世界でもっとも有名なゲームデザイナーの1人、シド・メイヤー(Sid Meier)。
シヴィライゼーション(Civilization)シリーズの製作者として有名な彼が、(実際にどの程度携わったかどうかは別として)iOS で公開した、戦闘機の戦いをターン制のシミュレーションゲームにしたアプリ「Sid Meier’s Ace Patrol」。
その太平洋戦争バージョンが公開されています。
Sid Meier’s Ace Patrol: Pacific Skies」です。

前作は第一次世界大戦のヨーロッパが舞台でしたが、今作は太平洋戦争なので日本とアメリカの戦闘機が登場します
もちろんプレイヤーが日本を担当することも可能で、前作よりなじみのある機体でプレイ出来るのが良いですね。

ただし、あまり史実を反映した内容にはなっていないので、「歴史ゲーム」としての深みのようなものは期待しないで下さい。
残念ながら、中身はほぼ前と一緒で、名前だけ太平洋戦争に変えたものとも言えます。

Sid Meier s Ace Patrol Pacific Skies

戦闘機のコマを交互に動かして戦う、ターン制の戦術シミュレーションゲームです。
ただ一般のシミュレーションと違うのは、コマの移動に実際の飛行機の挙動を反映していること

例えば、まっすぐ直進している時は前方に大きく動けますが、旋回するとスピードが下がるため1マスしか動けません。
また、旋回すると機体が傾くため、その後に反対側に旋回したい時は、一旦機体が水平になる方向に動き、それから逆方向に旋回しなければなりません。

移動できるマスは機体の速度と機動性、そしてパイロットのスキルにも影響されます
高速戦闘機なら前方に3マス動けますが、低速だと1マスか2マスしか動けません。
逆に速度が速くても旋回性能が低いと、急な横移動ができなかったりします。
しかしパイロットが宙返りなどを習得していれば、通常は行えない反転や急旋回を行うことが可能です。

ただ、急旋回などはパイロットにかかるG(重力)が高いため、繰り返していると水平飛行しか出来ないブラックアウト(失神)の状態になることがあります。
また「高度」の概念もあり、下降しながら前進すると速度が増します。
ある程度の高度がないと行えない機動も存在します。

攻撃は敵を前方に捕らえていれば自動で行われます
正面から接近するとこちらも撃たれるので、うまく相手の背後に回るのがポイントですね。
もちろん敵も回り込もうとするので、そう簡単ではありませんが。

Sid Meier s Ace Patrol Pacific Skies
※矢印のアイコンが移動できるマスと、移動後の機体の向きや高度の変化を表します。
緑色のアイコンは敵に大きなダメージを与えられる挙動。 攻撃したい時はこれを選べば良いのですが、移動後に撃たれるような位置の場合は要注意。
ピンチ操作で自由にズームできるので、アイコンをタップしにくい時は拡大しましょう。


Sid Meier s Ace Patrol Pacific Skies
※雲の中に入れば敵に見つからず、攻撃もされません。 逆に雲の中からの攻撃は可能なので、敵を一方的に撃てます。
ただし敵も雲の中に入って身を隠すのでご注意を。


敵を撃退したり、爆撃機を護衛したり、自分が爆撃機を操作して目標に向かうなど、ステージによって勝利条件は異なります。
ただ、基本的には敵を全滅させれば勝利です。
(爆撃するステージでも敵の護衛機を全滅させればその時点で勝利になる)
ピンチの時は、マップ端に移動することで離脱も可能です。

作戦が成功しようが失敗しようが、日程が進み続けるのもこのシリーズの特徴です。
さらに撃墜されたパイロットは捕虜となり、しばらく使用できなくなります。
機体のダメージも、その戦地の戦いが終わるまで回復しません。
よって初戦で手痛いダメージを受けると後々まで響きます。

1つの戦地には4つのステージがあり、例えば珊瑚海海戦のステージ2で2機出撃し、1機が大ダメージを受け、もう1機は撃墜され、敗北してしまったとします。
この場合、そのステージをリトライする事はなく、そのままステージ3に進みます。
撃墜された人も珊瑚海海戦が終わるまで使用できません。
大ダメージを受けた機体も珊瑚海海戦が終わるまで治りませんが、別の機体があれば乗り換えられます
珊瑚海海戦の次はミッドウェーで、もし撃墜された人がいる場合は1つ目のステージが必ず捕虜救出ミッションになり、ここで勝利すれば捕まっていた人は復帰できます。

難易度(Skill Level)はステージごとに選択可能で、上位の難易度ほど得点の倍率が上がるようになっています。
このゲームはスコアを競うものになっていて、全作戦の終了時に合計スコアが表示され、成功した作戦の数で戦争の勝敗が判定されます。

Sid Meier s Ace Patrol Pacific Skies
※パイロットは全部で4名。 敵を撃墜すればレベルアップして新しい機動を習得でき、ステージが進めば新たな戦闘機に乗り換えることも可能です。
戦闘機にパワーアップを施すことも出来ますが、乗り換えたら無効になり、撃墜されてもなくなるので、それを考慮しておきましょう。
なお、オプションで女性パイロットの有無を変更できます。


Sid Meier s Ace Patrol Pacific Skies
※レベルアップ時の新機動習得画面。 4つの機動が並んでいる場合、1つだけを選ぶのではなく、その4つを全てを習得します。
エースパイロット用の機動は1度に1つしか習得できませんが、ループしてその場に留まったり、真後ろに反転するなど、便利なものがそろっています。 特に反転系は1つは欲しいところ。
アイコンの意味は、矢印は速度や高度の変化、イスの絵は高Gがかかる、機体の絵は傾きの変化、照準に斜線マークは攻撃不可を表します。
高Gの起動を繰り返すとパイロットの背景が黒くなっていき、そのままではブラックアウトするので注意。


Sid Meier s Ace Patrol Pacific Skies
※登場する機体の一覧。 海軍機と陸軍機が別になっているのが特徴。
アメリカのゲームなので、日本軍機は日本名ではなくアメリカ軍の呼称になっています。
日本での呼び名は以下の通り。
・Type 96 'Claude' : 九六式艦上戦闘機。
・A6M2 'Zero' : ゼロ戦。アメリカ軍での呼び名は Zeke だけど、このゲームでは一般呼称の Zero
・J2M 'Jack' : 雷電。 ホントは艦載機じゃないです。
・N1K2 'George' : 紫電改。
・Ki-27 'Nate' :
九七式戦闘機。
・Ki-43 'Oscar' : 隼(はやぶさ)。 一式戦闘機。
・Ki-61 'Tony' : 飛燕。 三式戦闘機。
・Ki-84 'Frank' : 疾風(はやて)。 四式戦闘機。 「しっぷう」じゃない。


ゲームシステム自体には不満はないのですが、太平洋戦争を題材にしているゲームとして非常に残念なのは・・・
冒頭でも述べたように、史実を反映した内容になっていないこと

各戦地のスタート時には、その戦いの解説と絵が表示されますが、戦史ものっぽいのはそこだけ。
ステージミッションはランダム生成なので、史実が反映されている訳ではないし、最初から最後まで同じようなミッションばかり。
見た目もほとんど変化せず、パールハーバーだろうとミッドウェーだろうとレイテだろうと風景は全部一緒

史実の作戦を再現しろとまでは言いませんが、もうちょっとこう、艦船や基地に名前が付いてるとか、南方作戦だと風景が南国風になってるとか、そういう変化はないのかと。

まあシド・メイヤーのゲームって、細かい史実考証は重視していないものが多いので、それらしいと言えばそうだけど。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



価格は 500 円。 前作は本体無料のアイテム課金形式で、イギリス以外のキャンペーンや新機体を導入するには追加課金が必要だったのですが、今回は価格が高めな反面、その後の課金はありません。
課金仕様だと日本軍は追加課金が必要になっていたでしょうし、こちらの方が安心して遊べますね。

たとえ史実の再現が少なく、ほぼ名前だけ太平洋戦争であっても、第一次大戦時代の架空のヨーロッパ戦争が舞台だった前作よりは、こちらの方がしっくりきます。

ゲーム自体も思考性が高く、それでいて手軽に遊べる戦術 SLG なので、ややシステムが解り辛い部分もありますが、ウォーシミュレーションが好きな人にはお勧めできるゲームです。

Sid Meier’s Ace Patrol: Pacific Skies (iTunes が起動します)