現在、iTunes では人類を病原体で死滅させるゲーム「Plague Inc. -伝染病株式会社-」が猛威を奮っています。
日本語化によって日本人への感染力が増大、重病者が増え続けていますが、そんな中で人類を病原体から守るボードゲームが iOS に移植されました。
このアプリは感染者を救う救世主となるのでしょうか?
Pandemic: The Board Game」(パンデミック)です。

オリジナルのボードゲームは 2008 年に発売されており、専門家が選出する「ドイツ年間ゲーム大賞」にノミネートされ、ファン投票で決まる「ドイツゲーム賞」でも3位になっています。

このゲームは対戦型ではなく、各プレイヤーが協力して感染の拡大を阻止し、病気の治療薬の完成を目指すゲームです。
最大4人でプレイ出来ますが、iPad 版は各プレイヤーを1人で担当することになるでしょうから、実質「ソリティア」(1人用のゲーム)に近いですね。

現時点(2013/10)では iPad 版しか発売されておらず、iPhone / iPad touch では遊べないので、その点はご注意下さい。

※2015年4月にユニバーサルアプリになりました。現在は iPhone / iPad の双方で使用可能です。
※さらに2015年12月のアップデートで日本語にも対応しました。


Pandemic The Board Game

ゲームが始まると世界各地に病原体がランダムにバラまかれ、各プレイヤーにカードが2枚ずつ配られてスタートします。

各プレイヤーは自分の番になったら移動や治療、カード使用などの行動を4回行えます
治療をするとその都市の「感染レベル」が1つ低下。
行動が終わったらカードを2枚引いて手札にし、次のプレイヤーに移ります。

カードの大半は「都市カード」で、使うとその都市に瞬時に移動できます。
また、自分がいる都市のカードを使うと、好きな場所に移動できたり、そこに研究施設(Research Station)を建てることが出来ます。

都市カードはエリアごとに4色に分かれていて、同色(同エリア)のカードを1人が5枚集めれば、研究施設で治療薬を開発できます
治療薬を作ったエリアの都市は1回の治療で感染レベルを全て除去することができ、4エリア全ての治療薬を完成させると勝利となります。

ただ、1人で同色の都市カードを5枚集めるのは大変です。
よってプレイヤー同士でカードを交換する必要がありますが、カードを受け渡すには双方が、そのカードの都市にいなければなりません。

各プレイヤーの行動後、「感染カード」が引かれ、そこに書かれている都市の感染レベルが1つ上昇します。
そして感染レベル3の都市でさらに感染が起こるとアウトブレイク(Outbreaks)が発生してしまい、近隣の都市にも感染が広まります
さらにアウトブレイクが合計8回起こるとその時点でゲームオーバーになります。

もし感染レベル3の都市が並んでいて、一方でアウトブレイクが起こると、感染の拡大でもう一方の都市でもアウトブレイクが連鎖で発生し、こうなると周辺の感染レベルは急上昇します。
場合によっては大連鎖ばよえーん状態で瞬殺される場合もあります。

またプレイヤーがカードを引く時、たまにエピデミック(Epidemic、大流行)のカードが出る場合があります。
これが出てしまうと流行レベル(Infection Rate)が上昇、ターンごとに引かれる感染カードの枚数が増えてしまいます。
さらに感染カードがシャッフルされ、同じ都市のカードが再び出る可能性があります
(逆に言うとシャッフルされない限り、同じ都市で連続で感染が発生することはありません)

Pandemic The Board Game
※同色の都市カードを5枚集めて研究施設に行けば治療薬が完成。
でもそれで感染が終息する訳ではなく、「根絶」するには残っている病原体を全て退治しなければなりません。
「根絶」すればその病原体はもう広まらなくなりますが、そこまでやる時間はない場合が多く、根絶までしなくてもゲームはクリアできます。


Pandemic The Board Game
※エピデミック発生! 流行レベルが上がり、どこかの都市が感染レベル3になり、さらに感染カードがシャッフルされ、流行レベルが一定以上になるとターンごとの感染都市数も増えてしまいます。
細かいルールについては以下の通りです。
・手札は7枚まで。 8枚以上になったらどれかを捨てる。
・研究施設のある都市同士は飛んで移動することが可能。
・研究施設は最大5つまで。 それ以上作る時はどれかを撤去する。
・カードやコマが足りなくなったらゲームオーバー(敗北)。


ゲーム攻略のポイントになるのは、開始時に選択できる各プレイヤーの「役職」。
役職は6つあり、それぞれ以下のような特性があります。

作戦エキスパート(Operations Expert)
都市カードを使わずに研究施設を建てることが出来る。
さらに研究施設のある都市から移動する際、1ターンに1回、都市カードを1枚消費して好きな都市に飛ぶことが出来る。

衛生兵(Medic)
治療薬の有無に関わらず、治療した都市の感染レベルを全て除去する。
治療薬が完成しているエリアの場合、都市に移動しただけで治療が行われる。
また、衛生兵がいる都市で感染が拡大しても自動的に除去される。

研究者(Researcher)
同じ場所にいる他のプレイヤーに好きな都市カードを渡すことが出来る。
(自分が受け取る場合は今いる都市のカードのみ)

科学者(Scientist)
治療薬を作る際、通常は都市カードが5枚必要だが、4枚で作れる。

通信指令(Dispatcher)
自分の行動力を使って、好きなプレイヤーを移動させることが出来る。
また、その移動先を他のプレイヤーがいる都市にすることが出来る。
(都市カードを使った移動を行わせる場合は、自分の都市カードを使用する)

緊急対策指令(Contingency Planner)
使用済みのイベントカードを1枚取得し、保持・使用できる。
そのイベントカードは手札の制限に含まれないが、使用後はもう回収できない。

検疫隔離専門家(Quarantine Specialist)
自分がいる都市と隣接した都市で、感染レベルの上昇とアウトブレイクの発生を防止する。

ただし参加できるのは最大4人なので、6つの役職全てを活用することは出来ません。
チュートリアルは作戦エキスパート・衛生兵・研究者・通信指令の4人でプレイしますが、これが一番バランスが取れていると思います。

なかなか難しいゲームで、入門用(Introductory)・スタンダード・ヒロイックの3つの難易度が用意されていますが、最初は入門でもなかなか勝てないと思います。
ただ、この手強い難易度が何度も挑戦する意欲を湧かせてくれますし、勝利した時の達成感もありますね

グラフィックや演出、サウンドなどはボードゲームアプリの中ではトップクラスです
臨場感のある BGM が危機感を盛り上げてくれますし、演出はもはやボードゲームのレベルを超えていて、ここまで来るとターン制のシミュレーションゲームと言った方が良いぐらいです。

Pandemic The Board Game
※人類を病原体の魔の手から救う医療戦士のみなさん。
パンデミックの初期バージョンには緊急対策指令と検疫隔離専門家はいなかったようなので、役職に関しては拡張セットのものを盛り込んでいるようですね。


Pandemic The Board Game
※今後の感染都市を6枚分まで知ることが出来るイベントカードを使ったシーン。
都市カードや都市名をタップすると場所を確認出来るので覚えておきましょう。
イベントカードは他に、好きな都市に研究施設を建てたり、誰か1人を好きな場所に移動させたり、そのターンの感染拡大を止めたり、感染都市カードを1枚ゲームから消すものが存在します。
使いどころが重要ですが、手札の枚数を圧迫してしまうのが難点・・・


難点は、かなり「運」に左右されるゲームであるということ。

ソリティア型のカードゲーム/ボードゲームは総じて「運」の要素が強く、そうでないと毎回同じ展開になってしまうのですが、それにしてもこのゲームは「突然の致命的被害」「ほぼクリア不可能な事態」がよく起こります

例えばエピデミック(流行)が発生すると、ランダムに選ばれた都市が感染レベル3になるのですが、同時にその都市に感染が直撃すると、そのままアウトブレイクが炸裂、それが運悪く他の感染レベル3の都市の隣で起こって連鎖が発生し、突発的に大被害、なんてことが「よく」起こります。

さらに運が悪いと、ゲーム開始時に感染レベル3の都市が固まって作られ、そこに最初のターンにエピデミック発生+感染直撃が起こり、何もしてないのに開幕大連鎖でボッコボコ、ということさえあり得ます。
実際、私は3ターンでゲームオーバーになり、愕然としたことがあります。
(4番目のプレイヤーには順番さえ回って来なかったという・・・)

もちろんここまで極端な例は少ないですが、しかしこのゲームはこうした例が「普通に起こり得るルール」であり、そこが良し悪しでしょう。
このような不測の事態が相次ぐ「パニック性」もこのゲームの魅力だと思いますが、運ゲー度は同じソリティア型のボードゲーム Elder Sign: Omens より明らかに上ですね。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



価格は 600 円。 ドイツゲーム系のアプリとしては相場と言ったところでしょうか。
高い難易度ながらテンポよく遊べ、適度な時間で決着が付き、アプリのクオリティーも高いおかげで、思わずハマってしまうゲームです。
本当に「逆 Plague Inc.」ですね。

どうあがいてもクリア不可能なケースが連発されることもあり、好みが分かれるかもしれませんが、繰り返し楽しめるゲームであることは確かです。

入門難度(Introductory)なら、慣れればかなり高い確率でクリア出来るようになるはず。
私的には、こうしたソリティア型・協力型のボードゲームはもっと出てきて欲しいと思っていたので、それがこれだけのクオリティで登場したことは嬉しいですね。

Pandemic: The Board Game (iTunes が起動します)