謎のエイリアンの攻撃により世界各国が混乱する中、対エイリアン研究機関の司令官となって迎撃と調査を行う、ハードコアなターン制のシミュレーションゲーム「XCOM」
その拡張版が iOS でも公開されました。
XCOM: Enemy Within」です。

昨年発売された「XCOM : Enemy Unknown」に新マップや新兵器、ロボット化や遺伝子操作など、様々な仕様を追加したバージョンです。
ストーリーやゲームシステムなどの大部分は以前と同じで、つまり続編ではなく、あくまで本編+拡張キット
そのため今作の公開に伴い、前作(Enemy Unknown)は非公開になっています

かなり変更点や新ステージが多いので、前作をクリア済みの人でもやる価値は十分です。
価格も 1300 円と、拡張版なのに前作(2000 円)より安くなっています。

ヘビーユーザー向けの高難度なシミュレーション RPG であり、普段ゲームをやらない人だと手に追えないかもしれませんが、世界的に大ヒットしている作品で、iOS においても最大級のタイトルと言えます。
ただ、インストール後のデータ量も 3.27 GB と最大級なのでご注意下さい。

XCOM Enemy Within

エイリアンの活動を調査し、発見したら4~6人で構成される特殊部隊を派遣、戦闘後はエイリアンの装備や死体を研究し、その正体を探っていきます。

戦闘はマップが四角いマスで区切られているターン制の戦術シミュレーションで、日本でもおなじみの形式。
ただ近代戦であるため、物陰に身を隠しながら銃撃戦を行います。
FPS(3D ガンシューティング)をシミュレーションゲーム化したもの」と言え、兵士のアクションも壁際から身を乗り出して射撃したり、車の裏にサッと隠れるなど、いかにも軍人ぽいリアルな動きを見せます。

高さや射線の概念があり、それにより命中率が変わるなど、システムも本格的。
隠れている相手を手榴弾で障害物ごと吹っ飛ばし、無防備になったところを射撃するといったことも可能です。

そして大きな特徴は、難易度が高いこと
戦闘を繰り返して昇進を果たした、HP が最大の兵士であっても、銃撃されて当たり所が悪ければアッサリ死にます。 そして死んだ兵士はもう帰ってきません
おまけに仲間の死を目の当たりにした味方が我を忘れ、叫び声を上げながら勝手に逃げ出したり、銃を乱射し始めることもあり、パニック映画のようなシーンが展開されることもあります。

マップの全貌は最初は解らず、潜んでいたエイリアンが突然現れることもあり、即死の恐怖も相まって、ターン制の SLG でありながら常に緊張感のある戦いが展開されます。

XCOM Enemy Within
※壁際に身を寄せてドアの向こうを伺う隊員。 こんな風に慎重に進んでいくことが重要。
各隊員は(ダッシュしない限り)2回行動できますが、敵の位置が解らない状況で2回移動したりダッシュするのは危険。
身を隠しながら監視や屈みを併用し、少しずつ進んでいきましょう。


XCOM Enemy Within
※グレネードは範囲攻撃、しかも必中なので、うまく使えば便利です。
こんな風に高所に陣取れば銃撃の命中率もアップ。
ただ爆発攻撃は敵と武器が木っ端微塵になるので、残骸を回収できない難点も。


勝利後は本部に戻り、研究を行います。
エイリアンの死体の解剖や、未知の素材と武器の検査、そしてエイリアンの目的の調査・・・
ただ戦うだけでなく、彼らは一体何者なのか、なぜ地球を攻撃するのか、それを追う物語が続きます
豊富なストーリームービーもあり、セリフもすべて日本語化されていて、まるでハリウッド映画のようなシーンが展開されます。
(ただし最初は字幕が OFF になっているので、始めたらすぐオプションで字幕を ON にしておきましょう)

ただ、組織の運営も簡単ではありません。
XCOM は 16 の国で構成された国家評議会により設立されていますが、襲撃事件が起こった時に救援に行かなかった地域は「パニック度」が上昇します。
襲撃は必ず複数の地域で同時に起こるので、どうしても択一になり、パニック度が最大まで上がってしまった国は XCOM への支援を打ち切ってしまいます
そして半分の8ヶ国が打ち切るとゲームオーバーです。

メインミッションを進め、基地破壊などの大きな成果を上げればパニック度は大きく減少しますが、装備が不十分な状態でエイリアンの基地に突入しても苦戦は必至なので、難しいところですね。
また援助金は限られているため、何を優先するかも重要になります。

資金に余裕があるなら、新しい施設を建設し、基地を拡大していくこともできます
この辺にはちょっとした開発 SLG の面白さもあります。

XCOM Enemy Within
※イギリスと日本とブラジルで拉致事件発生! 救援に行かなかった国はパニックに。
パニック度が MAX になっても即脱退する訳ではなく、月末の「評議会レポート」まで猶予があります。
その間に何とか出来れば助かりますが・・・


XCOM Enemy Within
※地底に広がっていく秘密基地。 何から開発していくかは結構重要。
収入を増やすには「衛星アップリンク」を増設して監視衛星を増やす必要があるので、序盤はこれを優先したいところですが、施設の運用には電力もいります。
関連施設が隣り合っているとボーナスが付きますが、これは横だけではなく縦もアリなので覚えておきましょう。


そして今作の新要素ですが、まずなんと言っても大きいのが「MEC」と呼ばれるロボット兵士

今作から戦場で「メルド」と呼ばれる新素材が手に入ります。
これは一定ターンで回収不可能になる宝箱のようなものから入手でき、必要な施設も建設すれば、既存の兵士をサイボーグ化し、パワードスーツを製造することで、強力なロボット兵士を誕生させることが出来ます。

MEC にすると補助アイテムを使用できなくなり、図体がデカいため物陰にも隠れられなくなりますが、HP と防御力が大きく上がり、強力な武装を使え、さらに固有のスキルを習得することが出来ます。
デメリットもあるので全員を MEC にして戦うのは良くありませんが、主力になり得る強さを持ちます

一方、普通の兵士にも「遺伝子操作」という新しい強化を施すことが出来ます。
これも専用の研究と施設、メルドが必要になりますが、肌を変化させて不可視化させたり、足の筋肉を増強して高所にジャンプできるといった、便利な特性を付加できます

また、今作は細かいゲームバランスの調整も行われています。
例えば前作は、急に現れた敵が出現と同時に攻撃して来て、どうすることも出来ず即死し「なんだよそれ!」となることがありましたが、今回は新たに出て来た敵は一旦物陰に隠れ、「監視」をするようになりました。

新仕様によって味方が強くなり、敵の不意打ちが減ったため、難易度は前より低下している印象です。
序盤の難関であるエイリアン基地の難易度も、明らかに下がってますね。
それでも十分に難しいゲームなので、小まめにセーブしながら進めた方が無難ですが。

もう1つの新要素は「EXALT」という敵対組織が現れること。
人間なのに XCOM の邪魔をするテロ組織で、ほっとくと資金を奪ったり、各国のパニック度を上げるなどの妨害工作を行って来ます。
これを討伐するには部隊員を1人、工作員として潜入させる「秘密作戦」が必要で、エイリアンとの戦いと平行して進めていかなければなりません。

他にも、町の人がゾンビになっているバイオハザードなバトルなど、様々なステージとムービーが加えられています。

XCOM Enemy Within
※重装甲な MEC と隊員たち。 出撃可能数は階級の高い兵士がいれば拡張できます。
MEC になると以前のスキルはなくしてしまいますが、どの職業から MEC になるかで最初に持っているスキルが変わります。
サイボーグ化にメルドが 10、パワードスーツの製造に 40、合計 50 必要です。


XCOM Enemy Within
※こちらは遺伝子操作。 こちらにも資金とメルドが必要で、メルドをどこに使うかが中盤のポイント。
遺伝子操作の種類は敵の死体の研究で増えていきます。


メインミッションとなるステージが増えたおかげで、ボリュームはさらにアップ
以前はなかった展開も起こるため、前作をやった人でも新鮮味を持ってプレイ出来ます。
特に MEC はインパクトありますね。 敵もパワードスーツ型など、新しいタイプが増えています。

やや気になるのは、画面をスクロールしようとして他のキャラに触れてしまい、前のキャラの移動がキャンセルされるケースがよく起こること。
これは前作からの難点と言えますが、タッチパネルなのである程度は仕方ないところでしょうか。
高さの違う場所に移動し辛い時もよくあります。

iPhone でのプレイは、一部の文字がかなり小さくなりますが、プレイし辛いという程ではありません
iPad があるならそちらがベストですが、ボタンなどは iPhone でも押しやすい大きさで表示されます。

前作はよく落ちていたのも気になったのですが、今回は(iPad Air では)まだ一度も落ちていません。
安定性は改善されていると思われます。

アプリと言うよりゲームソフト、それもかなりヘビーなゲームソフトなので、万人に勧められる訳ではありませんが、ゲーマーなら間違いなく楽しめる名作です。
iOS でも本格的なゲームがやりたいと思っている人にオススメですね。

XCOM: Enemy Within(iTunes が起動します)