アメリカン・ダークヒーロー「バットマン」が活躍する、非常にハイレベルなグラフィックの新しい格闘ゲームが公開されました。
オープニングムービーを見て「スゲー!」、3D グラフィックを見て「スゲー!」、ゲームをやってみて「・・・・・・」。
それが「バットマン:アーカム・ビギンズ」(Batman: Arkham Origins)です。

開発は格闘残酷洋ゲー「モータルコンバット」シリーズの開発元として知られ、Batman Arkham City Lockdown の開発も行っている NetherRealm Studios というメーカー。
実績と技術力のあるところで、その片鱗はグラフィックにおいて感じることが出来るのですが、ゲーム内容は「海外メーカーが作ったグリー/モバゲーのゲーム」といった印象。

ソーシャルゲームではないのですが、しかし明らかにゲーマー向けでもない。
日本でも最近よく見られる「ソーシャルゲームメーカーが作ったスマホ用アクションゲーム」といった感じです。

なお、同名の PS3 や XBOX 360 用のゲームが12月(日本では本日)発売される予定ですが、それとは全く別物ですのでご注意下さい。

バットマン:アーカム・ビギンズ Batman: Arkham Origins

ステージが始まると敵が1人ずつ順番に現れ、それを殴り倒していきます。
攻撃方法は画面を連打するのみ。 3発殴ると矢印が出て、その方向になぞると大技が出ますが、操作はかなりシンプルです。
移動はありません

画面左下にはガードボタンがあり、これを押しっぱなしにしていると相手の攻撃を軽減できます。 回避はありません
右下にはモード(スタンス)の変更ボタンがあり、攻撃重視の「アサルトスタンス」と防御重視の「ガードスタンス」を切り替えられます。

基本的には、敵を殴って、そろそろ攻撃してきそうだなと思ったらガード。 その繰り返し
時間の経過によって特殊技を使うことができ、その種類はアサルトスタンスかガードスタンスかで異なります。
攻撃力や防御力も変わるので、理想を言えばアサルトスタンスで殴り、その後にガードスタンスで防御する形になりますが、急に攻撃されることもあるし、切り替え時にはスキが出来ます。

ただ、アサルトスタンス中でもガードスタンスの特殊技のチャージは行われているので、アサルトスタンスで戦いつつ、ガードスタンスの技のチャージが貯まった頃に切り替えて、特殊技を発動したら元に戻す、みたいな戦い方は有効です。

バットマン:アーカム・ビギンズ Batman: Arkham Origins
※ガードスタンスの特殊技、体力回復(ヘルスブースター)。 ずっとガードスタンスで戦わなくても、ガード技のチャージは行われるので、随時アサルトとガードを切り替えた方が良いですが・・・
ある程度ゲームが進むと、パワーアップの都合上、どちらかをメインにした方が良くなります。


バットマン:アーカム・ビギンズ Batman: Arkham Origins
※敵の銃撃をブロックしているシーン。 でもアサルトスタンスだとガードしても結構痛い。
しかしスタンスの切り替え直後はガードボタンを押しても反応しないため、とっさに「切り替え→ガード」をするのはうまく働かない場合が多いです。
スタンスの切り替えはスキを見て行った方が良いですね。


ステージをクリアすると経験値と資金を得られ、稼いだお金でパワーアップやバットスーツの購入を行うことが出来ます
スーツはゲームの進行によって新しいものが登場し、ステータスが大きく上がるため、かなり高額ですが将来的には買い換えていかないと勝てなくなります。

特殊技も資金で習得とパワーアップを行う形で、スタンスの効果もアップさせることが出来ます。
ただその影響で、一方のスタンスを集中的に強化し、そちらをメインに戦った方が資金効率は良くなりますね。

バットマン:アーカム・ビギンズ Batman: Arkham Origins
※新スーツの購入画面。 まずは手数を増やすために新しい技を習得すべきですが、新スーツが登場したら、それを買うためのお金も貯めるようにしましょう。
なぜなら技の強化は威力などを数%アップする形なのに対し、スーツは基本ステータスを高めるからです。
つまりスーツを買い換えないと、技の威力も十分になりません。


バットマン:アーカム・ビギンズ Batman: Arkham Origins
※ボスに関節技を決められているシーン。 連打やフリックでゲージを貯めて回避します。
他にも銃弾を素早くタップしてかわすシーンなどがあり、ザコ戦はやや単調ですが、ボス戦のアクションは豊富。


1つのステージは2~3分ほどの短時間で終わり、割とテンポ良く進みます
ゲーム自体があまりにシンプルなので、高クオリティーな 3D グラフィックに見合ったゲーム性を期待するとガッカリする事になりますが、ある程度進んで特殊技が増えると、スタンスの切り替えも頻繁に行う必要が出てきて相応に面白くなって来ます。

しかしこのゲーム、ゲーマー視点では残念な点が多いです。

まずなんと言っても、ソーシャルゲーム的な「スタミナ」があること
ステージをプレイする毎にスタミナが減少し、なくなるとしばらく待つか、課金しないとプレイ続行できなくなります。
この時点で「またか」と思った方は多いでしょうね。

さらにゲームバランスがテクニックよりもレベルとスーツが優先される、ソーシャルゲームのようなバランスです
このゲームは前述したように回避がなく、攻撃を防ぐ手段はガードしかありません。
しかし敵の攻撃力が高くなると、ガードしても大きなダメージを受けるようになってしまいます。
そうなると・・・ どうあがいてもダメージが避けられないので、「絶対に」勝てないのです。

よって簡単なステージで地道にお金を稼ぎ、スーツを買うことになります。
しかしそこにスタミナと課金があるので・・・ それはまさにグリー/モバゲー的なバランスと言うか、ゲーム進行の強引なコントロールですね。

このゲームは見方によっては、前作 Batman Arkham City Lockdown の進化形とも言えます。
前作は Infinity Blade っぽいシステムにしながらも、先制攻撃ができる形に変えて、遊びやすくしていました。
今回は連打だけで攻撃できるようにし、回避もなくしてガードだけにまとめ、もっとシステムを簡略化したと言えます。

しかしさすがに簡略化し過ぎで、前作は Infinity Blade の亜種と言えましたが、今作はもう劣化 Infinity Blade と言うか、シンプルなミニゲームという感じ。
おまけにスタミナが付いてこのバランスですから、もはやゲーマーがやるものではなくなった印象です。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。
見ての通り、グラフィックは一流ですね。



本体は無料。 もちろん課金要素はあります。
ただ、課金しなくても当面は普通に遊べるようになっています。

果たしてこれは、日本のソーシャルゲーム的なバランスを模倣したものなのでしょうか?
それとも偶然、カジュアルなゲームデザインの追求の末にこうなったのでしょうか?
いずれにせよ、力のある海外メーカーまでこの方向性になったことは、ゲーマーとしては複雑な気持ちです。

とは言え全く遊べない訳ではなく、最初にプレイした時は「なんだこの見た目だけのクソゲーは」と思いましたが、やってるうちに「まあこれはこれで、遊びやすくて悪くないかな」と思うようにもなりました。
これでスタミナとバランスがアレでなければ、普通にオススメしていたかもしれません。

iTunes レビューでは妙に高評価ですが、無料でこの見た目、しかもオープニングムービーも凄いので、初見で付けられがちな iTunes で評価が高くなるのは頷けます。
しかししばらくプレイした後でも、この評価になるのかは疑問なゲームですね。

でも、無料ゲームをメインにする層はカジュアルなプレイヤーが多いから、そう言う人に向けてのゲームと考えると、これはこれでも良いのかなぁ・・・?

バットマン:アーカム・ビギンズ (iTunes が起動します)