは思考時間が長く、マスターを4人入れて5人プレイとかしているとゲームのテンポが非常に悪く、かなり時間がかかります。
本体が妙に熱くなったりするので、CPU をぶん回して計算しているのだと思いますが、それでなくてもヘビー級なボードゲームがますます重くなっていますね。

マスターの強さに関しては、ファミリーゲームはともかく、ベーシックゲームなら豊富な職業と小さな進歩を駆使してくるので、相応の手強さです。

Agricola アグリコラ
※農園の左半分は職業や進歩を置くスペース。 だからファミリーゲームだとほとんど使用しません。
職業は2人目以降を配置するには食料が必要で、小さな進歩も配置するのに材料や条件が必要になります。
Basic Game の Random は職業と小さな進歩のカードがランダムに配られ、10-3 は双方が 10 枚ずつ配られて、いらない3枚を捨ててスタートする形式。 Draft はリストの中から欲しいカードを1枚ずつ取得していく形式です。


価格は 600 円。 ドイツゲームとしてはやや高めですが、相場と言ったところでしょう。
iPhone / iPad の双方に対応しており、この値段でアグリコラが楽しめるのなら、ドイツゲームのファンにとってはお得だと思います。

ゲームのグラフィックは素朴な感じで、ちょっとダサイ感じの見た目ですが、これはワザとそうしているのだと思います。
味のあるイラストで、BGM もアコースティックギターの落ち着いた曲になっており、雰囲気が良いですね

人によって好みが違うと思いますが、私的にはルアーブルと同じような評価です。
サンファンの遊びやすさ、ケイラスのスマートさに比べると、ちょっとランクが落ちるかな、といったところですね。
ただアプリの完成度はルアーブルより良いし、農園作りの要素があるので、何度も遊びたくなるゲームです
連戦でスコアを競うソロプレイモードもあって、ドイツゲームのアプリとしては長く楽しめると思います。

出来れば日本語化してくれれば、とも思うのですが、さすがに無理かな・・・

Agricola (iTunes が起動します)