インベーダー型のシューティングゲームとパズドラ型のソーシャルゲームを組み合わせたアプリが公開され、iPhone / Android 共にかなりの話題になっています。
フルボッコ ヒーローズ」です。

販売元はモバイルアプリ運営の老舗で、グリーやモバゲーとの関係も深かった Drecom(ドリコム)ですが、開発元はナルトやジョジョなどの人気マンガのゲーム化で知られているサイバーコネクトツー
スマホではすでに .Hack シリーズの1つである ギルティドラゴン を開発しています。

このゲーム、公開前はかなり期待していました。
「インベーダー+パズドラ系」というのはシューティング好きだと見逃せない組み合わせですし、サイバーコネクトツーはギルティドラゴンで高い技術力を見せ付けており、さらに専用ゲーム機のソフトを作っていたメーカーですから、SAP(ソーシャル アプリ プロバイダ)よりもゲーム性があるものを出してくれるだろうと思っていたからです。

ところが、出たものをやってみると・・・ 違う。 そうじゃない。

具体的には、敵が弾を撃ったり、体当たりしてくることがない
「それじゃあ、やられないじゃん」という事になりますが、実際にまずやられない。
これは・・・ シューティングゲームと言うべきなのか・・・?

フルボッコ ヒーローズ

味方のヒーロー5体と助っ人1体の6人パーティーで戦う、パズドラ系のソーシャルゲームです。

前述したように戦闘がインベーダー型のシューティングゲームになっていて、開始前に出撃させる自機を選択、そのキャラでの攻撃を一定時間行ったら、他のキャラに自機をチェンジします
同じキャラはしばらく経たないと再使用できません。

キャラクターは騎士系、魔術師系、ドラゴン系、獣人系などに分かれていて、騎士系は連射弾、魔術師系は貫通弾、ドラゴン系は炸裂弾、獣人系は拡散弾を発射します。
種族によってショットが異なる訳ですね。

前述したようにインベーダー型のシューティングですから、ザコがたくさん出てきて少しずつ横に移動し、画面端まで来ると1段こちらに迫って来ます。

しかしほとんどの敵は弾を撃たないし、飛来してくることもありません
じゃあどうなったらダメージを受けるのかというと、敵が攻撃準備を開始し、その上に丸いメーターが現れます。
このメーターが最大になる前にその敵を倒せなかった場合、攻撃が発動され、こちらの HP が減ります。
発動したら回避は出来ないので、つまり「攻撃準備を始めた敵を早く倒すゲーム」になっています。

一部のボスは弾を撃ってくるのですが、本当にごく一部のボスしか撃たないし、その攻撃も散発的。
しかも被弾しても HP は減らず、数秒間 弾を撃てなくなるだけ
極力「回避」を排除したシューティングになっています。

一応インベーダー型なので、敵を倒しきれずに最下部まで進行されると大きなダメージを受けます。
ただ、敵が少なくなっても動きが速くなることはありませんし、よほど攻撃力不足でない限り、そうなることはまずありません。

フルボッコ ヒーローズ
※ちょっと解りにくいけど、左画像の丸いマークの付いている敵は攻撃を準備中。
ほっとくとダメージを受けるので早く倒す必要があり、さらにチャージ中の敵を倒すとスキルの発動に必要なクリスタルが出現します。
右はボスが弾を撃っているところ。 ちゃんと攻撃してくるボスもいますが、エリアボスぐらいしか弾を撃たないし、被弾しても大した被害は受けません・・・


フルボッコ ヒーローズ
※左は敵をなぞって攻撃できるフルボッコフィーバーのシーン。 カタカナの擬音がユニークで良いですね。
右は多段ヒットレーザーのスキルを発動中。 他にもコンボが繋がればデカい弾を撃てるなど、色々な要素があるのですが、ゲーム的にはそんなの気にしなくても問題ないという・・・
属性はパズドラとほぼ同じですが、光同士、闇同士はダメージが下がるので注意。


編成や合成のシステム、ガチャなどは既存のパズドラ系ソーシャルゲームと大差ありません。
クエストで得たキャラクターを「合成」してレベルを上げ、レベルが最大になったキャラは素材を集めることで「進化」できます。
このゲームは自機として使えるキャラと、合成素材にしかならないキャラがいるのが特徴ですが、目立った違いはそのぐらいですね。

ただ、一度クリアしたエリアには「ミッション」が追加され、「不利な属性だけでクリアする」「スキルを使わずにクリアする」などの条件を達成するとボーナスを貰えます。
また、ステージクリア時に「お宝」をゲットでき、これを集めるとご褒美やレアキャラを獲得できる要素もあります。
出来るだけ多くの目標を提示しようというのが伺えますね。

そして大きな特徴は、その演出でしょう。
ギルティドラゴン でも見られた、きらびやかで派手な演出、3D グラフィックで表現されたバトルフィールドと滑らかな動きは、そこいらのソーシャルゲームの演出を軽く凌駕しています

シューティングシーンのキャラの動きなども良く、操作性やインターフェイスも良好で、アプリの完成度は非常に高いですね。

フルボッコ ヒーローズ
※メニュー画面とキャラクター詳細画面。 キャラクターは歴史上の人物、及び童話や伝承の登場人物やドラゴンになっていて、ちょっとしたプロフィールが付いています。
合成シーンやメイン画面の演出などはかなり綺麗です。


ただ、やっぱり気になるのは、まともにダメージを受けるような状況にならない点・・・
本当に題名通り、このゲームの敵はヒーローにフルボッコにされるためだけの存在です。
まあシューティングのザコって元々そういう役割ではありますが、しかしここまで攻撃されている感じを受けないのはどうなのかと

同じ「ソーシャルゲーム+シューティングゲーム」にはケイブが公開した ドンパッチン があり、そちらもゲーマーには物足りない難易度でしたが、それでもザコは弾を撃ってきたし、当たればダメージはあったし、ゲームが進めば敵の攻撃は激しくなりました。

しかしこのゲームはしばらく進んでも、そんな気配まったくなし。
推奨レベル 20 の特別クエストにレベル 5 と 6 だけのパーティーで無理やり突っ込んでみたりしましたが、こんなシステムなのでやっぱりピンチになることもなく、普通にクリアできてしまいます。

まあこのゲームのシステムだと、やられる状況があるとしたら「敵が硬すぎて倒せない」というケースしかなく、しかしそんな展開にしかならないゲームはクソゲーでしかないので、必然的にこうなるのだと思います・・・

ゲーム自体は演出が良くて爽快感もあり、テンポが良くてスキルも多彩、レーザーや多方向弾などのシューティングらしい特徴もあって、楽しめる内容です。

しかしほとんど攻撃が来ないため、ゲームとして物足りないというか、スリルや達成感がないというか、テクニックを発揮する場がなくて消化不良というか、そんなものを常に感じます。
決してクソゲーじゃないんだけど、やってて「これって面白いのかなぁ」と自問自答しながらのプレイが続いています
ある意味、「すごく豪華になったポチポチゲー」に近いかもしれない・・・

まあシューティングって苦手な人も多いので、ソーシャルゲームとしてライトユーザーでも遊べることを優先する場合、こんな風に「いっそ『回避』や『被弾ダメージ』をなくしてしまう」というのは、1つのアイデアかもしれません。
アイデアというか、今まで誰もやらなかっただけの気もするけど。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



ソーシャルゲームなので本体は無料ですが、当然課金があります。
ただ、ゲームの進行により頻繁に課金通貨(ボッコの実)を貰えるので、無課金でもレアガチャを回せる機会は多く、いわゆる「詫び石」の配布も多めです。
この辺はガンホーの「ポカポカ運営」を踏襲しているのだと思われます

個人的には、ここまで技術的に素晴らしいものを作っているのに、やっぱり「ソーシャルゲームの枠内」でしかなかったのが残念ですね。
先日の ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト の時にも感じましたが、やはり SAP のゲームは、故意にそうしているのか、壁を乗り越えられないのか、頑なにソーシャルゲームの枠から出てこない印象があります。

ゲームメーカーであったケイブが作った ドンパッチン はソーシャルゲームでありながらも片足をゲームの方に残している印象があるけど、このゲームは最初からソーシャルゲームとして作っていて、そしてその範囲から出ていない。
サイバーコネクトツーだから相応に期待しましたが、今回はドリコムの影響が強かったのでしょうか・・・

SAP は「ソーシャルゲームユーザー」を相手に商売している訳だから、それに向けた作りにするのは当然ではありますが、パズドラ や チェインクロニクルブレイブフロンティア のような大ヒットゲームはソシャゲの枠内から一歩出ていると思うので、もうちょっと「ゲーム」に寄って欲しかったところですね。
ビジネス的に言っても、そうでないとシェアは狭くなるはずだし。

ただ、ソシャゲユーザーとゲームユーザーって、考え方が根本的に違うからなぁ・・・
そういうのはきっと、開発者においても同じなんだろうな・・・

色々思うところはありますが、フルボッコレビューをするほど悪いゲームじゃないので、試して損はないと思います
ライトユーザーにとってはこの方が楽しめるかもしれないし、人には勧められるゲームですね。

フルボッコ ヒーローズ (iTunes が起動します)