ヴァンパイアに支配された 19 世紀のフランスで、人間の主権を取り戻すために戦うスクウェア・エニックスの iOS 最新作が先日ついに発表されました。
BLOODMASQUE」(ブラッドマスク)です。

写真を元に主人公の顔を生成するユニークなシステムが話題になっていますが、内容の方は「スピードが増して簡易化された Infinity Blade(インフィニティ ブレード)」ですね。

スクエニが Unreal Engine(アンリアルエンジン)を使って表現したハイクオリティーなパリの街並みと、簡単操作で華麗な連続技を叩き込める爽快なゲーム性を持つ反面、ずっと変わり映えしない単調な戦闘と、有料アプリでありながら追加課金をしないと苦戦しがちなゲームバランスにより、賛否両論になっているゲームです。

BLOODMASQUE ブラッドマスク

ミッションを開始するとストーリーシーンが流れた後、そのままヴァンパイアとの戦闘に移行します。
戦闘では左右フリックで敵の攻撃を回避し、画面連打でザクザク斬りまくります。
インフィニティブレードみたいに「相手の攻撃をかわしてからでないと攻撃が当たらない」みたいなことはありません。

回避はいつでも出せるので、相手の動きをよく見ながら、常に画面を連打して、攻撃が来そうになったらとっさに横にフリックする、という感じですね
連打によって自動的に華麗な連続技を繰り出せ、1セット攻撃が全て入ると相手がひるみます。
また、攻撃を受ける寸前で回避に成功すると「チャンス」になり、ほぼ確実に1セット攻撃が入ります。

攻撃を当てたりダメージを受けたりすることでゲージが貯まっていき、最大になると VF(ヴァンパイア・フュージョン)と呼ばれる高速連続技を出せ、さらに最後に BB(ブラッド・バースト)と呼ばれる必殺技が炸裂します。

この辺の派手さはインフィニティブレードにはなかったもので、スクエニらしい部分と言えますね
インフィニティブレードが騎士の戦いの重々しさと全体に漂う寂寥感を表現していたのに対し、ブラッドマスクは爽快さと手軽さ、派手な演出を重視している感じです。
よって「インブレ系」ではありますが、インフィニティブレードとは結構違うプレイ感ですね。

BLOODMASQUE ブラッドマスク
※話題の顔生成システム。 撮影した写真は顔のサイズに合わせて縦横に引き延ばすことができ、これを使えば自分の顔はもちろん、人形でも絵でも、あらゆるものを利用してキャラクターを生成できます。
もちろん用意されている普通の顔を選択することもでき、髪型なども変えられます。
作成したキャラは「助っ人キャラ」としてオンライン上で公開されます。


BLOODMASQUE ブラッドマスク
※ヴァンパイアは「超回復」や「吸血」などの強力な回復技を持ちます。
ただ、超回復は1セット攻撃を入れてひるませれば中断させられますし、吸血はモーションが大きいので慣れれば回避はラクです。
まずは相手のモーションと回避タイミングを覚えるのが先決ですね。


BLOODMASQUE ブラッドマスク
※ゲームが進むと、ヴァンパイアが閃光を放つ特殊技を使ってきたりもします。
ただ、このゲームは回避の連続入力が可能で、続けて回避すれば大きく横に避けることができます。
これを使えば多少回避が早すぎてもカバー出来るので覚えておきましょう。


基本的にはミッションの戦闘を繰り返すのみですが、街を歩き回ることも出来ます。
街の風景は「さすがスクエニ」と思える、非常に美しいグラフィックです

ただ、アンリアルエンジンはあまり広い範囲の造形には向いてないようで、このゲームも動ける範囲は狭いです。
街の中で出来ることも少なく、若干のお金が落ちていたりしますが、ほぼ人と話してミッションをスタートさせるのみです。
一度クリアしたミッションはメニューから直接始めることも可能です。

ショップはメニューから利用しますが、あまり強力な装備は売られていません。
レア装備はヴァンパイアを倒して戦利品として入手しますが、何が出るかはランダムで、良い装備が得られるかは運次第です。
ただ、課金アイテムには「必ずレア装備を出現させる」ものが存在します。

ヴァンパイアを倒して手に入る経験値(ブラッド)は、「ランク」とその時に使っていた「血族」に振り分けられます。
ランクはキャラクターレベルで、上がることで最大 HP が増加します。
血族はキャラクターのタイプですがいつでも変更可能で、4種類あり、それぞれに相性があります。
血族レベルが上がることで必殺技の威力がアップします。

BLOODMASQUE ブラッドマスク
※凱旋門が見えるシャンゼリゼ通り。 BGM もいかにもパリっぽいですね。
ただ戦闘がインブレなので、このフィールドで戦うわけではないし、ショップ等がある訳でもないし、そもそも範囲が狭いし、あくまで風景に過ぎないのが勿体ない感じ。
雰囲気作りにはなっていますが。


BLOODMASQUE ブラッドマスク
※レベルが HP と必殺技にしか関わっていないので、キャラの強さは基本的に装備で決まります。
ただショップでは最低限のものしか売られていないので、強くなれるかどうかはドロップ次第。
レア装備には特定の血族でないと真価を発揮できないものもあるので注意して下さい。


最初にプレイした時は、美しいグラフィックとスピーディーで爽快感のある戦闘、派手な演出などで、「さすがスクエニの新作!」と思えるインパクトがあります
ストーリーや世界観も良く、思わず引き込まれる内容と言えますね。

ただ、1時間ほどプレイすると気になる点が見えてきます・・・

まず、展開が単調なこと
ミッションを選んで、戦闘をして、その繰り返し。
戦闘にバラエティーに富んだ変化があったら良いけど、同じような戦いが延々と続きます。
そもそも戦闘システム自体が、元々スマホ用にシンプルに作られていたインフィニティブレードのシステムを、さらに簡略化したものです。

インフィニティブレードだって2からは装備の種類によって、戦い方が変わるようになりました。
また多くのアクション RPG は進行によって新しい技を習得したり、新たな職業や戦法が増えたりします。

しかしこのゲームのプレイヤー側は、見た目以外はずっと変化しません
新しい敵は出て来ますが、主人公側のやることに変化がないため、1時間もすると「なんだかずっと同じだなぁ」と思ってしまいます。

そして最大の問題は有料のアプリなのに、課金前提かのようなゲームバランス
このゲームはレベル(ランク)が HP にしか関わらないので、レア武器が手に入らないと攻撃力を得られないし、レア防具がないと防御力もあまり高まりません。
しかし普通にプレイしてもなかなかレア装備はドロップしません。

こんな状況でボスクラスのヴァンパイアは、レア装備がないと苦戦必至の強さを誇ります。
アクションゲームなので食らうダメージに関してはテクニックや慣れでカバーできるとしても、制限時間も少なめなので、攻撃力不足の場合はミスなくプレイしても「時間内に倒すことが不可能」というケースが起こります

よってどうしても同じステージを繰り返し、延々とレアドロップを狙う作業が必要になる訳ですが、経験値の蓄積とは違い確率の話なので、ずっと出ないことも多く、徒労感が漂ってきます。

で、こんなゲームで「必ずレア装備がドロップする」(さらに経験値も倍増する)という使い捨ての課金アイテムが約 300 円ぐらいで販売されている訳です
さらに制限時間回復は約 100 円、体力回復は約 200 円です。
そしてそんなゲームが基本料金無料ではなく、本体 600 円で販売されている訳です。
「課金ゲーかよ!」って意見が出てくるのは当然ですね

こうした厳しめのゲームバランスの有料 RPG にラクになる追加課金を付けて、プレイヤーから『課金重視だ』と文句を言われる失敗は、スクエニは昨年すでに「星葬ドラグニル」でやっていた訳ですが、またしても同じことをやらかしている訳で、過去作から何も学ばなかったのかと思ってしまいます
まあ開発メンバーや部署が違うようだから、横の繋がりがないって事なんだろうけど。

iTunes の解説文には「追加課金をしなくてもクリアできるようにバランス設計しています」と書かれていますが、やった感じでは同じステージを延々と繰り返してレア探しとレベル上げしないとかなり厳しい印象です。

どの程度のバランスを考慮しているのか解らず、もしかするとデビル・メイ・クライ並の高難度とリトライ回数を考え、やり込んだ人がギリギリ突破できるぐらいのバランスを想定しているのかもしれませんが、課金がある時点でユーザーの捉え方は変わってしまいますね。

また、リトライ前提のゲームとして考えると、シナリオ上のボスに負けた場合、再戦するたびに読み込みとイベントスキップを何度も繰り返し、ザコ戦や前座のヴァンパイア戦なども行わなければならないので、これが非常に面倒でストレスが貯まります。
なんだかこのストレスも「課金のためかよ」なんて勘ぐりたくなってしまいます。

※現在は度重なるアップデートにより、ゲームバランスがかなり変化しています。
上記の感想はあくまで初期バージョンのものなのでご了承下さい。


BLOODMASQUE ブラッドマスク
※左下のドロップアイテムの表示に注目。 ヴァンパイアの変身前の姿を倒した時点でドロップアイテムは確定するので、課金アイテムの「金の杭」を使っている時にこれがイマイチなものだった場合は、すぐゲームを中断してしまいましょう。
中断したり負けたりしても、金の杭や鉄の杭は失いません。
武器が弱いと時間内にボスを倒すのが不可能になるので、ランクアップで得られるルビー(課金通貨)は「金の杭」の購入に使い、レア武器を入手するのに使用しましょう。
これさえ知っておけば最低限の課金で進めるはず。
もちろんドロップは運なので、木の杭でもレア武器がドロップし、ラクに進める事もあり得るのですが・・・


価格は前述したように 600 円。 ただし追加課金なしで進行するのは結構大変です。
中盤以降もスムーズに楽しもうと思ったら、さらに 1000 円ぐらいの課金は考えておいた方が良いかもしれません。
でもそれに見合うぐらいのクオリティーはあるとは思います

iTunes レビューは初見で書かれることが多いので、高評価が連発されているのは頷けますが、3時間ぐらいプレイした人のレビューを集めたとき、果たしてそこまで高評価になるだろうか? と思う内容ですね。
とは言えスピーディーにザクザク切り刻める派手な戦闘は嫌いではありません。

良い点と悪い点、共にたくさんあるゲームなので、オススメかどうかは難しいですね。
スクエニらしい一見の価値のあるゲームではあるのですが・・・

BLOODMASQUE (iTunes が起動します)


最後になりましたが、以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。