あの CHAOS RINGS(ケイオスリングス)シリーズの開発を担当した実力派のメーカー「メディア・ビジョン」が、ソーシャルゲーム大手の DeNA(モバゲー)と組んで製作したことで話題の、スマホ専用 RPG が先日公開されました。
マジック&カノン」です。

ゲーマー的には、最も期待できるメーカーと最も期待できないメーカーの合成であって、どんなものが完成するのか興味津々だったのですが・・・
出来上がったものは、目指していた王道 RPG らしい王道 RPG であり、メディアビジョンらしい技術力の高さを感じるものでもあり、DeNA らしい(残念な意味での)ソーシャルゲーム感も盛り込まれた、ある意味ヘンな化学反応の生じていない、遺伝子通りの作品という印象です。DeNA だけに。

「モバゲーだから全部ぶち壊し」という事はなく、普通に RPG として遊べるのですが、「モバゲー会員でも遊べるゲームを」という考えがあるのか、システムが手軽な反面、ドラクエや FF などの既存の RPG をプレイしてきたユーザーには物足りない内容です。
良くも悪くも本格 RPG の初心者向け、ソシャゲから普通の RPG に移る過程の人向け、という感じがあります。

なお、この作品はモバゲーの会員登録を行わなくてもプレイ可能で、課金通貨の購入は iTunes の課金を通して行えます。

マジック&カノン

上の左側の画像はタイトル画面なのですが、このやさしいタッチの絵がゲーム全体の雰囲気を物語っています。
絵本のような、子供らしい世界感とストーリーのゲームで、ターゲットの年齢層は低めの印象です。

街や城、ダンジョンなどは全て 3D グラフィックで表現されており、かなり美しいです
階段を昇ると2階のフロアが浮き上がるように出てくるなど、技術的には素晴らしく、ここはさすがメディアビジョンといったところ。
BGM もかなり良く、これまでの DeNA のゲームとは一線を画していますね。
ちゃんと町の中を歩き、人と話して情報を集めることができ、その辺りも普通の RPG らしくなっています。

移動は画面をスライドして行うのですが、タップすることで城なら王様やお店の場所に、ダンジョンなら最深部に、最短ルートで自動的にダッシュしていきます。(ダッシュの解除はいつでも可能)
ここは既存のモバゲーユーザー向けに、あちこち動き回らなくても目的地に行けるよう配慮しているのかもしれません。
ただ、ミスタッチすると急に思わぬ方向にダッシュしていくので、その点は良し悪しですが。

このゲームのスタッフは王道 RPG を「子供向け」の「ドラクエ型ゲーム」と考えているのか、戦闘シーンのレイアウトや演出、システムなどは、かなりドラクエに似ています
ただ、「やくそう」のような戦闘補助アイテムはなく、「コンティニュー薬」などもありますが課金アイテム。
またターゲットの指定が出来ず、攻撃の対象は自動で選ばれます。
受けたダメージは戦闘終了後に自動で回復し、やられたキャラも復活しますが、MP は回復しません。

使える特技や魔法は、装備している「帽子」によって変わります。
帽子には「犬の帽子」や「猫の帽子」「ウサギの帽子」などがあり、犬なら戦士系の、猫なら魔術師系の、ウサギなら僧侶系の特技を使えます。
つまり「帽子を装備する=ジョブチェンジする」ということで、帽子によって装備できる武器や防具が変わり、ステータスにも補正がかかります。

戦闘によって得られる経験値により、キャラクターのレベルだけでなく装備中の帽子のランク(つまりジョブレベル)も上がっていき、それにより新しい特技や魔法を使えるようになります。

また、帽子以外に「アクセサリ」があり、これを身に着けることで「奥義」を使えます。
例えば「ミノタックル」というアクセサリを着けておくと、攻撃やダメージで「奥義ゲージ」が蓄積されていき、最大になると敵単体に大ダメージを与えられる奥義ミノタックルを発動させられます。

アクセサリには奥義の他に、ステータスアップや敵に狙われにくくなるといった補助的なものも存在し、そしてこのゲームの「ガチャ」はこのアクセサリを入手するものになっています

マジック&カノン
※戦闘はいかにもドラクエ風。 画面だけじゃ解らないけど、効果音までドラクエ風。
3D なので敵はちゃんとアニメーションするし、敵の数に合わせてズームも行われます。
右は炎の奥義を使ったシーンで、演出は派手で良いですね。


マジック&カノン
※左の画像はイヌ族の王様の部屋。 キャラデザインや設定はいかにも子供向け、及び女性向け。
右は帽子ランク(ジョブレベル)のアップにより特技を習得したシーン。
帽子が「ジョブ」に相当するというのはゲーム内の説明ではイマイチ解りにくいです。


基本のシステムは良いと思うのですが、気になるのは DeNA 的な味付けの部分。
つまり、中途半端に盛り込まれたソーシャルゲーム的な部分です。

ゲームの進行はクエストを請け負い、ダンジョンに行きボスを倒すという RPG の基本通りのスタイルになっていて、クエストのリストからダンジョンにワープすることも可能です。
(普通の RPG のようにフィールド上を歩いてダンジョンにいくことも出来ます)

それは良いのですが、同じ地域のクエストは、同じダンジョンで同じような敵と戦うものばかりで、大差ありません
それを何度かやることでメインクエストが発生し、クリアするとストーリーが進みますが、サブクエストはホント変わり映えせず、同じものを繰り返す必要があります。

しかもクエストをやるごとに「スタミナ」を消費し、なくなると回復するまで待たなければなりません
「王道 RPG」を自称するゲームに「スタミナ」があってプレイ中断を余儀なくされるのですから、その時点でガッカリです。

また戦闘時のターゲット指定が出来ず、MP も無駄使い出来ず、アイテムもなく、特技も少ないので、ザコ戦でやることは攻撃のみで、かなり単調です
一般的な RPG ほど選択肢が多いゲームではありません。
ダンジョンを自動で進むシステムがある事と相まって、「ドラクエ風のポチポチゲー」という感じも受けてしまいますね。
決してポチポチではないのですが、あくまで印象として。

装備の種類もかなり少ないため、王道 RPG ではあるけど、非常にシンプルです。
だから敵に勝てない時にやれることはレベル上げのみ
同じようなサブクエストを繰り返して経験値を稼ぎ、スタミナがなくなったらしばらく待つか、課金アイテムで回復させる。
色々なものをあれこれ工夫して戦うのも RPG の楽しみだと思いますが、そういう工夫の部分はあえて廃されているようです
この辺りはもう、モバゲーであり DeNA ですね。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



基本料金は無料。 途中から経験値稼ぎが必要になって来ますが、課金の必要性はほとんど感じません。
ハッキリ言って、DeNA のゲームとは思えないほど無料でも問題なく遊べます

ただこの点は、このゲームの不安点でもあります。
このゲームは前半をやった限りでは、ちょっと儲からなさ過ぎる気がするので、DeNA にはグリーほど良ゲーをクソゲー化する印象はないけど、儲からない分野はスパッと切り捨てる印象も強く、今後は心配です。
いまさら「ポカポカ運営」とか言い出すような会社じゃないし。

全体としては、やはりメインターゲットはモバゲーユーザーなんだろうな、という気がします
普段はポチポチゲーしかやらないモバゲーユーザーにとっては、非常にハイクオリティーで、遊びやすいのに本格的に楽しめる RPG だと感じられるのではないでしょうか。
また、RPG 未経験のユーザーにとっても入門として良いかもしれません。

ゲーマーや既存 RPG の経験者にとっては物足りない部分が多いのですが、王道的な楽しさはあります。
ただ「王道 RPG」というのは確かだろうけど、「本格 RPG」ではない、という感じもありますね。

マジック&カノン (iTunes が起動します)