暗殺者が警備の目をかい潜り、屋敷に潜入してターゲットに接近する・・・
そんなテーマの「架空のボードゲーム」をコンピューター上で表現した、ちょっと変わったパズルゲームが発売されています。
Hitman GO」です。

ゲーム内容よりも、センスの良いジオラマ風の 3D グラフィックに目がいく作品で、このオシャレな雰囲気はとても iPhone にマッチしていますね。

この「Hitman」というシリーズは「潜入」が重視された 3D ガンシューティング(FPS 系)だったのですが、今作は全く別のゲームになっています。
開発はカナダに新設された Square Enix Montreal というスタジオで、販売元はスクエニですが、日本で製作されたものではありません。

Hitman GO

3D で表現されたジオラマの上に「線」が引かれ、その線上に暗殺者(主人公)や警備員の「コマ」が置かれます。
暗殺者を線に沿って1ステップ分動かすと、警備員のコマもそれぞれ1回ずつ動きます。

警備員には立ち止まったままの青色警備員、移動する黄色警備員、その場で前後に向きを変える水色警備員がいて、警備員が向いている方の1マス先に暗殺者を動かしてしまうと、即座に取り押さえられてリトライになります。

しかし背後や側面から警備員に近づいた時は見つからず、そのまま警備員のマスに踏み込むことで排除することが出来ます。

ゲームの目的は出口に到達することであり、邪魔にならない警備員は倒す必要はありません。
ターゲットがいるステージは、ターゲットの暗殺を行えばクリアとなります。

ゲームのポイントは、暗殺者は毎ターン必ず動かなければならないこと
同じ場所で時間を稼ぎたい時は、どこかを行ったり来たりしなければなりません。
立ち止まることは出来ないため、移動すると見つかってしまう状況になったらもうアウトです。

Hitman GO
※こういう言い方はアレですが、ターン制のパズルゲーム版メタルギアです。
警備員は一定の規則で動いていて、ランダム性はありません。
それにしてもボード上の質感が凄いですね。


Hitman GO
※この画像、どう見ても暗殺者は中央の警備員に見つかっているのですが、実際には見つかっていません。
ちょっと解りにくいのですが、暗殺者と警備員は交互に動いているため、警備員が後ろを向いている時に暗殺者が隣に近づき、その後に警備員が振り向いた時、警備員のターンはその「振り向き」で終わるため、次は暗殺者のターンになります。
ここで暗殺者が逃げるなり警備員を倒すなりすれば、ミスにはなりません。
ミスになるのは「暗殺者が自ら」警備員の視界の先に移動した場合です。


ステージが進むと、スニーキングミッション(潜入作戦)らしい様々なしかけが登場します
例えば、石や空き缶を拾って投げると物音がして、その周辺の警備員を誘き出せます。
姿を隠せる植木や、着替えることで警備員に変装できる服、離れた敵を倒せるスナイパーライフルが登場するステージもあります。

また、ステージをクリアすると結果に応じてカードにスタンプが押されるのですが、単にクリアするだけでは1つしかスタンプはゲット出来ません。
カードには「ブリーフケースを取ってクリアする」「15 ターン以内にクリアする」「敵を倒さずにクリアする」などの条件が書かれていて、これを達成しないと最高評価であるスタンプ3つのクリアにはなりません。

一度に全ての条件を達成する必要はなく、むしろ「ブリーフケースを取ってクリア」と「最小ターンでクリア」は両立できない場合が多いので、1つのステージを数度プレイし、異なる方法でクリアしないとスタンプは3つになりません

もちろん最高評価を取らなくても先に進めるのですが、上位ステージをアンロックするには一定数のスタンプを集めておく必要があります。

Hitman GO
※この黄色の警備服を取ると黄色の警備員に見つからなくなる。
ただし他の色の警備員には見つかるので、複数の服がある場合は取る順番が重要。


Hitman GO
※クリア時のスタンプカード。 このカードも地味にリアル。
そんなに難しいゲームではないので、パズルが得意な人はパーフェクトを目指しながら進んで行くのがオススメ。


そしてこのゲームの一番の魅力は、ゲームもさることながら・・・ そのグラフィックでしょう。
質感のあるジオラマ風のゲームボードはリアルかつ高級感があります。

コマの動きや効果音もアナログボードゲームっぽさ満点で、架空のデジタルゲームでありながら、まさにジオラマゲームシミュレーターという感じ。

カメラワークも見事で、コマの位置に合わせて見やすい角度に移動し、ステージ開始時には横から上に視点が動いていくなど、演出面でも効果的に使われています。
ターゲットがいる暗殺ステージでは美しい声の「アヴェ・マリア」が BGM になるなど、音響もうまく使われていますね。

正直、このゲームは「雰囲気ゲー」であり、パズル部分だけを見た場合、技術的にもアイデア的にもそんなに特筆すべきものではありません。
しかしちょっと地味めのゲームシステムに、このリアルなジオラマと演出が組み合わさることで、とても雰囲気の良いアダルトな作品が作り上げられています。

Hitman GO
※ロード画面の箱の絵。 この絵がまた良い。
こういうところに「それっぽさ」を感じますね。


Hitman GO
※ターゲット補足シーン。 カメラがグッと寄るのが良いです。
バックに流れるアヴェ・マリアも妙にマッチしています。


価格は 600 円。 ボリュームやグラフィックのクオリティーなども含めて考えると、妥当な値段ではないかと思います。
日本語化されていませんが、ゲーム内にほとんど文章は出て来ず、スタンプの取得条件に簡単な英語が書かれているぐらいなので、それが問題になることはないでしょう。

必死になってプレイするようなゲームではなく、時間のある時に少しずつ進めていくのが良い、落ち着いた感じのゲーム
パズルですが、難易度はそんなに高くありません。

大人向けの、総合的な「センス」を楽しむアプリと言えるでしょうか。

Hitman GO(iTunes が起動します)