時は 1900 年代初頭、第一次世界大戦の時代。
戦争に巻き込まれ、家族を引き裂かれた人々と、1匹の救護犬の物語。
コミック風の絵柄で戦争の実態を生々しく描く、Ubisoft 渾身のアクションパズルアドベンチャーが公開されています。
Valiant Hearts: The Great War」です。

第一次世界大戦 100 周年の日に公開された作品で、PS3 / 4 や Windows でも発売されています。
まるで NHK のドキュメンタリー映画を見ているかのような内容で、美術と演出に優れ、史実の解説なども付属されており、質の高いゲームであると同時に、学習ソフトのような雰囲気があります。

ゲーム自体は横スクロールのアドベンチャーゲームですが、戦争がテーマですから、砲弾をかわしたり、敵を撃退するといったアクション性の高いシーンもあります。
メッセージは完全に日本語化されており、翻訳がおかしい部分はありません。

Valiant Hearts: The Great War

タップでその場所に移動し、画面の端を押しっぱなしにすることでも左右に動けます。
横フリックで攻撃を行いますが、銃をバンバン撃ったりすることはほとんどなく、よそ見している敵兵を気絶させたり、ガレキを壊したりするのに使用します。
ただ、石や手榴弾を投げる場面もあり、この時は自キャラを後ろに引いた後、指を離して投てきします。

基本的にはアドベンチャーゲームで、物を運んだりレバーを引いたりして、先に進む方法を見つけながら進んで行きます。
パズル性の高いシーンが多く
、敵の攻撃を物陰に隠れてかわすなど、戦闘も謎解きの1つになっている場合が多いですね。
犬がお供になるシーンもあり、狭い場所にある物を拾って来させたり、離れた場所のレバーを引くよう命令することが出来ます。

なんと言っても見事なのは、その美術表現でしょう
暖かみのあるアートデザインで破壊された都市や戦場、戦火に巻き込まれた人々が描かれており、悲惨な状況を悲惨すぎない形で表現しています。
一方で、コミカルな絵柄でありながらも、戦争で離散した家族や生死に直面する主人公の姿が表現されており、映画のようなヒューマンドラマが語られます。

砲撃に驚いて飛び立つ鳥や、舞い上がるガレキ、砂ぼこりや毒ガスの煙など、細かい部分も丁寧に書き込まれていて、遠くで戦う兵士や、死んだ親の側で泣く子供など、背景にも力が入れられています。

Valiant Hearts: The Great War
※オープニングのワンシーン。 敵国出身だった夫は戦争により国外退去を命じられる。
彼女の父も徴兵され、訓練の後、最前線へと送られるが・・・


Valiant Hearts: The Great War
※という訳で、彼女の父が第一章のメイン主人公。
この駅のホームから先に進むには、楽団に特定の順番で話しかけ、演奏を開始させなければならない。
間違うと演奏が止まるので、それを頼りに正しい順番を探しましょう。


Valiant Hearts: The Great War
※場面が切り替わる時には地図が表示されます。
この時にはナレーションのメッセージが表示されますが、それ以外には文章はほとんどなく、ゲーム中の各キャラの言葉はフキダシと絵で表現されます。


アドベンチャーゲームなので謎解きが解らないと行き詰まる訳ですが、そんなに難しい謎はありません
また、ヒント機能が用意されていて、何かがある場所を絵で教えてくれます。
このヒントは長時間悩んでいると、段階的に詳しくなっていきます。
ただ解りにくい所に限ってヒントがなかったり、役に立たないヒントが多いのがタマにキズですが・・・

ステージ中には当時の生活や戦争に関するコレクションアイテムが隠されています。
入手してもゲームが有利になることはないのですが、それぞれに詳しい解説が付いており、第一次世界大戦の実情を垣間見ることができます。
またゲームの進行に合わせて写真付きの史実解説を閲覧でき、これが物語に「生々しさ」を与えています

単なるドキュメンタリーではなく、ボス戦があったり、カーチェイスシーンがあったりして、ちゃんと物語に「盛り上がり」も用意されています。
ストーリー自体は「交錯する運命と愛の物語」であり、悲惨なだけではないのでご安心を。

やや難点なのは、たまにサウンドにノイズが入って取れなくなったり、一部のシーンで進行不能になってしまう問題が発生することですが、再起動や再開で治るので、それほど深刻ではありません。
いずれアップデートで解消されると思われます。

Valiant Hearts: The Great War
※救護犬「ウォルト」に命令を出しているシーン。 レバーを倒せるので、自分がエレベーターに乗り、その昇降レバーを操作させるといったことが可能です。

Valiant Hearts: The Great War
※史実解説画面。 1つのシーンに複数の史実解説画像が用意されていて、その背景を知ることが出来ます。
こういうのがあるとゲームに深みが生まれますね。


Valiant Hearts: The Great War
※章ごとに主人公が変わります。 第二章は女性衛生兵のアンナが主人公。
このシーンではカギを持っている鳥に石を投げるのですが、カギが手すりと重なる位置に落ちてしまうと拾えなくなって進行不可能になります。 注意。


定価は 500 円。 しかし有料にも関わらず、それだけでは1章しかプレイ出来ません。
全章をアンロックするには 900 円が必要で、合計すると 1400 円
PS 版や PC 版は 1480 円なので、ほぼ同じ値段ですね。
各章のバラ売りも行われていますが、こちらにすると割高になるのでご注意下さい。

私的には、有料アプリが途中でいきなり中断されて「これ以上進めたいならお金払ってね」と言うのは反則だと思うので、ここだけは残念です。
iTunes の説明文でもその点には触れられていません
また iPhone 4S 以上、及び iPad 2 以上、iPod touch は第五世代のみ対応なのでご注意を。

しかしゲームは本当に素晴らしいです
こういう作品が増えれば、きっとゲームに対する偏見もなくなっていくのでしょうね。

Valiant Hearts: The Great War(iTunes が起動します)


以下は Youtube で公開されている公式のトレーラーです。