春のクソゲー祭り」延長戦、その2。
邪悪なダンジョンの主となり、進入してくる冒険者をトラップとモンスターで恐怖に突き落とす、風変わりなシミュレーションゲーム「ダンジョンキーパー」。
1990 年代の後半に公開された名作パソコンゲームですが、それをソーシャルゲームにアレンジしたものが EA より公開されました。
名前はそのまま「ダンジョンキーパー」(Dungeon Keeper)です。

このゲーム、クソゲーと言うほど悪い訳ではないのですが・・・
オリジナルのダンジョンキーパーのゲーム性はほぼ潰えており、大ヒットゲーム Clash of Clans(クラッシュ・オブ・クラン)の劣化パクリゲーになっているという、原作を期待していた人にとっては完全な「ガッカリゲー」になっています。
当然のように原作のファンからは国内外で批判続出。

でもまあ、こうなることは事前に解ってはいました。
昨今の EA はソーシャルゲームに傾倒後、テーマパークウルティマ などの有名タイトルをガッカリ課金ゲーにするケースが続いており、さらに事前公開された情報やムービーで「ダンジョンキーパーを元にしたクラッシュオブクラン」であることは明らかだったからです。

しかしそれでも「大手メーカーが作るクラッシュオブクランのクローンなら、面白いかもしれない」という期待はあったのですが・・・ 残念でしたね。
EA の本体無料ゲームに期待するのが間違いだったのかもしれません・・・

ダンジョンキーパー Dungeon Keeper

地中を掘ってダンジョンを拡大し、そこに施設や罠を設置して、やってくる侵入者を撃退します
最初から「金鉱」と「石切り場」は存在しており、それが通路で中心部の「ダンジョンハート」と繋がっています。

プレイヤーが掘った場所はそのまま通路となり、ある程度の空間を作ればそこに部屋を増設できます。
部屋には貯蔵庫となる「宝物庫」や「(石材の)倉庫」、罠や呪文の開発を行う「工房」や「図書館」、モンスターを増やすための「鶏小屋」などが存在します。

ただし部屋を作るにはゴールド石材が必要で、一定時間ごとに「金鉱」や「石切り場」をタップして回収していかなければなりません。

トラップには大砲や飛び出る槍、火を噴き出す床や敵を遅くする氷結罠などがあり、部屋も倉庫と鉱山以外は独自の攻撃方法と、防衛用の常駐モンスターを持ちます

戦闘はログアウト中に他のプレイヤーに攻め込まれるか、「襲撃」ボタンを押して他のプレイヤーに攻め込むか、もしくは「キャンペーン」と呼ばれるステージクリア型のモードに挑戦することで発生します。
他のプレイヤーに攻め込まれた場合、後でその模様をムービーで確認可能です

戦闘では生産しておいた攻撃用モンスターを配置し、相手のダンジョンを破壊します。
モンスターは最初、外周付近に固定されている「金鉱」か「石切り場」にしか配置出来ませんが、部屋を破壊して占領するとそこからも出せるようになります。

モンスターは自動で動きますが「倉庫を優先」「罠の破壊を優先」などの優先目標があり、「毒に強い」「火に弱い」などの特性もあります。
宝物庫や倉庫を破壊すれば相手の資源の一部を奪え、ダンジョンハートを破壊できればクリア評価が上がります。

ダンジョンキーパー Dungeon Keeper
※襲撃前のダンジョンチェック。 ここは内側に全ての施設をまとめている模様。
左上に書かれているのが収奪できるゴールドと石。 報酬が少ないダンジョンは右上の「次へ」のボタンを押してパスしましょう。


基本システムは Clash of Clans(クラッシュ・オブ・クラン)と大差ありません。
ただ、このゲームはダンジョン内であるため、平地の真ん中に村を築いていたクラッシュオブクランとは違い、通路によって敵の移動を制限できます
一本の道を作って、その途中に大砲やら槍やらを満載すれば、進んで来る敵をボコボコに出来ます。

しかし攻撃側は MP を消費して「呪文」を使うことができ、その中には壁を破壊するものも存在します
一本の長い道を作っても、相手がその呪文でショートカットを作り、奥の部屋に直行してしまうと意味が無くなります。
ダンジョンはその辺も考慮して作らなければなりません。

他にユニークなのは、1人用のキャンペーンに「防衛ステージ」があること。
これは自分が攻めるのではなく、相手が攻めてくるステージで、タワーディフェンスのように数 Wave の攻撃に耐えなければなりません。

事後報告を見るだけの他プレイヤーからの攻撃とは違い、呪文で敵モンスターを直接撃退したり、迎撃モンスターを出撃させたり出来るので、このステージだけはクラッシュオブクランとは違う遊び方が出来ます。

もう1つのユニークな点は、自分のダンジョンを攻撃する「ダンジョンを試す」があること。
これはあくまでテストであり、使ったモンスターが疲弊したり、資源を失うことはありません。
少しゴールドが必要で、報酬もありませんが、トラップの動作をチェックしたり欠点を調べられるので便利です。

ダンジョンキーパー Dungeon Keeper
※時間限定で出現する「襲撃プレイ」も防衛用のステージで、耐えられた Wave に応じて報酬を貰えます。
オリジナルのダンジョンキーパーっぽいし、攻撃するよりこちらの方が楽しいかも。


ダンジョンキーパー Dungeon Keeper
※壁を壊す魔法を発動しているシーン。 グリッドが表示され、マスの数を数えやすくなります。
このダンジョンは通路の奧に倉庫を配置していますが、矢印の場所の壁を1マス壊せば、すぐに一番奥に進入できます。
こんな壁一枚でしきられているようなダンジョンの作り方はお勧めしません。


しかしこのゲーム、基本部分は良いと思うのですが、「バランス」が悪くて台無しになっている印象です。
そのバランスはゲームバランスと、ソシャゲ的な課金システムのバランスの双方を含みます

まず戦闘面では、兵士の数が少なく、RTS やディフェンスゲームの醍醐味である「多数の敵との戦闘」の面白さが希薄です。
それでなくてもクラッシュオブクランより兵士数が少なめなのに、序盤から高コストだけど体力と攻撃力に勝る「トロル」を使えるため、少数精鋭を中心に攻めるのが基本で、よってこぢんまりした戦闘にしかなりません

クラッシュオブクランは開始直後の状態でも戦士 25 人の部隊をワラワラ繰り出せましたが、このゲームはトロル5人だけで片付いたりするので、イマイチ地味。
そして兵士1人1人が強めのため、ほとんど敵を倒せずに防衛失敗したりするので、それでなくても攻撃側有利なのに、ますます守る側の手応えがない

開発シミュレーションの部分では、作業員となる「インプ」が2人しかおらず、コマンドを2つしか出せないのに、1つの作業にかかる時間が長く、ゲームの進行にいちいち時間がかかります。 かなりテンポが悪いですね。
さらにインプを増やすのに必要な課金通貨は 800 円分で、ハッキリ言って割高
手軽に課金する気にはなれない金額で、しかし課金しないと開発がダルいので、これじゃ続ける人は少ないでしょう。

課金演出も多く、勝利の度に一定期間報酬をアップさせる 700 円の課金を勧められるのが鬱陶しい。
頻繁にアプリの ON/OFF を繰り返すゲームであるにも関わらず、起動と再接続の時間が結構長いうえに、不安定なのも問題。

EA の課金型ゲームは過去の作品もそうでしたが、日本のソーシャルゲーム以上に「無課金では不便」「課金が高い」「課金演出が鬱陶しい」の3重苦で、残念ながらその点は今回も変わっていません。
ベースが悪くないだけに残念ですね。

ダンジョンキーパー Dungeon Keeper
※1週間報酬アップとか、攻撃力アップとか、課金要素が盛り沢山。
課金は 500 円からで、ガチャはないけど全体的に一回り高い。
これでどれだけ実益がでるのか知らないけど、ハタから見る限りでは EA の課金演出は嫌悪感しか覚えない。
まあ 2012 年にアメリカで「最悪の企業賞」を受賞したところだしなぁ。


アプリ本体は無料ですが、無課金でゲームを進行させるのは、かなり面倒というか、スローペース過ぎてヤキモキします。
一応時間さえかければ課金しなくても進めていける内容ではあります。

総評としては、「ダンジョンキーパー+クラッシュオブクラン」の面白さは確かにありますが、オリジナルのダンジョンキーパーを期待してプレイするとガッカリですし、クラッシュオブクラン未経験者の方にはクラッシュオブクランの方がお勧めですし、かと言ってクラッシュオブクラン経験者がやると見劣り感が否めません。

クラッシュオブクランが超好きで、そちらの待ち時間に同じようなゲームを平行してやりたいという人には良いかなぁ・・・
正直、後発でこの内容で、この課金回りでは厳しいですね。

ダンジョンキーパー (iTunes が起動します)