第二次世界大戦のヨーロッパ戦線をテーマにした、完成度の高いターン制の戦術シミュレーションゲームが登場しています。
Panzer Tactics HD」です。

2008 年にニンテンドー DS で発売され、ヨーロッパで高い評価を受けた「Panzer Tactics DS」の強化版のようで、パソコンやスマホの画面に合わせてグラフィックを大幅に強化し、ステージマップなども一新、天候の追加などシステムの改修も行った、事実上の続編のようです。

キャンペーンシナリオがあり、ユニットを次のステージに持ち越せるなど「アドバンスド大戦略」シリーズに似たシステムを持っていて、一方で輸送や補給のルールは簡略化されており、遊びやすくアレンジされています。

まあ題材的にも内容的にもヘビーなゲームであり、万人向けとは言えないのですが、秀作の戦術 SLG であることは間違いありません。
ただし(今の時点では)iPad 専用アプリなのでご注意下さい。

Panzer Tactics HD

ドイツ軍、ソ連軍、アメリカ軍のシナリオがありますが、最初にプレイ出来るのはドイツ軍のみです。
マップは六角形のマス(ヘックス)で区切られており、1ターンに全てのユニットを1回ずつ動かせます。
大戦略やファミコンウォーズのような、日本でもおなじみのスタイルのターン制シミュレーションゲームですね。

このゲームの主なルールを箇条書きにすると以下のようになります。

・ユニットは機数制で最大10。
・ZOC(敵に接すると移動が妨害されるルール)がある。
・索敵ルールがある。索敵範囲外は見えないし攻撃できない。
・陸上ユニットと航空ユニットが同じマスに存在できる。
・航空ユニットの爆撃は真下(同じマス)に対して行う。
・天候が雨や雪だと航空ユニットは戦闘できない。
・遠距離攻撃ユニットでも移動後の攻撃が可能。
・遠距離攻撃ユニットの射程内で敵が攻撃を行うと援護射撃が発生。
・都市や工場は歩兵でなくても占領できる。
・輸送は「輸送車」「輸送機」などに一時的に変形して行う。
・陸上ユニットは(敵に接してなければ)どこでも補給と回復が可能。
・航空ユニットは空港上でのみ補給と回復が可能。
・補給や回復を行うとそのターンは行動できない。
・航空ユニットに燃料はない。(だから墜落はない)
・資金に相当するものは「名声ポイント」になっている。
・名声は町の占領やターン経過の他に、敵の撃破でも増加する。
・キャンペーンではクリア後に自軍所属ユニットを持ち越せる。
・名声ポイントでユニットの生産や将軍の雇用を行える。

同じマスに陸上ユニットと航空ユニットが混在できるため、陸を優先した表示にするか空を優先した表示にするかの切り替えボタンがあります。

名前は「Panzer Tactics」ですが、ちゃんと航空ユニットも存在します。
ただ爆撃は真下にしか行えず、そのため1ターンに1部隊からしか空爆を受けないので、他の大戦略系ほど爆撃は強くありません。
とは言え、やはり空陸の連係が勝利のカギを握りますが。

特徴的なルールは、なんと言っても「陸上ユニットはどこでも補給&補充が可能」という点でしょう。
しかも一度補充すれば、どんなにボロボロな部隊でも全快します。
このため本格的な戦術シミュレーションゲームではありますが、難易度はそこまで高くありません
ただ強力な野砲に撃たれると歩兵なんかは1発で消し飛んだりするので、ガンガン突っ込んでも問題ないような生易しいゲームでもありませんが。

もう1つ特徴的なのは輸送。 歩兵や野砲は輸送車などに「変形」して長距離を移動できます
これ自体は最近の大戦略系にはよくあるのですが、このゲームは変形直後から移動できます。
そのため歩兵や野砲が遅くなく、むしろ歩兵は飛行場で輸送機に変形でき、パラシュート兵ならどこでも降下できるので、機動力はすごく高い。
歩兵でなくても拠点を占領できるので、この辺で歩兵の存在価値を出しているようですね。
攻撃力も意外に低くありません。 防御力はないですが。

Panzer Tactics HD
※ユニットを指でなぞると矢印が付き、それが移動ルートになります。よって迂回も可能。
左上にある4つのボタンの右下は、空と陸の表示切り替えボタンです。
これを知らないと「航空機がどっかいった!」「爆撃できねぇ!」となるので注意。


Panzer Tactics HD
※基本コマンドはこんな感じ。補給や補充は敵が近いと行えません。
輸送ボタンは海岸なら輸送船、空港なら輸送機も出てきます。
敵に接している時は「キャンセル」「攻撃」「空陸の表示切り替え」のボタンが表示されます。


ステージをクリアすると、最初のステージの生き残りユニットは「自軍」(プレイヤー部隊、コアユニット)に編入されます。

そして2つ目のステージからは、自軍のユニットを戦場に「派遣」することが出来ます
初期配置の部隊も別にいるので、それに加えて自軍のユニットも出撃させられる形ですね。
自軍ユニットは生き残っていればずっと使うことが可能で、ユニットごとに経験値もあるので、キャンペーンを通して部隊を育てていく楽しみもあります

またステージクリアや敵の撃破、占領した町からの収入として「名声ポイント」を得られ、これを消費して部隊の生産(ゲーム的には援軍要請)を行えます。
欧陸戦争 のように、ポイントで将軍を雇用してユニットに付加する事も可能です。
将軍の雇用に必要なポイントはかなり高いので、最初はなかなか入手できませんが、欧陸戦争のように課金通貨で買う訳ではないので、ちゃんとゲームのプレイで得た報酬で雇えます。

1つのキャンペーンは全11ステージで構成されており、1ステージが1時間ほどかかるので、ボリュームは相応にありますね。
ドイツのキャンペーンはポーランドからスタートし、北欧(ヴェーゼル演習)、ベルギー(アルデンヌ)、フランス(ダンケルク)、ギリシャ(クレタ島)と進んで行きます。
要するに史実にちなんだステージが用意されています。

Panzer Tactics HD
※情報表示の解説。 ステータスは割と一般的な大戦略のスタイルになっていて、奇抜なスキルとか解りにくい能力はありません。

Panzer Tactics HD
※ドイツ軍の作戦画面。クリアターンが早ければ評価の★が多くなります。
自軍ユニットの総数はゲームの進行により増えていきます。


難点は、インターフェイスが解りにくいこと。 文字やウィンドウも小さすぎる。

画面左上に各種の情報を表示する HQ ボタンと、空陸切り替えボタン、オプションボタン、セーブ/ロードボタンがあるのですが、空陸の表示切り替えボタンは多用するのにかなり小さい
しかも iPad だとそれが左上にあるのは正直不便。

さらに HQ ボタンからはユニットの生産や派遣、勝利条件の確認、天気予報の表示などを行えるのですが、どのウィンドウもことごとく小さい
最初は「iPhone 用のレイアウトにしているから小さいのかな?」と思ったのですが、iPhone には未対応。

このゲームはパソコン版(Steam 版)も同時発売されているので、おそらく PC 版そのまんまのレイアウトなのだと思いますが、だからこそ iPad ではちょっと見辛いのが本音です。

また、ユニットは指でなぞって動かすのですが、そのせいで「画面をスクロールしようとしてなぞったら、その下にユニットがあり、勝手に移動し始めた」ということがたまに起こってしまいます。
指がズレてそれが移動ルートに反映されてしまったり、事前にマップを縮小しておかないと目的地までなぞれないこともありますね。
まあ移動ミスが起こってもすぐキャンセル出来るので、大きな問題にはなっていませんが・・・

Panzer Tactics HD
※HQ ボタンで表示されるメニューの解説。
実際にはもっと表示が小さくて見にくいです。 このぐらい大きく表示されてればねぇ・・・


価格は 900 円。 iPad アプリとしては高めですが、PC 版と同時発売で価格も同じなので、アプリの価格と言うより「ゲームソフトの値段」と考えた方が良いのでしょうね。
ケロブラスターFTL もそうですが、今後こうした PC 版と平行販売で同程度の価格のソフトは増えると思われます。

本体だけではドイツキャンペーンしかプレイ出来ず、ソ連とアメリカのキャンペーンをプレイするにはさらに 700 円の課金が必要になりますが・・・
グラフィックや演出、サウンドやボリュームなど、一連のクオリティーはこの手の戦術シミュレーションゲームとしては上位クラスです

私的には、ようやく Great Big War Game欧陸戦争/将軍の栄光 シリーズ以外で、納得できるクオリティーの大戦略型 SLG が出てきたな、という印象です。
かなりマニアックなジャンルではありますが、ミリタリーなシミュレーションが好きな方にはお勧めです。

Panzer Tactics HD (iTunes 起動、iPad 専用)