クラウド・コンピューティング、通称「クラウド」。
ユーザーの持つコンピューター(端末)でデータの保存・処理・出力を全て行うのではなく、ネットワークの向こうにあるサーバーでデータの保存や処理を行うコンピューターの利用法を言います。
これにより、端末の性能以上の処理を実行したり、大量のデータの保存を行うことが可能になります。

このクラウドを利用し、サーバーでゲームの処理を行って、端末にはゲームの映像のみを出力する、スマホ / タブレット用のクラウド・ゲーミングサービスがスタートしました。
DIVE IN」です。

DIVE IN は「ストリーミング サービス」とも呼ばれていますが、ストリーミングとは映像などのデータをダウンロードしながら、同時に再生する技術のことです。

この DIVE IN はスクエニが独自開発したものではなく、「Gクラスタ」というクラウドゲーミングサービスをベースとしています。
Gクラスタでは一足先に Final Fantasy XIII(FF13)が配信されていましたが、その時に提携が出来たのか、スクエニのクラウドゲーム事業を推進する「シンラ・テクノロジー」の発足も同時期(9~10月)に行われています。

今回 DIVE IN で提供されたのは「FF13」「FF7(インターナショナル版)」「Season of Mystery」の3本。
今後「FF8」「FF13-2」「ライトニング リターンズ(FF13-3)」「ラスト レムナント」「MURDERED」の配信も予定されています。

DIVE IN

DIVE IN でゲームを楽しむには、まずアプリの「DIVE INビューワー」をインストールします。
前述したように DIVE IN でゲームを動かすのはサーバー側のコンピューターであるため、iPhone などにインストールするのはあくまでビューワー(動画視聴用ソフト)ということですね。

ただ現時点では、この DIVE IN ビューワーのインターフェイスが最悪。
起動すると簡単な説明文と体験版の告知バナー、そしてログイン画面へのボタンが表示されますが、バナーをタップするとブラウザの説明ページに飛び、戻って来るにはブラウザを閉じてまたアプリを起動し直さないといけない
ログイン画面も ID とパスワードを毎回手打ちで入力する必要があり、さらにこの画面からアカウント登録に移動することはできない
戻るボタンがないので、ログインせずに元にメニューに戻ろうと思ったらアプリを落としてタスクからも消し、再度起動しないといけない。

そしてアカウントを登録するには、アプリではなく「ブラウザでDIVE IN のウェブページを開き、そこで「アカウント新規登録」のボタンを押さなければならない。
この辺りの案内がアプリ側には一切なし。(おまけに最初は新規登録の表示も小さかった)

登録画面では受信できるメールアドレスを入力して仮登録を行い、それから必要事項を記入します。
以上が終われば登録した ID とパスワードで無料体験(30分)を行えるようになりますが、ゲームの利用権購入がまた解り辛い
例によってアプリからは行えず、体験終了後に「続きをプレイしたい方はこちら」みたいな案内も出てこない。

購入するにはブラウザで DIVE IN のウェブページを開き、トップページのゲーム画像か、上部メニューの「GAME」を押すと表示されるゲーム画像を押して、「○日間プレイ権を購入する」のボタンをクリックします。
ただ画像が大き過ぎて、それがリンクになってると気付きにくい。

また、あらかじめ課金通貨の「Crysta」のチャージを行っておく必要があり、これはスクウェアエニックスアカウントの管理システムにログインする必要があります。
ログイン後、メニューの「Crystaのチャージ」を選択し、任意の金額と支払い方法を選択します。

ハッキリ言って、利用しようと思った人の半分は、この解りにくさのために断念するのではないでしょうか。
今後のアップデートで改善されていくと思いますが、現時点(2014/12)では「よくまあ、こんなメニューで正式サービスを開始したな」と言うのが正直な感想ですね。

なお、料金は FF13 の場合、3日で 250 円、10日で 500 円、30日で 1250 円、365日で 1800 円(税別)。
データの保存は 180 日までで、ログインのない状態がそれ以上続くと消去されます。
買い切りでないのが難しいところですが・・・ ソフトを買って、クリアしたら中古屋に売る人も多いので、それを考えれば安いと言えるでしょうか。
ずっと手元に置いておきたい人だと微妙ですが。

DIVE IN
※アカウント登録とプレイ権の購入は上記メニューの矢印の場所から行います。
ゲームをやるまでの手順が、ある意味「アドベンチャーゲーム」。


ゲームの方ですが、ストリーミングサービスですから、安定した通信を行えるのが前提です
「光回線+Wi-Fi」が基本でしょうね。
間違っても電話回線でプレイしたりしないように。 まともな映像にならないうえに、データ通信量があっという間に尽きてしまいます。

そして光 Wifi 環境でのプレイは・・・ 思っていた以上に普通に遊べます。
映像も美しく、FF13 のハイスペックな 3D グラフィックがスマホやタブレットで綺麗に映ります
iPad だと「映像だ」というのが解るぐらいの解像度ですが、それでも十分綺麗。 iPhone なら申し分なし。

ボタンや十字キーは画面の端に表示され、一部ゲーム画面にかぶさりますが、心配していた操作性や視認性は思ったほど悪くありません
ボタンの反応範囲は見た目通りで、それほど広くありませんが、押すのに困るほどではないですね。
このコントローラーのレイアウトだと LR ボタンを多用するゲームでは困りそうですが、少なくとも FF では問題ありません。
スティックは左下と右下にある四角い枠の中をスライドして動かします。 この操作性も及第点といったところ。

ただ、フィールド移動時に若干の遅延を感じるのは否めません
例えば、動き出しや、曲がり角を曲がる時、若干反応が遅くなります。
そしてそれを修正しようとして戻ろうとすると、その操作にも遅延が生じるので、妙な違和感を感じることも少なくありません。
これではアクションゲームは厳しく、シューティングとかは論外でしょうね。

ただ、そんなに激しいアクションを必要としない RPG では大きな問題はなく、FF13 も十分プレイ出来ます。
サーバーとの通信を行っていながら、このレスポンスを保てるというのは・・・ 技術の改良を感じますね。

DIVE IN
※美しいムービーシーン。 こんなシーンが全編を通して流れる長編 RPG をスマホでプレイ出来る時代に。

DIVE IN
※コントローラーのレイアウトはこんな感じ。 見た目ほど操作し辛くはないです。
スティックの操作は遅延の影響でやや鈍く感じる場合がありますが、致命的なレベルではないです。
アクションゲームだったらダメだろうけど。


FF13 のゲーム自体についてですが、自由に行動できるのは終盤になってからで、それまでは「戦闘シーンが付いている映画」といった感じです。
移動はほぼ一本道、戦闘が起きる場所も決まっていて、RPG としての要素も乏しく、そもそもレベルがありません。
ただムービーやストーリーを楽しむものとしては最上級で、その意味ではストリーミングで楽しむにはピッタリかもしれません。

いずれにせよ、PS3 の性能をフル活用していたゲームですから、それを iPhone や iPad で楽しめるのは、かなりのインパクトがあります

FF7 は、さすがに今見るとグラフィックが厳しいですね。
昔のままなので、大雑把なポリゴンと粗いドットが、いかにも古くさい感じ。
ただ5倍速や、敵の出現の ON/OFF、常に HP が回復する強化モードなどの追加機能を活用できるため、手軽にストーリーを楽しむには良いかもしれません。

Season of Mystery は「絵探しゲーム」で、お題のアイテムを絵の中から見つけていきます。
スマホにはたくさんあるタイプのゲームで、わざわざ DIVE IN でプレイするようなものではなく、おまけに iPhone では目標をタップし辛い。
なぜこれが初期タイトルに選ばれたのか理解に苦しみます。

なお、試しに公衆無線 LAN で接続してみたのですが、やはり全然ダメでした。
画像がコマ送りになる上に、解像度も著しく低下し、たまに文字が判別不可能なほど乱れます。
無理矢理遊ぶことも出来ますが、他の人の迷惑になりそうだし、やらない方が良いですね。

DIVE IN
※FF7 は DIVE IN のセッティング画面で倍速やエンカウントなしなどの追加機能を利用できます。
左上にはGクラスタのマークが。


DIVE IN
※Season of Mystery は単なる絵探しゲーム。 DIVE IN ではむしろやり辛い。
コントローラーを消さないとボタンの裏がタップ出来ないなど、インターフェイスの問題もある。


DIVE IN
※外でやってみたらこんなことに。 スマホのアプリだけど、おうちでやるものですね・・・

まだ課題も多く見受けられますが、「ゲームの未来」を感じるサービスです
手元の iPhone で FF13 が動いているだけで「おぉー!」と思うものがありますね。

今から5年ほど前、PS3 のゲームを PSP でプレイ出来る「リモートプレイ」を試した時は、キャラクターが操作よりも1テンポ遅れて移動する様子をみて「あぁ、まだ無線でゲームをやるのは無理だな」と思ったものですが・・・
今はネットワーク上のサーバーとの通信を、もっと早いレスポンスで行える時代になりました。
さらに5年ほど経てば、アクションゲームも遜色なくクラウドで遊べるようになるのでしょうか?

今はまだ「始動したて」の感が否めないサービスですが、環境が整っている方なら、一見の価値はありますね。

DIVE INビューワー(iTunes が起動します)