太平洋戦争をテーマにした、硬派な大戦略型の戦術シミュレーションゲームが登場しています。
将軍の栄光: 太平洋戦争」です。

ボードゲーム風の戦略 SLG 「欧陸対戦」「世界の覇者」シリーズで知られる中国のメーカー Easy Tech の新作で、今年の5月に発売された「将軍の栄光」の続編・・・ と言うか、マップ違いバージョンです。
前作の「将軍の栄光」はヨーロッパが中心であったため、アメリカ&イギリスとドイツがメインでしたが、今作は太平洋戦争なので日本・アメリカ・中国がメインです。

このゲームが開発されている話を聞いた時、私はちょっと不安でした。
なぜなら太平洋戦争は太平洋が舞台ですから、戦場は当然「海」ばかり。
それはシミュレーションゲームの舞台としては、あまりにも面白味に欠けます。

しかし今作は上陸作戦や沿岸防衛作戦などをメインにしたシナリオが多く、また太平洋戦争と言っても東アジアの内陸戦もあった訳で、その辺をピックアップしたステージで構成されています。
よって海ばかりという訳ではありません
ミッドウェー海戦が島のすぐ側で行われてたりしますが・・・ そのぐらいのアレンジは必要でしょうか。

将軍の栄光 太平洋戦争

大戦略やファミコンウォーズのようなタイプの、ターン制の戦術シミュレーションゲームです。
マップは六角形のマス(ヘックス)で区切られており、ユニット(コマ)を行動力の分だけ動かして、敵を攻撃し、都市や工場を占領していきます。

ハッキリ言って、ゲームシステムについては前作とまったく変わりません
ですから前作をやっていた方には「前と同じです」の一言で説明が付きます。
同じ解説をダブって行ってもしょうがないので、ゲームの基本システムを知りたい方は 前作のレビュー をご覧頂ければと思います。
ここでは前作との違いを中心に解説していきたいと思います。

キャンペーンは「太平洋戦争」「極東戦線」「朝鮮戦争」「中東戦争」の4つが用意されていますが、順番にクリアしていく必要があり、最初から好きに選べる訳ではありません。
太平洋戦争だけでも「枢軸国」と「連合国」のそれぞれに 10 のステージ、合計 20 ステージが用意されており、これだけでもボリュームは十分です

枢軸国と言っても、太平洋方面の枢軸国なんて日本しかないので、実質的には「日本 VS 世界」であり、枢軸シナリオ=日本シナリオです
日本中心のシナリオがあるのは日本人にとっては嬉しいですね。
連合国は基本的にアメリカですが、イギリス・オーストラリア・中国などもいて、一部で英領インドやオランダなども登場します。

中国のゲームなので、中華思想全開のチャイナルファンタジーな内容にになっていないか心配な方もいると思いますが、そういうことはありません。
このメーカーのゲームは欧陸戦争や世界の覇者でも、当時の状況を細かく再現した戦力配置などが行われていて、相応に歴史に詳しい人が作っているのが伺えます。

ただ、どのシナリオも最終的に必ず「大勝利」に至り、例えば日本だとアメリカを討ち破って北米に上陸し、史実通りの展開になる事はないので、その辺は日本の歴史 SLG とはちょっと価値観が違う印象も受けますね。
2つ目のキャンペーンの「極東戦線」は中国内陸の戦いで、中国で言うところの「抗日戦線」なので、ここを連合軍でやれば中国が日本を占領する展開になる・・・ かもしれません?

将軍の栄光 太平洋戦争
※キャンペーンはこの4つ。 でも太平洋戦争だけでもステージはかなり多いし、時間もかかるし、難易度も高いし、2つ目以降までいける人は少ないかも・・・
出来れば2つ目や3つ目も最初から選べるようにして欲しかったですね・・・


将軍の栄光 太平洋戦争
※ステージ選択画面。 日本的に言うと、仏印進駐 → 真珠湾奇襲 → マレー半島 → ミッドウェー → ポートモレスビー という流れで進みます。 連合国は珊瑚海海戦から始まってミッドウェーに。
ほとんどのステージに多数の軍艦が登場し、派手な海戦が繰り広げられる一方、ちゃんと陸上戦も織り交ぜられているので、双方を楽しめるのが今作の良い点でしょうか。


将軍の栄光 太平洋戦争
※極東戦線で中国を担当しているシーン。 沿岸に要塞砲を建設して日本海軍を迎撃中。
日本海軍の旗は、当たり前ですがちゃんと「旭日旗」になっています。
一方の中国の旗は、これも当時としては当たり前ですが、現在の台湾の国旗である青と紅の旗です。
しかし今の中国は「中国共産党」の中華人民共和国であり、中国・国民党の「中華民国」とは異なります。
この辺の表現は・・・ 今の中国で許されるんでしょうかね?
極東戦線のシナリオの最後に国民党 VS 共産党とかあったら凄いけど・・・ 発禁食らうだろうな・・・


ゲームのシステムについては、前述したように前作とまったく変わっていない訳ですが、歩兵がマップ上に建設できる施設の有効性が上がっています
沿岸で戦うステージが多いため、軍艦や野砲の遠距離砲撃を受けても反撃できる「要塞砲」が便利なステージが多く、空港や空母からの空襲の被害を軽減する「対空砲」も状況によっては必須です。
広範囲を手軽に見渡せる「レーダー」も便利で、今回の施設建築はうまく使えばかなり強いですね。

難点も前回と同様で、主人公以外の将軍の購入に必要な勲章があまりにも多過ぎて、実質「課金前提」になっています
別に雇用しなくてもゲームは進められるのですが、無課金ではせっかくの将軍システムをあまり活用できず、この点は相変わらずですね。

難易度の高さも戦術シミュレーションゲームの初心者の方には難点と言えますが、このジャンル(第二次世界大戦モノの戦術 SLG)は難しいのが普通というのもあります・・・
とりあえず、セーブを小まめにしながら進めるのが基本でしょうか。
ロードの方法がちょっと解り辛いのですが、シナリオ選択画面の右下にボタンがあります。

前作よりは、クリアターン数の制限は緩和されている気がするかな・・・

将軍の栄光 太平洋戦争
※日本の艦載機が米空母を爆撃! 多数の軍艦がバンバン撃ち合う展開が今作の醍醐味。
でも単に撃ち合うだけでは負けるので、ちゃんと敵を挟み撃ちして士気を減らし、それから一斉攻撃をかけるという、このゲームの基本戦術は守っていきましょう。
海には障害物がないので、ユニットさえ多ければ敵を完全に取り囲む「包囲」もしやすいです。
敵の空襲は対空砲を建設すれば軽減でき、その効果は周辺のマスにも及びます。 今回は空母が厄介なので重要なポイント。


将軍の栄光 太平洋戦争
※まずは主人公の階級をアップさせておきましょう。 自分が弱いと話にならない。
また「銀行」も重要です。 これをアップさせておくと毎ターンの収入が増え、回復や建設を使いやすくなります。
追加の将軍は・・・ 無課金だと購入する余裕なんてない・・・ 課金用ですね。


価格は 250 円。 ボリュームを考えると安いぐらいでしょう。
戦術シミュレーションゲームが好きな方なら延々と遊べるアプリなので、この値段はお得です。

ただし、前述したように追加の将軍とかを活用したい場合は、無課金では辛い・・・ というかムリです。
難易度もシミュレーションゲームの造詣が深い人でないと厳しいので、快適にプレイしたい人は 700 円ぐらいの課金は考慮した方が良いかもしれません。

しかし本格的で、よく出来たシミュレーションゲームです。
アドバンスド大戦略シリーズが好きだった私としては、兵器に種類がないのが物足りないのですが、しかし複雑にすれば良いと言うものではないし、スマホやタブレットでも遊びやすい形にうまくまとめられていると思います
万人向けではありませんが・・・ 玄人御用達ですね。

将軍の栄光: 太平洋戦争 (iTunes が起動します)