飛び出す絵本のようなグラフィックで、純和風の世界感を表現したアドベンチャーゲームが公開されました。
Tengami」です。

2012 年の東京ゲームショウで開催されたインディーズゲームのイベントでビジュアルが公開され、その美しさと独創性で注目されていた作品ですが、ずっと発売が延期されており、先日ようやく iOS での公開に至りました。
今後 Wii U やパソコンでの発売も予定されています。

内容としては、真横視点のフィールドを移動しながら謎を解いていく、ちょっと暗い感じで雰囲気重視の作品で、既存のゲームでは「スキタイのムスメ」に似ています。
良くも悪くも「雰囲気ゲー」で、ビジュアルとサウンドを楽しむアプリなので、ゲーム性やストーリーを期待するようなものではありません。

ただ、センスと抽象的なグラフィックで勝負していたスキタイのムスメに対し、こちらは純和風のペーパークラフトという、もっと直接的な美術表現が行われているため、万人が雰囲気を感じ取れる作品だと言えます。

Tengami

明確なストーリーはありません。
主人公は和紙で作られた絵本のような世界を歩き、散っていった桜の花を集めます。

ダブルタップで移動し、画面が切り替わる時には光る部分を指でスライドします。
すると本のページをめくるように、画面全体、もしくは一部がめくれていき、変化が生じます。
その際には実物の飛び出す絵本のように、ペーパークラフトがリアルに起き上がってきます

趣のある BGM も非常に良く、効果音もリアルで、イヤホンを付けてのプレイを推奨します

文章が出てくるのは一部のシーンのみで、ゲーム中には一切表示されません。
そのおかげで字が読めなくても問題なく遊べるようになっています。
日本語化されているため、日本人だと最初から言語で困ることはありませんが。

謎はヒントが少ないか、全くない場合が多く、文字によるガイドやヘルプもないので、画面を見て推理するしかありません。
そんなに難しい謎はないのですが、でもノーヒントで進めて行くゲームですから行き詰まると辛く、アドベンチャーとしての難度は相応に高い方です

Tengami
※ページの一部をスライドすると、折りたたまれた橋が出てくる・・・
橋が起き上がってくる様子はとてもリアルで、ちゃんと指のスピードや方向に合わせてページがめくれ、ペーパークラフトが動きます。
ゲームと言うより、飛び出す絵本シミュレーターかも。


Tengami
※大きな建物が組み上がる時は、こんな風に結構ダイナミックにページが動きます。
ところでこの画像、ところどころにマークがありますね。
組み上がると見えなくなるのですが、こんな風に「めくり中に謎が隠されている」というのも、このゲームならではです。


何かがある場所には光が表示されるため、隅々まで歩き回る必要はありません。
押したりめくったりすると変化が生じる場所も、そこが光って判別できるようになっています。

ただ、主人公の移動速度が遅いのは、ややイライラすることもあります
行き詰まるとどこかに見落としがないか、ヒントとなるものが隠されていないか、フィールドを歩き回って探さなければならなくなりますが、その時に歩く速度がチンタラしていると「もっとサクサク動けよ」と思ってしまいます。
まあ雰囲気的に、主人公がダッシュするようなゲームではないのですが。

ボリュームはそれほど多くなく、謎でかなり悩みながら進行しても2時間ほどで終わります。
1つ1つのページが美術的に作り込まれているためか、シーンの数はこの手のアドベンチャーとしては多くありません。

以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。



定価は 500 円。 ボリュームを考えると妥当でしょうか。
このアプリは雰囲気を楽しむ「サウンド付き絵本」と言え、和のテイストのグラフィックとサウンドを味わいながら、メランコリックな気分で淡々と進めていく「芸術作品」です。

だからむしろゲームをあまりやらない人に勧めたい・・・ とも思うのですが、前述したように謎解きは相応に難しいので、それを考えると普段ゲームをしない人にはやっぱり辛そう。
でもヒント付きにすると、それこそすぐ終わるだろうしなぁ。

ともあれ雰囲気は良いので、静かな夜に純和風の世界感に浸りたい方にお勧めします。

Tengami (iTunes が起動します)