「ファミコンウォーズのような往年のターンベース・ストラテジー(大戦略型 SLG)を、現代のプレイヤーにも提供したい」というコンセプトで作られた、ヘビー級のシミュレーションゲームが公開されています。
Battle Worlds: Kronos」です。

ユーザーから開発資金を募る Kickstarter で目標額を達成、2013 年の 11 月にパソコン(Steam)版が発売されていたゲームで、先日 iPad にも移植されました。
ただ、現時点では iPhone 版はないのでご注意下さい
開発したのはドイツのメーカーで、価格は 2000 円
iOS アプリとしてはかなり高めですが、Steam 版と同額です。

良くも悪くもヘビー級のゲームで、1ステージあたり2~3時間、後半はもっとかかります。
難易度も高く、「現代のプレイヤーにも提供」とか言ってる割には初心者を叩き返すような難度で、システムも複雑です。
「真の挑戦的なターン制 SLG」を目指しているゲームなので、そのつもりで挑みましょう。
ただ SLG 好きにとっては、良い具合に歯応えを感じる、楽しめる難易度でもありますね。

Battle Worlds: Kronos

マップがヘックス(六角形)で区切られた、大戦略やファミコンウォーズのような戦術シミュレーションです。
ただ独自ルールが多いため、日本の一般的な大戦略タイプとはかなり異なります

まず目に付くのが、ユニットに付いている2つのアイコン。
矢印マーク、照準マーク、星マークの3種類があるのですが、これは各ユニットが1ターンに行える行動を表しています。

Battle Worlds: Kronos

矢印は移動、照準は攻撃で、矢印と照準のマークが1つずつあるなら、そのユニットは移動して攻撃、もしくは攻撃して移動できる訳ですね。
矢印が2つある場合は攻撃は出来ませんが、1ターンに2回移動できます。

星マークは移動も攻撃も行えるマークです。
よって星マークが2つあれば、移動を2回行っても良いし、移動して攻撃することも出来るし、敵が射程内なら2回連続攻撃も可能です。
矢印と星のマークなら、移動を1回、もう一回は自由です。

このシステムのため、装甲のないユニットでも高機動を行かし、偵察や強襲を行えます。
特に星マーク2つで射程2を持つ攻撃バギーは、かなり使い勝手が良いですね。

ZOC(敵の隣に移動すると動けなくなるルール)はちょっと特殊で、ユニットによって影響力が異なります。
例えば歩兵ロボットは ZOC の影響をあまり受けず、自身の持つ影響力も少なめです。
偵察車(Explorer)は敵の ZOC をほぼ無視しますが、相手には ZOC の影響を与えます。
影響を受ける状況では、移動力を大きく消費します。

索敵ルールもあり、視界外の敵は視認できません。 また視界は地形の影響を受けます。
偵察車は広い視界を持ち、占領すると周囲を見渡せるレーダー施設も存在します。

そして厄介なのが、ユニットが破壊されたマスには1ターン残骸(Wreck)が残り、移動の妨げになること。
戦車だと踏み潰して行けるのですが、他のユニットはその上を通過することが出来ません。
うまく使えば敵の移動を阻めますが、邪魔になることの方が多いですね。

また戦闘ごとに経験値が貯まり、5になるとレベルアップしてスキルを習得できます
どんなスキルを覚えられるかはユニットによって違いますが、攻撃されても必ずこちらから先制する、撃った場所を残骸地形に変えるといった、ユニークなものもあります。

Battle Worlds: Kronos
※海戦もあります。 ホバー輸送船は砂浜から上陸可能。
普通の輸送船は港に入らないと荷下ろし出来ません。
輸送船への搭載は、港の正面に船を停泊させ、そこに載せたいユニットを港から発進させます。
ステージが進めば航空ユニットも登場し、装甲車は対空機銃も兼ねます。


Battle Worlds: Kronos
※スキル習得画面。 まずは上の段のどちらかを選びます。
さらにレベルが上がると、最初に選んだスキルの下のものを選択できるようになります。
スキルを習得せずに、Heal(回復)を選ぶこともできます。


もう1つの特徴的なシステムは「資材」。
基地や工場にはユニットを格納でき、そこで資材を使って修理を行えるのですが、資材は自然には生み出されません
よって基地にある分を使い切ったら回復は不可能に。

では基地は使い捨てなのかというと、そう言うことはなく、他の基地の余っている資材を輸送車で運搬できます
これが非常に重要で、輸送を平行して行わないと前線での回復が限られます。

資材は工場での生産にも必要なので、ユニットを増やしたかったら資材を運んでこなければなりません。
ただ基本的にこのゲームは、生産はあまり行えず、初期配置のユニットでクリアを目指すスタイルです。
解る人にしか解らない説明ですが、「ファミコンウォーズ」と言うより「ネクタリス」ですね。

基地や工場は歩兵ロボット(Infantry Bot)で占領しますが、その際に中に格納されている兵器を鹵獲できるのもネクタリスっぽいです。

輸送車は弾薬なども運ぶことができ、他のユニットも搭載できます。 重戦車やロケット砲なども積めてしまいます。
そして迫撃砲やロケットランチャーなどの一部の砲撃兵器には残弾数があり、その補給も搭載してから弾薬を配分する形で行います

他にも特徴的なルールが多く、歩兵は地雷を設置可能、迫撃砲は攻撃モードに変形しないと攻撃できない、マップ上に補給物資や弾薬があって取ると回復する、反撃は1回のみ、各ステージで1回援軍を呼べる、などがあります。

Battle Worlds: Kronos
※格納庫画面。 矢印の部分をタップして資材や弾薬の配分を行います。
もちろん基地や輸送車が物資を持ってないとダメなので、忘れずに積んでおきましょう。


Battle Worlds: Kronos
※何もないマスをタップして書類アイコンを選び、下にある「Reinforcements」のボタンを押すと、大型輸送船が飛んで来て援軍を投下してくれます。
ただ、これを使わずにクリアした方が評価は上がります。


3D で描かれていたパソコン版とは違い、グラフィックは 2D になっています。
ストーリーシーンもオープニング以外は紙芝居になっていますが、タブレットのゲームとしてはグラフィックのクオリティーは高く、十分見栄えがしますね

ただ、やってて気になる点も多いです。
まず、操作ミスしやすく、アンドゥ(やり直し)もないこと
2回動けるユニットが多いため、1回目を動かした後にそのまま終わりにしたい時や、他のユニットを動かしたい時は、一旦何もない場所をタップして選択を解除しなければなりません。
しかし1回しか移動できないユニットにはこの手順がないので、その影響で間違いやすい。
そして間違ってもやり直しが利かない。

また、敵ユニットをタップしても移動範囲が表示されません。 攻撃範囲しか解らない。
加えて敵ユニットの耐久力を常に表示させることが出来ません。
味方は下部にある表示切り替えボタンで常に表示させられますが、敵にはその切り替えがない。
大戦略型の SLG としては、インターフェイスが今一歩という感じがあります

そして何より、1ステージが広すぎて、時間がかかり過ぎる
アドバンスド大戦略とか、もっと広くて時間のかかるゲームはいくらでもありますが、でも今時、昔の大戦略のフルサイズマップぐらいあると言うのはどうなのかなと思ってしまいます。
まあ「往年のターン制 SLG の復活」というコンセプトを考えると、これで正しいのかもしれませんが。

あと、これはゲームの難点という訳ではありませんが、日本人にとって辛いのは、やはり英文
特徴的なゲームシステムが多いので、メッセージが英語だと解り辛い。
またゲーム中に会話シーンが出てくるのですが、かなり長文なので理解し辛い。

特に会話の中に作戦に関する内容が含まれていることがあり、例えばステージ2は港に向かうのが目的で、その後に反転して反撃、ステージ3は南から迂回することを進言されます。
ところがこの辺の攻略に関わるメッセージが長い英文の中に含まれてるので、後でそれが解って困るということも起こり得ます。

Battle Worlds: Kronos
※会話シーン。 選択肢がたくさん。
選択で展開が変わることはないのですが、文章は相応に長いです。 そして・・・


Battle Worlds: Kronos
※ステージ3のワンシーン。 実は会話で南の森を抜けて進むように言われるのですが、それに気付かず普通に道なりに進んでしまうと、敵の援軍が「無限に」出てくるこの港に行き着いてしまう。
一度見ればどうすれば良いのか解りますが、プレイ時間が長いのでやり直しも辛い。
セーブは小まめにした方が良いですね。


全体としては、確かに本格的でチャレンジングなターン制 SLG になっていると言えます。
敵の守りがしっかりしているうえに生産が効かないので、むやみに突っ込むと敗北は必至。
またこちらの長射程ユニットの攻撃範囲を避けて動くなど、AI もしっかりしています

ただそれだけに、難易度が高くて時間もかかるので、人には進め辛いゲームです。
インターフェイスや演出を考えても、Great Big War Game と比べるとランクが劣るのは否めません。

ただ「タブレットでもっと本格的な SLG がやりたい」「じっくり長くプレイし続けられるシミュレーションが欲しい」と思っている方には、オススメできるゲームです。
なんだかんだ言って、私も好きなタイプのゲームですし、デキは良いので思わずやってしまいます。
良くも悪くもこのジャンルの玄人向けですね。

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