トレーディングカードゲーム(TCG)の大定番にして、今なお世界的人気を維持している「マジック・ザ・ギャザリング」(Magic The Gathering)、通称 MTG
昨年、その公式ゲームである「マジック2013」が PC、PS3、XBOX360、そして iPad で同時公開されたのですが、その1年後にあたる先日、今年度バージョンが公開されました。
マジック2014」です。

今回も iOS 版は iPad 専用となっていて、iPhone / iPod touch ではプレイできません。
最近 iPad 専用や推奨のアプリの紹介が多く、申し訳ないのですが、なにせマジック・ザ・ギャザリングの新作ですから、今回は優先して取り上げておきたいと思います。
なお、今作からは Android 版も公開されています。

マジック2014 マジック・ザ・ギャザリング

基本的な部分は前作「マジック2013」とほとんど変わりません
インターフェイスも同じで、背景が黒基調から青基調に変わりましたが、変化はそのぐらいです。

MTG のルールは簡単とは言えませんが、今作にもヘルプメッセージや細かい補助解説、チュートリアルなどが用意されています。

今回のチュートリアルは5つのステージに分かれていて、基本解説、呪文(ソーサリー)解説、強化(エンチャント)解説、割り込み呪文(インスタント)解説、起動型能力(アップキープ)解説という形で、かなり丁寧に段階を踏んで教えてくれます
前作は解りにくかったので、今回は初心者向けの解説に力を入れているのが見て取れますね。

ただ、それでも相変わらず専門用語多発なのに基本用語解説がなく、いきなりチュートリアルで「カードをプレイしましょう」「このカードはパーマネントに使用します」とか表示され、「は? プレイ? パーマネント?」って感じになるのは相変わらずですが。

良くでてくる専門用語は以下の通りなので、プレイされる方は参考にして下さい。

ドロー : カードを引くこと
プレイ : カードを使うこと、もしくは場に出すこと
アンタップ : 場に出している、まだ未行動や未使用のカード。縦向き
タップ : 行動済み / 使用済みのカードで横向き。 ターン開始時にアンタップに戻る
クリーチャー : モンスターや兵士などのカード
トークン : カードの効果により出現するカード。主にクリーチャー
アーティファクト : マナの色に関わらず出せるカード。 装備などがある
エンチャント : クリーチャー強化の魔法。 継続して効果がある
ソーサリー : 使い捨ての魔法カード
インスタント : 相手の行動に「割り込んで」使える魔法
パーマネント : 場に出している使い捨てでないカード全部
コントロール : 自分が場に出している(操れる)カード
パワー : クリーチャーの攻撃力
タフネス : クリーチャーの体力
ライフ : オーナー(プレイヤー)の体力
カウンター : カードの上に置くチップ。チップ1つでパワーとタフネス+1
シンボル : カードに書いてある消費マナを表すマーク
ライブラリー : 山札。 ゲーム中のデッキの呼び名
アップキープ : 自分のターン開始時
墓地 : カード捨て場
軽減する : 実際には「無効化」する

ゲームの基本は、まず「土地カード」を場に出して、カードの使用に必要な「マナ」を増やしていきます。
最大マナは出している土地カードと同じで、カードを使うにはマナを消費する必要がありますが、土地は通常1ターンに1枚しか出せません。
使ったマナは自分のターンの最初に最大まで回復します。

場に出したクリーチャー(兵士やモンスター)は、次のターンから攻撃を行えます。
攻撃がされた側はその攻撃を「ブロック」するクリーチャーを選び、戦闘になると互いに攻撃力(パワー)の分だけ相手にダメージを与え、体力(タフネス)がなくなったカードは捨てられます。
このゲームでは「先制攻撃」のスキルがない限り、攻撃は双方が同時に行うので、相打ちになるケースもあります。
戦闘で死ななかったクリーチャーの体力はターン終了後に全快します。

ブロックしないか、ブロック出来るクリーチャーがいない場合、その攻撃はプレイヤーが受けます。
プレイヤーのライフが先になくなった方が敗北ですね。

ターンは「アップキープ(ターン開始前の処理) → メインフェイズ → 戦闘フェイズ → もう一度メインフェイズ → 終了」の順番で進行します。

マジック2014 マジック・ザ・ギャザリング
※攻撃は実行可能なカードをタップすることで行えます。 出せるカードや使えるカードはキラキラと輝いており、視認性は良いですね。
ブロック(防御)は1体に対して複数のクリーチャーで実行可能で、どれで誰を迎撃するかはブロック側が選択します。
相変わらず専門用語が多く、初心者の方だと最初は「解説に使われている用語が解らない」ということになるでしょうから、その点は TCG マニアではない私としてはマイナス点です。


ゲームのメインモードは「キャンペーン」で、今回はステージごとにストーリーが存在します
文字で表示されるだけですが、前作は単に出てくる敵と戦うだけだったので、それに比べると「キャンペーンらしく」なりましたね。

キャンペーンの各ステージは「エンカウンター」と呼ばれるゲームになっていて、敵のデッキ構成とカードを引く順番が固定されています
ストーリーに合わせ、アンデッドと戦うときはアンデッドのデッキを使ってきて、町で民衆に襲われた時は民衆カードばかりのデッキが使用されます。
かなり特徴的な戦法を使ってくるので、それに対応した戦い方が必要になりますね。

勝利するたびに使用したデッキのカードが1枚手に入り、さらにストーリーが進むと新しいデッキがアンロックされていきます。
課金でカードやデッキをアンロックすることも出来ますが、キャンペーンを進行させれば追加課金しなくても使用できるようになりますし、その方がゲーム的にも面白いでしょう。

他に今作には、その場で引いたカードで即席デッキを作って戦う「シールドデッキ戦」、特定の状況での勝利を目指す「チャレンジ」、最大4人で戦えるカスタムデュエルの「無差別戦」、2 vs 2 のチーム戦となるカスタムデュエルの「双頭巨人戦」があります。

ただ「マジック2013」にあった、場の全体に影響する「次元カード」とサイコロ(次元ダイス)を使う「プレインチェイス戦」はなくなりました

でもプレインチェイス戦は次元カードの処理と各プレイヤーが何度も振るサイコロのおかげで、それでなくても遅いゲームのテンポがますます悪くなり、おまけに運に左右されやすい内容だったので、無理になくても良いかなという感じです。
やっぱり不評だったんでしょうね。

マジック2014 マジック・ザ・ギャザリング
※キャンペーンのステージ開始時に表示されるストーリー画面。
やっぱりこういうのがあると無いとでは、ゲームの面白さがだいぶ違ってきますね。


マジック2014 マジック・ザ・ギャザリング
※こちらは 2 vs 2 のチーム戦となる「双頭巨人戦」。 ライフはチームで共有します。
攻撃できるのは正面の相手のみですが、呪文でのサポートや相手の攻撃のブロックなどはパートナー側に対しても行えます。
AI の味方が援護してくれることもあって、なかなか楽しめます。


マジック2014 マジック・ザ・ギャザリング
※今回のウリと言える「シールドデッキ」は、開始前に 14 枚のカードが入った6つのカードパックを引いて、その中から 40 枚以上でデッキを組んでゲームスタートします。
土地カードは別に用意されていて、自由に加えることが可能。
その性質上、各カードの内容を熟知しておく必要があるので、上級者向けのモードです。


アプリの難点は、ほぼ前作のインターフェイスを踏襲しているので、前回と共通しています。
全体的に重いことと、ゲームのテンポが悪いこと

グラフィックは非常に綺麗で、カードの拡大・縮小も滑らか、カード内容も見やすく表示され、演出も綺麗です。
ただ、これだけの演出や表示のためか負荷が高いようで、iPad 3 でも場のカードが増えてくると少し重くなってきます
iPad 3 以下の機種だとちょっと心配ですね。

そして最大の問題はゲームのテンポが悪いことですが、これはもう MTG のルール上、仕方ないかもしれません。

このゲームには相手の行動に割り込んで使える「インスタント」というカードがあるのですが、そのため行動するたびにインスタントの受付時間が入ります
カードを出したり、攻撃したり、ブロックしたりする度に、この待ち時間が入るので、さすがに他のカードゲームと比べて進行が遅いのは否めません。

しかし「インスタントがない時は待ち時間カット」にするとインスタントの有無を察知されてしまうし、だからといってこれ以上受付時間を短くしたらインスタント使用時に困るので、どうしようもない感じ

私的には、AI に待ち時間はいらないのだから、1人プレイ時でプレイヤーにインスタントがない時は、待ち時間を全部カットして、麻雀アプリみたいに「泣きの ON/OFF」みたいなものも付けて欲しいのですが、すごく厳密でルールに細かい MTG の場合、そういうのは許されないんですかね。

一方、オンライン対戦についてですが、こちらはかなり快適にプレイできます
Game Center を通してのマッチングしか行えませんが、さすがにプレイヤーが多く、マッチングにあまり時間はかかりません。
プレイ中のゲーム速度も、元々のテンポが遅めだから、オンライン対戦でも1人の時とあまり変わらない感じです
相手が長考している時は「○○は思考中。お待ち下さい・・・」のメッセージも表示されます。

残念なのは「対戦レート」のようなものが何もないこと
一応「スコア」と「ランキング」はありますが、あまり競ってる感がないし、もうちょっとやる気になるような要素が欲しかったところです。
でもこのぐらいアッサリしてる方が気楽に出来るし、チート(不正行為)も起こりにくいのかもしれませんが。
なお、オンライン対戦中に相手が抜けた場合は AI が代打ちします。

あと、これを難点というのはちょっと違う気もするのですが・・・ あまりにヒドイと思ったのは・・・
オープニングやストーリーのムービーのセリフが、ビックリするぐらい棒読みなこと

日本語のセリフが入っているのは嬉しいのですが、ダークファンタジーな雰囲気を完膚無きまでにぶち壊す、滑稽さ MAX の棒読みで、最初見た時はもう声出して笑いました。
ムービーは格好いいんですよ、ムービーは。 でもこの声はないわ~。
これだったらもう、セリフがない方がマシというレベルですね。 まあ笑えたからいいけどw

マジック2014 マジック・ザ・ギャザリング
※オープニングムービーのワンシーン。 演出は気合いが入っていて、カードゲームの域ではありません。
が、その綺麗なムービーをぶち壊しにする恐怖の棒読みボイス。
最近 Twitter で声優の演技について議論があったそうですが、演技力がないとこうなるというのを実感しましたね。 まあこれは特別ヒドイ例だろうけど。


マジック2014 マジック・ザ・ギャザリング
※カードはかなり綺麗ですが、縮小拡大などを駆使している(?)ためか、見た目以上に重いです。
ちなみに激しく余談ですが、左の「人間」のカードが品川祐に見えてしょうがない・・・


アプリ本体は無料ですが、無料のままでは体験版に過ぎません
チュートリアルから先に進むには 850 円の課金が必要です。
iOS アプリとしては相応の価格ですが、高クオリティーの買い切りゲームとして考えれば、決して高くはないと思います。
ちなみに PC 版は 9.99 ドルです。

課金しないと強いカードが出ないみたいな残念仕様はなく、「プレミアムカード」を買う課金はありますが、これは俗に言う「キラカード」であり、必要なものではありません。

相変わらず初心者向けとは言えませんが、キャンペーンが前より良くなっているので、普通に楽しめるカードゲームになっています
もうちょっとキャンペーンのボリュームが欲しいところですが、トレーディングカードゲームが好きな方で、iPad を持っている方は、必携のアプリでしょうね。

マジック2014 (iTunes 起動、iPad 専用です)